
「サマーウォーズ」「竜とそばかすの姫」などの細田守監督が手がける、オリジナルの長編アニメーション。「復讐にとらわれて死者の国をさまよう王女・スカーレットが、現代日本からやってきた看護師の青年・聖と出会い、ともに旅をする中で変化していく姿を描き、「生きるとは何か」を問いかけるというもの。
評判がよくない!
確かに映画COMの案内を読んでみて、看護師の聖はなぜ死も世界にいて、ヨーロッパの女性と旅をする。一体どんな話だ?と興味を持っていました。公開一日目、最初の上映に駆け付けるとほとんど人がいない。細田作品で今までにこんなことがあったかと驚きました。
この評判、なるほどと思いました。
かの有名なハムレット物語を下敷きに、スカーレット(ハムレット)は16世紀の世界から死者の国を彷徨い現代日本からやってきた聖と旅をする。スカーレットが砂漠で聖が唄う歌を聞きハワイアン踊りを見て、現代の日比谷で踊ったり歌ったりする自分姿に未来の自分を見て、絵の好きな自分の人生は何かを見出す話になっている。
細田監督の話は、分けも分からず異世界によくぶっ飛びます。これは面白いところでもありましたが、今回16世紀から21世紀に飛び渋谷の街でダンスが始まるとなると、なんでこんなものが出てくるのかと感情がついてゆかない。(笑)
しかし、監督が今の世界の平和を願い、貧困に並々ならぬ心を砕き、この作品を作りたかったということをすごく感じる作品でした。スカーレットが父親殺しの叔父クローディアスの復讐を止め生の世界に戻って女王となり民衆に語りかける話は今の世界に発信するにふさわしいメッセージで、日中間で起きた今の問題に対するメセージになっています。
16世紀の世界感を出すための数々の努力・工夫、CGで描く砂漠の風景やアクションはリアルに拘りこれまでの作品を越える壮大なものになっており、楽しめました。酷評を恐れず、観て欲しいとおもいます。
監督・原作・脚本:細田守、編集:西山茂、音楽:岩崎太整、エンディングテーマ:芦田愛菜、制作:スタジオ地図。
声の出演者:芦田愛菜(スカーレット)、岡田将生(聖)、役所広司(クローディアス)、他豪華メンバー。
物語は、
16世紀、オランダ王国。父(アムレット)を殺して王位を奪った叔父クローディアスへの復讐に失敗した王女スカーレットは、「死者の国」で目を覚ます。そこは、略奪と暴力がはびこり、力のなき者や傷ついた者は虚無」となって存在が消えてしまう世界だった。この地にクローディアスもいることを知ったスカーレットは、改めて復讐を胸に誓う。そんな中、彼女は現代日本からやってきた看護師・聖と出会う。戦いを望まず、敵味方の区別なく誰にでも優しく接する聖の人柄に触れ、スカーレットの心は徐々に和らいでいく。一方で、クローディアスは死者の国で誰もが夢見る「見果てぬ場所」を見つけ出し、我がものにしようともくろんでいた。(映画COMより)
あらすじ&感想(ねたばれあり:注意):
〇スカーレットは死者の国で目を覚ました。
「死者の国とは生も死も馴染まない世界。対立するものがない。現在も、未来も溶け合っている世界」と案内人の老婆(白石加代子)が説明してくれます。当初、なんでこの人たちがいるのかと、よく分からなかった。ラストですべてが明かされ、そういうことかと理解できます。(笑)
死の世界、枯れた木の根に転がっていた蝉の死骸を踏みつけて赤い髪のスカーレットが怒りの目で走り、水場を見つけて水を飲み「ここはどこだ」と苦しむ。天には巨大なドラゴンが泳いでいる。墓掘り人が「死の国だ」と教える。スカーレットは「仇討ちに失敗し死んだ」と叫ぶと、地面から「おいで、おいで」と死人の手が伸びてくる。
スカーレットがここに堕ちた理由、
父アムレットは信頼を大切にして隣国とは非戦主義だったが、野心家の叔父・クローディアスは戦争主義者で、アムレットを民衆公開の場で「恐ろしい隣国をそのままにした」と糾弾し処刑した。

母親ガート・ルード(斎藤由貴)は弱腰なアムレットを見限りクローディアスの陰謀に加担した。スカーレットは絵が好きで大学を目指しながら剣術の腕を磨き、父の仇討ちを狙っていた。晩餐会の夜、クローディアスに勧められたグラスに口をつけた。今がチャンスとクローディアスの部屋で剣を抜いたところで倒れた。
気がつくと死の国にいた。
スカーレットは案内人の老婆に「復讐する相手を探している?」と尋ねた。すると「虚無になったら会えないが、その男ならここにいる、どこかで生きている」と返ってきた。
そこにひとりの剣士が現れた。「クローディアスを知っている?」と聞くと「私は味方です、案内します」と言った。ところがいきなり「復讐に憑りつかれた女だ」と斬り掛かって来た。老婆が「ここでは斬られると虚無になる、虚無になると本当の死だよ」と諭してくれた。スカーレットは墓場から探すことにした。
〇スカーレットは墓場で傷を負った現代日本からやってきた看護師の聖に出会った。
スカーレットが「何者?」と聞くと“看護師だ”という。「ここは古戦場か地獄か」と聞くから「天国だ」と教えた。(笑)「俺は死んでいない。救急の命令を受けドクターと働いている」と言った。16世紀に生きたスカーレットに分る話でない。聖は「勤務中だから帰る」と言った。
そこに3人の剣士が斬り掛かってきた。スカーレットがナイフで戦い2人を刺した。聖は「すげえ!」と見ていた。残った一人が「コーネリウスだ」と名乗った。スカーレットは「覚えている」と答えた。コーネリウス(松重豊)が「ふたりは死んだから戦うな、すぐに虚無化する」と言った。ふたりは木の葉のように消えていった。スカーレットが「復讐しなければ終わらない」というと「無理だ」と答えた。聖が弓矢でコーネリウスを撃った。

聖は懸命にコーネリウスを治療した。コーネリウスはスカーレットの命を狙うクローディアスの側近だった。スカーレトが「クローディアスはどこだ?」と聞くと「はるかかなたのうつくしい山に階段がある、そこだ(見果てぬ場所)」と答えた。聖はコーネリウスに杖を与え返した。
〇スカーレットと聖の“見果てぬ場所”を探す旅が始まった。
スカーレットは断ったが「もう殺すな!出血すると看護師がいる」と聖がついてくる。スカーレトは聖と一緒に旅をすることにした。
赤い砂漠の中を進む。
登り坂で聖が足を巣練らせる。スカーレットが手を貸してやる。“見果てぬ場所はどこか”と音を上げ始めた。
〇ラクダの隊商が現れ、しばらく一緒に旅をした。
隊商が賊に襲われる。聖が走り、負傷者の手当をした。するとまた別の賊が現れ、賊と賊が戦う。スカーレットと聖がこの様に呆然としていると突然賊が逃げ出した!天にドラゴンが現れた。ドラゴンとは何かの説明はない!(笑)「竜とそばかすの姫」の竜だった。

聖が隊商の惨情を調べ治療に当たる。スカーレットは「虚無になった、虚無になった」と憐れむ。聖は「悲しんだってどうしようもない。何のために人は生きる。人生は何のためかを考えろ」と教えた。スカーレットは「生きているやつが考えること」と仇討ちのことしか頭にはなかった。
隊商の長(羽佐間道夫)に「感謝したい、ついてこないか」と誘われた。
オアシスがあり、沢山の天幕が立ち並ぶ隊商の露営地についた。いろいろな民族の人がいた。宿の主人(古川登志夫)に山に階段がある場所を聞くと「通行不能だと聞いている」という。
この頃、クローディアスはスカーレットが自分を探していることに気付いた。
聖は隊商の老人たちの治療を行い、老人たちから楽器を教わり、ダンスを一緒に踊る。スカーレットは聖の行動に驚くとともに“苦しい生活の隊商の人たちが気持を楽にしていく生き方”に驚いた。そして隊商は次の商売地へと旅立って行った。スカーレットたちは別れ、見果てぬ場所を探す旅が続く。
〇廃墟の街で突然騎士に襲われ、戦いの末に父アムレットの最期の言葉を知った。
スカーレットが「仇はいる」と戦った。聖が「止めろ」と止めに入ったが、逃げる敵を馬で追った。聖が撃たれた。これを見たスカーレットが馬で追った。

そこに騎乗の騎士が現れ「王女!」と叫んだ。スカーレットは聖を救出したが、騎乗の騎士に捕まり殴り倒された。騎乗の騎士はクローディアスの側近で騎士たちを指揮しスカーレットを追うヴォルティマンド(吉田鋼太郎)だった。

そのとき、上空にドラゴンが現れ、スカーレットたちを見守った。ヴォルティマンドが「逃げろ!」と剣士たちに号令した。ヴォルティマンドにスカーレットが撃たれ、聖が治療に当たった。
スカーレットは「許してくれ」と請うヴォルティマンドに「許さん!」と剣を向けた。
ヴォルティマンドが詫びのため「王アムレットの最期の言葉を聴いた」と言った。「赦せ!だった」と言った。スカーレットは「民衆にか、何のために、誰を赦す。まさかクローディアスではあるまいな、絶対に赦せん」と思い悩んだ。ヴォルティマンドには馬を与え去らせた。
スカーレットは「仇のことばかり考えてきた。それなのに“赦せ”なのか」と悩んだ。
墓場で墓掘り人に会った。墓掘り人が「あなたが知りたがっている男だ」と棺を開けた。誰もいない。墓掘り人が「あんたが知りたがっているはあんた自信だ」と言った。スカーレトにはこの言葉が理解できなかった。

〇夜、焚火を囲んで聖が年寄りに習った楽器を弾く。聖の歌に誘われスカーレットは渋谷の街の中にいた。
聖は思い悩むスカーレットを慰めたかった。彼は楽器を弾きながら「今と違って別の世界を考えた。自分は死んでも不幸と思わない。この歌を聞いてごらん!心を失くしたしまったスカーレットの意味を教えてくれる」と歌い始めた。スカーレットが歌を聞き、赤い炎を見ていると時空が飛んで、聖と一緒に渋谷のスクランブル交差点に立っていた。
スカーレットは聖と一緒に踊った。「これが私なの?」と聞くと「もうひとりの私だ」と言った。スカーレトは「聖は踊りが上手かった。私をリードしてくれた。別の時代に生れたら、人生諦めずに済んだ」と思った。
スカーレットは死の世界に戻り髪を切った!
〇ふたりは再び見果てぬ場所へ旅立った。
山へ続く道が長い壁を張り巡らせて閉じられていた。少女(白山乃愛)に「王女だったら助けて」と言われた。人々はこの壁を壊し中に入ると砲弾を浴びせられ次つぎと虚無化される。クローディアスの仕業だった。スカーレットらはクローディアスが放ったふたりの剣士に襲われたがこれを排除し山への道を進んだ。

溶岩が流れる山を踏破し雪山の頂点に立った。
しかし梯子が見つからない。そこでまたもクローディアスが放ったふたりの剣士に襲われた。

そこにひとりの剣士が現れふたりの剣士を斬った。スカーレットが「ありがとう」と挨拶すると「復讐を果たせ!」と空に上る階段を教えた。斬った剣士はコーネリウスだった。
〇スカーレットは階段を上った。見果てぬ場所への扉の前でクローディアスが待っていた。
スカーレットは階段を上がり、美しい海に出て、そこから密林を歩き、見果てぬ場所に着いた。そこにクローディアスが立っていた。
クローディアスが「罪があるものは中に入れない、懺悔したい」と言う。スカーレットは剣を振りかぶった。クローディアスの「私を助けよ」という声で斬れなかった。スカーレトは「悔しいが分かった。父をころしたのは誤りだったと赦しを請うてください」と言った。クローディアスは泣いて詫びたが、「王位は渡さない」と赦しを請わなかった。スカーレトは「父の苦しみを分からせてやる」と再び剣を振り上げたが、父アムレットの「赦せ!」の声が聞こえ、剣を降ろした。
スカーレトは再度考えた。
復讐をすべきか赦すか、どうしてここまで私を縛るのか。別の生き方を探さないと本当に人生終わりになる。父が民のため自分を押し込めて自分を赦させた気持ちが理解できた。
「自分を赦せ!」と父の声が聞こえ、父の姿が現れた。父は「バカなことをするな。もっと別のことを望む。君の人生にのびのびと関わって欲しい」と言った。そして父が虚無になった。スカーレットはクローディアスに「赦せないが、止めた」と伝えた。そこにドラゴンが現れ、クローディアスを焼き殺した。クローディアスも虚無となった。そしてドラゴンは消えた。
〇聖は死んでいたのだった。
聖が門にやってきて「犯人がナイフで刺す、その盾になって俺は死んだと行動していたが、俺は死んだ」とスカーレットに告げた。聖は死んでいたと分ってすっきりした。スカーレットは「ここで生きたい」と願ったが、老婆と聖に諭されて現世で生きることにした。聖は空に消えて虚無化された。
〇スカーレットはベッドの上で目覚めた。
スカーレトは城のベッドの中で「王女様!」の声で目覚めた。スカーレットは毒を飲まされ昏睡状態だったのだ。一方、クローディアスもワインを飲んであっけなく亡くなったと知らされた。これで死の世界がなんであったかが明かされました。
スカーレットは女王として民の前に立った。
「貧しいものが苦しむのは嫌だ。隣国とは仲良くするよう最善を尽くす。子供は死なせない。戦いはしない。亡くなった全ての人のために」と民に話した。
まとめ:
シェイクスピアの「ハムレット」を下敷きにした作品なんて一杯あるんだから、このことに問題はない。現代風に書き換えてあり面白いぐらいでした。オリジナルといっていい作品でした。
ところが死の世界が曖昧で、登場するキャラクターがよく分からないでスタートするから、分けわからない。最期で全てが明かされるのだが、感情が乗らない。さらに、マーガレットが父アムレットの最期の言葉を聴いて悩み、聖の唄う歌に誘導されて16世紀の話から現在の日比谷に飛び、ドラゴンが出て来て「竜とそばかすの姫」の話になっていく。これがよくなかった。
16世紀の話だからその中で解決してもらいたかった。これでもテーマは今の時代に繋がると思います。恐らく監督は「竜とそばかすの姫」の成功が忘れられなかったんだろうと思いました。
後半の展開はよかった。生の世界の門前でスカーレットとクローディアスが“赦せ、赦さない”と問答する段階からは面白かった。難しい赦しのテーマを亡き父アムレットが現れ「自分を赦せ!自分の人生を生きろ!」と決着させたのは見事でした。
スカーレトが目覚め、全てはスカーレットの夢の中での話だったという結末。全てこれで納得できました。
旅の中でスカーレットと聖が交わす言葉で、スカーレットの心の中に変化が出てくる。これを映像から理解するのはむずかしい、感情が入って来ない。しかし、スカーレット役の芦田愛菜さんの頑張りでなんとか作品になったと思いました。
登場キャラクターの多さに参りました!(笑)しかし、画像が何となく声優も顔に似ているので助かりました。(笑)
ドラゴンの登場はよくなかった。ピンチになるとこれがあらわれ、アクションの面白さがなくなってしまう。
砂漠の旅、隊商との出会い、大群衆による城門の破壊、ラストのスカーレットの演説シーンなど印象に残る絵が沢山ありました。
酷評されていますが、面白かった。いつもの細田監督のペースです。
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