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ついに隣室に入居者が

何故か緊張してしまう桐原さん

 今回は市営住宅に住む知人の桐原さんのことを書きたい。以前にも書いたが、桐原さんは市営住宅に入居して3年目に住んでいる8階の理事を経験した。ただ単に、自治会費を毎月集めると言う簡単な仕事かと思いきや、実際にやってみると皆のお金を集めること自体が至難の業だった。中には自治会費のことなどすっかり忘れていて、催促のメモが玄関ポストに入っていたら、まるで条件反射のように慌てて持ってくるという強者もいた。だが、今では桐原さんはやっと理事の重圧から開放され、羽を伸ばして平穏な日々を送っていた。

 そんなある日、玄関のインターホンが鳴り、出てみると、隣室の807号室に今度越してくるヒロタですとの返答があった。その時は何のことだか考えがついて行かなかったが、ドアを開けてみると、初老の男性が立っていた。数日後に隣室に越してくるとのことで、今日は一応ご挨拶に伺いましたとのこと。手に持っていたヨックモックのお菓子を差しだされ、「今後ともよろしく」と言われる。「あのう、ここの市営住宅って、音って響くんですかねえ」と聞かれて、桐原さんは一瞬ドキッとする。実を言うと、桐原さんが住んでいる部屋の隣室の807号室はずうっと空室だった。桐原さんが3年前越してきて以来、入居者がいなくて、それだからか、桐原さんもずうっと空いたままだと勝手に思っていた。

 桐原さんの部屋の右隣は高齢者の男性がひとりで住んでいて、ほぼ音を出さないで静かに暮らしていた。左隣の807号室が開いたままなのを良いことに、桐原さん夫婦はそれこそのびのびとやりたい放題に暮らしていた。桐原さんはともかく、桐原さんの夫は毎晩晩酌をして、いつも酔っぱらって大きな声を出す。桐原さんが”演説”と呼ぶ長々とする独り言もいつものことだ。酔っ払いと言うのは、周りのことなど一切構わないので本当に始末が悪い。桐原さんが「やめてください」とたしなめても、いっこうに意に介さない。文句を言えば言うほど、状況はわるくなるだけという悪循環に陥るのがいつものことだ。

 隣に越してくるヒロタさんを目の前にして、桐原さんは「うちは今までやりたい放題だったので、これからは気を付けます」と本音を漏らすと、ヒロタさんは苦笑していた。ご丁寧にお菓子まで持って挨拶に来るのだから、常識がある人と言っていいだろう。昨今はマンションでも、市営住宅でも越してきても挨拶に来る人など滅多にいないのだから。それに、桐原さんが住んでいる市営住宅でも、昔から住んでいる人のお宅はちゃんと表札を出しているのに、最近は表札を出していない人がほとんどだ。1階にある郵便ポストでさえ表札がないのだから、住人の苗字さえもわからない。もっとも昨今は防犯のためにはその方が安心だと皆が思っているようだ。

 桐原さんが住んでいる市営住宅の棟は昼間はもちろん、夜間もとても静かだ。桐原さんは朝が早いので夜9時には布団に入る。この間など、夜の静寂の中で、聞こえてきたのは、8階の住人の高齢者の女性が何やらぶつぶつと言っている声だった。なんと、彼女は通路で、黒光りする害虫のGと格闘していたのだ。「死ね、死ね」などと言っている声が響き渡って、何だかぞっとして寝ようとしても眠れない。彼女は決して怒鳴っているのではないことはわかっている。何の変哲もない呟きでさえ、校内放送のごとく、大きく拡散されてしまうのだ。このことはある意味とても怖いことだ。昼間は外の騒音にかき消されて音は漏れないが、夜間はほんの囁き声でさえも拡散されてしまう。これは他人事などではない。ご用心、ご用心と肝に銘じなくてはならない。まさに”人の振り見て我がふり直せ”である。

mikonacolon




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