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他者の声を拾う

リアルな声を聞く機会に遭遇

 近所の整形外科に長く待つのを覚悟で、予約なしに午前中に行くようになって1週間が経った。すると、意外なことにそれほど待つことなしに名前を呼ばれることが分かった。今までで最長は1時間で、だいたい30分ほどで先生に関節に溜まった水を抜いてもらえる。待ち時間を有効に使おうと、いや、そうでもなく退屈な時間を何とかやり過ごそうと、小説や中国語のテキストなどいろいろ持って行く。幸いなことに、それに飽きて疲れる手前で、いつも中断される。何もしないので、午前中が暇になった。それなら病院で待った方がましという発想から、午後に行っていたのを午前の診察に切り替えることにした。考えてみると、午後に2時間半待つことを思えば、午前中に最高で1時間待つことなど朝飯前である。受付が始まる8時50分に行けば、待合室の椅子に座れるのだから。

 先日、30分ほど待ったら名前を呼ばれて、処置室に入った。いつもならリハビリ室に隣接しているベッドに横になって待つのに、その日は診察室のすぐ隣にあるベッドだった。左膝につけているサポーターを外して横になり、先生を待っていると、どこからか、患者さんと看護士さんの会話が聞えて来た。「どうですか。お変わりありませんか」と看護士さんが尋ねると、なんと、その患者さんは「もう、股関節は痛くなくなったんです」と嬉しそうに答えた。「あら、それはよかったですね」と看護士さんが歓声を上げた。

 その後すぐに先生がやって来ると、「もう全然痛くないので痛み止めは要らないです」と言った後、「リハビリはどうすればいいですか。1週間に1度通っていたのですが、やめてもいいでしょうか」と尋ねた。すると、先生は「すぐにやめてしまうと、痛みが出ることがあるので、少しの間は続けた方がいいでしょう」とアドバイスした。患者さんは先生がそう言うならと、素直に従うことに決めたようだ。

 このような患者さんの生の声を聞いたのは初めての経験だった。周りの誰もが「整形外科で診てもらったところで、全然よくならないよ」と口を酸っぱくして言うものだから、ほとほと嫌気がさしていた。なので、整形外科は骨折以外の症状は治らないものだと決め付けていた。ところが先日偶然聞いてしまった患者さんの声は「痛みが消えた」と確かに言っていた。そんな人もいるのだと内心訝しく思ったが、それでもそういう人もいるのだと言う事実を知ったことで、幾分か救われた気がした。

 さらに驚いたのは、その患者さんは股関節に痛みがありながらも、日々のウォーキングは欠かさなかったことだ。看護士さんとの会話によると、「だいたい一日に9千歩で、少ないときには5千歩ですかね」と平然と答えるものだから、看護師さんは「そんなに!」と仰天していた。もう昔のことだが、私が歩くことが大好きだったころ、電車でしか行けないと思っていた街にも平気で徒歩で出かけていた。その時の万歩計の数値は2万1千歩で時間にすると、約3時間半だったが、少しも疲れを感じることなく楽しかった。

 普通、人は痛みがあったら歩くことが嫌になるものだと思っていたが、その患者さんは違った。「痛くても歩く」をモットーとし、疑うことなく実践していた。今の情けない私もその人と同類だったはずなのに、悲しいことに、私は歩けなくなって、外を歩くことが怖くなった。家の中を歩こうとしたら、左足が痛みで床につかない。足の裏のどの部分でやっても鋭い痛みが襲ってきて、床に足が付けない。足が付けないということはバランスが取れないということで、そうなると歩くことなど考えられない。私は知らなかったが、その時の私の左足は骨折していた。そんなどうしようもない足で、いったいどうやって近所とは言え、徒歩で10分かかる整形外科に行けたのか、全くもって不思議としか言いようがない。

mikonacolon

 




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