
マンガから、人生を学ぶ?
NHKで72時間ドキュメントの2時間スペシャルを見た。今回の取材場所はパリのマンガ喫茶だったが、その雰囲気は日本のマンガ喫茶とは一線を画していた。といっても、たった一度しかそこに行ったことがない私には声を大にしては違いは上げられないが。パリの13区にあるそのマンガ喫茶は、2階建の作りで、1階ではマンガが買えて、2階はマンガを自由に読めるスペースになっている。さながら、ブックカフェのようでもあるが、特筆すべきは家族連れ、それも親子連れが多いことだ。お客さんに話を聞いてみると、子供が行きたいと言うので、連れて来たついでに、自分もマンガを読んでいる人もいた。あるいは、子供たちがそれぞれ好きなマンガを楽しんでいる間に、自分はパソコンを開いて、自分の仕事に精を出している人もいた。
そんな父親に声をかけてみると、なんと日本のマンガをフランス語に翻訳して出版している会社の編集者だった。驚いたことに、彼は日本語ペラペラだったものだから、それが縁で、彼の会社にお邪魔して取材することができた。彼の話では、フランスでは日本のように少女漫画の恋愛ものは人気がないのだと言う。つまり、相手のために綺麗になろうとしたり、努力したりすると言う考えは共感されにくいのだ。つまり、男のためではなく、全ては自分のためにするのだと言う、「自分が主役」という文化が浸透しているからだ。
お客さんの中に遠くからバスで5,6時間かけてはるばるパリにやって来た姉妹がいた。姉は会社員で、妹は大学生だったが、妹の方はスパイファミリーを読んでいた。コマ割りが小さい割には絵が可愛くて、物語の展開がスピィディーなところが気に入っているようだ。取材班が通訳を介して、姉妹にインタビューしているうちに、彼女たちが通訳なしでも日本語がわかっていることが判明した。どうして日本語がわかるの?もしかして勉強しているの?と尋ねると、「小さい頃から、漫画を読んでいるので、ただそれだけで十分」などと、信じられないことを言ってくれる。まさか、たったそれだけでわかるはずもないと決めつけてしまいそうになるが、どうやら本当にそうらしい。私などはフランス語はおろか、英語だってまともに話せないのに・・・というのが正直な感想だ。二人の話では、フランスではまだまだマンガ喫茶は珍しい存在で一般的ではないそうだ。
私が初めてパリで日本語のマンガを見かけたのは遥か20年くらい前のことだった。何気なくその店の前を通りすぎようとしたら、店のウインドーに日本でお馴染みのキャラクターを見つけて思わず懐かしいと叫んでしまった。そうなると、どれどれ一体どんなマンガがあるのかと、興味津々になり店内を見て回った。その時唯一覚えている作品が、「ハイカラさんが通る」で、値段を見たら日本のマンガの3倍以上したので、思わず高い!と声が出てしまった。たしか当時日本のマンガが1冊400円もしなかった時代だったので、余計にそう感じてしまったのだろう。
番組の日本マンガ人気ランキングによると、栄えある一位は「ワンピース」だったのは頷けるが、あの鬼塚が主人公の「GTO」を読みに来る人が少なからずいることが意外だった。例えば、以前教職についていたが、今少し距離を置いているという男性が「GTO」を読んでいた。彼は「GTO」の前に出版された鬼塚が教師になる前のバージョンを読んでいたのだが、感想を聞いてみると、想像もつかないことを口にした。なんと、今マンガを読んだことで、もう一度教師に戻ってもいいかなあと思い始めたのだと言う。つまり、この先どうしようかと迷い悩んでいたのに、何とマンガが自分の行くべき道を指し示してくれた。マンガが答えをくれたと言うので、仰天した。そもそも私たち日本人はマンガをそんなふうに捉えたことがあっただろうか。ただ、単に、面白いからとか、楽しいからとかと気楽に楽しんでいただけだった。少なくとも私に関してはだが。それに私個人は、現在はマンガを読まないし、また読もうとも思わない人間である。
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