
白石和彌監督作品。監督の美学観たさに脚を運びました。ラストシーン、確かにそのようになっていました。(笑)
本作、時代劇だが現代に繋がる時代劇“生きる”だと前宣伝されており、これを視点にしていたので、すこしがっかり。こじつければこういうことにはなると思いますが、韓国の時代劇「梟 フクロウ」(2022)ほどの衝撃を受けなかった。
集団抗争劇という視点では面白かった。原作が「日本侠客伝」「仁義なき戦い」シリーズなどで知られる脚本家の笠原和夫氏が残した幻のプロットを基にしているから“宜るかな”でした。立派な入れ墨を背負ったやくざや殺し屋、女郎が絡む賊軍が警官ともいうべき官軍と刀と鉄砲、これに大砲まで持ち出し戦う時代劇「仁義なき戦い」だから面白い。これは、当たり前なのかもしれません。
演じる役者さんの演技は、これはよかった。
監督:白石和彌、原案:笠原和夫、脚本:池上純哉、撮影:池田直矢、編集:加藤ひとみ、音楽:松隈ケンタ。
出演者:山田孝之、仲野太賀、尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐、也一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力、野村周平、他。
物語は、
1868年、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜を擁する旧幕府軍と、薩摩藩・長州藩を中心とする新政府軍(官軍)の間で争われた戊辰戦争。そのさなか、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟に加わっていた新発田藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた、同盟への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた10人の罪人が、新発田藩の命運を握る、ある砦を守る任に就き、壮絶な戦いに身を投じる姿を描く。(映画COMより)
あらすじ&感想(ねたばれあり:注意):
物語は主役ともいうべき駕籠駕籠政(山田孝之)が妻“さだ”(長井恵理)が新発田藩士・仙谷(音尾琢真)に凌辱されたことを知り、仙谷を川に衝き落として殺害。刑場で磔つけられ、その隣に磔つけられているイカサマ博打の赤丹(尾上右近)と挨拶を交わすというシーンから始まる。(笑)とてもテンポが良い。
このあと花火師の息子で知能障害のあるノロ(佐久本宝)が亡くなった兄に似ていると駕籠政の綱を解き、ついでに赤丹も解き放たれるが、発見され、ふたりは首だけ地表に出して地中に埋められる。(笑)
牢に男の家に火をつけた罪で女郎の“なつ“(鞘師里保)が収監され、なつに声をかける坊主の引導(千葉せいじ)、彼は檀家の娘を犯し死刑を言い渡されている、という具合にざっと主要な罪人が紹介される。非常に個性のある罪人たちで、呼名ともにコスチュームに特徴があるので、分かりやすい。
時はまさに、官軍が長岡城を攻撃中も、戦況が好転しない状況。
原因は新潟湊を奥羽越列藩同盟の新発田藩が確保していることだった。官軍参謀の山形(玉木宏)はこれを打開する方策を考えていた。新発田藩家老の溝口内匠(阿部サダオ)は官軍の勢いを見て列藩同盟離脱を考え、若殿の直正(柴崎楓雅)に意見具申すると「官軍が勝つ」と同意。同盟離脱には今がチャンスだった。が、新発田の街を戦火で汚さず、同盟を離脱するには長岡城が落ちるまで時間稼ぎする必要があった。
内匠が時間稼ぎのため官軍進攻路の要点に罪人たちの部隊(賊軍)を置くことにした。
賊軍は隊長に内匠の娘・果那(木竜麻生)の婚約者入江数馬(野村周平)、これに佐幕派の藩士・鷲尾兵士郎(仲野大賀)と数人の藩士、10名の罪人から成っていた。入江には功を上げさせ、兵士郎は捨て駒だった。内匠の命令は「官軍を阻止、成功すれば罪を解く」というものだった。
砦に着いた賊軍は戦闘準備を開始した。
砦に着くと全員に刀が渡された。そして「逃亡した場合は恩赦を取り消す。お前らで処分せよ、任務の終了は煙で知らされる」と示された。

急峻な山間谷に川があり、そこに橋がある。敵はここを通過しなければ新発田に入れない地形。皆はこの地形に驚いた。「時間を稼ぐなら橋を落とせばよい」と言う者が現れ、入江は「後に藩が使う」と説明した。戦術上の重要ポイントだった。
皆は柵の整備にかかった。なつとノロは薪集め。そこで黒い水を見た。ノロはこれをこっそり持ち帰った。
第1日目の戦闘(1868年7月22日)、
入江は「敵を砦内に侵入させ門を閉じて攻撃、せん滅する」作戦だった。この通りに戦闘が進展。賊軍は剣の達人、直心影流の使い手・兵士郎、強盗犯人で剣術家・爺っつあん(山本力)が斬りまくる。これは見事だった!

駕籠政はこの機会を利用して逃げようとしたが、兵士郎に捕まった。首に刀を当てて「死に急ぐな!同じことをしたら斬る」と止められた。
新発田城では、目付として派遣されている奥羽越列藩同盟の米沢藩士の色部長門(松角洋平)、斎藤主計(駿河太郎)から「約束が破られたら困る、若殿に会わせよ」と催促され、「病である」と飲み食いさせ慰留していた。
第2日目の戦闘、
朝、敵の攻撃がない。赤丹は見張り台から望遠鏡で敵情監視中に山中に作業抗があるのを発見した。が、何かは分からなかった。
なつが川で顔を洗っていると、数馬と兵士郎が罪人に恩赦を与えることで言い争っているのを耳にした。
見張り台の半鐘が鳴った。敵は砲弾で責めて来た。本丸にも落下する。橋を渡り、砦に侵入してくる。煙を焚いて敵を目潰しし、爺っつあんと藩士が斬りまくった。敵は大砲の集中射で対抗、橋を駆けて攻撃してくる。これを赤丹と侍の妻を恋仲になり死罪となった二枚目(一ノ瀬颯)が銃で射撃。遂に見張り台が砲弾でぶっ飛ばされた。

本丸に敵が迫る。賊軍との斬り合いが続く。ノロが火玉を投げ込み、人が吹っ飛ぶ。そこら中に遺体が転がる。死亡した敵藩士の頭に火薬を詰めて投げる!爆発して肉片が飛び散る。かなりエグイ映像が続く。これには敵も恐怖を感じた。
赤丹が目を負傷した入江に銃をつきつけた。
赤丹が「いかれたやつだ、大嘘だ!」と言い出し、なつが「聞いた!」と言い、罪人全員が刀を抜いた。入江は「何も知らない」と答えた。ある藩士が「戦が終り次第、口を塞ぐためだ」と云った。駕籠政が「処刑される罪人が黙って従うか?」と藩士を拳銃で撃った。入江が「騙してすまなかった!方便して見せる」と約束した。
内匠の家では果那がいなくなったこと大騒ぎ。彼女は砦に急いでいた。
第3日目の戦闘
敵が門前にやってきて「罪人を受入れる」と投降を勧める。入江は「こいつらを連れていけ!俺は残る」という。武器を捨てて出て行く案もあったが、入江が「橋を落とす!」というので残ることにした。
駕籠政は逃げようと考えた。罪人たちが火玉を籠に入れ、駕籠政を先頭に橋を渡り、駕籠政が官軍と逃亡交渉している間に橋に火玉を設置するという案。駕籠政が橋を渡り「新発田藩士の首だ」と交渉を始めると、敵が襲い掛かった。ノロが火玉を投げ込み、駕籠政を救った。どうやって橋を落とすか?このとき二枚目がこの役を買って出て、火玉を背負い橋の中央で自爆し、橋は落ちた。ノロが亡くなった。
その夜、駕籠政は自分がkロしたとノロの側に寄り添い悼むことにした。駕籠政はなつに慰められ「妻のために野垂れ死にはしない!生きる、死んでたまるか」と決心した。突然、ノロが起き上がった。(笑)

加奈が砦に到着した。入江は「帰れ」と促がしたが、加奈は「一緒に戦う」と留まった。入江は死期を悟り自分の太刀を兵士郎に渡すよう加奈に預けた。賊人たちは「約束を果たしてくれる人が居なくなった」と嘆いた。加奈が「父にやらせます」とこの役目を引き受けた。罪人は6人になっていた。
ノロが汲んできた水を飲んで、これが石油だと分かった、ノロは火玉に石油を染ませ威力を増していた。赤丹が見つけた作業抗は石油発掘のものではないかと推測された。
石油を使って官軍を吹っ飛ばすことにした。
駕籠政が「いずれに付いても晒し首、いい分けない!」と官軍爆破を兵士郎に提案し、兵士郎は認めた。加奈と“なつ”を新発田に帰した。
かつら橋(吊り橋)を使って対岸の作業抗に進出した。ここで石油噴出場所を捜した。石油が噴出し官軍陣地に流れ出す。火を点けると見事に官軍陣地が吹っ飛んだ。後退時、敵に見つかった。爺っつあんが敵を引き受けて抗戦、この間に駕籠政らはかつら橋を使って後退した。爺っつあんは見事な奮戦で最期を飾った。

この日の新発田城。内匠は目付の色部長門から若殿面会を催促された。
内匠はコレラ罹患の農民たちを庭に並べ、次々と首をとばして、武士に二言はないと示した。内匠が血しぶきを浴びながら首を飛ばすシーンは異様な雰囲気だった。これには色部らも顔色を失った。
夜、内匠は切腹して出兵遅延を侘びることにした。切腹の、まさにその時、長岡城が落ちた知らせが届き、城駐在の米沢藩部隊は引き上げた。
第4日目の戦闘、
内匠は加奈から「兵士郎らが砦にいる」と聞き、「始末する」と兵を率いて砦に立った。
駕籠政は逃げることにして山を下る。途中で新発田軍に遭遇した。砦に戻り、ノロに火玉があることを確認し、彼と別れた。
新発田軍が砦に到着。捜索が始まった。赤丹は発見され撃たれ、あっけなく亡くなった。

兵士郎は内匠の「罪人は残っているか?」の問いに「わしは11人目の賊人だ」と戦いを挑んだ。多勢の藩士を相手に斬りまくって内匠に接近し一騎打ちに挑んだ。内匠の拳銃で倒れるが、内匠に一撃を加えた。
駕籠政は大量の火玉を見張り台に上げて爆破し亡くなった。新発田軍を壊滅させるほどの損害を与えた。
官軍が入城。内匠は山縣に「決死隊の首だ」と兵士郎の首を差し出した。加奈の自殺を目にして泣いた。
内匠は城下を戦火から守ったが周辺から大バッシングを受けたと言われている。
ノロはなつと一緒に新潟湊の遊郭を訪ね、駕籠政の妻“さだ”に会い、2両の金(なつが加奈から貰ったもの)を渡した。なつが「あなたの旦那は帰ろうとしていた。あの人の分まで幸せになって」と言葉をかけた。
ノロとなつ、生き残ったのはこのふたりだったが、賑わいの街の中に消えて行った。
まとめ:
ラストシーン、なつとノロが賑やかな街に駆け出していく。
生き残ったのはふたりだけで、最も弱い人だった。弱いから生かされた。砦で亡くなった人たちの分まで、これから精一杯生きるというエンデングでした。
生きるとはどういうことか?官軍だ、奥羽越列藩同盟だ、新発田藩だ、それぞれの思惑で動く。こんなものに左右されてたまるか!おれの正義に生きる!これが“生きる”の定義。彼らはしっかり自分の生き方を見つけたようです。
砦の戦がよく出来ていて、面白い。
戦闘は4日間で終わる。毎日の戦闘に変化があり、賊軍の編成から分るとおり、敵は官軍だけでなく内ゲもバあるという面白い戦闘描写になっている。橋を使った戦い、これはうまいアイデアでした。
戦闘シナリオに基づき、剣げき主体に、小銃と拳銃、砲弾、火玉(花火の改良)によるアクションが楽しめます。爆破シーン、首や肉片がとぶというエグイシーンがかなりあるというのも特色。
出演者のみなさんの演技、とてもよかったと思います。
内匠役の安部サダオさん。血も涙もない、罪人を砦で戦わせ戦さが終れば殺すという、またコレラの百姓の首を平然と斬り落とす。かと思えば、兵士郎の最期を見た時の驚きの顔、娘・加奈の死に当たっての涙、一体どれが本当の顔か。すばらしい演技だったとおもいます。
次に兵士郎役の仲野大賀さん、11人目の賊人としての戦い、これは圧巻でした。“なつ”役の鞘師里保さん、賊人の中での紅一点、腹が座っているというか、存在感がありました。駕籠政役の山田孝之さん、主役であるが目立たない、逃げたり、捕まったり、騙したりと、捕まえどころのない演技。その最期に自分の生き方を見つけ亡くなった。忘れてならないのは爺っつあん役の本山力さん、すばらしい剣げきでした。剣げき一筋の人、時代劇には絶対に必要な人だと思いました。
最後に、時間がすこし長すぎた!
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