
「アルプススタンドのはしの方」の城定秀夫監督作品。“隠されたテーマがあるぞ”とこれで観ることにしました。
田舎でのスローライフを夢見て、都会から村へと移住してきた夫婦が、その村に存在するある「掟」に追い詰められていく姿を描いたスリラー。
怖いスリラーではなく嫌なスリラーだった!戦争直後はみんなそうだった。ちょっと昔の田舎を思い出すような田舎の闇。
この作品を観た大半の人は“田舎は嫌だ”と思うでしょう。「嗤う蟲」とは誰を指すか?村の人?逃げ出した人?これがテーマ?監督は当初のタイトル「村八分」をこのタイトルに変更したという。監督らしい作品だと思いました。
テンポがよくて俳優さんの演技が魅力的、そんなに怖い映画ではない。お勧めです。
監督:城定秀夫、脚本:内藤瑛亮 城定秀夫、撮影:渡邊雅紀、編集:城定秀夫、音楽:ゲイリー芦屋。
出演者:深川麻衣、若葉竜也、松浦祐也、片岡礼子、中山功太、杉田かおる、田口トモロヲ。
物語は、
田舎での暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈は、脱サラした夫・輝道とともに麻宮村に移住する。自治会長の田久保のことを過剰なまでに信奉し、過剰なまでにお節介を焼く村民たちに辟易しながらも、2人は新天地でのスローライフを満喫する。そんな中、村民の中に田久保を畏怖する者たちがいることを知った杏奈は、次第に不信感を抱くようになっていく。一方、輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、 麻宮村の隠された「掟」の存在を知ってしまう。(映画COMより)
あらすじ&感想:
〇麻宮村への移住、村のみなさんに大歓迎された。
イラストレーターの長浜杏奈(深川麻衣)と脱サラで農家を目指す上杉輝道(若葉竜也)は自然豊かな麻宮村に憧れ移住を決めた。着いてみると天道虫はいるし緑が一杯。「お爺ちゃんの故郷に似ている、夢が叶った」と歓声を上げた。
隣の夫婦から「こんな田舎に、ありがたい」と挨拶される。夜、新鮮な野菜を食べて、“美味しい“と感じる。
次の朝、老人に会うと「ようおいでになった!子供はいるの?できたら苗字はどうなるの?」と聞かれた(笑)。「仕事は?」と聞かれ、杏奈が「イラストレーター」と答えた。輝道は「祭り行事はどうする」と聞かれ「参加します」と咄嗟に答えが出た。老人は自治会長の田久保(田口トモロヲ)だった。

たった一軒しかないスーパーで買い物すると「苗字が違うから心配したが仲いいね」と言われる。あっという間に噂は広まる。(笑)しかし、夜道は真っ暗で怖い!
輝道がトラクターで畑を耕していると田久保が「農薬をあげる」と声を掛けられた。輝道は「無農薬で」と断わると「要る時はおいで!」と親切に言って、去って行った。
杏奈と輝道の歓迎会が村を挙げて行われた。
「自治会長がすべてをしてくれる」と話してうれる人。花火に誘う人、「おれ美味しいよ」と料理を勧める人。大歓迎で暖かく迎えてもらった。みなさん、お節介すぐるほど親切だった。杏奈はSNSで「大らかな自然を堪能している“と発信した。
〇村の人々、ちょっと変?
輝道が農作業していると交番の巡査・古谷(中山功太)に声を掛けられた。
上手く行かなかったら田久保さんに相談したらいい。この村は助け合いでやってきた。今妻は子供のことで東京にいるが早く呼び寄せた」と。
隣家の主人、三橋(松浦祐也)は農薬の撒き方を教えてくれ「早く子供を作るといい、子供ができなくて参った」と話した。
杏奈は田久保の妻のよしこ(杉田かおる)の訪問を受け「ごはん」の誘いを受け、カボチャの煮物を差出し「カボチャは妊婦に利く、沢山食べろ!」と置いて行った。
杏奈のイラストレーターの仕事は軌道に乗ったが、輝道の無農薬農法が上手くゆかない。輝道に迷いが出始めた。杏奈はお腹が気になりだした!
ある夜、輝道はビニールハウスで田久保が「収穫が遅れている!」と三橋を殴る姿を目にした。
輝道が車に野菜を乗せていると警官の古谷から「ネットで売ってるが、田久保さんに相談したら、できるだけ地域の還元、お世話になっているから」と諌言を受けた。輝道は無視した。
輝道は村の人には誰にも知られないよう杏奈を産婦人科病院で診察してもらった。
ところが翌日、農作業中の輝道のところ田久保がやってきて「昨日何処へ行っていた?病気?見つけたやつがいる」と聞く。輝道は喋らざるを得なかった。
村を挙げての杏奈の懐妊を祝う祝宴が持たれた。
村にとって赤ちゃん誕生は何年ぶりだった。上席に杏奈と輝道は座らされ、「ありがとう」と挨拶され、村人全員から祝辞と祝い品を貰った。
杏奈が家に戻ると、三橋の妻・椿(片岡礼子)が訪ねてきて、「旦那さによろしく、仲良くして」と言って、自製の食べ物を置いていった。杏奈が食べようと蓋を開けたが、無理だった。そのままゴミ捨て場に捨てた。
大量の散らばったゴミ、カラスの大群出現に、三橋と村衆が詫びにきた。
突然、バンとガラスを叩く音。犬が啼きだした。妊婦体操していた杏奈が輝道に「警察に相談しよう」と話していると、田久保を先頭に村衆がずかずかと家に入ってきた。

三橋が土下座して「ゴミを散らかして申し訳ない」と謝った。田久保が「私たちの顔を立てて許してくれ」と村衆と一斉に頭を垂れた。これに「ありがとうございました」と気橋が泣いた。杏奈は事態が飲み込めなかった。
お祭りの手筒花火作りが始まり、輝道はそこに三橋が居ないことに気付いた。
〇輝道は村の秘密を知った。
輝道は田久保からビニールハウスに呼ばれた。田久保は葉っぱを見せて「県で許可を貰っている農作物、大麻だ!禁止されているのは葉っぱだけ。茎で繊維を作っている。この国も戦前は大麻農村が盛んだった。祓い清めのしめ縄に使っている。それだけではやっていけない。大麻造りをやってみないか?」と誘った。輝道は「自分のことが生一杯で」と断った。田久保は「気がむいたらでよい」と答えた。
杏奈がスーパーで買い物していて、店主から「三橋のところが猪にやられた。お宅も気をつけなさいよ」と声を掛けられた。
杏奈はこのことを「おかしくない?」と輝道に話した。輝道も「おかしい」と言った。
輝道は三橋が田久保の倉庫に「働かせてくれ」と来たが、田久保が「来るな!」と追い返すのを見た。三橋に何があったのか?
〇花火大会の夜、輝道が事故を起こし、人生が狂い始めた!
手筒花火が始まり村は盛り上がった。その後、慰労会が始まった。輝道はこれに参加し酒を飲んだ。田久保から「大分飲んだようだか家に寄ってくれんか」と誘われた。
輝道が運転する車で帰る途中、「大麻をやらないのは残念だ。来年の筒はやってみないか?」と勧められか?」と聞かれたとき、車が何かを轢いた。下車して調べるzと三橋を轢いていた。輝道が救急車を呼ぼうとしたが田久保が止めた。田久保は「こんなところに寝てこいつが悪い、我に任せておけ!」と言い、輝道に手伝わせ、川に投げ捨てた。輝道は差し出された薬タバコを吸った!
三橋の葬儀の夜、
台所でお酒を準備している杏奈のところに、椿がやってきて「自殺?殺されたのよ!あなた子供できた、大切にされるよ」と声を掛けた。杏奈は不安になった。
輝道はビニールハウスで働くことになった。
杏奈が順調にお腹の子が育っていると喜んでいると、犬が激しく泣く!表に出ると大木に椿が首を吊っていた!

杏奈が男の子を出産した。大きな喜びが不安へとなっていった。
村を挙げて出産祝いの席が設けられた。大きな男の子だった。田久保が「村の子だから明日からよしこに任せよ」と言った。
よしこが家にやってきて杏奈と一緒に食事して「しっかりたべろ!」と注意し、赤ん坊の世話をする。夜、輝道は夢を見て起き出し、赤ん坊を泣かせたまま、薬タバコを吸うようになった。杏奈のいらいらが収まらない。
杏奈のイラストの仕事が減ってきた。このまま仕事を続けるか輝道が言うように子育てに専念するかで輝道と揉めた。
大麻の収穫が終わった。
輝道が「上杉さんがいたから上手くいった」と村衆から頭を下げられた。輝道は田久保に「しばらく休みたい!」と申し出ると「勝手にしろ!」と怒鳴られ、虐めが始まった!
杏奈がスーパーに買い物に行っても売ってもらえない!

皆が逃げ出す!家の前に沢山のゴミがばらまかれる。飼い犬が傷つけられる。輝道は田久保を訪れ、土下座して謝った。田久保は「上杉さんが居なくなったら困る。仕事をしてもらい」とやさしく田久保を受け入れた。
〇杏奈が輝道の秘密を知った。
杏奈は輝道の様子がおかしいので田久保の倉庫の仕事を見にやってきた。大麻を乾燥させていた。そのとき赤ん坊が泣いた。輝道が倉庫の外に出ると杏奈が走り去るのを見た。
杏奈は交番の古谷に大麻を見せて訴えた。
古谷は「合法でやっている」と取り合わない。現物を見せると「調査します」と訴えを引き取った。
杏奈は「三橋さんが亡くなったこと、あなたが大麻を扱っているところを見た。何があったの?話して」と輝道を責めた。輝道が「行ってくる!」と家を出ようとするのを杏奈が「私が行く!」と赤ん坊をつれ車で出かけた。
杏奈は古谷のパトカーに捕まった。
杏奈は田久保家に連れ戻られ、監禁された。田久保から「この村は10年前お終いだと思った。それであれを売ることになった。売らないと生きられない。この村は死ぬ。分るか!仕方がないんだ、うちらを虐めないおくれ!」と請われた。
田久保は輝道が事故を起こした現場映像を見せ「わしらは旦那さんを助けた。赤ん坊の父親を人殺しにしていいのか?」と言う。杏奈が「それで三橋さんを殺した?」と聞くと「ど田舎だからどうにでもなる!」と言い放った。すべては田久保が輝道を仲間に誘い込むための罠だった。
〇杏奈はこの村から出ることを考えた。
田久保は交番に古谷を尋ね、酒を飲みながら、今回の出来事の口止めをした。
古谷は狂った三橋が刃物をもって歩くのを制止しようとして絡み合いになり拳銃を奪われた。三橋はその拳銃で田久保を殺しにやってきたが、田久保が取り押さえ拳銃を取り戻し、三橋を殴り殺し、その遺体を輝道が轢いた道に寝かせておいた。古谷が警官をやっておれるのも田久保のお陰だった。
輝道と隔離され監禁されている杏奈によしこが赤ん坊を抱いて「ここで一緒に暮らそう」と話しかける。杏奈は泣いた(ここでの深川さんの悲しみの表情がいい)。
輝道は田久保と一緒に手筒花火を作った。
花火大会の前夜、田久保と輝道、杏奈は一緒に夕飯を食べた。田久保は「いよいよ明日だ、大筒の持ち手になってくれた。村初めての快挙だ」と言い、田久保は輝道と杏奈が村に居ついてくれることになったと喜んだ。その夜、ふたりは一緒に寝たが、輝道は杏奈が絡むのを拒否して杏奈の言い成りにはならないことを示した。(笑) 祭り当時の焚き出しではこのことが話題になった。

花火大会が始まった。
手筒花火が始まり会場が盛り上がった時、杏奈はよしこから赤ん坊を奪い取り、駆け出した。輝道は大筒を点火し、これを援護した。杏奈は田久保の家に戻り、大麻を筒に入れ車に乗せた。田久保が「子供は村の子」と追ってきたが、輝道が田久保を刺し、杏奈に「ごめん!“こんなはずじゃなかった”。早く逃げろ!」と指示した。
杏奈は輝道を車に乗せ、追跡するパトカーのサイレンを聞きながら走った。高速道路に入って「帰るよ!」と輝道に声を掛け、嗤った!
まとめ:
大量ゴミを散乱させて虐める村八分、自治会長がやさしいい人のようで読めない腹黒さ。これが怖かった。そしてカラスの襲撃、ミミズや虫が這よりこちらの方が嫌だった。村の陰鬱な出来事に辟易したでしょう。イヤミスというべき作品だった。(笑)
田舎暮らしが嫌と逃げ出した杏奈と輝道。
ふたりは「夢が叶った!」と麻宮村にやってきて、「こんなはずじゃなかった、帰る」と村を脱出した。村はこれで死んでしまうかもしれない。ふたりの夢はなんだったのか?
麻宮村には良いところも悪いところもある。
自分たちの都合よくはいかない!それで田舎暮らしは嫌と逃げてどうする。子供を村で育てる掟なんてすばらしいアイデアではないか。祭りがあってしばしば全員が集る慰労会の掟もそうだ。
確かに大麻造りと「村はどうにでもなる」という田久保の決めた掟は恐ろしいが、村が生きるためにこれしか思いつかなかった。本当の田久保の姿が見えたとはいえない。村には立派なビニールハウスと倉庫、畑がある。手筒花火という文化遺産があって、村民はお節介だが優しい、まとまりがある。見捨てたものではない。いくらでも次に打つ手はある。
田久保の本性は悪なのか優しい人なのか?田口トモロヲさんの怪演でした。深川麻衣さんの演技、イラストも上手かったが、村にきて追い詰められていく演技も感情がしっかり出ていてよかった。
この作品を観て“田舎は嫌だ”と田舎を嗤うあなたこそ“嗤う蟲”だ!と、田舎移住者にその覚悟を聞く作品ではなかったかと思いました!
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