
漫画家・細川貂々さん夫婦がうつ病と戦った奮戦記。うつ病者へのメッセージの映画化です。愉快でリアルなメセージが評判となりましたが、主演者が当時圧倒的人気大河ドラマ「篤姫」で13代将軍・徳川家定と篤姫を演じた堺正人さんと宮崎あおいさんということで人気作品となりました。
子育てで長く休んでいた宮崎さんが連続ドラマ復帰ということが話題になり、WOWOWでも宮崎あおい出演作が取り上げられています。
本作も「篤姫」と同様、“鬱病”で病む夫に気丈にやさしくに立ち向かう夫婦の話。ユーモアのある演技で、感動的な夫婦の愛の作品になっています。
ポイントは鬱に勝つための処方箋を会得することです。(笑)
監督:佐々部清、原作:細川貂々、脚本:青島武、撮影:浜田毅、編集:大畑英亮、音楽:加羽沢美濃。
出演者:宮崎あおい、堺雅人、吹越満、津田寛治、犬塚弘、余貴美子、他。
物語は、
直なサラリーマンの夫に頼りきりだった漫画家の妻が、夫のうつ病発症をきっかけに、夫婦の関係を見つめ直していく姿を描く。(映画COMより)
あらすじ&感想:
冒頭、高﨑の門札のある古風な家。朝、レコードが鳴っていて、書き捨てた漫画が散らかった部屋にイグアナがいて、はる(宮﨑あおい)はまだ寝ているが、ツレ(堺雅人)が弁当を作り、寝ている“はる”さんに「行ってくるよ」と出かける。はるは、ツレの「忘れ物」に気付いて飛び出すと、ツレがぼんやりゴミ箱を見ている。ツレはどこか悪いの?

この夫婦は結婚5年目で、妻・はるは夫をツレと呼び、弁当のおかずや、ネクタイなどいつも決まっていて、ツレはとても几帳面な人。こんな人が鬱になりやすいという。
物語は、鬱の症状や対処法を軸に展開していく。
〇ツレは、毎日ぎゅうぎゅう詰めの電車で、外資系IT企業に出勤し、苦情に四苦八苦の真面目サラリーマン。
顧客からのクレーム対応にあたっているが、対応がわるいと投書があり、上司から注意を受ける。投書した本人から「恐縮だがひとつ伺いたい。三上(梅沢富美男)だが、社長に手紙書いた、君の会社のPCの説明書が不親切、これは欠陥品だ」とツレに電話が入り「私の“たかさき”は梯子高の高﨑だ」と断りをいれて応対する生真面目な人だった。
〇はるはマンガ家、読者アンケートが芳しくなく、出版社から連載中止の電話連絡を受けるという売れないマンガ家。
はるは高校を出て就職、毎日がたいくつで東京に出て絵を勉強するがなまけもので良いものは画けなかった。が、「君には君のいいところがある」と言うツレの言葉で漫画家になった。「漫画だけ画きなさい、生活は自分が見る」というツレに守られ漫画を描いてきた。
〇こんな兆候があったら要注意!
夕食時、はるが“マンガ連載が中止になった”とツレに話すと、ツレは「食欲がない、はやく風呂にはいって寝る」というが、はるはまったく彼の様子に無関心だった。
翌朝まだ寝ている“はる”に、ツレは「弁当つくれない、何もできない。僕、死にたい」と訴えるが、はるは「仕事に疲れているんだよ、病院に行ったら、一人でゆける?」と言い放った。
ツレは医師の診断を受けた。
医者(田山涼成)から「典型的な鬱病です。心配ない、気持ちを切り替え、気分を変えることが大切。不安感など精神的なものだと考えられているが身体が痛くなる心の風邪だ」と言われた。薬を使用しての治療で、1年から半年掛かるらしい。
ツレは「鬱病だったよ~、これから会社に行く」とはるにいうが、「ちゃんと説明して」と求めた。「薬で治す、睡眠剤を飲むことになる」と説明すると、はるはすでに調べていたらしく「薬で治るの?なぜセレトニンが減ったの?」と聴き直した。鬱にはセレトニンという神経伝達物質が関係するらしい。
そんなわけで夕食はカキ料理。ツレが「これが食べられない」と言うとはるが「私の料理はどうせたべられないんでしょう」と不機嫌になる。料理が拙いのではなく食欲が無くなるようです。
就寝時、はるはツレの大きないびきで眠れない。はるが「隣(部屋)で寝て!」と言うと素直に隣に移るツレ。(笑)はるがこれを追っかけて同じ布団に入ろうとすると「今日は、その気になれない」と夫婦関係を拒否する。これも鬱症状の特徴で、コミカルに描かてれ思わず吹き出します。
夫婦で理髪店を営んでいる母(余貴美子)に電話すると、「漫画面白いよ」と言う。夫婦ではるのために読書感想を書き送っている。(笑)「来月で打ち切り、もう読まなくっていい。ツレが鬱病になった」と話すと「仕事でストレス溜っているのよ。のんびりさせたら」と返事が返ってきた。
その後、母から「鬱病には野菜をたくさんたべるのがいい」とファックスがあり、はるは野菜を買いに走った。
夕食時、ツレが「漫画書いている? 読者がいるんだから!諦めが早いのがはるさんの悪いところ」と注意し、「僕が休むと大変なんだ。自分の身体は自分が一番わかっている」と勤務を続けるらしい。
ツレは出勤途中で、気分が悪くなり電車に乗れず、洗面所で吐く。
部長(田村三郎)に鬱病であることを報告すると「君が鬱なら、みんな鬱病だよ」と信じてもらえない。(笑)
はるは骨董品屋さん(犬塚弘)で気に入った花瓶を買った。店主に「割れなかったからいまここにある。割れなかったことに価値がある」と言われ(笑)、この言葉が気に入って買った。
夜、はるはこの瓶をみて、(ツレがこわれる?)「会社やめて、原因は会社にあるんだから」と言えばツレが「みんなが困るよ」と拒否した。はるは「割れないことに価値がるのよ。会社やめないなら離婚する」と宣言した。
ツレは部長に「アルバイトにして欲しい」と申し出たが「無理」だと断られた。「仕方がありません」と辞表を出すと、平社員だから辞表でなく退職届と言われ、帰宅して、几帳面にマス目を引いて退職届を書くがうまく書けず、疲れて寝た。(笑)結局、はるが代書することになった。作業意欲が極端になくなるようです。
〇ツレは会社を辞めることに決めた!
鬱の治療法には薬療法、食事療法、精神療法があるが“最高の療法は休むこと”。
はるは“セロトニンを増やせば”としっかり納豆を食べさせた。
ツレが退職までの出勤で、またあの人からの嫌がらせ電話がくる。留守居でごまかし、仕事止めて帰宅すると気分がよくなって薬が効いてきた。
病院で、「薬で気分が良い」というと、「よくなったりわるくなったりの繰り返し」と言われ、日記をつけて鬱病を受け入れることを勧められた。
寝る時にははるに「薬飲んだ」と注意され、「心配ばかりかけて、大丈夫、本当に面倒な病気さ」と恐縮するツレだった。
会社出勤最後の日、はるも一緒に会社に出掛けた。
満員電車のなかでツレの調子がおかしくなり、はるが「よくこんなのに耐えていたね、ツレは偉いよ」と言えば「はるさんに言われると辛い!」と泣く。

会社ではまた例の人から「三上さんから、アップデートしたら不具合が悪くなった」と苦情電話が入った。この人のしつこい電話もツレの鬱原因のひとつ、辞めてよかった。
はるは同窓会の案内パンフ作りのアドバイスを依頼された。
責任者は同期生の市毛加奈子、吉田羊さんだった。こんなシーンで共演があったことに驚きです。加奈子から「私、今年が最後、離婚するから、はるさんにイラスト描いて欲しかったの」と言われ、はるは結婚式のことを思い出した。
ツレの退職の日、みなさんに拍手で送られた。病院で、いつも一緒になる患者(吹越満男)に「退職しないと離婚する」とはるに言われた話をすると「うちは退職で離婚ですよ、いいですね」と羨ましがられた。
〇ツレは会社辞めて、ぼんやり、空ばかり見ていた。
はるが「降る雪で停電になってしまえ」と呟く。はるに母から「困ったら言ってきて」と電話があり、はるは「頑張らないといけない!」と思う日々が続く。
ツレが「昼からは寝れない。申し訳ない」と泣き言を言う。はるは「ツレが会社行っていたとき、私は毎日寝ていたぞ」とゴロゴロ転がって見せた。そして「いつもこうだったの、たまには漫画かくよ!」と反省した。(笑)

ツレが「僕は、爬虫類になりたい」と言った。はるはツレの手を胸に入れ「爬虫類になったらこんなに暖かくないぞ~」と答えた。このゴロゴロするのが何ともいい治療法のようです。映画「ぐるりのこと」(2008)でも同じシーンがあります。
ツレは一か月たっても、「申し訳ない」と泣く。「元気になったら竜宮城につれていけよ」とはるは明るく付き合った。
ツレのお兄さん(津田寛治)が「ツレが会社辞めたから心配だ」とやって来て、「元気そうだな、小っちゃいころから気が小さくて。がんばれ、はるさんのために頑張らないと!」と一番言ってならないこと言う。静かにして欲しいのに土足で踏み込んでくる。これが鬱には一番悪い!
ツレは寝るばかりだった。あさ食べて寝、ひる食べて寝、よる食べて寝た。
先ほどの同窓会の招待状が届いた。はるは出かけたが、みなが楽しそうに見えて、会場に入るのを止めた。
帰るとツレが寝ていて、「天井のしみがはるに似て、ぼくは感謝している」と言い、寄り添って寝た。母が心配して「知り合いの人が鬱で自殺した、元気になりはじめが危ないんだ。天井を見てなんども泣いたというよ」と電話してきた。「ツレは大丈夫は、はるがついている」と返事した。
ツレが寝る魔法から覚めた。
「料理がしたい、好きなものが食べたい、“はる”さんが下手だからと」始めるが、野菜炒めの味が辛い!塩が多すぎ。「やっぱりだめだ」と落ち込む。この病、誰にでもかかる風邪だが、宇宙風邪だ。
母が訪ねてきて「よくなっているね、治りかけが怖いというから、そんな徴候には気を付けるんだよ」と言った。はるは「心ってなんだろうと初めて考えた。つれが鬱病になったより、鬱病になった意味は何かと考える」と返事した。母は「随分成長したね」と言う。
はるが加奈子に会うと「離婚するというのは凄いエネルギーだった。つらかったらガンバらなくていいのよ」と言った。はるは「うちの旦那は鬱、でもガンバらないと決めたの」と応えた。
〇ツレのうつは“はる”の漫画家意識を高めることになった。
はるとツレは水槽の亀をみながら、生活費のことを心配した。とにかく漫画を描かねばと出版社に出向いた。編集者(山本浩司)から、「読者の投稿ページでよければ」と言われ「ツレがうつになりまして、仕事をください」とお願いした。
漫画家の先輩から、「こんな仕事もやるんだよ」と実用書のイラストを描くようアドバイスを受けた。「ツレがうつ」と言えたことがうれしかった。これまで自分が恥ずかしくて言えなかった。「強くなるぞ」と以前とはちがって意欲的に漫画を画くようになった。
ツレは“はる”のちょっとした言葉を気にして自殺未遂!これは注意だ!
ツレは散歩途中、かっての同僚に会い会社がつぶれたことを聞き「会社、辞めてよかったんだ」と考えるようになった。
ツレが漫画を画くはるの側で「会社つぶれたよ。はるさん髪とかしたら。高﨑の字が違っている」とハイな気分でひつこく注意した。はるは「そんなにうるさく言うなら自分で会社に電話したら」と怒りをぶつけた。
これを気にして、ツレはズドーンと落ち込み、風呂場で首にタオルを巻き自殺を図ったが失敗した。はるは一心に漫画と格闘中だったが出来上がって一息、イグアナの動きがへんなので、風呂場に走りツレの異変に気付いた。
ツレが「さっきのしつこくしたことが嫌になって、・・、ぼくはここにいていいんだよな」と泣く。夫婦で抱き合って泣いた。はるは「ごめんね・・・」と謝った。
ツレは、金魚鉢の金魚をみながら、「以前は妻のために頑張ったが、いまは自分のために頑張りたい」と言った。
はるは、先輩の漫画家から、「読書アンケートは言い訳、漫画をかいてみたら」と勧められ、描き始めた。書きたいものを描くで、ツレのことを書いてみた。“描きたいことはこんな近いところにあった”と気付いた。
ツレはいまではもう「自分はなんにもできないだめなやつ、いや休むことが仕事」と観念している状態。
〇 はるはツレと一緒に結婚式&同窓会に出席し、辛かった体験を話した。
寒椿が咲き、ツレがと2年ぶりに結婚式&同窓会に参加した。はるとツレは同窓会で挨拶した。先ずツレが「ぼくが鬱病で会社に出れなかった。妻も相当つらかったと思うのですが、笑顔で支えてくれました」と挨拶した。次いではるが「夫が話したようにつらかったが、夫婦として成長しました。結婚式の誓の言葉『あなたはその健やかな時も病めるときも豊かな時もこの男性を愛し慰め・・・』のように本当の夫婦になったように思います。私のとなりにツレがいてくれてよかった」と話した。
〇はるが「「ツレがうつになりまして」」を書くことにした。
はるはツレに「自分の本を書いてみたい。鬱病の本、誰にでも罹るのに、だれも知らない私達のことを書きたい」と相談した。ツレが自分の日記を持ってきて、「参考に! 」と渡した。
ツレの日記、
「すぐ忘れる、でも隣にあなたがいる ありがとう 今日のことを笑って話せる日がくる」 、「おかあさんの野菜が届く、ぼくは電話ができない、はるさん電話してください」
この日記が、はるの脳内を駆け巡り、いろいろなキャラクターが思い浮んで、これを描いた。
ツレは「もう薬を飲まなくてよくなった」とはると一緒に大喜びした。漫画が出来上がり、ツレがマンガを管理する会社を作り出版すると沢山の応援感謝のメールがきた。

〇講演依頼に二人で参加した。つれが話し始めた。
ツレは、鬱に付き合う方法を三文字 あ と で と言い、
あ:あせらず
と:特別あつかいしない
で:できることと、できないことに差をつけない。
「これが鬱を克服する三要素です。妻は恥ずかしいことではないと言い、人はどんなときでも自分の姿を誇りにできること。生きている姿が誇りにできること。恥ずかしい、なつかしい姿すべてが誇らしいです。完治しないが、このやっかいなものと上手に付き合う、これが一番いい方法だと思います」と結んだ。
ツレは風呂場で自殺しようとしたとき“はる”さんのことを考えていた。葬式、“はる”さんにできるかなと心配したという。(笑)ツレはこれからもこの宇宙風邪につきあうことになるが、「どんな暗い夜も明けない夜はない」と語った。
まとめ:
鬱の症状、治療法がとても面白く描かれています。ということで紹介文が長文になりました。(笑)
ツレのうつの症状に合わせて、“はる”の悩み心配が描かれました。ツレはどうやって症状を回復していったか、これにあわせるようにはるが漫画家と成長していく姿が描かれました。堺正人さんと宮崎あおいさんの息の合った演技で、病気の話なのに夫婦のラブストーリーとしてとても楽しく見ることができました。
鬱は難しい病気だと言われています。ツレと“はる”のように焦らず鬱と付き合うことが大切だと思います。
ツレは、鬱に付き合う方法を三文字「あ と で」 を忘れないようにしましょう。
あ:あせらず
と:特別あつかいしない
で:できることと、できないことに差をつけない。
****