
アウシュビッツについての情報に出くわす
今年も泣いても笑ってもあと1カ月になった。カレンダーを見ていたら、そうだ、来年のを買わなきゃと思った。早速本屋に飛んでいくと、入ってすぐのいつもの定位置に犬や猫だの、風景だのと言った様々な種類のカレンダーがハンガーに掛かっていた。私のお目当ては風景のもので、一瞬で目を奪われるような、それでいて、いつまでも眺めていたいような写真が載っているカレンダーが好みだ。理想とは裏腹に、現実は滅多にそんな素晴らしいカレンダーに出会うことはなく、いつも妥協して、それなりの物を買ってくる。今回買ったのは、『日本の美しい風景』というタイトルのもので、日本の四季の良いところをこれでもかと表現している写真が満載だ。まるで、絵ハガキにでも使われているような、綺麗すぎる写真に違和感を感じざるを得ないが、まあ、いいかと自分の気持ちに折り合いをつける。しかたがない、なぜなら他のカレンダーの写真はなんだか、パッとしないのだから。じっくり選んだ割には、少々不満が残ったのは、今使っているカレンダーと比べると、サイズが一回り小さいことだ。ざっと見てみると、どれもサイズが小さめの物が大半だから、どうしようもない。
とにかく、『日本の美しい風景』を買うことにして、レジに行く前に単行本の棚を見に行く。すると、益田ミリさんの新刊本を発見し、早速手に取ってパラパラ捲る。本のタイトルは『あちこち、旅巡り』だったかなあ、そんなようなタイトルだったと思う。いくつかの章に分かれていて、ミリさんがこれまでに行った日本のみならず、世界の国々を旅した際のエッセイで、私がついこの間訪れたポーランドのクラクフやワルシャワについても書かれていた。
ミリさんは50歳になった記念に、クラクフとワルシャワを巡る6泊8日のツアーに参加した。それが2019年のことで、その旅行記によると、クラクフではアウシュビッツ収容所を見学して、亡くなった人々のたくさんの靴やカバンの山を見て絶句したと言う。家に帰れると疑わなかった人たちの運命を思うとやりきれなさが募り、暗澹たる気持ちになる。つまり、ミリさんは私と違って、アウシュビッツの建物内に入って展示物を見学できたのだと、私は推測した。正直とても羨ましい?と言うか、貴重な経験ができたことに、嫉妬を覚えずにはいられなかった。もっとも、ミリさんはアウシュビッツ博物館直属のポーランド人の日本語ガイドの人によるツアーに参加したのだから、私とは違って満足できたのは当然なのかもしれない。
アウシュビッツ博物館のサイトには英語のガイドツア―ばかりで、日本語は滅多にない。だが、実際に行ってみると、そのガイドさんも建物内には立ち入ることなく、敷地内にあるいくつかの掲示板の前で長々と説明をしているだけだった。私が勝手に思うのは、おそらくもっと前に行っていれば、満足のいく結果を得られたのではないかということだ。ずうっと昔にもアウシュビッツに行こうと計画したことがあるが、列車が夜行しかなくて、断念した。要するに、パリから行くのには時間的に無理があり、かと言ってわざわざ飛行機で行くと言う選択肢は頭の隅にもなかった。アウシュビッツは第一の目的地にはならず、機会があったら、ついでに行く場所でしかなかったから。私は見るべき価値のある歴史的瞬間を見逃した、というのが最も正しい見解だと言っていい。
まさか、ミリさんの本を読んで、アウシュビッツの記述に出会えるだなんて、夢にも思わなかった。ミリさんが訪れた2019年と私が行った2024年の秋と、何が一体全体違うのだろうかとも、そんな事を考えても意味がないのに、自然と自分の中でそんな疑問がじわじわと襲って来る。それとも、ガイドツアーで見学したとしたら、何かが決定的に違っていたのだろうか。今も謎のままである。
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