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群衆の先頭に颯爽と

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こんにちはウルカ。

 

折りたたみ式のソファーを、脇に抱えて颯爽と歩いている。

茶色の長髪を靡かせて、重量30キログラムのソファーを軽々と、涼しい顔で。

すれ違う人々の羨望の眼差しが、心地の良い電気刺激のように私につきささる。

私はこれから、脇に抱えた折りたたみ式のソファーというサーフボードで、群衆という波に乗るために、新宿駅というビーチへ向かうプロのサーファーである。

季節外れのハーフパンツを履いた私は、駅の階段を軽やかに登る。

朝から足取りの重いサラリーマンなど、おいてけぼりである。

 ホームに着くと案の定、通勤群衆という名のビッグ・ウェーブが緑色の電車へなだれこんでいる。

群衆はホームに立つ私を見つけると、私が通れるように道をあける。

私に向かって手を合わせて拝むような格好をしている女性もある。

私はするすると群衆の先頭に出ると、緑色の電車へ乗り込む。

それから、寛技師(クツロギシ)、癒師(イヤシ)、愉師(タノシ)のために設えてある優先スペースへと向かう。

優先スペースに到着すると、脇に抱えていた折りたたみ式ソファを広げる。

ごろりと横になる。

だらしなくあくびをする。

鼻をほじる。

屁をこく。

尻を掻く。

あははっはと思い出し笑いをする。

私の本業が始まった。

 

私は寛技師である。

癒師や愉師を目指したこともあったが、媚びるようなアクションにどうしても馴染めず、今では寛技師となったことを誇りに思っている。

 

寛技師の1日はストイックだ。

群衆が最も寛ぎを渇望、夢想する時間帯、そう、通勤ラッシュどき。

午前7時ごろから午前9時ごろまで、最も寛いでいる私を表現する必要がある。

この約2時間に寛ぎのピークを持っていくため、それ以外の時間は、高ストレスと呼ばれる職業現場を掛け持ち、身体と精神を苛めに虐め抜く。

そして入眠前の数時間を、この通勤ラッシュにぶつけるのである。

満員電車で揉みくちゃにされている群衆は、全身全霊で寛いでいる私を見る。

すると、あたかも自分が寛いでいるかような幻覚に没入し、誰もが恍惚と頬を赤らめる。

その幸福な表情を見ることこそが私の悦びであり、生きる意味である。

 

群衆に寛いでいる姿を見せようと思ってはいけない。

本物の感動や超自然的な現象は、想いや情感を超越してこそ、初めてスタートラインに立つことができる。

 

私は満員電車の中でソファーにごろりと横になる。

だらしなくあくびをする。

鼻をほじる。

屁をこく。

尻を掻く。

あははっはと思い出し笑いをする。

私の、本業が始まった。

 

 

 

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