2024年7月10日(水)14:00公演
新国立劇場オペラパレス
トスカ

お世話になっております。
三島でございます。
この日はお久しぶりに新国立劇場をお出かけしました。
今シーズンのオペラ公演ラストの演目はみんな大好きプッチーニ先生のトスカです。
では感想いってみよー。
(以下基本的に敬称略)
これでいいのかシーズンラスト
今シーズン終わるけど?え?いいの?これでいいの?と聞きたくなるほどの仕上がりです。これでいいのか新国立劇場。圧倒的な歌手の実力不足。普段なら暖かく見守れるはずのちびっ子合唱団にさえもツッコミたくなるほどの完成度の低さ。オーケストラは相変わらずフォルテフォルテ祭りで情緒はない。前回公演のコジ・ファン・トゥッテ(モーツァルト作曲)でも思いましたがわざわざ外国人歌手を招聘してこの仕上がりってどうよ?日本在住の日本人歌手でもっと歌える人いないのか?
後味が悪すぎる。気になったところ書いて終わりにする。
その①:歌手の技術力
カヴァラドッシを歌ったテオドール・イリンカイは声量がオーケストラに負けたりひっくり返ったりする事はありませんでしたが基本的に力技で歌っており歌唱面での美しさはなかったです。演技面でもなかったけど。
母音の「i」が常に固く「i」の母音がくるとそこだけ悪目立ちしてしまい音楽の流れを邪魔しておりました。もしこのオペラの情報を何も知らないで聞いたらイタリア語で歌っていることに気づくのに時間がかかりそうなくらい不明瞭なイタリア語でしたがイ「i」だけは逆にわかりやすくなっていました。よくないけれど。
全幕を通して発声が浅く、声は強いけれど深みがないあっさりとした歌唱になっておりました。1幕のトスカに対して柔らかく歌う場面は強く歌うことができないから浅さが目立ってしまっているのかと思いましたが話が進んでも解消されませんでした。
それでも3幕は1幕2幕に比べれば声の届き方が良くなったように感じました。しかしそれはきっと勘違いです。3幕は舞台前方で歌っているので立ち位置の関係で声が前に出てきているだけです。立ち位置のおかげで見せ場のお歌(”E lucevan le stelle”)はそれなりに上手に聞こえましたが、発声自体は相変わらず浅く高音域はひっくり返らないもののなんとかたどり着いているような音で伸びやかさはありませんでした。
トスカのジョイス・エル=コーリーに関してもイリンカイと同じことが言えるので以下同文で終わりにしたい気持ちです。よくない方向に似ている二人をよく見つけてきたな。キャスティングした人はこういう歌唱が上手だと思っているのかな?
1幕の”Mario!”でイタリア語の不明瞭さを含むはっきりとしない声に不安になりました。そしてその不安は払拭されることがなく3幕で飛び降りて行きました。
太い声を持っており喉も強そうなのでトスカを歌うのに適した声だとは思います。しかし声を顔面に当てることしかしておらず下半身や口の中の空間を使っていないのでお持ちの声の良さを活かせていませんでした。歌を聞くときに口の中の空間がどれくらいあるのかに注目しており空間を感じる声は上手な歌唱ポイントの一つだと思っていますが、エル=コーリーだけでなくどの歌手にも口の中の空間を感じることができませんでした。
2幕ではピアニッシモを多用しておりましたがそれはただの小声です。響きがある歌唱ができていれば声量を落としても客席に声が届きます。エル=コーリーの声は探しにいかなければならなかったし探しても見つかりませんでした。口を開けているだけなのかな?と思うレベル。3幕で1度だけピアニッシモが成功していました。なんだよ。ピアニッシモ成功って。実験?
1番ショックだったのは、2幕でスカルピアを指した後の”Questo è il bacio di Tosca!”の迫力がなかったことです。見事に流れた。スカルピアじゃなくてこの部分が死んだ。はっきりくっきり喋って欲しかった。トスカの気持ちが一番表面的に表れているわけで、それも怒りの感情なわけで。それを流すなんてあり得ない。ここはトスカだけでなくプッチーニ作品で一番かっこいい部分なので大事にしてほしい。
同じく3幕の飛び降りる間際のスカルピアへの宣戦布告(”O Scarpia, avanti a Dio!”)も全く声が飛ばずに飛び降りて行った。舞台前方で声を張って歌っていれば気にならなかった響きのなさが後方で歌うことによりバレてしまう。舞台上の立つ位置や舞台セットの置き方によって声の届き方が左右される事は仕方ないですが発声と響きがしっかりしていれば聞こえないや明らかに声が小さいということ避けられるのでこれは舞台の問題ではなくエル=コーリーの技量の問題でしょう。
スカルピアの青山貴は代役という前置きがあるならば評価が上がるのではないでしょうか。大検討していたとは思います。ただ代役としての感想を書くのは逆に失礼じゃない?と思うので本役だったこととして感想を書きます。
日本人歌手が外国人歌手と一緒に歌ったときに差が出てしまう発声の深さに関しては外国人招聘歌手2人のお持ちの歌唱技術が高くないので大きな違いが生まれず悪目立ちを避けることができたました。なんていうのこういうの?不幸中の幸い?
スカルピアは舞台の端から端まで動き回るような役ではなく中央にドンと構えて立つ姿が似合う役なので棒立ち歌唱になってしまっても役柄と相違しないのが救いです。そのためか落ち着いて丁寧に歌っている印象はありした。丁寧に歌ってはいましたがイリンカイと同じく力技で歌っているので声の伸びや響きを楽しむことはできませんでした。
イタリア語に関しては誰よりも鮮明に聞こえましたがこれも上で書いたように誰がましだったか?という視点ですので優れていたわけではありません。でも一人でもイタリア語がイタリア語に聞こえることは救いです。
2幕のトスカに対して「Mia!」と迫っていく部分は「i」の部分が短すぎてあっさり聞こえてしまいました。ここの気持ち悪さって重要ですよね?全然気持ち悪くなかったです。その前の女を物色するぞソングも言葉が強調されないがためにあっさりと終わってしまいトスカが楽々殺せそうな雰囲気がありました。良いように取れば品行方正なスカルピアに品の良い歌唱(力技)があったことになりますがそれは違くないか?スカルピアさん?という気持ちです。
その②:プッチーニ作品は元気よく!ではない
劇場でよく聞くプッチーニの音楽は元気で音量は大きめでフォルテ!フォルテ!フォルテ!というつくりになっています。とりあえず元気に演奏しておけばいいのでしょ?みたいな演奏が多いなと感じておりまた今回もその通りの演奏でした。通常運転すぎて逆に安心感がありますが、プッチーニの音楽がフォルテだけで形成されいてるわけではないことはここ数年で学んだのでこの音楽作りが正解でないことはわかります。
1幕の出だしは音が重すぎた。音の圧は確かに気持ちいいしかっこよかったのですけれど重すぎちゃってこれから幕が開くかどうか不安になるような音でした。逆に3幕のカヴァラドッシが打たれた後の演奏は軽さが目立ってしまいカヴァラドッシが死んだことを暗さや重さで教えてほしいなと思いました。3幕はそれでも健闘していたとは思いますが全体的な音楽づくりがうまくいってないような気がしました。
その③:物語があったのか
その①とその②があるからこその結果なので内容が被る部分があります。
何よりも悲しいのは歌手の技術が不足していれば歌手を補ったり支えたりまた物語を描くことのできるオーケストラもいないので全くもって物語がどっかにいってしまったことです。歌を聞いていても物語が伝わってくるこのがなく、トスカってこんなに中身のない話だっけ?と思わずにはいられませんでした。プッチーニの音楽がこれでもかと物語を盛り上げてくるのでしっかりついていかなければいけませんね。
2幕のトスカとスカルピアのやりとりはお互いが「どうぞ、あなたの番です。」のような感じに交互に歌っているだけにしか聞こえず場の緊張感が全くなかった。別室で血だらけにされているはずのカヴァラドッシに対しても何にもなく淡々と歌い続ける。もちろん台本があるので物語の進行は決まっていおり驚くことも怒ることも計画されたものですがその中でも歌詞を今思ったことのように扱い歌うことを期待してしまいますしそうであってほしいと思います。
3幕でトスカがスカルピアと最後の抱擁をするときに音楽が切り替わる前に抱き合ってしまいました。そんなことどうでもいいじゃんと思いたいのですが多分これはオペラ的には不正解で音楽と同時もしくは音楽が始まってから動かなければいけないのです。大きなところではありませんがちょっと違和感がありました。音楽が第一の世界だからさ。オペラってのはさ。その辺のルールは守っていこう。
良いところ
舞台装置は美しいです。1幕の舞台装置が上下左右に動きテ・デウムに繋がるところはアンコールをお願いしたいくらい好きです。3幕の舞台装置が上に動いて地下牢が出現してくるところも好きです。
以上です。
行ってないし行かないからわからないけれど並行して公演している高校生のためのオペラ鑑賞教室の方が出来が良さそう。というかこれ以下ってなに?って感じです。
で、まあ、シーズン終わりました。
今シーズンもお世話になりました。
来シーズンもよろしくお願い致しますよ、和士くん!
おしまい。
指揮:マウリツィオ・ベニーニ
演出:アントネッロ・マダウ=ディアツ
美 術:川口直次
衣 裳:ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ
照 明:奥畑康夫
再演演出:田口道子
舞台監督:菅原多敢弘
トスカ:ジョイス・エル=コーリー
カヴァラドッシ:テオドール・イリンカイ
スカルピア:青山 貴
アンジェロッティ:妻屋秀和
スポレッタ:糸賀修平
シャルローネ:大塚博章
堂守:志村文彦
看守:龍進一郎
羊飼い:前川依子
合 唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:三澤洋史
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団