8/10(土)夜の部
エリザベート:愛希れいか
トート:井上芳雄
ルキーニ:成河
ルドルフ:三浦涼介
少年ルドルフ:加藤憲史郎
この日は今季のエリザでチケット取れた中で一番理想に近いキャストだったので期待はしていたんですが、期待以上の素晴らしい舞台、神舞台でした!!!!
●井上トート
存在感が良い意味で薄くて、歌は上手くて響くのにキャラクターをあまり感じなくて、その分フランツとシシィの「生きた人間」としての感情が浮き彫りになってとても良い。
井上トートは、愛希シシィ、田代フランツ、涼風ゾフィー、ソンハルキーニという、感情豊かな生きた人間達と頭のネジの吹っ飛んでいる狂人の間にあって、凪のように静かで影のように目立たず、歌い出すと「いたんだ!!?」とそこにいることにようやく気づくようなキャラの薄さ、それが他のキャラとのバランスを舞台全体で見てとても「ちょうど良い薄さ」。
「死」の擬人化としてハマっていた。あれはトート、概念としての死だった。
キャラクター、性格、感情をほとんど感じなかった。シシィの鏡だった。
シシィが死にたいと思った時に誘惑してくる「死」であり、
最後にはシシィに自由を与える「死」。
それまで黒い衣装で現れていたトートが、最後にシシィの前にハイネのような白い服で現れた時、ああシシィにとって死は悪いものじゃないんだ、自由を与えてくれるものなんだ、死は悲しいけれど悪いだけのものではないんだ…と、井上トートを見て今日初めて思った。死には感情も善も悪もない、死には善も悪もない、自分の中で「死とはそういうものだ」としっくりと腑に落ちた。
あのトートを全て意識的に演じているとしたら、井上芳雄さん、すごい役者だ。彼の舞台は何度も見てきましたが、その演技にこんなに衝撃を受けたのは初めてでした。
●愛希シシイ
21世紀のシシィって感じ。
19世紀後半の物語を演じているけれど、現代的で、自分自身と自分の人生を探して、迷い悩みながら手探りで生きた。
愛希さんが主役の「エリザベート」は、そんなシシィの一代記だった。
前半は実年齢に相応しく若々しく、生命力に溢れ可愛くて。
一幕最後の鏡の間…本当に綺麗だった。実際に美しかった。説得力がすごい。
そして二幕の老いていく演技。どんどん声を変え、姿勢を変え、輝きを褪せさせて。グランドホテルのグルシンスカヤで自分より一回り以上歳上の女性を見事に演じていたので、愛希さんならきっと老齢エリザも上手に演じてくれるだろうと思っていましたが、期待通りでした。
井上トートのことを「最後にシシィに自由を与えた、良くも悪くもない存在」だと感じられたのは、それまで愛希シシィが積み重ねてきた人生を見せてもらっていたから。
シシィはフランツと幸せな人生を送ることも出来たはずだった。田代フランツが「譲り合おう」と言った時、譲り合えば良かった。けれど愛希シシィは「わかりました、貴方は敵だわ」と返してしまった。あそこから全てのボタンが掛け違ってしまった。
夜のボート、今まで、シシィの「いつか互いの過ちを認め会える日が来るでしょう」という言葉、今まではシシィに対して「そうは言ってもあなた自分に悪いとこあったとは思ってないよね?」と思っていたけど、今日の愛希シシィは、本当に自分にも悪いところがあったと思っているように感じた。
●田代フランツ
田代くんミュージカルに来てくれてありがとうな…本当に…ありがとう…ッ!!!(目頭を押さえながら)
まりおフランツなんか2016年よりまた更に良くなってない…!?動きが表情が…!!何より姿勢!!姿勢!!もう姿勢だけでこの人はロイヤルだってわかるの!!なんて貴重な人材!!もう皇族王族貴族系の役はとりあえず全部まりお君をキャスティングしておけば間違いないよ…歌がうまくて演技も良くて歌が上手くて演技が良いよ…まりおフェルゼンも大好きだったけどまりおフランツ…好き…これもう多分恋だと思う…舞台の上でまりおくんが演じる貴人が…好き…(告白)
まりおフランツと愛希シシィ、めちゃめちゃ両想い…出会った時の目線の交わし方、相手に惹かれる様子、動きにも台詞にも説得力と自然さがあって素晴らしい…
まりおフランツはシシィのことを本当に愛しているし、愛希シシィは「私の人生は私のもの」が思うに至ってそう発する言葉…本物…素晴らしい
●成河ルキーニ
白髪を見つけられた時、エリザが「イヤアアアアアアア!!」って金切り声を上げますよね。それに続けてソンハルキーニが声真似して同じ高さで「イヤアアアアアアア!!」って繰り返して吃驚しました。あれ初めて見た…2016年より更に皮肉と毒が強くなってた…
闇広終わった後に出てきたテンションどうしたの…すごいハイテンション
その後ラストまで始終テンションと動きの緩急のつけ方が一幕以上に凄くなってた。
シシィを刺す前の裁判官とのやり取りでの怯えたような態度、刺した後の胸を張って堂々と歩く様。更なる進化、完全に頭が壊れている。ネジの飛んだ発狂者。
エリザを刺した後のソンハルキーニ、ウィキペディアのこの写真を意識していたんじゃないかな…

これより更に大きく胸を反らせて、目はまんまるに見開いて、視線は上向き、機械仕掛けの人形のように早足でジグザグ歩いて…チャップリンの映画のようだった…HASSの道化ヒトラーと印象が少し似ていた
悪夢、一人だけ舞台から半分はみ出て階段に腰をかけてて、ルキーニ一人だけ「額縁の外の人」感が視覚的にもくっきり。ルキーニは枠の外の人だった。舞台上の比重が、ルキーニ一人とその他全員で同じくらいだった。ソンハさんは一人でその他全ての世界くらいの重さになれるのか。どんだけ大きいんだ。
舞台上の世界の全ては、現実にあった出来事なのかもしれないし、ルキーニの頭の中の妄想なのかもしれない、とも思えた。
ルキーニのせいで境界があやふやになって、歪む世界で迷子になって頭がクラクラしてしまう。
ルキーニは狂言回しなのか、それともあの世界の全ての作り手なのか。
この日の「エリザベート」は、シシィの一代記であると同時に、狂人ルキーニの物語でもあった。
少女シシィが生きて老いて死んでまた少女に帰る物語が始まって終わった一方で、
ルキーニが捻れた時空でぐるぐると泳ぎ回る物語だった。
●原マックス
愛希シシィと原マックスの父娘もすごく良かったんですよ…山育ちのおてんば娘と、そんな娘を可愛がって愛情を持って見守っている父親感がひしひし…特にシシィが嫁入りした後のマックスとゾフィーのデュエットや、舞踏会の場面での原マックスの動き…観客が全員退場する最後まで舞台上手に残って、下手のシシィとフランツの方を心配そうに見つめていて…ルドヴィカに腕を取られて引っ張られて退場しながらも、最後までずっとシシィの方を見てた。パパ????!!泣
そんなやり取りを見ていたので、コルフ島でマックスパパにもう一度出番があったことを本当に嬉しく感じました(魂だけど)
パパ、シシィが心配で、魂になっても見守ってくれてるんだなあ、とか
シシィもほんとにパパが大好きなんだなあとか
そして二人は似た者同士だったんだなあとか
コルフ島の場面はいつもあまり心が動かないんだけど、この日はパパとシシイの再会ややり取りにぐっと来て、前のめりで見ていました。各場面の充実度や存在意義も役者さんによるんだなあ…。
●涼風ゾフィー
ゾフィーは香寿さんの方が好きかなって前季は思ってたんですが、この日の涼風ゾフィー良すぎて…歌は上手いし表情良いし動きも良いし歌が上手いしどうなっているんだよ…なんか…「ゾフィーって実際生きていた時こんな感じだったのかも」って思ったから相当良かった。
ゾフィーは、2015~6年のエリザベートでは
剣さん=「母」
涼風さん=「女」
香寿さん=「正義」
という印象だったんですけど、
この涼風ゾフィー、この3ゾフィーの要素の全てのいいとこ取りして、しかも歌はハイパー上手い「真・ゾフィー」みたいな存在だった。帝国のことを憂慮し、正しく守ろうと奮闘し、フランツには厳しく接し、でも孫のゾフィーを抱いた時に見せた微笑み…!!母性!!そして二幕の老女の演技!!哀愁と疲れ!!くたびれ!!寂しさ!!折れた心!!何もかも良かったんですけどどうしたんです!!?!涼風さんこんな役者さんでした!!?!進化しすぎていてびっくりした!!
●全体の印象
時間の経過をちゃんと感じさせる演技が素晴らしかった。
一幕では颯爽としていたまりおフランツの老いの演技。声は枯れ、小さくなり、背中は曲がり、若干身長も縮み。
シシィもゾフィーもそれぞれ歳を重ねてから出てきた時に「歳をとった」と感じた
その中で、ずっと変わらない姿でいるトートとルキーニの異様さが、時間が経つにつれ際立ってきて、二幕その歪みがどんどん大きくなって、どんどん面白くなってきて鳥肌が立った。
特に二幕後半、皆老齢になって動きもゆっくりヨボヨボ、声もテンションも低めになっている中を、ハイテンションでイキイキしゃかりきに舞台を駆け回るソンハルキーニの異様さが凄かった。
クンツェさんに今日の舞台を見て欲しかった…
クンツェさんが脚本を書いた時にイメージした舞台は今日の舞台のような内容だったんじゃないかと、そんな風に思える舞台だった。
8/23(金)夜の部
エリザベート:愛希れいか
トート:井上芳雄
ルキーニ:山崎育三郎
ルドルフ:三浦涼介
少年ルドルフ:加藤憲史郎
愛希シシィ・井上トート・田代フランツの組み合わせの最終回だったので、見納めるならこの日だと思っていました。大正解でした。
●井上トート
この日の井上トートは今まで見た中で一番素晴らしいかった!!!!!
最後のダンスはショーストップレベルで感動。
井上芳雄にとってやはり「エリザベート」は特別だし、「エリザベート」にとっても井上芳雄は特別な人なんだと感じた。
最後のダンス、ボルテージ最高潮、あんな芳雄見たことない、芳雄エクスプロージョン。爆発!!エリザに向けたニターッとした笑みに気持ち悪ッ!!(良い意味で)
体操室でも気持ち悪く笑ってて凄く良かった。
最後のダンスも凄かったけど、闇広がまた凄かった…「この曲は俺の曲だあああ!!!」と言わんばかりのど迫力。すごい気合い!!!
好きになるキャラじゃなくて、見ていて圧倒的にハプスブルクに肩入れはしちゃうけど、井上トート素晴らしい…観客に嫌悪感を抱かせる為の突き抜け!
●愛希シシィ
パパみたいに?バートイシュルの場面の愛らしさ、子供っぽさが更に増してるー!!声の出し方を更に幼くした?もー可愛くて可愛くて!!動きもかわいー!!
田代フランツと二人ともバートイシュルの演技が細かくて、台詞のない動きだけど惹かれ合う様子がわかるの可愛い。
●田代フランツ
まりンツの帝国の臣民になりたい…(号泣)
バートイシュルでエリザの手を握る直立まりンツの前のめりぶりが可愛い。前のめりンツ。一幕のまりンツ、絵に描いたような颯爽とした格好いい好青年で、恋に落ちずにいられない!!大好き!!!
…だからこそ、二幕でだんだん小さくなっていく様が胸に痛くて…背丈が縮んでいるんですよ…背中が曲がって足腕も曲げて、小さく小さくなっていく演技…どんどん思い通りに動かなくなっていく、老いる身体…幸せならいい、幸せならそれでいいけど、愛する妻とすれ違って、苦しみながら更に身体も若く健康なものから老いて不自由になっていくその姿がもう…
そして悪夢の場面では、そんな不自由な身体を必死に伸ばして、全力でエリザベートを助けようと…まりンツ???!!!!泣泣泣
フランツにソロがないのおかしくない?何故まりンツにソロがないの?
作って!!リーヴァイ先生!!!
ゾフィーにすらソロ曲増えたんだからフランツもー!!
●三浦ルドルフ
悪夢の場面で…舞台の真ん中で苦しむフランツに向かって…這いつくばって…トートダンサーに行く手を遮られながら…必死に手を伸ばしていて…お父さんを助けようともがいていて
ル…ルドルフーーーー!!!!!(号泣)
更にルドルフの後ろにゾフィー様の後ろ姿もあって
ハ…ハプスブルク家ーーー!!!!(号泣)
●剣ゾフィー
2015年に見た時より進化してるー!!
2015年には「母性」しか感じなかったけど、今日は「正義」も感じた!!やっぱり柔らかく優しい雰囲気が漂っていて「厳しさ」は感じられないけど、前はしっくりこなかった一幕もしっかりハマって感じられて、歌も声も好きで大歓喜!!
剣ゾフィーに「正義」属性が付いたおかげで、母子と夫婦と嫁姑、全員正しいし言い分も気持ちもわかる、ああ誰も悪くない…ッ!!という三つ巴のもどかしさを感じられて凄く良い!!2015-6年では香寿ゾフィーでしか感じられなきゃいけなかった絶妙なバランスになったー!!
剣ゾフィーに「毎朝5時きっかりに全て始めるのよ」と言われると「そうですね貴方がが正しいです!!」と思わず毎朝4時起き頑張らなきゃと説き伏せられてしまう力、これですよ!!女官になりたくなるやつ!!これですよ!!!剣ゾフィーの胸に飛び込みたすぎる!!
「その通りですごめんなさいお義母様ーッ!!」って泣きながら胸に飛び込むので抱きしめてヨシヨシして欲しい!!
剣ゾフィーお母様に「わかったならいいのよ、明日から頑張りなさいね」とか頭撫でながら言ってもらえたらシシィ翌日から毎日4時に起きてHAPPY END!!!
●山崎ルキーニ
ソンハルキが良すぎたので育ルキちょっと不安だったんですが、2016年より良くなってた気がするー!!歌も良いし演技もルキーニとして無難だと思うし、100点満点できっちり100点のものを見せて貰えました。何の不満もない!!いっくんありがとう!
ソンハルキは存在感が大きすぎ情報量が多すぎて、舞台を見ていると視覚情報を脳が処理しきれなくて時々パンクするという弊害もあるし、育ルキの方が周りの人達の演技を見る余裕もできる点は良いかも。
育ルキ:登場人物の1人で、狂言回し、ちょっとトンがった皮肉屋のストーリーテラー
ソンハルキ:あの歪んだ世界の生みの親、創造者、舞台はすべてルキーニの妄想、実は1人舞台だったのかもしれないと思わせる正体不明の化け物
という印象。
主役はエリザだけど、座長は井上トートという印象。
井上トートという屋台骨がどっしりしっかりあって、他の役者がその胸を借りてどんどん良い演技を繰り出していき、舞台全体が上昇気流を巻き起こしているような良い舞台でした!
ツイッターで呟いた感想を編集したので、文章に統一感がなくてすみません。