
お得感に釣られて会員登録に挑戦
昨日の日経の夕刊に載っていた岸本葉子さんのエッセイ『人生後半はじめまして』を読んで、思わず膝を打った。そうなのよねえ、その気持ち、わかると共感の嵐が鳴りやまなかった。岸本さんは夜になってトイレットペーパーが切れそうなのに気が付いて、自転車でドラッグストアーに駆け込んだ。ついでにと洗剤やゴミ袋などを買ったら、3千円近くになった。すると、店員にアプリに会員登録すると、何パーセントかの割引になると言われた。そう言われてみれば今登録した方がお得な気がしたので、QRコードにスマホをかざして、やり始めた。その時は簡単に済むと思っていて、メールアドレスや住所、氏名までは良かったが、パスワードの設定が上手くいかなくて、時間がかかった。大文字、小文字を入れたり、文字数の設定もあり、なかなかOKが出なかったからだ。
やっと登録が終わったとホッとしたら、今度は「メールアドレスに認証コードを送りました」とあり、今までのは仮登録で、本登録はこれからするのだと知らされて戸惑いは隠せない。要するに、どうしてこんな複雑な操作をレジ横でやる必要があるのか理解できない。確かに入力には手間取ってはいるが、本来ならこうした操作は自分の家でゆっくりしたいと内心思った。冷や汗が滴る中、「あのう、時間がかかりそうなので、もう割引は無くていいですから」と店員に言うと、「あと少しですから、頑張ってください」などと励まされる。どうしても、客にアプリの会員登録をさせたいらしい。仕方がないので、何とか会員登録を完了して無事解放された。
アプリの会員登録で、精も根も尽き果てた岸本さんは、店を出る時、店員に呼び止められた。まだ何か用があるのと訝しく思ったら、何と肝心のトイレットペーパーを忘れていたという落ちが付いた。傍から見れば、笑い話だが、私には岸本さんを笑うことなどできない。私は常日頃から、何にでも会員登録が必要で、それにはパスワードという面倒なものの作成が付き物だということを苦々しく思っているからだ。私の場合はまだいい、店頭ではなくて、自分の部屋にあるパソコンの前にいるからだ。ネットで商品を買おうとするときも、会員登録をしないと、門前払いされる。それが世の常なのだが、会員登録すればいいと思っていたら、とんでもない。今の時代には私が知らないシステムが五万とあって、例えば、高島屋にはペイジー登録というものがある。それが一体全体、どういうものかわからなかったので、試しに規約を読んでみると、要するに高島屋専用のクレジットカードしか使えないのだ。万事休すで、その瞬間に興味を失くす。
私がいつも買い物に行く近所のスーパーはTカードが使えるが、店に貼ってあるポスターは、アプリの方がお徳だと宣伝している。確かにTポイント、現在ではVポイントだが、200円に1ポイントしか付かないので、たいしてポイントが貯まらない。だからと言って、スマホのアプリを積極的に使おうとは思わない。その理由はというと、やはり現金主義からそんなに簡単には抜け出せないからで、変化を嫌う性格も大いに影響している。こうした消極的な態度は今の時代にあってはいないのかもしれないが、自分が唯一安心できるやり方で生活しているので、時代に取り残されるという不安はあまりない。それにスーパーを利用している人たちも皆現金を使っているので、たいして疎外感も違和感も感じないでいられる。
正直言って、時代に合わせて、キャシュレスを実践したいという気持ちもなくないが、果たして、混乱して面倒を背負い込むのではないかという危機感がぬぐえない。要するに、自分の平穏な日常に厄介事を持ち込みたくないだけなのだ。キャシュレスはお徳だというだけで、飛びついて、迷路に入り込み、途方に暮れることだけは避けたい。
mikonacolon