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名前の話

日本人の名前すら、聞いた5秒後にはもう忘れているというのに、ここマサイ村での名前のハードルが高過ぎる。

聞き馴染みのない名前、そもそも発音出来ない名前、人数が多過ぎるの三重苦。

 


うちの村の人たちは、クリスチャン(イングリッシュ)ネームとマサイの名前を2つ持っている人がほとんどだ。

妹①のローズのマサイネームはジャジョという風に1人2つの名前をもつ。

なんならママ達は、子どもが呼ぶ特有の名前が別で存在するので3つ名前がある。

ロマもクリスチャンネーム以外に、ママ達が呼ぶ別の名前と、子どもが呼ぶ愛称みたいなものがある。

試しにママ達が呼ぶ名前で呼んでみたら叱られたので、何でも呼んで良いわけでは無さそうだ。

 


毎日会う村の家族ならまだしも、時々お祝い事で会う親戚の名前はほぼ覚えていない。

顔も似てるから覚えられないので、毎回「この人誰だっけな。会った事あったっけ…あれ?私の名前呼んでるって事は会った事あるのか?」と静かに混乱している。

 


同じ村に居るのに覚えられなかった「ノバーロン」。

ビビ(おばあちゃん)の娘さんの子ども。ロマの従姉妹。

何度呼ぼうと思っても、覚えられずスマホのメモに名前を打って毎回見ていた。

 


バブ(おじいちゃん)の第二夫人の息子「パッティマヨ」。

結構な頻度で会うのに、覚えられないこの名前。

顔と身長の高さがバブそっくりなので、顔はすぐ覚えたのになぁ。

 


発音出来ない「ネネヨ」。

同じ村に住んでいた女の子、2番目の「ネ」がネとレの間くらいの音で舌を振るわして出す音で、何度練習しても出来なかった。

仕方ないので「ネーヨ」と呼ぶのを許してもらっていた。

 


そして、一緒に住んでいるというのに村のママ達の名前を知らない問題。

日本でも使う「〇〇ちゃんのママ」みたいな感じで「マヌのママ」「ヤンガライのママ」「フィリのママ」で通じてしまう。

そしてママたちに挨拶する時も「ママ、スパイ(マサイの挨拶)」で通じちゃうから覚えない悪循環。

今年こそ覚えよう。

 


ちなみにロマは私のことを「モモイちゃん」と呼ぶ。

大人がよく赤ちゃんに向かって「モモーイ」と言うので、何か可愛らしいものに対して使う言葉なんだろうなぁと思っていた。

どうやらマイスイートエンジェル的な意味合いらしく、そこに日本語の愛称「ちゃん」を引っ付けて私の呼び名にしているらしい。

そうすると、桃井かおりさんはマイスイートエンジェルかおりと言うことになるのか。なるほど。

 


さて、先日生まれた妹⑥に名前がついた。

なんと私が名前を授ける事になった。

「名前考えてよ」

ロマに言われて驚いた。

「えぇ?!私が?」

猫の名前だって1ヶ月かかってつけられなかったのに、人間の名前を?私が??しかも私の子でもないのに!

「ネイマだって、コイカイ(伯父さん)と俺で付けた名前だよ。」

そういえばそうだった、ネイマ(1歳)はサッカー好きの2人がネイマールから付けた名前だった。

自分の子じゃないのに、命名権が付与される不思議。

ロマに聞いてマサイ語でもスワヒリ語でも変な意味にならないように、発音しやすい名前を考えた。

 


ついに月曜の夕方、ママと赤ちゃんの所に行って赤ちゃんの手を触って名前を授けた。

 


「ナナミ、君の名前はナナミって言うんだよ。」

 


ママと妹たちも「ナナミ」と呼んでみる。

発音に問題は無さそうだ。

意味を聞かれて、壁の向こう側にいるロマに通訳してもらった。

7番目の家族として生まれてきたから、7という数字を入れたかった事。そして、世界の七つの海のように広くて美しい豊かな心を持った人に育ってほしい事を伝えた。

ママが「素敵な名前をありがとう」と受け取ってくれたので、今日から妹⑥はナナミという名前になった。

 


ナナミのこれからの人生が幸せで健やかでありますように、名付け親からの祈りを込めて。




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