
1. はじめに
2024年の初頭からスタートしたHuggingFaceのAIロボットプロジェクトLeRobotはSO-ARMと呼ばれる低価格のロボットアームの提供とともにその知名度とコントリビューターを増やし、今やロボット界で一つのムーブメントを起こさんとする状況になってきている。そんな中、この2025年の6月に世界規模のハッカソンを開催するという話が舞い込んできた。
そして、ここ日本の東京は秋葉原では、ギーク文化最先端の地を再興せんとするものたちが日本のローカル会場として名乗りをあげ始めた。
これは2025年の梅雨に秋葉原を中心に繰り広げられたロボ愛好者たちによる世界を巻き込んだ巻き込まれた熱きハッカソンの記録である! (LeRobot World Wide Hackathonの参加レポートです。)
2. LeRobot World Wide Hackathon
▼参加者と会場
今回のハッカソンでは、44カ国から100を超えるローカル会場と3000名以上の参加登録(オンライン参加を含む)があったとされています。日本では、東京の秋葉原に2会場、本郷と代官山にそれぞれ1会場ずつ、合計4つのローカル会場が開設されました。同一都市に複数の会場が設けられたのは東京だけです。これは、日本国内でのコミュニティがまだ発展していないことや、大規模な会場を準備することが難しい事情が影響しています。
▼開催期間
ハッカソンは各参加者のローカルタイムで、6月14日09:00から6月15日18:00まで開催されました。タイムゾーンを考慮すると、ニュージーランドからアメリカ西海岸までの期間は55+時間となります。各会場はZoomで接続していましたが、パリのHugging Faceチームは開催中ずっと接続を維持していました。
▼最終的な成果
参加者は1~5人のチームに分かれて参加しました。最終的に190チームから成果物が提出され、デモ動画はHugging Faceで公開されています。
デモ動画だけでなく、AIに学習させたデータの提出も求められ、現段階で186以上のデータが投稿されています。それぞれのデータセットで実際のデータ量は異なりますが、たった2日間で集まった量としては驚異的です。 今後、Hugging Faceはこのデータを活用してSmolVLAというVLAモデルの開発を進める予定です。コミュニティの努力が集まり、汎用AI基盤モデルが発展していく未来を感じさせるハッカソンとなり、参加するだけで満足感が得られます。
3. 日本会場について
ハッカソンは、地域のローカル会場とオンライン参加の2パターンで開催されます。募集当初は日本会場がなかったため、日本からはオンライン参加のみでしたが、秋葉原のロボット専門のFAB&コワーキングスペース「ロボ⭐️スタディオン」が会場として名乗りを上げました。さらに、ハッカソンに向けてSO-ARMの3Dプリントサービスを格安で開始し、現在ではLeRobotとSO-ARMの日本の中心地として広く認知されています。


その後、OpenARMを開発しているレアゾン研究所も会場に加わり、5月中旬には秋葉原で2つの拠点体制になりました。最終的には開催1週間前に東京大学の本郷テックガレージとTAI Design Thinking Japanのオフィスもローカル会場として参加しました。
各ローカル会場のホストが連絡を取り合い、調整を行いました。また、素敵なTシャツも作成していただきました。次回は福岡や大阪、名古屋などの他の都市でも開催されるといいなと思っています。この記事を見て興味を持ってくれる方が増えることを願っています。

4. 開催当日の様子
ここからは開催当日の様子を紹介します。私が参加したのは通称Tokyo-1のロボスタさん会場です。そちらでの様子になります。
▼SO-ARMの組み立てからVLAの学習までなんでもあり
ハッカソンのテーマについてはある程度HuggingFaceから示されていましたが、実質はなんでもありです。SO-ARMの組み立てをしているチームもあれば、模倣学習でアプリケーションを実装するチームもありました。おそらく他の会場も似たようなものだったと想像します。
Tokyo-1では私は他チームのサポートをしつつ、自分の作業を行なっていました。日本人だけでなく海外の方も参加しており、日本語と英語(雰囲気英語)で会話を行いながら多国籍なコミュニケーションをローカル会場でも行なっていました。


SO-101ARM組み立て
— ロボスタディオン秋葉原(ロボや電子工作できる貸しスペース) (@robostadion) 2025年6月14日
sim to real
模倣学習
physical AIの色々が並列で行われててまさにハッカソンです。#LeRobotWorldwideHackathon#robostadion pic.twitter.com/UOshbYBFlP
▼技術とダンスで世界とコミュニケーション
このハッカソンでは、LeRobotのDiscordサーバーを中心にコミュニケーションを取り、Zoomも活用しています。このZoomを通じたコミュニケーションは、ハッカソンの特徴の一つでした。
ローカル会場同士は、パリのHuggingFaceをホストとしてZoomで繋がっており、その様子はYouTubeでストリーミングされています。基本的に音声はオフですが、画面には各会場の様子が映し出され、時刻が進むにつれて各タイムゾーンでハッカソンが開始されたり、食事の時間になったりする様子がわかり、非常に面白いです。
また、画面を通じて会場同士のコミュニケーションも行われています。特にブラジル会場では、紙に日本語や韓国語、中国語で挨拶のメッセージを書いて反応を楽しんでいる様子が見られ、離れていても一体感を感じました。
朝の時間帯は、タイムゾーン的にHuggingFace本部と日本会場だけが接続されていたため、お互いカメラの前でダンス対決をしていました。私がTokyo-1に到着した時、ロボスタの店長さんがカメラに向かって踊っていたので、会場を間違えたかと思いました。物理的に離れ、タイムゾーンが異なっていても、ロボットが好きな人たちが集まり、世界中で一体感を持って楽しんでいました。
今でも少しだけYouTubeやXのライブでその様子を観ることができるようです。
LeRobot Worldwide Hackathon https://t.co/22kZEFEUGN
— LeRobot (@LeRobotHF) 2025年6月14日
▼見学したら最後、見るだけではつまらない!
Tokyo-1がコワーキングスペースという特色から、ハッカソン期間中に多くの方がSNSや看板を見て見学に訪れました。変わったところではインドから旅行中のおじさんもいました。また、会場間での移動や交流もあり、特にTokyo-1のロボスタとTokyo-2のレアゾン研究所は近いため、頻繁に相互に移動していました。本郷テックガレージの東大チームの方も訪問いただきました。

見学者の中には、その場で即席ハッカソンチームに参加したり、説明を受けてすぐに手を動かし始める人もいて、見学者も気軽に参加できる雰囲気です。このような良い意味でゆるい雰囲気でした。
結局、静かに見学するどころか、ロボット触らせていただいたり、他の方のJetsonOrinNanoで@gclue_akiraさんにセットアップ方法を教えていただいたり、ありがとうございました!うちにいる子、ちゃんと組み立てようと思います……!意外といろいろ遊べそうで楽しみですー。
— Yukiko Hoshino (@starfsnow) 2025年6月15日
▼参加者の心とお腹アイデアを満たしたありがたい差し入れ
大変ありがたいことに、レアゾンさん、ロボスタさん、見学者の皆様から差し入れがありました。これらの差し入れは参加者が食べると共に、一部ロボットのハンドリング対象として活躍しています。(もちろん無駄にせずその後しっかりと食べてます)。本当にありがとうございました。

本日はありがとうございました!一旦リセットの為帰宅します。明日は8時からハッカソンスタートの予定です。 pic.twitter.com/ICpPOQCcd2
— ロボスタディオン秋葉原(ロボや電子工作できる貸しスペース) (@robostadion) 2025年6月14日
本日の差し入れ誠にありがとうございました!!@ReazonHILab さん@simakaze01 さん@shuzo_kino さん@1214ryota さん
— ロボスタディオン秋葉原(ロボや電子工作できる貸しスペース) (@robostadion) 2025年6月15日
感謝いたします!!! pic.twitter.com/KG1Xb664Ml
5. 自分が取り組んだ内容
▼2人チームでVLAの学習に挑戦
私はおれっちさんとチームを組み参加しましたテーマは、ハッカソン開催の前週に公開されたSmolVLAのファインチューニングです。具体的なタスクとして、テキストの指示に従って指定された枚数のお皿を取り、人に渡すことと、人から渡されたお皿を戻す動作を学習することに決めました。
提出!ロボットハッカソン難しい!#LeRobot #LeRobotWoldWideHackathon #RoboStadion pic.twitter.com/NZwxowwlPl
— masato_ka (@masato_ka) 2025年6月15日
提出ギリギリの15日の16時ごろから全てのインストラクションを通しで行うデモを撮影しようとしましたが、その頃からタスクの成功率が極端に下がり、最後まで通しデモを撮影できませんでした。帰宅後にロボットの様子をチェックしたところ、各所のネジが緩んでおり、特に手首関節のロール軸のネジがほぼ外れている状態でした。やはりロボットなので、メカ部分の影響は大きいと感じました。メンテナンスと基本動作はしっかり行うべきです。
▼他会場からのSNS投稿に翻弄される。
最終的に上記のネタにたどり着くまでには紆余曲折がありました。1日目の夕方から、SNSやDiscordでHugging Faceのメンバーから「Sooooo Cooool」と言われているチームの話があり、それがTokyo-2のteam-npakaさんたちによるエアホッケーネタでした。
Tokyo-1も「So Cool」と言われたいという気持ちから、夕方にネタの再検討を行い、アキヨドにドミノを買いに行くなど、他チームのテーマに翻弄されていました(最終的に私の子供のおもちゃ箱に収まりました)。
🤖SO-ARM101 Air Hockey 🏒 by Team npaka studio.
— 内田政俊【ウチダマサトシ】 𝕏 UCHIDA Masatoshi (@S_Ishimaru) 2025年6月15日
We’ve just uploaded our dataset for the LeRobot Worldwide Hackathon🚀https://t.co/ZcyzCiSbl4#LeRobotWorldwideHackathon #lerobot pic.twitter.com/622hKyM5gi
過去のハッカソン参加経験から、準備が8割だという持論がありますが、今回はどんなネタをやるかを事前に検討する時間がありませんでした。もう少し真面目にネタ検討すればよかったなと思ってます。
6. デモと結果
最終的に投稿された250+のデモは以下のサイトに動画が掲載されています。とにかくチュートリアルをやってみました、これをやりたいです、というレベルのものから、モデルを拡張して学習させたデモ、ガウシアンスプラっティングで合成データ作成にチャレンジしたものなど様々なあハイレベルな取り組みまで揃っています。正直これだけのAI ロボティクスに関するデモが一度にたった55時間ちょっとで出来上がったのは驚きではないでしょうか?ぜひいろんなチームの動画を見てください。
最終的に投稿された250以上のデモは、以下のサイトに動画が掲載されています。チュートリアルを試したものや、モデルを拡張して学習させたデモ、ガウシアンスプラッティングを用いて合成データを作成したものなど、さまざまなレベルの取り組みが揃っています。これだけのAIロボティクスに関するデモが、わずか55時間ほどで完成したのには驚きます。ぜひいろんなチームの動画をご覧ください。
▼ハッカソンの優勝チームと入賞チーム
ハッカソンなので1位という概念があり、最終的に参加者の投票で上位10位が決定されました。優勝したのはLeChefというプロジェクトです。
LeChefは、会話をしながら複数のサンドイッチメニューを作れるロボットです。LLMにはMistralを使用し、会話内容からメニューを決定し、ACTモデルに必要なメニューを伝えます。メニューはone-hotベクトルでエンコードされ、あらかじめACTの入力として条件を学習させています。また、台座をリニア機構で動かせるようにし、こちらもACTの制御対象となっています。テーマ、AI技術、メカのすべてにおいて、参加者全員が納得する完成度でした。
▼そのほか30位までの入賞
そのほか30位までの入賞は以下の通りとなっています。日本国内チームも入っており、4位にTAIのチームが、我々のチームのPJも15位に入賞しました。さらに18位にえいいっく(箸ロボット)、29位にteam-npakaが続いています。世界から投稿された300近いPJからの上位30に入りました。本当におめでとうございます。
さらにここに入賞していないものも面白いものがたくさんあるので機会があればどこかで紹介したいです。
Let’s turn the world into one giant robotics lab!
HuggingFaceのオーガナイザーやローカル会場のオーガナイザーの方々の苦労は計り知れません。非常に楽しめたイベントでした。本当に運営の皆様には感謝の言葉しかありません。
個人的に少し残念だなと思ったのが、参加者が東京に偏っていた(たように見える)。さらに国内のアカデミックや企業からの興味関心が得られなかった(私の知る限り東大チームのみ参加)ように見えました。所詮は素人のホビーと思われているんだと思いますが、The next big thing will start out looking like a toy と捉えてこういったコミュニティベースの取り組みにも是非興味を持ってもらえると嬉しいです。
Let’s turn the world into one giant robotics lab!
この言葉はHuggingFaceから送られてきたこのハッカソンの合言葉です。
LeRobotはやる気があれば誰でも簡単にAIロボティスクを始められる仕組みです。専門的な知識がなくても始められます。もちろん専門的な知識があればこれをベースにして、よりすごいPJを立ち上げることもできます。さらにみんなでデータを集めていくことで、オーガナイザであるHuggingFaceが基盤モデルを作ることができ、その成果をまたコミュニティで使っていくことができる。AI ロボティクスの実現に素人から玄人までコミュニティーベースで貢献することができるのです。まさに「世界を一つの大きなロボティクスの研究室」にすることができます。
こんなことが実現できるのか正直謎でした。しかし今回のハッカソンでその鱗片を垣間見た来ましす。皆さんもこの世界で最も巨大なロボティクスラボのラボメンになりたい方はいますぐLeRobotをインストールして動かすことから始めていきましょう!
第二回が開催されるかはわかりませんが、とにかくSNSを見てあーだこーだ言ったり、見て見ぬ振りするくらいだったらとっとと参加してしまった方が楽しいですよ。やりましょう!