昨日、ぶつかった。根本凪と私の人生が。
ついうっかり、キモスタートをきめてしまった。乱されずに日記を書こうと思う。

LWP vol.4というライブに行った。出演者は清竜人25と礼賛。個人的にうれしい組み合わせだった。
清竜人氏は私がまだ高校生の時にTSUTAYAで適当に借りた旧作アルバム10枚1000円キャンペーンでランダムに借りた、『MUSIC』というアルバムを聴いて以降ずっと好きなアーティストである。彼の「所属する」という表現が適切なのかわからないが、アイドルグループの存在ももちろん知っていたし、再結成ライブはまたと無い記念だと思ったため、実際に足を運んだ。2階席から眺める豆粒のような彼らが聞き馴染みのある曲を聴くことができただけで、私は本当に満足だった。
私は女性アイドルグループに明るくないため、彼女らメンバーの経歴などは知らない。それでも、彼が作る新規の楽曲が聞ければ嬉しい、という程度のライトな付き合い方であったため、特定の人物に入れ込むようなことはなかった。しかし、MVを見ていく中でその歌声に惹かれ、彼女のことが薄ぼんやりと気になっていた。
30分ほど遅れて物販に向かう、既に撮影済みチェキだけを買うつもりで列に並んだのだが、つい口と財布のひもがゆるみ清竜人氏と、前述の理由から根本凪氏、両名のチェキ券を1枚ずつ買ってしまっていた。
チェキ券とは、アイドルと2ショットが撮れるという、恐れ多く、意味不明なシステム。必要がない。この世のどこにも自分の写真など、必要がないのに。
何事も経験だ。と言い聞かせながらも、じわじわと後悔の念が波のように襲い来る。正気でいられるわけがない。物販列を後にし、その足で銀だこハイボールののれんをくぐり、チェキ券に書いてある「返金不可」という文字を睨みながらレモンサワーと翠ジンハイを胃に流し込んだ。
そわそわしながらスマホでXを開き「チェキ 怖い」「チェキ コミュ症」で検索をかける。あまり参考になるつぶやきは見受けられない。物販の時間に間に合わない人たちが代行購入なんてやり取りをしている。7000円を取り戻せるのなら、声をかけてみようかとすら考えた。咀嚼がおざなりになり、たこ焼きの熱で舌先を火傷した。自分が招いた事態で恐縮なのだが、この先のライブも楽しめる気が全くしなくなってしまった。
礼賛はラランド サーヤ氏がボーカルを務めるバンドである。才能と行動力とセンス溢れる同い年の女性が堂々と、歌唱するさまを下からぼおっと眺め、あきらめがついた。主役だ。気高けえ。あと川谷絵音がつるつるで驚いた。
不勉強で申し訳ないのだが、私はアイドルグループを前から5列目ほどの近さで見るのが初めてで、大層驚いてしまった。歌を歌い、飛び跳ね、目を離すと方々でメンバー同士イチャついたかと思えば、私の前方わずか4~5mほどの距離からまっすぐこちらを見つめ、微笑みかけてくれる。今振り返っても絶対に私の顔を見て、うなずいてくれていた。誓ってもいい。整った容姿の女性がステージを目いっぱい使い、駆け回る。眼球が足りない。それだけでなく、Spotifyのon repeatがもうわかったよというほど私の耳にねじ込んできた楽曲たちを大音量の生歌で提供してくれる。これがプロのアイドルのパフォーマンスってことなのかよ。私は彼女らの放つ眩いきらめきに充てられ、眉と目じりが垂れ下がり、口角が上がり切って、思わず両手で口を押えながらその場でアイドルを浴びていた。えらく滑稽な姿だったであろう。
中でも一際視線が奪われたのが、先述の彼女であった。名前を出すのももう、なんだか恐れ多い。
きゅるっきゅるのつやっつやでキレのある伸びやかな歌声。短く切り揃えられた髪を揺らし、ぴょこぴょこ飛び跳ねながら一瞬一瞬で切り替わっていく表情。おい、聞いてねえぞ、わしゃ出来のいい写真集見てんのかい。楽曲が切り替わると、雰囲気が一変、前髪を乱しながら、艶っぽく、しなやかにその小さな四肢を駆使し、全身で表現を行う彼女に私は見惚れてしまっていた。(その間、Xで見かけ、ブックマークを押した彼女のグラビア写真が脳裏にチラついたのは言うまでもないが)ともかく、自分と同じ生き物とは到底考えられないほど可愛らしい。
このあと?会うの?私と?根本凪が?意味が分からない。
終演後、慣れていますよという顔をしながら係員の指示に従い彼女のチェキ待機列に並ぶ。さっきまでステージ上で視線を集めていた彼女らが私たちと同じ高さに立っているにもかかわらず、誰一人悲鳴を上げていない。代表して私が金切り声をあげてやろうかと思った。場慣れしすぎてるんじゃないか?当たり前じゃないぞこの状況。
1人、また1人とみなが写真を撮り終え、根本凪と私の物理的距離が近づいていく。冷汗が噴き出る。どうやらみな思い思いのチェキに納めるポーズをリクエストしたうえで、係員が写真を撮り、チェキが出てくるまでの十数秒、会話を楽しんでいる模様だ。一体全体何を話すんだ。それに、私から根本凪に指示していいポーズなんて一つたりともあるか。アンタは棒立ちでいい。美しいよ。撮り終わったファンは涼しい顔をして別の待機列に並んだり、出口に向かったりしている。どうして誰もハアハアしていないんだ。
直前で頭が真っ白になった私は前に並んでいた人のポーズをパクリ、二人で一つのハートを作るテンプレみたいなリクエストをした。今思い返しても記憶の中で自分が発した声は無音なのだが、彼女は「もちろんだよ」と返してくれたことだけは鮮明に覚えている。私は、伏し目がちで今日の公演で自分がいたく感動したことと、貴女が目の前に実在していることが信じられないという話を、早口でした。はずだ。あまり覚えていないし、思い返すと変な声がでそうになるくらい恥ずかしいのだが、係員に立ち退きを命じられている最中も「楽しかったかい」と聞いてくれた彼女に「はい、また来ます」と答えたことだけは覚えている。
記述するまでもないが、彼女にとっては何百、何千人と交流してきたファンの一人とのなんてことのない瞬間だったであろう。ただ、私にとっては違う。私が彼女からもらった時間がそうであったように、何度も反芻し、宝物みてえに大事にしまって、たまに取り出しては眺めて元気が出るような思い出を、たくさんの人に提供してきたんだなと思う。その魅力で。彼女がこの日、わたしと一つのハートを作るに至るまで、築き上げてきた血の滲むような努力を続けてきたのであろう。すげえよ。わたしも、いつか、誰かにとってのそんな存在になりてえよ。
深夜に差し掛かろうとしているにも関わらず、蒸し暑さが抜けない渋谷を早足で歩く。煌びやかなラブホテル。飛び交う外国語。道のわきに山積みになった酒瓶。帰りの電車が停車するホームまで、一直線に歩ききった私は、大きく呼吸をし、カバンからそっとチェキを取り出して眺めたが、まだ、現実味がない。

脳内で記憶の定着や処理が一通り済んだのか、昨日の経験や感覚を書いておきたくなったため、今こうして文字を打っている。
行き場のなく、まとまりのない思いをこねまわしてぶつけてしまいました。ほんとうにありがとうございました。
また、必ず会いに行こうと思います。