横浜の夜景の写真でよくコスモクロックの隣に写っているかまぼこ型のホテルは、横浜グランドインターコンチネンタルというらしい。横浜に住んでもう20年になるが、何度聞いても覚えられない。赤レンガ倉庫でスパイスの効いた少し高いお昼ご飯を食べて、ワールドポーターズで取り留めもなく流行りものを物色して、さあ帰ろうと19:25を指すコスモクロックを横目に国際橋を歩いた時に右手に見えるホテルが、それだ。私はそれを見ながらいつも思う。トモダチコレクションみたいだな、と。電気の付いている部屋ではきっと住人が桃色のハートや緑色の呼びかけや黒いモヤと共に悩み事を抱えていて、そのうちこちらに話しかけてきて、相談事を持ち込んだりするのだ。下の階層は仲の良い友人や家族が住んでいて、高いところには芸能人やお笑い芸人が住んでいるのだろう。自分の好きな住人は好物を与えて可愛がって、好きじゃない住人の部屋は雨の降る壁紙にしてかびたパンを与えたりして、そのうち好きじゃない住人と気に入っている住人が結婚して嫌な気持ちになったりするのだろうな。彼らをコレクションしているのは誰なんだろう。誰が彼らのために蚊を叩いてあげるのだろう。誰が彼らの夢の中に入ってバンジージャンプを嫌がる彼らの背中を押すのだろうか。お昼のインターコンチネンタルを通り過ぎてもそのことは分からなくて、夜になって部屋の電気に気が付いてからようやく、ああトモコレみたいだなと思う。それにしても、そもそもあの光の数だけ人間がいるというのが信じられない。本当にいるのだろうか。ただ電気がついたり消えたりするだけの空っぽの建物なんじゃないか?みなとみらいの美しい夜景の煌々と光る部屋の明かりの数だけ、本当に過去と人生を持った生きた人間がいるのだろうか。やっぱりトモダチコレクションなんだよ、と言われた方が納得が行く。きっと今日も誰かの悩みを誰かが解決しているのだ。お腹が空いたとか、背中が痒いとか、あいつと仲良くなりたいとか、そういう悩みを。