
「メイ・ディセンバー ゆれる真実、原題はMay December。May Decemberとは年の差を意味し、36歳の女性教師が、13歳の少年と不倫関係に陥った事件のこと。この事件は日本でも話題になりましたがすっかり忘れていました。
どんな事件だったのかという興味。ナタリー・ポートマンとジュリアン・ムーアが共演、監督が「キャロル」のトッド・ヘインズということでWOWOWで観ることにしました。
この事件をモチーフにし、事件から20年後映画化するために主演女優(ナタリー・ポートマン)が「犯罪者の内面を深く表現したい」と今ではその少年と結婚し3人の子供たちと幸せに暮らす女性から事件当時の心境を引き出そうとする物語。
その結論は邦題にご丁寧に“揺れる真実”と銘打たれているとおり、真相は闇の中。(笑)
トッド・ヘインズ監督は何を描きたかったのかがテーマでしょうか。真相を追求するナタリー・ポートマンと自分の思いを描いて欲しいジュリアン・ムーアの心理戦演戯、美しくてミステリアスで怖い、すばらしいものでした。
監督:トッド・ヘインズ、原案:サミー・バーチ アレックス・メヒャニク、脚本:サミー・バーチ、撮影:クリストファー・ブロベルト、編集:アフォンソ・ゴンサウベス、音楽:マーセロ・ザーボス。
出演者:ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーア、チャールズ・メルトン、他。
物語は、
20年前、当時36歳の女性グレイシーは、23歳年下の13歳の少年ジョーと運命的な恋に落ちるが、2人の関係は大きなスキャンダルとなり、連日タブロイド紙を賑わせる。グレイシーは未成年と関係をもったことで罪に問われて服役し、獄中でジョーとの間にできた子どもを出産。出所後に晴れて2人は結婚する。それから20年以上の月日が流れ、いまだ嫌がらせを受けることがあっても、なにごともなかったかのように幸せに過ごすグレイシーとジョー。そんな2人を題材にした映画が製作されることになり、グレイシー役を演じるハリウッド女優のエリザベスが、役作りのリサーチのために彼らの近くにやってくる。エリザベスの執拗な観察と質問により、夫婦は自らの過去とあらためて向き合うことになり、同時に役になり切ろうとするエリザベスも夫婦の深い沼へと落ちていく。(映画COMより)
あらすじ&感想:
〇エリザベスがグレイシー邸を尋ねるとことから物語が始まる。
グレイシー邸はサバンナリバーに面した緑豊かな場所にある。邸ではエリザベス(ナタリー・ポートマン)歓迎の準備をしていた。グレイシー(ジュリアン・ムーア)は獄中で長女オナーを産み、結婚後双子のチャリー(男子)とメアリー(女子)を設けていた。オナーが大学生、双子のふたりは高校生で卒業を目前に控えていた。
BBQでエリザベスを歓迎するため、ジョー(チャールズ・メルトン)がBBQの準備。グレイシーは冷蔵庫を調べ「ホットドッグがたりない」と心配。グレイシーを中心にとても仲のよい家族のようだ。

エリザベスが到着。そこで見たグレイシーは20年経っても排泄物が送りとどけられ、苛立つ彼女だった。
BBQを楽しみながらの談笑。
グレイシーはジョーに抱だかれたままで話をする。ジョーはグレイシーの話しに頷くのみ。
グレイシーの「どんな映画?」にエリザベスは「重層的な人間で描く物語になる」と答えた。BBQの後、エリザベスは事件を話題にした雑誌記事を思い出しながら、今日グレイシーに会った印象は「無意識か心は遠くにある人」と感じた。

夜、グレイシーとジューがベットで休むシーンが差し込まれる。
グレイシーが「炭の匂いで眠れない、シャワー浴びて!」と注意すると、ジョーが「グリルの臭いが残っていた。すまない」と素直に詫びる。ふたりの関係をどう読むか?
エリザベス、グレイシー、ジョーの想いを通して、観る側が事件の真相を探す作品になっています。
朝、グレイシーは花を生けていた。
ジョーはフェイスブックで“蝶の卵”について会話していた。ジョーの行動をどう解するか?エリザベスはグレイシーの生け花に付き合う。グレイシーは「兄のスコットは海軍少将で“秩序はそれ自体が恩恵だ”と教えてくれた」と話し、エリザベスの指輪を見つけて彼氏がいることを知った。
グレイシーが「何で私を演じるの」と聞く、エリザベスは「タブロイド紙にある以上のひとりの女性が秘めたる色々な想いを感じたからだ」と話すと「過去は語らない、そんな余裕なない」という。エリザベスが「自分の経験では過去に左右される、自分が下した決断や人間関係が」と話すと、グレイシーは「時にね」と笑った。が、グレイシーは自分の心に立ち入って欲しくないと思った。ふたりの間に花火が飛んだ。
ここからふたりの駆け引きが始まる。
夕食時、
鶉の料理が出た。グレイシーが森で猟して捕らえたもの。4才のころから兄と狩猟に出たという。子供たちの栄養に気配りしていることを話す。エリザベスがジョーとの初めての出会いを聞くと「韓国系の家族だから知っていた。自分の息子(前夫との間に出来た子)ジョーシーはジョーと同じ学年だから会っているはずだけれど覚えていない。会ったのはバイト捜しに来たときだ」という。ジョーは「ジョーシーとはあまり話したことはない」と言う。「ジョーシーとお子さんたちの関係は?」と聞くと、グレイシーは「映画で描くのは1992年から1994年だから関係ない。何故そのあとのことを聞くの」と反発。エリザベスは「人の心の中は、初めは気が付かなくても、後になってようやく見えてくる“隠れた芽を拾いたい”」と話すと反発するように「ジョーシーと話すわよ、その子キャシディとも。卒業式で会えるから参加する?」とエリザベスを誘った。
エリザベスは邸を去る際、ジョーに「仕事場を訪ねていいか?」と聞くと「いいが、期日はグレイシーに送ってくれ」と答えた。グレイシーとジョーの関係が読み取れるシーンだった。
〇エリザベスはしばらくサバンナに滞在しグレイシーを調べることにした。
エリザベスはホテルに戻り彼氏にグレイシーの印象を電話で語った。「あのような事件を起こし世間に騒がれても彼女に恥や罪の意識がない」に「多分二重人格者だ。TVで観た印象はある意味極端な印象だった」という。グレイシーに疑念を持ってさらに調べることにした。
〇エリザベスはグレイシーの元夫トムに会うことにした。
トム(D・W・モフェット)とカフェで待ち合わせた。トムはカーラという女性歯科衛生士と一緒だった。トムは「グレイシーが高校生で自分が大学生のとき出会い、ふたりとも卒業しプロポーズして結婚。事件が起こるまで何も問題なく普通の家族だった。事件を知ったのはペットショップの倉庫での情事がバレ、警察に彼女が逮捕されたときだった。今は幸せで、彼女にはあまり会わないが彼女も幸せそうだ」と話した。トムは倉庫で行われた情事に全く気付かず、喋り方も鷹揚で、本当にグレイシーを愛していたのか?とエリザベスは疑念を持った。
エリザベルはグレイシーのメアリーが卒業式に着るドレス選びに同行しこのことを確認した。「トムはハンサムな人で結婚生活は孤独だった?」と聞くと「その通り、自分は若かったから完璧な人と彼を選んだ」と話し「これを見て!」と思い出の写真集を渡した。エリザベスはトムの経営するペットショップを尋ね、倉庫を見せてもらった。内部は暗い倉庫で「ここならジョーと密会できる」と確信した。
〇ジョーとグレイシーの日常が差し込まれる。
ジョーは部屋で蝶を飼育している。突然、グレイシーから渡されピンクの封書を探し出す。その後、フェイスブックで仲間と蝶の話をする。
相手が「ストレスがきつい」と云えば「そうだね、よく分かる」などと会話している。台所のグレイシーから「踏み台はどこ」と声を掛けられ、「今行く」と飛び出すジョー。「部屋に虫を置かないで!」と嫌がられる。(笑)
ジョーとグレイシーの幸せそうに見える関係に、ジョーは如何なる思いを抱いているのかと疑問を持つ。
〇エリザベスはショーの仕事場をグレイシーには内緒で訪ねた。
エリザベスは映画出演の準備を進めていた。エリザベスは喘息持ちで呼吸器をつけてジョー役のオーディション影像を見た。タイラー・ユー13才、ペットを扱えるかを試すため「箱のネズミを蛇に食べさせて!」と質問する影像。次は・・・、疲れて止めた。
次の日、ジョーの仕事場を訪ねた。彼はレントゲン技師だった。ジョーとの会話はエリザベスの映画を観た印象などちょっとしたものだった。「あなたのイメージは掴めた、内緒よ」と別れた。優しくて穏やかで誠実という感じだった。

○エリザベスはグレイシーになり切るため、化粧を教わりに邸を訪れた。
グレイシーは「先日は深いにさせて悪かった」と謝り、お互いに母親自慢をしながら、化粧法を教え、エリザベスに化粧を施した。エリザベスは鏡に映る自分の顔に見てグレイシーに似ていると思った。エリザベスはグレイシーを演じ切れると思った。

エリザベスはジョーの部屋を訪ねた。ジョーは希少種の蝶の増殖をしているがグレイシは反対だという。飼育している蝶のゲージを、ジョーの案内で森の中に設置した。ジョーは「映画ではありのままに描いて欲しい」と前置きし、「人は僕を被害者のように見るが一緒になって20年近くなり幸せでなかったら続かない。子供のころ女の子に相手にされなかったが、彼女だけは違った。自分が望んだ」と話した。エリザベスは「あなたはとても若く注目されすぎたから」と疑念を挟み、滞在ホテルに戻った。
ジョーが邸に戻るとグレイシーが泣いていた。金は払うがケーキを贈るなという嫌がらせにショックを受けていた。グレイシーはジョーがエリザベスに会っていたことを知ると「あの人がここに居るのが我慢の限界よ」とまるで子供のように甘えて訴える。ジョーは「大勢の人が観て理解できれば君は楽になる」と落ち着かせた。
〇エリザベスはグレイシー担当だったモーリー弁護士に会った。
モーリー弁護士の指定するレストランで待ち合わせた。音楽演奏付のレストランだった。
モーリー弁護士は警察署の留置場で会ったときの話をした。グレイシーが「情事が見つかった」と相談するから「もし違法だったら大変なことになるぞ」と話すと「愛している、まさかお互いに恋に落ち入るなんて!」と、彼女は悪いことをしたとは思わずすっかり夢中になった、彼は魅力的な子だし彼女は分からなかったらしい。判事に説明すれば分かってもらえると思っていた。その目は輝いていた」と話した。この話をどこまで信用できるか?
モーリー弁護士がバンドメンバーの男を「あれがジョーシーだ」と紹介した。ジョーシー(コーリー・マイケル・スミス)は「あなたは女優だ、知っている」とエリザベスのところにやってきて「あの事件で人生の全てをぶち壊された」と話した。
モーリー弁護士が「傷つかない者はいない」という。エリザベスは「グレイシーは近所で愛されている。お菓子の注文も多い」と話すと「ごく少人数の知合いが何度も通い彼女の手が空かないようにしているためだ」と説明した。
エリザベスはグレイシーには裏があると彼女への疑念が大きくなった。
○エリザベスは母校ジュリアード演劇校に招かれ学生の質問に答えた。
学生からのー役をどう選ぶかの質問に、「理解するのが難しい役。複雑で道徳的に灰色だから興味深い」と回答した。まさにグレイシーを選んだ理由だった。
○エリザベスはジョージア州捜査局の性犯罪者登録を手に入れグレイシーの記録を調べた。
エリザベスはジョーシーに依頼しカーラ経由で手にいれた。ジョーシーから「カーラが資金不足で怒っている」という。(笑)エリザベスは「真実に近づいている」と返事した。この記録ではグレイシーは“黒”だろう。エリザベスはそうしたいように思える。ジョーシーに「ジョーは自信に満ちている」と伝えると、「調査を終え、帰るべきだ」と勧められた。
○チャーリーとメリーの高校卒業式の準備が始まった。
長女のオナーは大学から戻って来た。ジョーは屋根にチャーリーと上り、卒業してからのことについて話していた。チャーリーに「家を出たいか?」と聞くと「早く出たい」という。ジョーは「いいことだ、いい人生を送れ!悪い記憶を与えたか分からないが」と賛成した。チャーリーが薬タバコを薦めるがジョーは「これまでやったことがない」と喫って咳込む。ふたりは親子というより兄弟のような関係。ジョーは薬をやらない真面な生徒だったらしい。事件が子供に悪い影響を及ぼさなかったことにほっとしていた。
エリザベスが厨房に入るとジョーがケーキの作り方を教えながら「ジョーは私より異性関係があった。父親が多忙で家長の役割を担い早く大人になった、妹の面倒も見ていてひとりに喘息の女がいた」と話し、ジョーのラブレターを見せた。「平和とは暑い日のコカ・コーラ。平和とはあなたといること」と書かれていた。
レストランでの卒業祝賀宴席で、
グレイシーは子供たちの成長を喜び、「ジョーは我が最愛の伴侶でともに新たな章に進むけれど子供たちはいつでも帰るところがある」と言い聞かせた。そこにトム一家も家族でキャシディの卒業祝いに来ていた。トムは「過去の家族だ」と挨拶もせず奥の席に去った。
トイレでグレイシーはエリザベスに「今夜が上手くいって、人生完璧だ」という。エリザベスは「少し無邪気すぎない」と批判すると、怒ってか、娘たちを連れてレストランを出た。
そこにジューシーが近付き「事件は解決できたか?俺の推論を言っていいか」と言い、「グレイシーは子供時代にトラウマがあった。12歳のころ継続的に兄たちに求められていた。彼女には言うな!日記を見た」と話した。そして映画の音楽監督を要求した。エリザベスは約束した。
○エリザベスはジョーをホテルに誘った。
卒業宴席からの帰り、ジョーに車で送ってもらう途中で急に喘息で苦しみだし、ジューが呼吸器の扱いを知っていることを知り、ホテルに誘った。ジョーは「後で読んでくれ!」とピンクの封筒を渡した。エリザベスはジョーを押し倒しセックスした。
終わってエリザベスはジョーに「あなたは若い、やり直せる」と話し、彼の本心を聞こうとした。ジョーは「何をして?」と問い返した。そして「あなたが激しすぎる。経験がある。俺にはない、嫌なやつを好きになることはない。彼女が知れば死ぬ。俺に対して忠実だから、俺の人生だ。あなたがやっていることは大人同士がやることか!」と非難しホテルを後にした。
ショーは邸に戻り、グレイシーに「長い間話さなかったが」と前置きし、事件当時の想い「俺は若すぎた」をぶつけた。グレイシーは「あの女優に騙されたか。私を誘惑したくせに」と叫ぶ。ジョーは「13歳だぞ!」と反論、「何歳だろうと関係ない、そうさせたのは誰れ!」とすざましい言合、結論は出なかった。
○エリザベスはグレイシーがジューに宛てに書いたピンクの封書を読んだ!
「こうなったことにどんな代償をも払う。あなたのことをいつも考えている。もう後戻りはできない。出会わなければよかったと思うこともある。子供たちにこのことが大きな影響を与える。私の望みは少なくとも法的に責められなくなるまで秘密を守る。時間を掛けて必要な終止符をうてば子供たちにも理解してもらえる。私たちもいうべき言葉が見つかる。一線を越えた私たち、また超えてしまうだろうと心の中で思った。その線がどこか分からない。その線を引いたのは誰?私に分るのは愛しているだけ。今夜あなたが与えてくれた善を私もあげられたと思いたい、手紙は燃やして!見つかったら大変よ」と涙を流し演じるように読んだ。エリザベスは愕然とした!
○チャーリーとメリーの高校卒業式、
高校出発前、グレイシーは森に狩に出掛けたが、鳥を見つけたが獲るのを止めた。ジョーは殻を破って生まれ出た蝶を空に放った。ふたりは新しい章をつくるために子供らの卒業式に臨んだ。チャーリーとメリーは自信に満ちて嬉しそうに卒業証書を手にした。グレイシーとジョー、そしてエリザベスはそれぞれ異なる位置でこれを見ていた。
同じ白いドレスで卒業式に参列したグレイシーとエリザベス。グレイシーが「私を理解できた、兄たちの悍ましい話は信じないでね」と話しかけた。エリザベスが「なんで知っているの」と聞くと「あの子と毎日話している。不安な人はとても危険そうだから。私の心は安らかよ、そこをしっかり描いて」と註文した。エリザベスはグレイシーのしたたかさに勝てなかった。
○撮影開始!ペットショップの倉庫のシーン、
倉庫ではなく書斎に替えられ、エリザベス演じるグレイシー、「毒ヘビではないのよ、怖がらないで」と優しくジョーに蛇を渡す。3テイク撮ってOKが出たが、エリアベスはもう1テイク要求した。美しい恋物語になっていた。
まとめ:
エリザベスはグレイシーとジョーの言動、行動から曖昧ではあったがグレイシーは“黒”と思ったが確証がない。そこにジューシーから「グレイシーは黒」の情報を得てこれを確認するためジョーをセックス攻めで告白させようとした。しかし、ジョーから渡されたグレイシーの本心が書かれた手紙を読み分からなくなった。彼女を追い詰める自分の行動こそが道徳での罪でないかと恥じた。
グレイシーのピンクの手紙、卒業式前夜のグレイシーとジョーの言合いから真実は分るようで分からなかった。
グレイシーとジョーの言動・行動は捉え方によっていかようにも見える。グレイシーのピンクの手紙に書かれている「その線がどこか分からない。その線を引いたのは誰?私に分るのは愛しているだけ」は“道徳の限界”を問うていると思う。トッド・ヘインズ監督は「道徳は不確かなことが多い、これを描きたかった」と語っている。
グレイシーとエリザベスの心の探り合い。グレイシーは子供のような心を持ちながら大胆な仕掛けをする謎の女性、エリザベスは明晰で論理的に追い詰めるが、自我に溺れ破滅してしまう。とても面白い心理戦だった。
この難しい心理戦をナタリー・ポートマンとジュリアン・ムーアうまく演じてくれました。ジョー役のチャールズ・メルトンも揺れる心を上手く表現した熱演でした。
この作品を一回で理解するのは難しいが、二度観るのも苦しい!(笑)道徳の限界という言葉は覚えておきたい!
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