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静謐で、丁寧で、苦しみも喜びも正確 - ドラマ『#アンメット ある脳外科医の日記』

今季はやたら沢山ドラマを観ているが*1、4月期の連ドラでイチオシなのが『アンメット ある脳外科医の日記』(フジ/カンテレ、月10)と『燕は戻ってこない』(NHK、ドラマ10/火10)の2作である。『PICU』の時にも書いたが、飛び道具的な展開が現実味の無い医療ドラマより、静謐で蕩々とした医療ドラマの方が好みだ。『アンメット』は脳外科医という花形と思われがちな科*2を舞台にしながら、その背景にある正確な診断学と、繊細な手術技術を静かに描いている。杉咲花の喋り口がここまでぴったりだとは思わなかった。若葉竜也ぶっきらぼうさも、脳外科医としてリアリティが強くてよい。

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背景とか

主人公たる川内ミヤビ(演:杉咲花)は1年半前に自動車事故(自損)を起こし、直近2年間の逆行性/順行性健忘、エピソード記憶障害を抱えた脳外科医だ。一時は看護助手*3として働いていたものの、若葉竜也演じる同じく脳外科の三瓶がアメリカから帰国してきて、脳外科医としての道に引き戻される。三瓶はミヤビの脳損傷が記憶障害と不釣り合いであることを指摘し、記憶障害に隠された事件が少しずつ露わになってくる。

 

原作は子鹿ゆずると大槻閑人による共作で、現在も『モーニング』連載中。原作者の子鹿は実際に脳外科医であり、神経所見や診察手技が正確なのも頷ける。ミヤビを主人公にするのはドラマ版独自の展開だ(原作者の子鹿も面白がっているのでこれは見事な翻案であろう)。

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地味な仕事の積み重ねこそ医療である

コード・ブルー』やら『ドクターX』に憧れる皆様には申し訳無いが、医師になって最初に気付くのは事務仕事の多さと地味な鍛錬の連続である。脳外科医であるミヤビにとって、それはマイクロ(=顕微鏡手技)でちまちまと結紮練習することであり*4、決して派手な緊急手術を繰り返すことではない。


このドラマでひどくリアルだなと思ったのが、第1話(失語症となった女優)や第2話(AVM→脳出血半側空間無視になったサッカー強豪校の高校生)で、患者たちのリハビリ風景を主軸に据えたことだ。これはミヤビ自身も事故の後遺症である高次脳機能障害(ミヤビの場合は記憶障害)に苦しんでいることがきっかけと思われる。実際、神経の病棟において(脳神経外科、内科問わずで)*5、転院を含めたリハビリの調整は業務上大きなウェイトを占めている。……が、急性期治療を主軸にした作品ではなかなか描かれない部分だ。

 

このドラマはどこか積み重ね、というものを重要にしている気がする。第6話以降のミヤビは、三瓶と共に抗てんかん薬を調整して記憶が1日しか保たない現状を打開しようとする。薬を増やして記憶できる時間が延びたミヤビは、新しく積み重ねた記憶を噛み締めて生きるのである。そう言えば脳外科医として手術に復帰する前、ミヤビはひとりひたすらに結紮の反復練習に取り組んでいた。短期エピソード記憶が損なわれていても、手技の手続記憶はどんどん向上することを示した三瓶も、隣でまた積み重ねを支えた人物である。オペ看として傷を負った津幡師長にも、傷を乗り越えるための症例を積み重ねさせた。

 

(どうでもいいがミヤビの抗てんかん薬がペランパネル; フィコンパ[PER]単剤というところはちょっとリアリティに乏しい。フィコンパはとてもよい薬なのだが、元々の適応は他剤で効果の乏しいてんかんであり(KEGGも参照)、併用が前提の薬であった。ラコサミド; ビムパット[LCM]の方が単剤での承認が通って長いので、現実に即している気がするが、まあ世迷い言である)

 

このふたりがこんなにぴったりだとは

原作のミヤビ、三瓶のイメージとは少し異なっているが、とはいえ杉咲花若葉竜也の演技はとてもよい。杉咲花の、優等生そうに見えるがどこかでちょっと諦めているあの感じは、記憶障害という制約を抱えてしまったミヤビの表現としてとてもよい。

若葉竜也ぶっきらぼうさは、病院の中に住み込んでしまうほど仕事バカな三瓶をよく表している。なんと言うか、ふたりとも、原作とはやや異なっていても、とてもよい(語彙力が無いが)。

 

脇を固める吉瀬美智子(津幡師長)、千葉雄大(救急部長/星前)も、緩急が効いている。綾野を演じる岡山天音が、どこか諦めたような演技が上手いのは言うまでもないが、それがミヤビの諦めと丁度対比になっている。井浦新は『光る君へ』で権力に狂っていく姿を見た後では、(今のところ)欲も無く穏やかそうに見えていてギャップがよい(もっとも、西島財閥との懇親会を見るに欲が無いわけではなさそうだが)。

 

この先の話、そしておしまい

原作でも描かれているが、この先は西島がミヤビに執着する原因、そしてミヤビの事故の真相が明かされることになるだろう。ドラマよりも先に展開が知りたい人は是非原作を買ってみてほしい。原作の巻末には、ミヤビの学び直しと称して、脳外科知識の解説が付いていてよかった(医学的にも大変丁寧で正確であった)。

第7話はJアラート発出もありイレギュラーな放送となっていたが、各地で再放送予定が組まれたようだ。TVerでは最新話が1週間配信、Netflixを契約すれば第1話から見放題となる。こちらも合わせてどうぞ。そう言えばサントラもいいね。

 

関連:アンメット ある脳外科医の日記 / 杉咲花 / 若葉竜也

*1:録画して沢山観ている、『アンメット』の他にも朝ドラ『虎に翼』、大河ドラマ『光る君へ』、ドラマ10『燕は戻ってこない』(『天使の耳〜交通警察の夜』を観ていたので引き続きドラマ10も)、民放だと予告で何か結末が気になってしまった『Destiny』と、『イップス』である

*2:実際には急患も多ければ、長時間の手術も多くかなりタフな仕事だ、筆者は出身大学も相まって余計にそう思うが

*3:この設定は原作でもあったが、『となりのナースエイド』が放送されたばっかりだったので不思議な重複になっていた。色々言われていたが、このドラマはコメディとしては面白かった(それもあって『イップス』を観ている)。☞

*4:これが内視鏡外科ならば、マイクロが内視鏡に取って代わって、それでいてほぼ同じ手技である。はたまた小児科であれば、暴れる小児の細い血管に点滴ルートを取ることになったり

*5:そう言えば神経内科がメインのドラマはあんまりないなあ。ぱっと思いついたところでも、『フラジャイル』の宮崎せんせーの前職神経内科というくらい。診断学をメインに据えてみても面白そうなのにな。……いや、神経内科診断学が難しすぎるし、治らない病気を沢山診断していく辛さがあるから、ドラマにならないのか……blog.goo.ne.jp - 調べたら『1リットルの涙』がヒットしたけど、やっぱり筆者は岐阜大の下畑先生だった。神経内科関係で検索して、丁寧だなあと思ってよく見たら大概下畑先生。




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