
考えも及ばなかった事実に唖然
今秋の旅行先にポーランドを選んだ私にとって、今の最重要課題は、ガイドブックをどうしようかということだった。大型書店には「中欧」とひとくくりにされたものはあるにはあるが、クラクフやワルシャワなどの主要都市の地図は残念ながら載っていない。旅に現地の地図は必須で、自分が今どこにいるかを知らないで行動するだなんてことは、目が見えないのと同じだ。どうしても地図が欲しいと思った私は、もはや電子書籍しかない地球の歩き方の「チェコ、ポーランド、スロヴァキア」を探そうとした。大型書店に無いのなら、何処か町の小さな本屋、といっても、今はどこも閉店してしまっているが、そんな本屋ならもしかしてあるのではないかとふと思った。
そう思ったらもう止められない、その勢いのままに近所の小さな本屋に出かけ、地球の歩き方のガイドブックがズラリと並ぶ棚を見つめた。幸いにも他の人は誰もいない。すると、その中に「クロアチア スロベニア」と書かれたものがあったので、迷わず手に取った。それらは普通はひとくくりにされている国だったので、それなら当然ポーランドもあるはずと、シリーズの目録が載っている巻末のページに目をやった。一通り見てみてみると、あった、「チェコ ポーランド スロヴァキア」は確かに出版されていた。となれば、そうだ、書店で注文すれば手に入るかもしれない、そう思ったら一気に胸が高鳴った。手に取った「クロアチア スロベニア」のガイドブックを持って、そのままレジに行った。レジにいた店員さんに、「あのう、本って注文できますか」と尋ねると、嬉しいことに「在庫があれば、できますよ」と言ってくれる。
巻末のページを見せて、「チェコ ポーランド スロヴァキア」を指さし、この本が欲しいんですけどと言う。「ちょっと待ってください」と言いながら店員さんは、パソコンで何やらカチャカチャやっている。その時の私は期待に胸をときめかせ、ドキドキしながら待っていた。だが、悲しいことに、店員さんの答えは「どうやらその本は在庫がないようで、しかも21年に出版されたのが最後で、今後の予定はないようです」とのつれないものだった。仕方がない、諦めるしかないか。
そう思ったら、前日にネットで見た、ヤフーの知恵袋というサイトを思い出した。そこには「私の行きたい国は“中欧”とひとくくりにされていて、情報が細切れでしか載っていないので、何冊もガイドブックを買わなければならないのですが、どうにかなりませんか」と言う質問だった。それに対するベスト回答は、「何冊もガイドブックを買うなんてお金の無駄ですよ。図書館で借りれば、費用を節約できます。私はいつもそうしています」というもので、これを読んで私は雷に打たれたような衝撃を受けた。
なぜなら、私の頭の中では、旅行のガイドブックと図書館がどうしても結びつかなかったからだ。考えてみれば、確かにそうだ、図書館に行きさえすれば、絶版になった貴重な本だってなんだって、見つけられるだろう。要するに、図書館で借りて、必要なページだけ、印刷して利用すればいいだけのことなのだ。まさか電子書籍を購入して、膨大な情報量をダウンロードするなんてことは想像するのも嫌だった。
家に戻り、パソコンで公立図書館サイトを検索してみると、地球の歩き方シリーズはすぐに見つかった。最新の20~21度版は貸出中で、4名の予約者がいたが、19~20年度版は誰も借りていないので迷わず予約した。おそらく翌日には取り置き中のメールが送られてくるはずだ。ついでに最新版も予約して、首を長くして待つことにする。正直に言えば、私はガイドブックを借りて、お金を節約したいのではなく、できる事なら自分のものにしたいのが本音なのだ。だが今はそれが叶わないので、ない物ねだりをしている場合ではない。
それはさておき、こんな場面で図書館が役に立つとは、夢にも思わなかった。図書館なんて、あんなの役立たずで、何にもならない、とばかり嘯いていた以前の私はもういない。公立図書館の効用は果てしなく、奥深いなあとつくづく思う。まさに図書館はおそるべしなのである。
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