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みっちゃん

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こんにちはウルカ。

 

話が途中だったな。

 

駅前の居酒屋。

ふと、店内の音楽が途切れる。

俺たちのすぐ後ろで、音がした。

ギィ、ギィギィ、ギィ、ギィギィ

振り返ると、女が、隣に座る同僚のタケに今にも触れそうなくらい顔を寄せて、剥き出した歯を軋ませている。

タケは気にする様子もなく、肴のマグロを食べてウメェェなこれ!なんて惚けている。

タケも、店内にいる人々も、この女の存在に気がついていない。

都市魍魎。

この女は、都市に棲む下級魍魎の類いで、たいした害はない。

一般の人間は気配すら感じないだろう。

俺は腰につけているタンバリンを手に取る。

ついでに説明すると、このタンバリンも一般の人間には見えない。

リアルに腰にタンバリンをつけて歩き回るほど俺は浮かれポンチではない。

さておき、俺はタンバリンを手に取ると、くるくると二回転させる。

タンバリンは光を放ち、シャリシャリと浮かれた音を出す。

それからタンバリンを女の頭にのせる。

女はギィギィと歯を鳴らしながら、タンバリンの輪をくぐり抜けるように消えた。

誤解がないように説明すると、俺は女を抹殺したわけでも、痛めつけたわけでもない。

居酒屋のテーブルにこぼれたひとしずくの醤油を、おしぼりで拭いたにすぎない。

醤油にしてみたら、テーブルの上でも、おしぼりの繊維の中でも存在場所に拘りはないだろう。

あれ、何だか今夜は説明ばかりしているな。

俺の嫌いな説明野郎になっちまうところだぜ。

隣に座るタケを見る。

ホタルイカの沖漬けに夢中だ。

コイツは直感で生きていて、自分の行動を全く説明できない。

俺はこういう奴がたまらなく好きで、羨ましい。

なあ、タケ、お前はいつまでもそのままでいてくれよな。

ガラス張りの居酒屋の扉の向こうから、俺を見ている者に気がついたのは、その時だった。

みっちゃん。

タケの彼女。

みっちゃんは怖がっているような、それでいて感情がないような、力の抜けた顔で俺を見ている。

みっちゃんは上級の魍魎だ。

上級魍魎は、一般の人間であっても、姿、存在を認識できる。

タケに初めて紹介されたとき、俺にはすぐにみっちゃんの素性がわかった。

みっちゃんには俺の素性がわからなかったようで、不思議そうな顔をしていたのを覚えている。

その事は、今もタケには言っていない。

人間は、知らない方が良い事のほうが多い。

今夜、みっちゃんは初めて俺がタンバリンを使う所を見たのだろう。

 

一瞬、覚悟を決めたような表情をしたみっちゃんは、すぐにいつもの可愛らしい笑顔になって、店の扉を開ける。

こんばんは〜

もう、タケ!飲み過ぎじゃない?

あははは、まだまだこれからよー!

そういえば、店変えたいって言ってたけど、なんで?

ああ、いいの、いいの。

私、やっぱこの店すきだわ〜

なんじゃそりゃ、まあ、いいか。

ほら、平山ちゃん、飲んでる?

明日休みなんだからさぁ、がっつりいくよー!

ちょっとぉ!タケ、唾とんだーもぉ〜きたない〜

ははは、言われなくてもがっつりいってるよ!

あははは

ははは

もぉ〜やだ〜あはは

その晩、俺たちはいつまでもそのままでいた。

 

 

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