
無限ループに嵌ったような毎日
私の毎日のお楽しみはプールで50分歩くこと。5月にプールに通い始めた頃は、足が腫れて痛かったので、15分歩くだけで精一杯だった。プールから上がろうとすると、皆から、「もう帰っちゃうの?」と怪訝な顔をされていた。そんな私が7月からは後先考えず、歩く時間を2倍の30分に増やした。それまで帰りのことを考えて、歩くのをセーブしていたが、蓋を開けてみたら、15分でも30分でもその後の足の痛みは変わりがなかった。なあ~んだ、それならやれるところまで、限界までやった方がいいのではないかと思い直した。そうなると、次第に欲が出て、あと5分だけ長くやって見ようと挑戦をするようになった。30分が、40分になり、やがて、45分になり、現在では50分歩けるようになった。プールの水の中ではスムーズに歩けるが、陸に上がれば魔法が溶けたように元のポンコツの足に戻る。まるで、シンデレラの豪華な馬車が元のかぼちゃに戻ってしまうがごとく。
なぜ、50分歩くのかというと、もうこの辺りでいくら何でも変化が欲しいと思ったからだ。外科クリニックの先生に水の中ではどんなに無理をしてもかまわないが、地上では無理は禁物だとくぎを刺された。私が階段の昇り降りに挑戦してみたいと話したときのことだ。情けない話だが、1月に歩けなくなって以来、階段の昇り降りをしたことがない。なので、駅の階段などは私にとっては難攻不落の絶壁のように思えて、恐ろしくてならない。幸運なことに、駅にはちゃんとエスカレーターやエレベーターが設置されているので、なんとか在来線の電車や新幹線にも乗れる。足が不自由になったので、お盆や年末年始の帰省も半ば諦めていたが、案ずるよりも生むがやすしとはこのことだ。嘘のような話だが、足が不自由な私でも、立派に家に帰って来られるのである。何も悲観することなどないし、足にけがをしたからと言って、嘆き悲しんでもいられない。
足に怪我をした当時の私は、病院に行きさえすれば、すぐに治ると楽観していた。最初の先生の話では、関節液が止まれば、骨折した骨は3か月で自然に元に戻ると言う診断だった。だが、3か月経っても関節液は止まらず、全治3か月は夢と消えた。それどころか、通院3カ月後の診断は、「前より悪くなっていますよ」とのふざけた話で、目の前が真っ暗になった。考えてみると、あの頃が私にとって最悪の事態で悪夢に悩まされた。病院を替わっても、普通の人は関節液が1週間で止まるのに、私の場合は、2か月もかかった。やっと、軟骨骨折の治療が始められると喜んだが、そう簡単に足の痛みは消えてくれない。最初に受診した整形外科の先生には全治3か月と言われたので、7月から数えて、9月には治ると楽しみにしていたのに、何の変化もなかった。そうなると、いくら何でも、10月にはなんとかなって欲しいと神様仏様に祈りたくもなる。だが、さっぱりダメで、どう贔屓目に見ても、良くなっているとはいいがたい。
さて、今このブログを書いているのは11月の終りで、足の具合はどうかというと、思ったよりも良くなっていない。ときどき、「あれ?」と思う瞬間もあるにはあるが、すぐにいつもの足に戻ってしまう。アンデルセンの童話で、マッチ売りの少女がマッチを擦って炎が燃えている瞬間に見るような儚い夢と同じようなものだ。3週間に1度外科クリニックに通っているが、正直、先生に「その後どうですか」と聞かれても返答に困る。たいして何も言うべきことが見つからない。毎日通っているプールの話題しか話すことがないのである。「まあ、筋肉が付くのには時間がかかりますからねえ。焦らず気長に続けましょう」と先生にいつも言われる。まだ、足が治るのに、だいぶかかるらしい。
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