自分はテクニカルライティングを体系的に教わったことがない時代の人間です。あっても学部生のときには興味はなかったでしょう。恐らく。
一応、修士まで出て会社に入りましたが大学院で論文指導というものを受けたことがありませんでした。入院中(←このいい方は昔いた数学の先生からの受け売りです、大学院に入ることは入院だと😁)は論文っぽいものを自己流で書いて発表する程度でした。学会活動といっても学内や北大とかで開催された研究会発表で発表するくらいで学術誌に投稿した経験はありませんでした。その後、社会人博士課程で濃い指導を受けましたが。
なので、卒業研究があったとしても学部卒だとあまり文章指導を受けないことの方が今でも多いのではないかと想像します。レビューとかどれくらいあるのかなぁ?院進するなら指導してもいいと思うくらいじゃないでしょうか?先生方も忙しいでしょうから。いまだと生成AIにチェックしてもらうことは十分に可能でしょうけどね。
今年は卒研発表会が1月10日と早まっていまして、今、発表用の予稿原稿(A4一枚をレジュメと呼んでいます)の作成と発表資料の作成をしてもらっています。明日が年内最後のゼミですが。。。
このレジュメ作成では、テクニカルライティングっぽいものを指導しているつもりです。会社に入ってそういう訓練を受ける機会があるのかわかりませんが、大学で卒業研究したという証?として、技術文章をそれなりに考えて書いた経験をして欲しいし、今後何かを書くときにも気をつけて欲しいと思い指導してきました。それが意味があったかは卒業生に聞いたことがありませんのでわかりませんけど。自己満足かもしれません。
とりあえず研究成果がまとまったあと、レジュメを作成し発表資料を作っていきます。レジュメで自身の研究を言語化するわけですが、そこで説明のストーリーの軸を決めてもらいます。そこがブレると発表資料もイミフになるためです。これまで個人的なメモ(半分愚痴)をここに何度と無く記録してきました。
レジュメを添削するのですがだいたい5往復くらいします。それでやっと完成する感じです。ゼミ生はだいたい10名くらいです(今年は11名)ので、1人にかける時間は限られていますが、とりあえず添削してきます。全員に同じことを言うのが面倒になりチェックリストを作って「読んでね♥」と伝えます。が。。。読んだかどうかわからないような結果になります。読んだのかもしれませんが実行できないのですね。。。
で、現在、11名中4名が完走しました。まだ半分も行っていません。。。明日がゼミ内締め切りだというのに。。。待つしかありません。
どんな指導をしているのかちょっと書いてみます。こんなことしてたなぁ。。。と自分であとで読みたいかも?と思ったので、です。
第1稿

上記に対するコメント(Slackでコメントして返します)
タイトル
- OK
1章
- 句読点が間違ってます
- 服装選びの困難さが伝わりにくいです。
- 困難さは、開発したものの意義がスッキリ伝わるように対応づけて述べて欲しい。
- 服装選びで「天気・気温」を考慮だけでは選択肢は狭まらない大変→既存手法:SNS参考、でも自分の服ではないので考える余地がある→本研究では、服装履歴を使って提案するシステムをつくる。具体的には〜で「本システムは」以降を接続する。
第2稿

上記に対するコメント
タイトル:「服装履歴を活用する」
1章
- 日々の服装選びの問題点として、①気象条件、②同じ服を続けてきないの2点がある。
- ①については、SNSやコーディネートアプリもあるが気象条件が考慮されず、かつ所有服ではない問題がある。
- ②については、服装を記録するシステムも提案されているが、提案機能がない問題がある。
- 自動撮影機能 → 服装記録機能
- Flaskによるお記録機能 → パターンマッチングによる連続着用防止機能
2章
- 2.1 は基本は削除で、2.2の説明を2.1にして、ハードとソフトウェア機能を一体化した図にする。
- ユースケースが2つあるので、同じ図で2つのユースケースを説明する(記録と提案)
- 体言止めは「する」とかで終わって下さい。
- 提案機能の内訳を説明して欲しい(一覧のソート順がどうなっているのか?そこから除外処理がはいるはず、その順で説明する)
2.3.1
- Detectron2の製造元の名称をいれる
第3稿

上記に対するコメント
1章
- 句読点の誤りがあります。
- 「服装と気象条件を記録し 」 所有服にした方が前の文と関連性が強まります
- 「現在の気象条件に近い日の過去の 」近い日の、が気になります。
2章
2.1
- Detectron2 ですが、説明の内容はいいですが、前から読んでくると唐突で出てきた感があります。しかもこれだけ短いのであれば節として独立させなくてもいい感じです。それと何のためにこれを導入するのかがわかりません。2.2にいれるか?図があれば順番にもっと必然性が出てくるはずです。
2.2
- やはり図がないと。。。文章としての適切さがわかりません。
- 「ユーザが一覧から既存の服を選ぶ方法と,新しく撮影して登録する方法の2通り」 これらをあとでワードとして使いますよね?キーワード化しておくと読む方も書く方も楽なはずです。ユースケース1、ユースケース2でもいいですし、一目でわかるように、過去ケース、新規ケースとかにするかでしょうか。
2.2.1
- 「自動的」はなくてもいいかな。機能の説明なので。どういうアルゴリズムかを説明する文です。
2.2.2
- 同じような説明ですが、たぶん、図は別々の部分を指し示すのでしょうね。やはり図を先にかいてから説明を考えた方がリーズナブルです。
2.2.3
- 天気はいるかな。。。ここから気象情報をもってきた、くらいの記述がどこかにあれば十分な気がする。
- それより、Detectron2で何をどう処理しているか?の方が気になるけどなぁ。説明して欲しい感じです。
- 図は2.2の下におくべきでしょうね。
- どういう順番で書いてあれば読みやすいかを考えることです。
2.3
- 「類似度が高い 」とは具体的な数値は?
残りもどんどん書きましょう。
第4稿

上記に対するコメント
2章
- 図1を同じ仕組みのものは同じ見え方になるように再配置する
- RaspiとWebの手段を図の中に書き入れるといいかも。色分けするとか。凡例いれる。
- 個別に切り出す(所有服から学習モデルを構築した)とかいれて
- OpenCVの説明をいれる。
- 「Detectron2 により抽出した衣服画像の特徴量を用いて,過去に登録された衣服とのパターンマッチングを行う.類似度が 0.85 以上の場合,その衣服を直近に着た服と判定する.」を実際にやった流れで説明する。上下それぞれのマッチ度を見るという印象で説明しないと誤解になる。上だけでも下だけでも連続着用になる。
第5稿

上記に対するコメント
2.1
- いきなり①とかから説明が始まっているのはちょっとやさしくない印象があります。もし文字が入るなら、こういう説明をする、ということを宣言してから始めた方がよい印象です。
- 図はとても見やすい(見比べやすい)と思います。ただ、凡例が印刷したときに見えるか。。。そこはちょっときになります。見えればいいです
2.2
- 細かいことをいうと、節のタイトルが既に機能名であるのに、「同じ服を続けて着ることを防ぐため「連続着用防止機能」を提案する. 」というのはちょっとおかしい気がします。早く本題にはいれよ、という感じです。
- 「抽出した衣服画像の特徴量は 」とあります。特徴量には色々な量があります。これと後述の類似度判定との関係が希薄です。わかるように書いてください。
3章
- 「筆者自身 」は著者がで十分です。不要な言葉は削除する。
- 「10日間 」には何年何月何日から◯までなどと書くと具体的です。論文はいつ読まれるかわかりません。1回あたりのシステムの使用時間なんかもあってもよいかもです。10日間 はそれぞれ1着ずつかは示した方がよいかも。あとのために。
- 5日間も1日あたりの回数があってもよいかと。その結果、「2日のみ」の意味がわかりやすくなるかもしれません。5回の提案のうち2回はという意味だと思いますが、誤解する可能性があるように思います。◯月◯日の2日と読まれる可能性はあるかもです。難しいところですが。
- 採用しなかったほうを議論していますが、まず採用した方を振り返った方がよいと思います。なのでこの図ではもったいないので、よかった場合と不満だった場合の例を2つ左右に示すとより説明が豊かになると感じます。
- 「概ね 」とか「大部分 」という言葉は研究者は嫌います。つかう場合ももちろんありますが、もし定量的に示せるのであれば示す努力はして欲しいです。
いろいろ書いていますが、内容的にはほぼゴールだと思います。読みやすくする工夫のレベルです。頑張って下さい。
第6稿

上記に対するコメント
はい、よいと思います。少しスペースが空いていますが特に追加はなくてよいかと思います。おつかれでした🎉 プレゼン資料作りに入ってください。
おわりに
以上です。
とても勘(と要領)のいい学生です。コメントの意図をくみとって反映してくれますし反映した内容も想像通りです。頭がいいです。いい企業に入ったみたいです。企業で活躍するでしょうね。
Geminiに上記のPDFとコメントを投げて、指導の適切さについて評価してもらいました。今の時代こんなことまでできるんですね。。。ふりかえりです。(言い訳ですが)指摘されたところは気付きましたが「余白(余力)」を残しておくことも大事かな、と思ってます。あと一歩は将来、独り立ちしたときに自分で改善して欲しいというところです。単に僕の体力がなかったからかもしれません。
プロンプト
これは学生に書かせた卒業研究発表用の予稿原稿です。1から順に6までで完成させていきました。それぞれの原稿に対して以下の指示をしました。指示の適切さを評価してもらえますか?もっとこういう指導をしたらよかったなどあればお願いします。
Geminiの回答
ご提示いただいた指導内容と、それを受けて修正された原稿(1〜6)を拝見しました。
結論から申し上げますと、非常にきめ細やかで、学生の思考プロセスに寄り添った素晴らしい指導だと感じました。特に、論理の飛躍を埋めるための具体的な指示や、図と文章の整合性を重視する姿勢は、卒業研究の指導として非常に適切です。
以下に、指導の適切さの評価と、さらに踏み込むならどのようなアドバイスがあり得たかについての私見をまとめます。
1. 指導の適切さについての評価
- 「問い」と「解決策」の対応付け(原稿#1, #2) 「天気・気温だけでは選べない」「自分の服ではない」という課題から、「服装履歴(所有服)を活用する」という解決策への接続を促した点は、論文の論理構成(ストーリー)を構築する上で最も重要な指摘です。
構造化とキーワード化の促進(原稿#3, #4) ユースケースの分類(既存・新規)や、アルゴリズムの構成要素(Detectron2, OpenCV)を整理させたことで、読者がシステム全体像を把握しやすくなっています 。
定量的・客観的な記述への誘導(原稿#5) 「筆者自身」から「著者」への修正、具体的な日付の記載、「概ね」などの曖昧な表現の回避など、学術論文としての作法を徹底させている点は非常に教育的です 。
図解の重視(原稿#3, #4) 「図を先にかいてから説明を考えた方がリーズナブル」というアドバイスは、技術報告において極めて本質的です。原稿#6では、フローチャートと画面キャプチャが適切に配置され、視覚的な理解が容易になっています 。
2. もっとこういう指導をしたらよかった点(追加のアドバイス案)
さらに原稿の質を高める、あるいは学生の今後の成長を促す観点から、以下の観点での指導もあり得たかもしれません。
① アルゴリズムの核心部分の「なぜ」を深掘りさせる
原稿#6で、類似度判定に「ResNet50」と「コサイン類似度」が導入されました 。
- 追加指導案: 「なぜResNet50を選んだのか?」「なぜ閾値を0.85に設定したのか?(予備実験の結果などがあるか?)」を記述させると、技術的な妥当性がより強固になります。
② 評価実験における「不採用理由」の分析を強化する
原稿#6の3章では、5回中2回が不採用だった理由を「著者の嗜好に合致しなかった」としています 。
追加指導案: 「嗜好に合わない」の正体をもう少し分析(例:色の組み合わせが悪い、TPOに合わない等)させることで、4章(まとめ)の「今後の課題」への繋がりがより具体的になります 。
③ 図のキャプションと本文の参照を徹底させる
原稿#6では図1や図2がありますが 、本文中で「図1に示すように〜」という言及が一部に留まっている、あるいは図の中にテキストが重なっている箇所が見受けられます。
- 追加指導案: 「図は必ず本文中で参照し、図だけで内容が完結するように凡例や注釈を整備する」という指示を徹底すると、予稿としてのプロフェッショナルさが増します。
④ 用語の統一(微細な点)
「気象条件」「気温」「天気」という言葉が混在しています 。
- 追加指導案: システムが実際に利用しているデータが「気温」のみであれば、用語を「気温」に統一するよう指示すると、より厳密な論文になります。
総評
先生の指導によって、原稿#1の「やりたいことの羅列」から、原稿#6の「論理的で再現性のある研究報告」へと劇的に進化しています。特に、学生が陥りがちな「実装した機能の羅列」を「ユースケースに基づいた説明」へと昇華させた点は、発表準備としても非常に有効だったはずです。