
あんなキャベツ、初めて食べた
先日私は近所にあるスーパーの総菜コーナーで何かよさそうなものがないか探していた。いつもは通り過ぎるのに、その時はなぜかいつもとは違う味が食べたかった。こんな時はたいてい失敗するとわかっていたのに、それを承知で何か一つ買おうとしていた。陳列台にはホウレンソウとベーコンの炒めものや、ゴーヤチャンプルーなどがあったが、それは問題外でスルーした。すると、すぐそばに「肉みそキャベツ」のパックがあって、新商品のラベルが付いていた。肉みそは大好きなので、どうしようかと迷った。肉みそキャベツのパックの中をまるで透視能力でもあるかのようにじっと見つめると、はて、キャベツが固そうで、しかも白っぽい。キャベツ本来の黄緑色がどこにもない。さらに凝視すると、キャベツが何だか、やたら薄っぺらくて、まるで紙か何かのように見えて来た。「これは本当は紙なんです」と言われたら、ほとんど信じてしまいそうになるくらいの薄っぺらさだったから、困惑することしきり。
キャベツが食べてみたら固いのは間違いないが、まさか、食べられない訳はないと思い直した。普通ならそんな肉みそキャベツは願い下げで、まさか買おうなどとはも思わない。だが、この時の私は、298円の肉みそキャベツを買わない選択は考えられなかった。真実を追求したいという好奇心の方が勝っていた。つまり、私が観察した通りのものかどうかを知りたくてたまらなくなったのだ。騙されてもいい、失敗してもいいと覚悟して、レジに行って会計した。さて、家に持ち帰り、早速パックの蓋を開けて食べ始める。キャベツのざく切りの上に、肉みそが乗っている。まずは肉みそをから食べる。普通に美味しい。次はキャベツで、白っぽく、薄っぺらい葉っぱを口に入れて、噛もうとすると、あれ、噛めなくて歯が滑る。まさしく、紙キャベツ、噛もうとしたって、味がしない。
これはどうしたことか、野菜の青臭い匂いも味もしやしない。これは本当にキャベツなのかと疑いたくなった。これではまるで、野菜じゃなくて、人工的に作られた加工食品のようだ。我慢して二口、三口食べた後、「そうだ、電子レンジでチンしたら、少しは柔らかくなるのかも」と思いついた。これで少しは食べられるかもと期待したが、無理だった。それで、肉みそだけでも食べようと思ったが、なんたることか、肝心の肉みそが熱で溶けてすべてパックの底に散らばって、掬えなくなってしまった。
そうなって初めて、ようやく私はこの肉みそキャベツがどんな惣菜なのかを理解した。つまり、パックの中に入っていたのは、生のキャベツのざく切りで、その上に肉みそが乗っているだけ、それだけの簡単な惣菜だった。私は勝手に炒めものだとばかり解釈していたが、それはとんでもない誤解だった。「もう金輪際買ってはいけない」という戒めのために、パックを取っておいたが、それをよく見ると、「500wのレンジで2分加熱」という文句がラベルに書いてあった。要するに、今流行りの電子レンジで作るレシピかなんかのような総菜だったのだ。なるほど、単なる「あたため」ではキャベツはいっこうに柔らかくなるはずもなかった。
スーパーに押しかけて「まるで紙のようなキャベツだった」と文句を言いたくなったが、ラベル通りに加熱しなかったのかと言われたら返す言葉がない。なんとも不甲斐ないが、私の予想は当たっていた。目視だけでだいたいのところは察しがついたので、透視能力はなくてもこれぐらいは見た目で判断できたことが嬉しい。
それにしても、お惣菜は出来上がっていてそのまま食べられるのが当たり前だと思っていた私には今回の経験は青天の霹靂だった。とうとう総菜を買った客に電子レンジで調理させる世の中になったのか、と呆れるばかりだ。となると、消費者もぼんやりとはしていられない。正直言って、最近はスーパーの総菜の味に飽き飽きして、ほとんど買わなくなっていた。総菜に期待することなく、作り置きの料理のレシピをもっと増やしたい。
mikonacolon