2024年8月3日(土)18:00公演
さくらホール
東京二期会
二期会サマーコンサート2024

お世話になっております。
三島でございます。
この日は二期会さんのコンサートへ行って参りました。
渋谷方面は外国からのお客様が多いですね。日本語が聞こえないといっても過言ではない。
二期会さんは先日のオペラ公演(『蝶々夫人』/プッチーニ作曲)にも行きました。二期会公演が続いておりますが特に意味はないです。
プログラムはHPに記載があるのでこちらでは記載せず。
言語はイタリア語・ロシア語・フランス語・日本語での歌唱でした。(英語も)
日本語で歌ったのは”Lippen schweigen”と”Im Feuerstrom der Reben”(通称シャンパンの歌)なので原語はドイツ語ですね。
それで感想いってみよー。
(以下基本的に敬称略)
テノール2名が素晴らしい
特に注目歌手はおらずなんとなく聞きに行ったのですが、素晴らしいテノール歌手の歌唱に出会うことができました。
登場した順番で書いていきます。1人目の濱松孝行は『エフゲニー・オネーギン』(チャイコフスキー作曲)よりレンスキーくんの見せ場のお歌(”Куда, куда вы удалились〜”)です。このオペラが好きなのでどうしても歌手に求めたい部分が多くなってしまうのですが濱松は求めたい歌唱どころか、それを超えて素晴らしく歌ってくれました。ありがとうございます。
出だしの伴奏の下降音型がそのまま降りてくるので情緒も表現もなく焦りましたが濱松が歌い出したらピアノも素晴らしい演奏に変化しました。ちなみにピアノ伴奏は全曲を通してとても良かったのですがこの部分だけがちょっと違った。インテンポすぎたんだろうなあ。
“Что день грядущий〜”からのピアノと歌の掛け合いはとても美しく泣きそうになった。伴奏の音が前奏と比べて豊かになりオーケストラではないことによる寂しさを感じさせなかった。そしてこの出だしの声の柔らかいこと。柔らかいこと。押し出さずに歌うし声質も変えないで歌うことができている。広げすぎない自然な発声は本当にありがたいです。この部分はどうしても力が目立つことが多いし広げすぎてイタリアオペラっぽく(偏見か?)なってしまうので一定に丁寧に歌える歌唱は貴重です。
濱松はとても良い声の持ち主です。他のパワー系発声男性陣と声量は変わらないのですが力技でなければ喉だけ発声でもありません。声の響きに丸みと豊かさがありました。体全体を使って声を出しているように感じられ喉から直球で客席に声を届けるのではく体の奥深くまで落とし込んだ声が高いところから出てくるように感じました。声量によるストレスも発声によるストレスもないので安心して聞けました。
ロシア語の発音が特別良かったわけでは無いですが、音楽の流れを邪魔しなかったり、悪目立ちする子音があったりせず、流れているのではなくロシア語を流しているような歌い方はとても心地よかったです。テンポが早めで抑揚薄めだったのがちょっと気になったのでもう少し動かして歌っても良いのかなと思いました。歌を歌うことが上手ではなくオペラアリアとして成立させるにはもう少し中身がほしい。でもそんなことを言うのも失礼かなと思うくらいパーフェクトな歌唱でした。
プロフィールを見ると、新国立劇場の常連さんのようで『ポリス・ゴドゥノフ』(ムソルグスキー作曲)、『子どもと魔法』(ラヴェル作曲)にも出演しているそうです。(そして研修所の修了生である。)記憶にないのが残念。またお会いしたい歌手の1人です。
そしてもう一人。櫻田亮も素晴らしかった。一人だけオラトリオをチョイス。『メサイア』(ヘンデル作曲)のテノールの最初のお歌(”Comfort ye my people~” )を歌唱。誤魔化しきかないの持ってきたなと思っていました。プッチーニと対抗して(してない)持ってきたヘンデル。しかもメサイア。かっこいい。そしてこれまた期待を超えてくる素晴らしい歌唱でした。
他男性陣に比べると若干声量は落ちますが響きを集めて歌うことができている方なので比較しなければ気になりません。一音たりともシャウトせずひたすら丁寧な歌唱が続いて嬉しくて踊りたくなった。”One for ye my people〜”の音の移動で声がブレない。もちろんひっくり返りもしない。息の流れが綺麗なのでフレーズも綺麗に仕上がる。長く伸ばしていても息の足りなさを感じさせない。永遠に続くような余裕のある歌声が素晴らしいです。最後の高音が若干伸びなかったのだけ気になった。本当はもう少し抜ける感じで歌える方なのでしょう。それでも十分に整った素晴らしい歌唱でした。
櫻田は本当に丁寧に淀みなく歌っており、もし一番を決める必要があるなら私は櫻田に投票しますがそんな気持ちとは裏腹にブラボーの声が少なかったですね。こういう歌唱はブラボー隊の方には刺さらないのかな。なんか悔しい。
パワー系大会
残りの男性陣に関してひとまとめでいいんじゃないかと思うくらいみんなパワー系で歌っておりました。声の圧とか声量とかそういったものだけで考えればパワー系の方たちの勝利であり歌っている感と聞いている感が出るので何かわからなければ上手に聞こえちゃうのもわからなくはないのですがちょっと立ち止まって考えて欲しいなと思います。
宮本益光は本日は司会業に徹していただければよかったのではないかと言いたいくらい歌唱の乱れが目立つ。先日の新国立劇場研修所のコンサートの英語歌唱のレベルが高かったことが記憶にあるので余計そう聞こえた部分もありますが、言葉によって音が散らかっているのがわかりやすすぎる。いろいろなところで声が作られているので安定感もなければ音楽の流れもない。ロングトーンの処理の仕方が丁寧ではなくどこまでが譜面の指示なのかがわからない。息が足りていないように聞こえた。
青山貴は新国立劇場『トスカ』(プッチーニ作曲)で聞いたばかりで直近での再会です。スカルピアを歌ったときより声が出ているように聞こえましたが伴奏がピアノであると言う点が関係しているでしょう。環境も違うしね。何よりも素顔が見れて良かったです。スカルピアのお化粧濃かったもんね。歌唱に関しては声は出ているものの勢いで押し切ってる部分が強く細部にこだわっていない感じがした。細かい音符がはまりきっておらず流れてしまっていた。スカルピアのときはイタリア語の発音の良さを感じましたが(ベストじゃなくてベターだけれど)、この日はイタリア
語ほわほわ部に加入していた。
甲斐栄次郎はイタリア語で重唱(『シモン・ボッカネグラ』ヴェルディ作曲)した後にフランス語でソロ歌唱(『ドン・カルロス』ヴェルディ作曲)をした。イタリア語で歌っているときは声が広がりすぎてしまって何語を歌っているのかそして何を歌っているのか全くわからず不安になりました。しかしフランス語での歌唱は声の焦点が定まっており音楽のラインがはっきりしていました。
福井敬の良かったところは”Nessun dorma “(『トゥーランドット』プッチーニ作曲)の「ね」です。最初の音はクリアで良かった。それ以降は福井の自由すぎる歌い方についていけませんでした。言葉の意味を歌い方で表現をしているのだと思いますがポジション自体が変わってしまうのでよくわからない歌になってしまう。声が出たり引っ込んだりするので曲の全体像が掴めない。高音が出ることをテノールの最大の魅力にしてしまえばその点は完全勝利になりますが(しかし力技)、中央域で朗々と歌うような部分があってほしかったです。
日本語でバレる
一番興味深かったのはアンコールでの日本語歌唱の質です。パワー系の方々は日本語で歌うときも力技で押し切ってくるので日本語ですら何を歌っているのかわかりにくい。良い印象を持った濱松と櫻田は誰かと一緒にワンフレーズ程度しか歌わなかったのでよくわからず。
本編で丁寧な歌唱だなと感じた大倉由紀枝と藤井康子は日本語の発音もとても綺麗で聞き取りやすかったです。完璧ではなくても良い発声を持っていると日本語にも対応できるのでしょう。ちょっとの歌唱でも丁寧に正確に歌えるだけで満足度が上がります。大倉はオペラアリアではなく日本歌曲や童謡のコンサートを行ってほしいと思いました。たった数フレーズしか聞いてないけれど日本語との相性の良さを感じた。
山口安紀子は本編の”Ritorna vincitor!”(『アイーダ』ヴェルディ作曲)では無理に重く歌っているような歌い方で良い印象はなかったのですが日本語では滑らかな歌声を聞かせてくれました(一瞬だけれど)。アイーダはあまり得意ではないのか?習得中?選曲ミス?お声を活かせる曲を歌うときに出会いたいです。
以上です。
テノールに恵まれた。
おしまい。
ソプラノ
上田純子
大倉由紀枝
木下美穂子
島内菜々子
山口安紀子
加納悦子
藤井麻美
持田温子
福井敬
青山貴
甲斐栄次郎
宮本益光
バス
ジョンハオ
ピアノ
鳥井俊之