
監督ドン・シーゲルとクリント・イーストウッドが組んだ最後の作品ということで、NHKBSで放送されたものを見ました(洋画版)。
アル・カポネも収容されていたというサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ刑務所。本作は1962年6月11日に起きた事件を基に製作されています。
1980年、サンフランシスコ訪れた際、全くこの事件のことを知らず、観光船から島を眺めました。(笑)サンフランシスコを訪れたら必ず訪ねるところ、この作品をお勧めします。
脱出者たちは相当な悪人でしょうが、成功したものがいないという脱出劇を成し遂げたわけで、ドン・シーゲルとクリント・イーストウッドが組んで見せる彼らの正義はしっかりドン・シーゲル節になっており、脱出の手口、看守たちとの駆け引きがスリリングで面白い。薄っぺらだという感想を見ますが、そうではなく、手口を実証試験しアルカトラズ刑務所でロケして迫力のある物語になっています。
監督:ドン・シーゲル、原作:J・キャンベル・ブルース、脚本:リチャード・タッグル、撮影:ブルース・サーティース、編集:フェリス・ウェブスター、音楽:ジェリー・フィールディング。
出演:クリント・イーストウッド、パトリック・マクグーハン、ロバーツ・ブロッサム、フレッド・ウォード、フレッド・ウォード、ラリー・ハンキン、ブルース・M・フィッシャー、ダニー・グローヴァー、他。
物語は、
1960年、厳格な所長のもと、水も漏らさぬ警備態勢がとられていたアルカトラズ島の刑務所に各州の刑務所で脱獄を繰り返したフランク(クリント・イーストウッド)が送り込まれる。凶悪な囚人を敵に回し、命を狙われながらも、大胆不敵な知能犯フランクは意気投合した仲間とともに脱獄計画を進めていった! 不可能と謳われたアルカトラズからの脱走事件、その実録小説を映画化。(映画COMから)
あらすじ&感想:
1960年1月18日、雷雨の夜半、フランク・リー・モリス(33歳)がアルカトラズ刑務所に収容された。
この刑務所には他の刑務所で規則を遵守しない、暴力的行為を行った者、脱走の危険がある囚人が送られてくる。フランクは3つのどう行為にも該当するようだ。(笑)フランクはここで873日を過ごすことになる。
厳重な身体検査を行って、C棟にAZ1441として収容された。
尻の穴の中まで調べられてないから今の日本より軽い。全てにトイレ、ベットが備えられた狭い個室。ベッドがあるのはとてもいい。畳の収容所に入れられた囚人の悩みを聞いてみるがいい。地獄だ!トイレの側に排気口がある。これが後に脱出口になる。

朝になると一斉に独房に出て点呼、そのまま食堂に移動して食事。
テンプレートで配食され、スプーンのみ使える。飲み物は飲み放題。日本より格段とよい。(笑)
フランクが始めて顔を合わせたのが人の良さそうなリトマス(フランク・ロンジオ)だった。彼はネズミを飼っており、所内ではいかなる物品でも手に入る特技(人脈)を持っていた。もうひとり「新米!」と合図を送ってきた凶悪囚のウルフ(ブルース・M・フィッシャー)だった。

食事が終ると所長の面接が待っていた。
所長が「ここでは善行処置なし、自治制度はない。新聞雑誌禁止、全て命令に従え!髭剃りは毎日1回、風呂週2階、面接は月2回FBIの点検が必要」と示した。さらに「脱出に成功したものは一人もいない。警備は最大限、特典は最小限だ」と言い渡し、フランク身元調書“知能指数”を見ながら、爪切りで爪を切った。フランクは部屋を出るとき爪切りを失敬していた。(笑)
入浴時間。全員列を作って短時間にシャワーを浴びる。
ウルフが「相棒を捜している!」と近づく。フランクはウルフの腹に1発喰らわせ、石鹸を咥えさせた。(笑)事後、ウルフはこれを根にもってフランクを付け狙う
ウランクは作業として図書館の手伝いを命じられた。
係は黒人のイングリッシュ(ポール・ベンジャミン)だった。彼はアラバマで理不尽な理由で白人2人を殺害、刑期99の倍の刑で今は図書係を命じられていた。「入所時、生涯決してここから出れないと知らされアキレス鍵を切った」という男。「岩(ロック)で人は強くもなるし逆に弱くもなる」と意味深な言葉をフランクに送った。
休憩時間、囚人たちは屋上で好きなように過ごす。

キャンパスで油絵を描く老囚人・ドク(ロバーツ・ブロッサム)に会った。フランクとは直ぐに気が合い「ウルフに襲われるぞ!」と留意勧告してくれた。
ドクが階段の最上段からフランクを呼ぶ。この位置はボスの位置らしい。ドクが「嫌いか?座れ!」という。「嫌いだ!」と言いながらフランクは座った。(笑)フランクは「脱走者はいないのか?」と聞くと「警備が堅いし、海は潮が早く冷たく脱獄はダメだ」と答えた。

このあとウルフがナイフを持ってフランクを襲い、ふたりは格闘となり、ふたりともD棟に入れられ、フランクは放水を浴びせられる罰が与えられた。処罰を終えて元の独房に戻ると隣に知合いのバッツ(ラリー・ハンキン)が入所してきていた。ふたりは握手をした。(笑)
屋上での休憩では、新しくバッツを加え、ドク、リトマス、イングリッシュが集うようになり、友情が育ってくる。この様子が実に上手く描かれる!
この環境の中で、仲間にとって悲しい事件が起こった。
休憩中に所長が独房を点検しドクが描いた自分の自画像が気に入らず、ドクが絵を描くことを禁止した。ドクは木工作業中に手斧で手を切断し死亡した。フランクには黄色い菊の花を残していた。フランクは所長に対し激しい怒りを覚えた。フランクは独房に戻り菊を見ていて、虫が排気口に消えていくのを見た!
朝の食事時、ここに移された旧知のアングリン兄弟に出会った。
彼らはどうやら前の刑務所でトラブったらしい。アングリンの兄クレランス(ジャック・チボー)が「15年間は耐えられない、出られないのか?」と聴く。
夜、フランクは排気口のコンクリート部を爪切りで掘ってみた。コンクリートは劣化しておりボロボロ剥がれることが分かった。
第2の悲しい事件が起きた。
バッヅの娘が面会に来て、「母の余命は1~2か月ほどだから電話が欲しい」と内線電話で伝えるが、その電話を看守に途中で切られてしまった。バッツが「脱獄する」とフランクに伝えたことがフランクを動かした。

朝の食事時間。フランクがバッヅ、アングリン兄弟に脱獄計画を明かした。
「出口がある。排気口のコンクリート壁はもろいから剥がれる。排気口を拡大する。穴を隠すために排気口の絵を描いて壁に貼り付け、物で隠す。俺がアコーデオンで隠す。作業や脱出を隠すために紙粘土で人形を作りベットに入れておく。必ず監視を置いて作業する。監視係はバッヅだ。排気口から通気抗を伝ってダクトに出る。海を渡るために雨衣を集め接着剤でボートと救命衣を作る」。3人がフランク案に合意した。

夜になるとフランクが壁を堀り出し、バッジは監視についた。ふたりの連携で看守を上手く騙せた。
爪切りだけでは道具が足りない。食堂からスプーンとナイフ、マッチを盗みだし、スプーンとナイフを溶接して柄の長い刃物を作った。溶接まで隠れてやるのだからヒヤヒヤさせられる。(笑)
通気抗を通りダクト位置を確認する。一人ではダクトに届かず、アングリンの兄とふたりでダクト柵を電気ドリルで切り取ることにした。電気ドリルと電気コードをリトマスが上手く調達してくる。(笑)
全て仲間が連携して看守の目をごまかす。これも見所!
フランクは楽器演奏訓練を利用してアコーデオンを盗んだ。アングリン兄弟が雨衣と接着剤を作業場から盗み出す。イングリッシュが協力して雑誌「エポニー」を届けてくれる。(笑)ベッヅが絵を描く特典を得て、紙と絵具を入手する。紙粘土を作り、髪の毛を集め頭髪を着けた人形の首を作った。これで上手く看守を騙せた。(笑)
全ての進行過程をフランクがチェックする。
ある日の朝食時間。ドクの形見の菊を飾って食事中、これを所長が見て「生きては出さんぞ!」と菊を握り潰した。リトマスが激しい怒りで発作を起こし急死した。
フランクは所長が異変を感じたと早期脱出を決めた。
所長がフランクの独房を検査した。
アコーデオンをどけて排気口を見たが、絵の排気口に気付かず、「アコーデオンは上手くなったか」と聞き「練習時間はたっぷりある」と言い検査は終った。その帰りに看守に「フランクを別の独房に移せ!」と指示した。看守は「水曜日」と答えると所長が「火曜日だ」と修正した。
月曜の朝、フランクは「今夜、脱獄を実行する」を伝えた。
イングリッシュに別れの挨拶をした。イングリッシュは「この足では!」と涙ぐんで別れを惜しんだ。
昼の休憩時間。ウルフがナイフを持ってフランクを追いかけるが、これをイングリッシュが止めた。最期までいい友情シーンを魅せてくれる。ハラハラドキドキだった!
夜間、フランクとアングリン兄弟は看守の監視を上手く搔い潜って脱出。しかし、バッヅは監視が厳しく脱出できなかった。
全て計画通りに進み、ボートで沖にこぎ出した。
翌朝、フランクらの脱出に気付き、ヘリを投入した大規模な捜索が開始された。
海岸に雨衣の切れっぱなしとアングリン兄弟の写真がみつかったが、3人の姿はない。捜査員が所長に「溺死の工作では?」と聞くと、「溺死だ!」と応えた。ワシントンからの呼び出しを受けた所長は海岸に打ち上げられた菊の花を見て、海に投げ捨てた。
後日談。徹底的に捜査したにも関わらず3人の遺体は発見されず、わずか1年後、アルカトラズ刑務所は閉鎖されたという。
まとめ:
所長の非常なやり方に苦しむ囚人たち。親の死に目に電話できないバッズの苦しみに遂に切れて脱獄を決心するフランク。決してくじけない、黙々と爪切りで換気口を削り広げる。頭脳で勝負と部品を盗み工具を作り、拡大した脱出口を絵で隠し、紙粘土で人形まで作って看守たちを騙して脱出に成功するスリリングな物語。
これをイーストウッドが寡黙で忍耐強く演じるから堪らない。ドン・シーゲルとイーストウッドで作り上げてきた“男の正義を見る”見納め作品となっていた。
ドン・シーゲルは脱出のアイデアや換気口を削る工具を手に入れるやり方など自らアイデアを出し研究・実験し、随分と気に入った作品になった。それゆえに「この作品を自分の作品だ」と買い取ってしまったのがイーストウッドとの別れの原因のようです。派手なアクションはないが、丹念に作られた作品、ドン・シーゲルにとっては最高の作品だったんだと思う。
派手さはないが、不条理に罪を負うた黒人囚人や、所長の非常で絵を描くことを禁じられ自殺した老囚人に対する温情。最小限の恩典で最大の監視・監禁を誇りにする非情な所長や暴力で君臨する囚人に対する激しい怒りの心情には泣けます。
夜間撮影の多い作品。闇と光りが上手く使われ、ミステリアスで美しい映像になっている。サンフランシスコ特有の夕陽の美しさをふんだんに見せてくれるのもよかった。サンフランシスコを思い出す作品でした。
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