今年6月ごろから仕事を3つかけもちしている。
仕事を増やした理由はいくつかある。今年度はとうとう娘も受験生なので、土日のお出かけや旅行は我慢の一年。そんな状況で私だけ週末どこかに遊びに行くというのも忍びなく、それならば働こうと思ったのだ。
そして、これが一番大きな理由なのだが、メインでやっているデザインのお仕事が、しんどくなってきたのである。
こう書くと仕事や会社自体が嫌になったように思われるかもしれないがそうではない。デザインの仕事は基本一人ぼっちだ。この7年、ずっとひとりぼっちでパソコンの画面に向かって仕事をしてきた。
そうなってくると、私の話し相手は他ならない「自分自身」ということになる。この環境は、気楽と言えば気楽で、人間関係に悩まされるということは皆無だった。
私は仕事中話相手がいないので、この数年間ずっと自分と会話をし続けてきた。その結果どうなったか。
うるさいのである。
誰が?自分が、だ。
もうね、自分の心が、鬱陶しいの。こいつほんとに、ごちゃごちゃ常にいろんなこと考えてるし、ちょっともう自分の相手するの疲れたの。黙れよって。
そんで、とりあえず自分と対話し続けることから逃れて他者と関われる仕事をしたい、自分以外の人と話したいと思って、仕事中に求人サイトを見ていたら見つけたのが「エレベーターガール」もとい「JRAエレベーター操作業務」である。操作業務って言われるとなんだか技術者みたいだが、要は「上へ参りま~す」という、あの仕事である。
これだ!と思った。まず仕事が土日限定なので今の仕事にも影響はあまり無い、そして制服がすごく可愛い。しかも時給高くて家から近い。早速私は面接予約を入れた。その際、年齢で落とされるかな、とは思った。が、よほど人が足りないらしく、大半のスタッフが女子大生という中で、今年44のおばはんはエレベータ操作係に合格することができた。
採用面接の際、動機を聞かれて
「(デザイン仕事はずっと一人で作業しているので)人間と会話したいと思いました」
と、オデ,ニンゲンスキ,ミンナト,ハナシタイ、みたいなおまえは山から初めて降りてきた怪異かよっていうコメントをして、社員さんを怖がらせたので不採用かと思ったが、この「人間と会話したい中年女性」がちょっと面白かったらしくて、女子大生の間では「3つも仕事してる人間と会話したい奇人」が入ってきたらしいと、いろんな女の子に噂されているとかで、皆から話しかけられて嬉しかった。
そんなこんなで始めた競馬場のお仕事だが、これがけっこう、楽しい。
ものすごい早朝出勤だし、ハイヒールで立ちっぱなし、広い競馬場内をあちこち移動するし、施設案内から馬券購入まで覚えることも多く、体力をかなり消耗するので大変なんだけど、それこそ色んな「人間」に出会えるので毎回飽きないのだ。
そして何より、阪神でレースが開催される期間の場内の活気。空気が揺れるような人々の歓声、躍動する馬たちの美しい筋肉。
その空間に身を置くのが、すこぶるわくわくするのである。勤務内容のことはJRAの約款で書けないことも多いが、基本業務が「馬主・芸能人等特別来賓受付、エレベーター案内、花束贈呈など」なので、普通に生きていたら会えないような人たちとのやりとりがメイン。誰に会ったとかそういうのは絶対口外してはいけない。

※写真はドラマ「ロイヤルファミリー」の一場面より、馬主条件のほんの一部。
よくあるエレベーターガールの基本「上に参りまあす」だけではなく、他にもJRAの裁決員という重要な責務を担う人達だけが乗る専用エレベーターでの業務など緊張感のあるものや、勝ち馬エレベーターなどエレベーター操作と一言に言っても実に様々。また、一緒に働くエレベーターガールたちの顔ぶれも総勢50名程いる(全員が常時出勤するわけではない)ので毎回色んな女性と話せるのも嬉しい。まさに人間と話したい怪異の願いが叶ったわけである。とはいえ、お客さんの中には荒ぶるおっさんたちも多いので、それなりに毎度傷ついてへとへとになる。実際仕事を始めたばかりの頃は帰宅してからあまりにも疲れて床に倒れこみしばらく立ち上がれなかったし、勤務先でも緊張してご飯も食べられない事が多かった。
あとは3つ目の仕事、これは友達がオーナーをしているカレー屋さんの従業員。これはこれでまた色々あって書きたいことが沢山。
月から金は基本的に印刷会社でデザイナーやりつつ週一ぐらいでカレー屋さんの朝番やってから印刷会社に昼から出勤、土日は競馬場。週5どころの騒ぎではない、週8で働くという意味不明な週もある。
今年は、とにかく働こう。もう文化的な活動なんてくそくらえだ。文章なんて書かない。だいたい、文学なんか自分と向き合う最たるもので、そんなことしてたら頭おかしくなりそうやわ。これからはごちゃごちゃ考えるのやめて、肉体労働する。バカみたいに忙しく毎週土日も働いて、もう物を書いたり考えたりすることやーめた!ふぁっきん文化人しぐさ!
……って、思ってたのに。
また、今年も結局小説を書いてしまった。さすがに時間がない、しんどい、って思ってたのに、書くことがやっぱりやめられなくて諦められなかった。ばかだなオデは。でももう賞が欲しいとかそのレベルじゃないの、負け惜しみではなく。そこの域に自分は居ない、それはわかったけど、それでも挑戦したいと思ったからやっただけ。最早わたしの目標は単勝1位ではない。それはサラブレッドとルメールに任せておけば良い。大穴も大逆転も狙わない。老人ホームでも「あのおばあちゃん、小説の新人賞目指してるんだって」って介護士さんに言われてたりしたら良いな、って思う。
と、色々やってるけど、今年は娘の高校進学に向けての環境作りが最重要タスクだ。土曜日は競馬場の仕事よりも、高校見学に同行することを最優先。今日も娘と一緒に、志望校の入試問題説明会へ行ってきた。明日はエリザベス女王杯で競馬場。
12月は阪神競馬場開催でG1が3つもあるし有馬記念もあるから気合いを入れて乗り切る。そして1月の京都金杯を最後に、3月までは仕事をデザインだけに絞って、とにかく娘と自分の体調管理を優先する。来年の阪神開催桜花賞は、桜咲くで笑顔でいられますように。