
直木賞作家・垣根涼介の同名小説を映画化した時代劇アクション。応仁の乱前夜を舞台に、武士として歴史上初めて一騎を起こした男・蓮田兵衛らの命懸けの戦いを描くというもの。
監督が「あんのこと」(2024)の入江悠さん、主演が大泉洋さんで撮ったという作品、いかなる時代劇なりやと観ることにしました。(笑)
室町時代と言われても良く分からなかったが、「マッドマックス」のような世界観」で撮ったと言われ、脚本がよく出来ていて、室町時代とはこう時代かと。さらに東映京都撮影所の時代劇スタッフが全面協力したということで、真っ当な時代劇になっていました。(笑)特に一揆シーンは見事でした。
蓮田兵衛の人物像をどう描くか、一揆がいかに画策されたか、沢山のアイデアを出しながら作られた時代劇を面白く見せてもらいました。“銭とは何か”、銭で苦しむ民の一揆ということで今の時代に繋がるテーマでした。
監督・脚本:入江悠、撮影:大塚亮、編集:佐藤崇、音楽:池頼広。
出演者:大泉洋、長尾謙杜、松本若菜、遠藤雄弥、前野朋哉、阿見201、中村蒼、矢島健一、三宅弘城、柄本明、堤真一、他。
物語は、
1461年、応仁の乱前夜の京。大飢饉と疫病によって路上には無数の死体が積み重なり、人身売買や奴隷労働も横行していた。しかし時の権力者は無能で、享楽の日々を過ごすばかり。そんな中、己の腕と才覚だけで混沌の世を生きる自由人・蓮田兵衛(大泉洋)はひそかに倒幕と世直しを画策し、立ち上がる時を狙っていた。一方、並外れた武術の才能を秘めながらも天涯孤独で夢も希望もない日々を過ごしていた青年・才蔵(長尾謙杜)は、兵衛に見出されて鍛えられ、彼の手下となる。やがて兵衛のもとに集った無頼たちは、巨大な権力に向けて暴動を仕掛ける。そんな彼らの前に、兵衛のかつての悪友・骨皮道賢(堤真一)率いる幕府軍が立ちはだかる。(映画COMより)
あらすじ&感想:
〇冒頭、寛正2年(1461)巨大な石を囃しながら運ぶ一群。足利義正邸の池に置く庭石を運ぶ民たちだった。
未曾有の不作で喰うにも食えず、病に苦しむ民に高い税を押しつけ、さらにこのような無益な労働を強いる幕府が存在した。560年前相国寺に壮大な七重大塔があった頃、飢餓と水疱瘡で亡くなったあるいは生き埋めされた人は8万2千人にもなったという。鴨川河畔では役人が人夫を鞭打って死体を川に捨てる。この地獄絵図を民衆は怒りで見ていた。
通りがかった蓮田兵衛、仕えていた大名が潰れ今では牢人の身、役人を蹴飛ばして鴨川に突き落とす。民衆から喝采が送られる。道端で飢えた親子を見れば食べ物を与える、こうして兵衛は人の心を掴んでいった。
〇兵衛は棒術使いの才蔵を買い、鍛えてみることにした。
野党の一団が証文をもって借金の返済取り立てにきて、金目のものを召し上げ、借金肩代りに女たちを連れ去る。これを見た才蔵が家に飛ぶ込み抵抗したが、多勢に無勢“虫けら”と痛みつけられ、“こいつは売れる”と連れ去られた。この一団が領主の名和好臣(北村一輝)の館の一角に荷を運び入れ、女たちを弄ぶ。
そこに武士の一団が侵入してきて金目の物、そして才蔵を奪い取り、稲荷神社前の市場で商売を始めた。この武士団の親玉が牢人上りで幕府に頼まれ見張り(警護)役をやっている骨皮道賢だった。才蔵の棒術は道賢が手合わせして“使える”と判断して高価で売ることにした。

そこに兵衛が現れた。道賢とは牢人として旧知の中だった。道賢は「吉永郷の一揆を止めろ」というが兵衛は「そっちの仕事」と取り合わなかった。兵衛は才蔵を600文で買った。(笑)
〇兵衛は才蔵の能力を知るために師のいる琵琶湖の今津を尋ねることにした
道すがら、才蔵を蓮根畑に放り込むが上がってくる。根性ものだった。長尾さんの熱演だった。(笑)
関所破りを才蔵に見せた。大泉さんの剣捌きもなかなかのものです。しっかり練習したようです。(笑)相手の折れた刀に人物が映る、誰の発想か?(笑)
関所の金を盗み、火をつけて逃げ出した。
このころ京都、足利義政の館では難民対策に追われていた。
民に運ばせた石が池の中に設置されていた。伊勢貞観(矢島健一)の元で諸大名を集め「飢えに苦しむ民が京になだれ込んでいる」と対策を論議していた。「大いに苦しむがよい」と高笑いする大名たち。「飢え死んだ民は8万、すみやかに方法を取らねば京の都は崩壊する」と出費を大名に打診するが「わしら大名は苦しい。伊勢殿の政所が出せばよい」と返事。臭い臭いと騒ぐ。鴨川で死体を焼く匂いだという。そのとき義政(中村蒼)が「石の代わりに花を植えよ」と指示をした。 (笑)
縁下に控えている道賢が「良からぬやつが都に忍び込んでいる」と伊勢に報告すると「抑えろ!お前の役目だ。もっと金を出せ!」と催促される。(笑)幕府は難民対策に苦しむが財政に行き詰まっていた。
兵衛と才蔵は柵で砦を築き、野武士と戦う吉永郷の民を見た。
兵衛が指南に訪れた村だった、こういう村がいくつもある。兵衛は直ぐに戦に加わった。勝利し野武士の鎧を柵にかけて脅しに使う。
その夜、村長によって宴が設けられた。村長は「名和の殿(北村一輝)が守ってくれない。そこで一揆を企てている」という。兵衛は「京の警護役にバレている」と止めようとしたが、「もう税を払えない!将軍の庭作りに借りだされる。そんなバカなことはない。やるなら早いほうがいい。娘を売るしかない」という。女たちが泣いている。兵衛が「今は耐えろ!俺が、時がくれば武士の力を借りる」と金を与えた。娘たちには簪を与えた。
兵衛は棒術を演練する才蔵に「師は死んだ、帰れ!」と才蔵の心の内を試した。
才蔵が「あなたについて行く。民から暴利を貪るやつらを許さない」と答えたので、今津に向かうと伝えた。次の作戦に移行した。
兵衛は山中に隠していた銭を掘り起こし、両替屋に持ち込んだ。兵衛は才蔵に「銭の本性は何か?」と問うた。「物が買える」と言う才蔵に「「考えておけ!」と宿題を与えた。
〇兵衛は唐崎の老人に才蔵を預けた。
唐崎の老人(柄本明)は才蔵を見ていきなり歯を一本抜き、訓練の相棒の子を“朝鮮の子だ”と紹介した。琵琶湖に浮かぶ桟橋に立って柱に釘を打つ訓練、奇想天外な訓練が始った。長尾さんは大変でしたね。(笑)老人役の柄本さんが当たり役だった。(笑)

道賢のところに僧兵のリーダー・法妙坊暁信(三宅弘城)が「兵衛に金を盗まれた」と尋ねてきた。道賢の「居場所が分かったら知らせてくれ」と答えた。(笑)
その頃、兵衛は“極楽だ“と馴染みの女の屋敷で風呂に入っていた。(笑)
道賢が訪ねてきたが、うまく追い返した。(笑)道賢は「鳥羽街道で関所を2つ焼いた。これ以上は認めない」と帰っていった。これを床下で兵衛は聞いていた。馴染みの女は芳王子(松本若菜)。

遊女で道賢の女だった。閨で兵衛は「そろそろ地獄の窯が開きそうだ!」と嬉しそうに語った。兵衛には死ぬはずだった才蔵が厳しい修行に耐え生き延びていることを唐崎の老人から聞き、それが嬉しかった。
〇才蔵が修行を終え、兵衛の元に帰ってきた。
才蔵の最後の修行は命の取り合いだった。周りから僧兵が掛かってくる。そのひとりが「わしを捨てた」と法妙坊だった。才蔵は「一緒に戦った」と言い返した。「縁を切りたいか、ここで生きたいか」と全員を切り倒した。実は当身だった。全員逃げ去った(笑)そこに兵衛と唐橋の老人が現れた。終業の印は朝鮮の紫水晶だった。
兵衛は「お前を尋ねて三人の牢人きた。お前の帰りを待っている」と伝えた。三人は赤間誠四郎(遠藤雄弥)、七尾ノ源三(前野朋哉)、馬切衛門太郎(阿見201)で、馬切衛門は滅法強い男だと伝えた。
才蔵が「銭で動くものは評判です」と答えた。これが正解だった。
吉永村に着くと、民が飢えて這っている。衣を剥ぐと躯に成り果てていた。兵衛は「済まなかった」と詫びた。
〇兵衛と才蔵は京に戻り、一揆の仲間たちに会った。
兵衛の屯に戻った。金を“分けろ“と女渡した。男たちが駆け寄ってきた。赤間、七尾、馬切衛門に会い一緒に飯を食った。そこに道賢から「多勢の牢人が追い詰められ土蔵に集まって一揆を企んでいる。これを止めよ」と要請が来た。兵衛が会いにいって「待たせたな皆の衆」と挨拶をした。(笑)兵衛は赤間ら新しいメンバーを紹介し、一揆連判状にサインした。
そこに道賢が現われ「一揆の頭になったとはどういうことか」と怒った。兵衛は「見逃してくれ!」と土下座して謝った。そして「証文を取り返し、借金の肩の妻子を取り返すまで、半時待ってくれんか」と頼み込んだ。道賢はこれを承知した。「1か月後に実行する。日時は決まり次第伝える」と約束した。
夜になると、地侍や牢人たちが“一矢報いたい“と集ってきた。
〇稲荷神社に屯する道賢に実行日時を知らせるため赤間ら3名を送った。
“12日決行じゃ“と民が騒ぐ。これが法妙坊、伊勢らの耳にも入ってきた。屯所が名和により”一揆の見せしめだ“と焼かれた。
兵衛は芳王子を安全なところに引っ越すよう才蔵を使いに出した。ところが芳王子が“あんたはまだ女を知らん”と才蔵を誘惑した。これを知っても兵衛は怒らなかった。(笑)兵衛は自分の運命を悟っていた。
〇11日夜、“一揆”が開始された。奇襲行動だった。
幕府の見張り所が地の揺れに驚き、村の方向を見ると炎が見え次第に炎の海になっていく。民が家々に火を放ち、駆け抜ける。まるで炎の川になった。道賢は「一揆は夜明けでない、撃ち取れ!」と命令した。

土蔵のある二条通りが敵によって塞がれると兵衛は先手を打っていた。
兵衛は相国寺七重大塔に松明をもった人を配置し一斉に火をつけさせた。塔を守るために敵兵が集った。道賢もやってきた。道賢が「これは幕府の転覆か?」と聞く。兵衛は「天下を燃やす!つまらん世はさっさと潰し面白い世をお主と観たかった」とロープで逃げ出した。(笑)
“エイホ、エイホ”と掛け声を出しながら大群衆が二条通りに雪崩込んだ。
塀に梯子を掛けて土蔵屋敷に侵入、証文が持ち出され空に舞う。そこに僧兵、武士の一団が駆けつけ、一揆団と対峙した。武士が矢を放つが民衆は車を盾に戦う。柱を立て掛け武士団に向け倒す。
才蔵が“吹き流しの術”で舞うように敵兵をなぎ倒す。
馬上の侍大将が「御所に近づくとは何事だ」と駆けつけた。道賢が侍大将を“待て”と引き落とした。
半時が経った。道賢が“掛かれ“と号令した。道賢の軍と一揆党との斬り合いが始った。
“証文が燃えた、天下を燃やせ”と民衆が踊り狂った。
いたるところから土蔵が燃え上がった!道賢が「さっさと帰れ!」と兵衛に声を掛けた。民衆は刀を拾い集め帰って行く。
義政の館前で、兵衛と赤間ら3人が道賢と対峙した。

そこに酔っ払った名和が輿に乗って出てきた。名和が“早く潰さんか”とヘドを吐いた。これを見た七尾が斬り掛かり、名和の従者に斬られた。兵衛が「吉永村を焼いたのはお前らか!」と名和を斬った。簪で首を刺した。
兵衛と道賢が斬り合う。
才蔵と赤間、馬切衛門が近づく敵兵と激しい切り合いが続いた。特に才蔵の戦いは凄かった。屋根に逃げる敵を追って斬った。
兵衛は腹に傷を負った。才蔵に支えられながら義政の館の正門に近づき“無頼”と書かれた張り紙を張った。道賢もこれを見た。兵衛は才蔵に支えられながら現場を去った。
鴨川の川原で道賢が兵衛と才蔵を捕まえた。
兵衛が「わしの首ぐらいは取らんと面目が立つまい。だが才蔵は見逃してくれ!俺たちができなかったことを成し遂げてもらう」と道賢に頼み込んだ。道賢は「みごとな最後だった。今後10年、都に戻るな」と才蔵の首を斬った。そして兵衛の刀を拾い泣いた。才蔵は振り向きもせず去って行った。
〇5年後に応仁の乱が始った。
道賢は敵に捕らわれ首を斬られた。才蔵はひょっこりと芳王子のところに顔を出した。
まとめ:
兵衛は歴史書にたった一行だか名を遺した。記録に残る最初の一揆だった。
兵衛は牢人になって一揆の志を持ち、村を巡り兵術を教え、飢える人を救い、牢人を集め、才蔵の修行が終るのを待って一揆の旗を上げた。これに対して道賢は実在人物で同じ牢人でありながら幕府の犬となり兵衛を追うがどこかで兵衛を庇ってやる。原作を読んでいないが、兵衛と道賢を掛け合わせて作った寛政の一揆の話は、とても面白かった。
一揆の前提となる世界感。飢餓と病疫、幕府の無頼で苦しむ民の状況をどう映像化するか、そして5000人とも一万人ともいわれる民衆蜂起をいかに描くか、各キャラクターにリアリティを与え、さらに笑をつける、そしてチャンバラ・アクション。見ごたえのある時代劇になりました。
大泉さんと長尾さんはよく頑張りました。長尾さんが特にきつかったでしょう、よく耐えました!(笑)
主役は原作では才蔵、本作では兵衛。どちらを主役とするか?難しい判断があったのだろうと思います。兵衛としてよりリアリティを求めのではよかったと思います。が、現代に繋がるテーマとしては才蔵の方がよかったかもしれない。最後に“お金で動くものは評判“というのは至言だと思いました。(笑)
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