昨日、NHKスペシャルを観た。
東大が起業を推し進めるためにいろいろ動いているという内容。松尾豊東大教授が、自身の研究室の学生や香川の高専生、はては元ヤンキーまで、いろんな才能ある人材の起業や研究、ビジネスを後押しする。番組のほとんどは、松尾先生が日本や海外を飛び回って起業やビジネスを支援するというもので、えらい忙しいなぁと思った。
で、これを観ていて、東京一極集中をむしろおし進めるべきなんじゃないかと思った。
番組には、香川の高専を卒業し、現在は松尾先生の支援を受けて起業した若者が出てくる。若者が起業した会社は、AIとテクノロジーを活かしてインフラを点検するシステムを開発する。たしか5000万の売上があるといっていた。常駐する社員は同級生一人で、拡大のために人材を雇用したいということで駆け回っていた。しかし、スタートアップということで、安定を求める香川大生や高専生から避けられ一人も雇用できていなかった。
一方、東大の松尾研究室に所属する院生が起業したスタートアップは順調で、社員は50名、投資家からの支援もうけられ、あのエヌビディアなどとの提携もしていた。
番組を観ていて、地方と東京のコントラストが印象に残った。香川のスタートアップのビジネスは、これから全国で劣化するインフラの整備を考えたら、たくさんの応募があっていいと思うが、スタートアップというだけで敬遠されている。おそらくあの会社が東京にあれば、東大松尾研究室のスタートアップとともに順調に事業拡大できていたと思う。
ちょうど読んでいたpha『パーティーが終わって、中年が始まる (幻冬舎単行本)』に、彼が出身の大阪や学生時代を過ごした京都に帰らず、東京に居続ける理由が書いてある。
東京は家賃も高いし人も多いし、どこの店も狭くて混んでいる。それに比べると生活の快適さは京都のほうが上なんじゃないかと思う。しかし、そのことを考えるたびに、京都は魅力的なんだけど、まだもうちょっと東京で何かをやっていきたいかもしれない、という気持ちになる。(中略)東京のイベントの多さや、物事の移り変わるスピードの速さ。その速度の中に身を浸していると、自分ももっと何か、クリエイティブなことをやらなければいけないんじゃないか、という圧力を感じる。その圧力で自分は文章を書いているところがある。京都に住んだら生活は充実するかもしれないけれど、生活することに満足してしまって、別に人間は文章を書いたりしなくても生きていける、ということに気づいてしまいそうで、それが怖いのだ。(中略)東京だと、いつまでも浮世離れしたよくわからないことを考えていても許される気がする。今までとは違う何かが起こるかもしれないという期待を、東京という街は今でもかすかに持たせてくれている。(中略)今までに見たことのない何かに期待する気持ちが全くなくなってしまったら、また京都に住んでみようか。でも、もう少しだけ東京で、何もかもがすごいスピードで移り変わってしまう、この異常な速度の都市で、地に足がつかないようなことをやっていたい。 P124-127
番組のなかで、松尾先生が行動力としきりに言っていた。起業に一番必要なのは、行動力だ。どんなに頭がよくても、どんなにビジネスセンスがあっても、起業というアクションを起こさなければ起業できない。
でも、べつにわざわざリスクをとって起業する必要はないのだ、企業に入って安定した道を選ぶこともできる、東大生ならなおさらだ。そのようにして日本がリスクをとることを恐れ新しいことをしないまま、日本は失われた30年(この前まで20年と言われていたのにいつの間にか30年になってる)に突入した。
起業というのはリスクがある行為で、同時にそれは新しいことをクリエイトする行為だ。新しいことをしないとすでにあるビジネスには勝てない。つまり東京は、起業するのに日本で一番適した土地である。phaさんはべつに起業について述べているわけではないけど、東京がいかに起業する風土としてすばらしいか語ってくれている。地に足がついていない、誰も考えつかない、突飛であればあるほど、クリエイティブであるのだ。地方と違って東京は、それを許容するどころか強要する。
個人が起業するのに一番必要なものが行動力なら、環境に一番必要なのはそれを後押しする雰囲気だ。筑駒や灘がどうしてあんなに毎年毎年たくさんの東大合格者を輩出するかといったら、先輩が合格しているからであるというのが『ドラゴン桜』か何かに書いてあった。あいつができたならおれもできる!という根拠のない自信は案外バカにできなくて、そういった雰囲気がある環境は強い。東京はクリエイティブな圧力が強くて、何か新しいことをしなくてはならないというのはしんどい。しかし、それは個人が何か新しいことを生み出す追い風となってくれる。誰も彼もが起業するようになったら、自分もやってみようかという気分になる。一番必要なのはこれだ、気軽にやってみようと思えることが重要なのだ。
で、東京がそういう環境なのは、東京に人がたくさん集まってきているからで、いろんな人間がいるからクリエイティブなことがたくさん生まれるのだ。こうした流れを断ち切るべきではない。
だから、ビジネスの観点からいけば、東京一極集中はおし進めるべきであるし、地方の活性化を求めるなら、東京の人に二拠点生活、多拠点生活してもらうしかない。