少し前にほぼ初対面の人と会話する機会があって、その流れの中で出てきた質問があった。
「好きな食べ物なんですか?」だ。
わりかしポピュラーな質問だし、生まれてからこれまで何度か聞かれることもあったと思う。
ただ、僕はこの質問をされると答えに窮してしまう。
別に質問者に僕を困らせようとする意図があるわけではないし、ナンバーワンを是が非でも聞き出したいわけでもないだろう。会話の取っ掛かりとして、なんとなく聞いただけだとは理解している。
ただ、それでも答えられない。「えーっと、好きな食べ物っすか~そっすね~…」と言いながら、気まずい沈黙が流れてしまう。
好きな食べ物が無いわけではない。むしろ、ありすぎる方だ。この質問をされた瞬間、脳内ではありとあらゆる料理が走馬灯のように流れては消えていく。
唐揚げも好きだし、ホットドッグも好きだ。麻婆豆腐も良いし、カルボナーラだってアリ。嫌いなものならともかく、好きなものにそこまで明確なランク付けをしていないのだ。どれも正解だし、どれも不正解だ。
そもそも、その日そのときの気分とか体調次第で好きなものなんてコロコロ変わる。生ハムが良いという日もあれば、鯖の味噌煮が食べたいときもある。だからといって、「そのときの気分による」なんて回答が許されるはずもない。
難しすぎる。世間の人々はこんな難問に明確に答えを出しているのか。すごすぎる。どこでそういうの学んだの?
1つだけ、なんとなくこれが僕にとっての正解かもしれないというものはある。それは、白米だ。突き詰めていくと、僕にとって食事は「いかに白米を旨く食べるか」になることが多い気がする。裏を返せば、白米が一番好きなんじゃないか。
でも、それは違うじゃん。さすがに違うじゃん。あまりにも逆張りが過ぎる。そんなすかした答えは求められていないことくらい分かっている。
あと、こう答えたら「じゃあ好きなごはんのお供は?」というフェーズに移行していくことは分かりきっている。それこそ答えの出ない問題だ。明太子だって回鍋肉だって昆布の佃煮だっていい。問題がなにも解決していない。
もう無理だ。分からない。「ご想像にお任せします」でいい。いや、これはさすがに会話を放棄してる。じゃあもうキッシュとかで良いよ。2回くらいしか食べたこと無いし味も覚えてないけど、たぶん好きだし。