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【12/23】インタビュー記事界隈を、救いたい

私がインタビュー記事を書けるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)

京大漫トロピー9年目、博士3回生のレニと申します。今年度博士論文を書いたり博士論文を書いたりしていたので、サークルに一度も顔を出しませんでした。なので、このアドベントカレンダーが、事実上今年度初めてのサークル活動です。今年のカレンダーのテーマは「復活」ということで、僕もこのサークルに「復活」できたところで、早速本題に入りたいと思います。


最近、色々な学生サークルが、作家の先生にインタビューをし、それをブログや会誌などに記事として載せているのを見るようになりました。もちろんこうしたインタビュー記事は昔から様々な雑誌やメディアでなされてきた事ではありますが、特に近年の大学系創作・批評・漫画etcサークルの隆盛とWebでの発信の多様化に伴い、学生によって書かれた作家へのインタビュー記事が増えているように感じます。かくいう私もその一人で、修士論文の時には90年代の同人作家の先生方にインタビュー調査をしたり、その流れで別のサークルの会誌にインタビュー記事を書いたりしていました。


しかし!その中には、「この記事、もう少しなんとかならんかったんか......?」というものも、しばしば見受けられます。果たして、本当にこれでいいと思っているのか、それともこれではダメだと思っているけど締切に追われてしまったのか、はたまたインタビュー記事の作り方をそもそも知らないのか......。


そこで!今回は、僕が今までインタビュー記事を作るにあたり、どういうことを考えたり、どういうことを行なったりしてきたかを、まとめてみようと思います。もちろん僕のインタビュー記事の出来がめちゃめちゃ良いと言うつもりも、僕のやり方だけが正解であると言うともりもありませんし、人には人それぞれのやり方があると思います。それでも、少なくともインタビュー記事を作っている/作ろうとしている方にとっては、少しでも何らかの参考になるのではないかと思います。あるいは、こんなやり方があるぞ!とか、このやり方はおかしい!ということがあれば、ぜひ指摘してください。高め合ってまいりましょう。

0、まず、悪い例


インタビュー記事の作り方を話す前に、まず、悪いインタビュー記事の例を出したいと思います。このインタビュー記事の衝撃たるや。インタビュー記事を書くとはどういうことかを教えられ、こういう記事は書かないようにしようと心に誓い、今でも机の上に額縁に入れて飾ってある次第です。


それは、『電撃G'sマガジン』2001年5月号の、『シスター・プリンセス』や『ラブライブ!』の原作者である公野櫻子先生のインタビューです。


この記事のヤバさを理解してもらうには、まず実際の文面を見てもらったほうがよいでしょう。最初のやりとりがこちら。

編集部(以下編):さっそくですが、いまだから話せる、『シスター・プリンセス』企画当初のお話をお聞かせください。
公野先生(以下公):もともとは、編集部の企画なんですよ。なんで、妹っていうテーマも「なに企画、なに企画」ってみんなでいろいろ考えていた時に、“妹企画”はどうだろうって……。「じゃあ妹はどう?」って振られた時に、「あ、それじゃあ」ってやり始めたのが現実かなあ。


編:“妹もの”が最初に、「いいな」と思った理由はなんだったのでしょうか?
公:それが……それは……なんだろ……。“家族っぽいもの”……が「やっぱりいいよね」っていうのがもとからあって……。ただのギャルっていうのじゃなくて、家族だったら1つつながりがあるじゃないですか。もう恋人じゃなくても、つながっていなくちゃいけない。何があっても絶対つながっているという、その辺の感じと……あとは、“自分より目下”っていうところが「まあいいよね」ってあって、それってちっちゃい動物を見ててかわいいっていう感じ、……そういうところ……だと思いました。


頭おかしなるで。スリムクラブの漫才か?


異常な数の6点リーダー、ダブルクオテーションと鉤括弧の併用、執拗なまでの言い換え......。一番初めに読んだ時、この最初のやりとりを読んだ時点で、「公野先生ヤバい人じゃん」という印象を持ちました。


一番ヤバいなと思ったのはこのくだり。

編:「シスター・プリンセス」を書くにあたって、公野先生ご自身の視点というか立場はどのように取っていらっしゃるのですか?妹としてなのか、妹の友達としてなのか、それともまったく違うのか……。
公:あんまりそういうのは考えて書いてなくて、計算とかはあんまりしてないんですよ。ただ、もともとから、ゲームってわりとリアルじゃないキャラクターが多い気がして……(笑)。あんまりこうリアリティのない、女の子から見て気持ちの悪い女の子のキャラクターって多いんですよ、やっぱり。だからそういうのがいやだなっていうのは、ずっとずっとあって……。だからって、ゲームなのにすごく手ごわーい女の子を作ろうっていうのは全然なくて、”リアリティがあって、なおかつかわいい”……、そういうのを目指して書いているので……。そう、”女の人が書いているならでは”のリアリティはきっとあるんだと思います。あと、やっぱり、自分のなかにないものはどうしても……。これはノベルを書いてても思ったんですけど、自分のなかにないものは出てこない……、どこを叩いても。やっぱり、男の人が書いたものとは違うところがあると思います。自分の思い出話とかも入ってます。ちっちゃいころの経験談みたいなものは、いっぱい入ってますよ。私も実際、兄が2人いるので。末っ子で……その……妹の気持ちというの、よくわかりますし、きっと、世の中にいろんなお兄ちゃんがいるのも……そう、逆に2人いたことで、―ものすごくタイプが違ったんですよね―いろんなお兄ちゃんがいるっていうのもすごくわかってるので、そういうのはやっぱり生きているとは思います。だからといって、私が"ブラコン”とは思わないでいただきたいですけれど(笑)。


内容が、ないよ〜〜〜。なのに、長いよ〜〜〜〜〜。


強迫的なまでの6点リーダーと婉曲表現(この箇所だけで、6点リーダーが10回、「やっぱり」4回、「あんまり」「すごく」が各3回使われている)。そして全く手を加えられた形跡のない文章(公野先生の2~5文目と、6~12文目が、それぞれ全部同じ話をしている)。ここまで来るともはや、公野先生がコミュニケーションのできないヤバい人であることを編集者が暗に告発しようとしているのかとすら思います。というか、最初に読んだ時はマジでそう思いました。


要するにこの記事、話し言葉がそのまま文字に起こされてるんですよね。もちろん、我々が普段話すときには、間やつなぎ言葉をとって会話のリズムをとったり、婉曲表現を使って言葉をぼかしたりしますし、考えながら話す中で同じことを何回も繰り返したりします。しかし、それがそのまま文字に起こされると、読み物としては非っ常ーーーに読みづらくなります。ノイズでしかないですから。


もちろん、これは公野先生のコミュニケーション能力の問題ではなく、それを編集する者の問題です。2021年の『電撃G'sマガジン30周年感謝号』では、公野先生の新たなインタビュー記事が掲載され、そこで一番最初の質問が再び問いかけられています。その時の回答がこちら。

―1999年3月号より『Sister Princess』(以下、『シスプリ』の連載が始まりますが、どのような経緯で制作されたのでしょうか?
オリジナルコンテンツがないと雑誌が持たない、というところからスタートしました。前身の電撃PCエンジン時代から雑誌の存続が難しいといわれていましたが、その中で『女神天国』などの読者企画は人気があり、それを目当てに雑誌を買ってくれる方がいました。その流れの中で新しく読者参加企画をやろうと。1つ作れば当たるというものではないので、いろいろトライ&エラーでやっていこうという企画の中に『シスプリ』がありました。


別人か......??


「……」「やっぱり」「あんまり」「すごく」などの言葉は全て削られ、一文と一内容が対応しており、各文もおそらく適度な要約の手が加えられていて簡潔にまとまっている。おそらく、いくつかのやりとりを重ねた、あるいは話しながらさまざまに内容が展開していったものを、一つの発話として編集し直しているのでしょう。


この事例から僕は、「インタビュー記事は、インタビューの「結果」ではなく、インタビューという「素材」を、第三者の読み手に対してわかりやすく提示するために手を加え、「記事」として編集し直したものである」ということを、肝に銘じたのでした。


ではこれを踏まえて、僕が実際にどういう形でインタビュー記事を作ってきたのかを、順を追って整理していきます。

1、アポをとる


 まず初めに、インタビューしたい人に連絡をとらなければなりません。連絡先を公開されている方ならばそこに連絡をしたり、コミックマーケットなどのイベントに参加されている方ならば直接挨拶をしたりします。


 ただしその時、相手に対して最大限の敬意と配慮を忘れてはいけません。相手からすれば、マジで知らない人間から突然連絡が来て、自分の話をするために自分の時間を割いて欲しいと言っているわけですから。メールなどで連絡をする場合、ビジネスメールの書き方をしっかり押さえます(調べれば出てきます)。また対面で挨拶をする場合、個人ないしサークルの名刺や、今までの活動概要がわかるもの(会誌など)をお渡しすると、よいかと思います。自分の場合は、コミックマーケットの会場にて挨拶を行い、名刺と論文の抜き刷りをお渡ししていました。


 そしていずれにしても、こちらから連絡をとる段階で、インタビューの概要すなわち、なぜその人に話を聞きたいのか、どのようなインタビューをするのか(内容、形式、ざっくりとした質問項目など)、いつ、どのような形で公開されるのかなどは、相手に伝えておくべきです。またこの時、あるいはその後のやり取りの中で、インタビューは録音と文字起こしと編集を行うこと、記事の公開に際し改めて内容の確認をとること、内容については要望があれば修正や記事自体の取り下げが可能であることについても、相手に伝えるべきです。

2、インタビューをする


 相手へのアポと、依頼の承諾がなされたら、いよいよインタビューを行います。特に作家の方にインタビューを行う時は、事前に、今まで書いてきた雑誌や作品などの最低限の情報を押さえておきます。また過去の同人活動歴について調べておくと話のタネになるかもしれません。が、同人活動は基本的に趣味の活動なので、話されたくない・詮索されたくないという方がいらっしゃることは、念頭に置いておきます。あと、過去にその人がほかの媒体でインタビューを受けていないか、受けていればその時にどのような話をされていたかも、できればチェックしたほうがよいです。


 インタビューを行う時は、録音を行います。録音を行う際も、その時に許可をとります。また、録音するデバイスは1台ではなく、2台以上用意するのが吉です。1台しか用意していなくて、その1台が機材トラブルで録れてなかった〜〜なんてことになったら、目も当てられません。


 インタビューの際、何をどのように聞くか。自分の場合、第一に核となる質問をあらかじめある程度決めつつ、しかし第二にその質問項目にとらわれすぎず、話の流れでさらに深掘りや脱線も厭わない、ようにしていました。専門的に言えば、半構造化インタビューというやつです。もちろん、あらかじめ話の流れを明確に決めたり、逆に何も聞くことを決めず雑談ベースでやるインタビューもあると思いますが、自分は半構造化インタビューがいちばんやりやすいと思っています。


 その都合上、話題は必然的にあちこちに飛んだり行ったり来たりしますが、どうせ後で編集するのでこの段階で気にする必要は全くありません。僕の場合は、自分の持っている質問をベースにするのではなく、相手からなるべく多くの話を聞くことをベースに、ときには適度に相槌を打ったり、あえて何も話さず傾聴の姿勢を見せたりしながら、語りを引き出すことを意識していました。


 と言いつつも、基本的には素直に会話を楽しむことが大事だと思います。しかしインタビューに慣れていないと、とくに会話のいちばん初めにおいて、うまく話せなかったり言葉につまったりして、あまり楽しくない、あるいは必要以上に固い雰囲気になることが多々ありました。なので自分の場合は、慣れないうちはあらかじめ、インタビューの始め方を定型文的に用意していました。つまり、最初の挨拶・自己紹介・インタビュー概要の説明、最初の質問くらいまでを、原稿に書き起こしてしまうのです。話し始めてしまえば、あとは「ええい、ままよ」でなんとかなります。多分。ならない時もあるかも。


 あとは......なんだろう。時間を割いてくださった相手への敬意と配慮と感謝、そして社会人としての常識を忘れないことでしょうか。

3、文字起こしをする


 インタビューが終わったら、文字起こしをします。僕の場合、10分のインタビューを文字起こしするのに30~1時間くらいかかります。一番地味でつまらない、そして泣きたくなる作業です。特に好きな作家の先生にインタビューした時など、早口キモ・オタクと化した自分のキモ・ボイスと向き合い続けることになるので、死にたくなります。サークルなどで手の空いた人がいるならば、分担するのがよいです。


 文字起こしのやり方には色々あります。自分がよくやっていたのは、録音した音声を耳で聞き、同じ言葉を口に出し、それをWordやGoogle翻訳などのディクテーション機能を用いてデバイスに書き起こしてもらう方法です。また最近では、AIで文字起こしをしてくれるサービスも充実しているので、下起こしとしてそれを使うのもいいでしょう。Microsoft365を契約しているなら、Wordに音声を取り込み、トランスクリプト機能で文字起こしさせることもできます https://www.notta.ai/blog/transcription-feature-word-method。しかし一つ言えることは、音声を耳で聞いて文字を打ち込むのが、一番非効率だということです。時間を失い、腱鞘炎になり、サークルのメンバーから締切を守れと詰められるだけなので、お勧めしません。


 文字起こしを行う時に問題となるのが、初稿の際に文章をどこまで整えるか、ということです。これが案外悩ましい。文字起こし段階であまりにも発話に手を入れてしまうと、せっかくのインタビューの「生の会話」感を損ない、講義テキストでも読んでいるかのような固い文章になりかねません。かといって、発話をそのまま文字起こしすると大抵、人間の会話とは思えない文章が出来上がります。漫トロには、僕が入会した時には既にあったくらいに代々伝わる、「悪い文字起こしの例」がOnedriveに保存されています。


 僕の考えでは、文字起こし段階で求められるクオリティは、冒頭で「悪い例」として示したあたりが最低ラインだと思います。つまり、読み物としては明らかに不自然だが、話し言葉として見るならば内容は理解できるという基準です。これくらいのクオリティであれば、次に述べる編集のプロセスを初めて経た後の校正第1稿で、真っ赤だがまだ判読できるくらいの校正原稿が残っているはずです。逆にこれよりも文字起こしが甘く、この項で示した「悪い文字起こしの例」くらいになると、首切られたんかってくらい真紅に染まった校正原稿を前に、これはもう一から文字起こしをし直した方が早いんじゃねの空気になります。


 そして可能ならば、あるいは経験のある人間が担当するならば、文字起こし段階で次に述べる編集プロセス4-Aまで、文字起こし段階で既に行われていること(通称、ゼロ次校正)が望ましいと思います。いずれにせよ文字起こしの段階において行うべきは、ただ文字を起こすことではなく、効率よく、かつ話し言葉の読み物として読みやすいかを意識して手を加えながら文字を起こすことだと思っています。

4、編集をする


 今までの段階で、「話し言葉」としてのインタビューが、「読める話し言葉」の形に文字起こしされました。この後に行うのは、「読める話し言葉」としての文字起こし原稿を加工・成形し、文字として読んで違和感のない「読みもの」へと変えていく作業です。


 漫トロをはじめ少なくないサークルが、初稿として提出された原稿を整えることを「校正」と呼んでいます。しかし、こと座談会やインタビューなどの文字起こし原稿においては、「校正」という言葉は適切ではないと思っています。「校正」という言葉は「誤字脱字を正す」というニュアンスを強く持ちますが、文字起こし原稿を前に我々が実際に行っているのはむしろこうした「編集」の作業であり、「校正」という言葉はこの「編集」の作業を透明化し、存在しないプロセス、ないし熟練の会員による職人芸として後景化してしまいます。なのでここでは、あえて「校正」ではなく「編集」という言葉を使います。


 改めて、編集とは、文字起こし原稿の誤字脱字を正すことではありません。文字起こし原稿を加工・成形することで、「読みもの」としての「インタビュー記事」に変えていく作業のことです。僕はインタビュー記事の編集を、A:個々の発話を整えるミクロレベルの編集と、B:まとまった発話群や、一つの大きな話題、そしてインタビュー記事全体の流れを整えるマクロレベルの編集に分けて考えています。順に説明していきます。

4-A:ミクロレベルの編集

 個々の発話を、話し言葉の文字起こしから、読みものとして自然な、記事の文字にしていきます。漫トロ向けにいうならば、総合座談会や個人座談会でいつもやっていることです。また、詳しくはなめしの引き継ぎないし個人寄稿を読めばわかります。


 なので、僕がここで説明するのは屋上屋上屋を架しに架すことになって恐縮ですが、ざっくり自分が意識していることをまとめると、だいたい以下の通りでしょうか。

話し言葉特有の、リズムをとるための繋ぎ言葉や、婉曲表現をカットする。
②文中や文間で同内容が繰り返されている場合は、適宜要約を行う。
③長い発話は、相槌やつっこみ、新しい質問を加えたりして、区切る


例えば、一番最初の「悪い例」を、これら3点を意識しながら編集してみます。元の文章がこれ。①を行うことを念頭に置き、いったん繋ぎ言葉と婉曲表現だけ、赤字で示してみます。

編:「シスター・プリンセス」を書くにあたって、公野先生ご自身の視点というか立場はどのように取っていらっしゃるのですか?妹としてなのか、妹の友達としてなのか、それともまったく違うのか……
公:あんまりそういうのは考えて書いてなくて、計算とかあんまりしてないんですよ。ただ、もともとから、ゲームってわりとリアルじゃないキャラクターが多い気がして……(笑)。あんまりこうリアリティのない、女の子から見て気持ちの悪い女の子のキャラクターって多いんですよ、やっぱりだからそういうのがいやだなっていうのは、ずっとずっとあって……。だからって、ゲームなのにすごく手ごわーい女の子を作ろうっていうのは全然なくて、”リアリティがあって、なおかつかわいい”……そういうのを目指して書いているので……そう、”女の人が書いているならでは”のリアリティはきっとあるんだと思います。あと、やっぱり、自分のなかにないものはどうしても……。これはノベルを書いてても思ったんですけど、自分のなかにないものは出てこない……、どこを叩いても。やっぱり、男の人が書いたものとは違うところがあると思います。自分の思い出話とかも入ってます。ちっちゃいころの経験談みたいなものは、いっぱい入ってますよ。私も実際、兄が2人いるので。末っ子で……その……妹の気持ちというの、よくわかりますし、きっと、世の中にいろんなお兄ちゃんがいるのも……そう、逆に2人いたことで、ーものすごくタイプが違ったんですよねーいろんなお兄ちゃんがいるっていうのもすごくわかってるので、そういうのやっぱり生きているとは思います。だからといって、私が”ブラコン”とは思わないでいただきたいですけれど(笑)。


まず、①繋ぎ言葉と婉曲表現だけ消してみます。

編:「シスター・プリンセス」を書くにあたって、公野先生ご自身の視点・立場はどのように取っていらっしゃるのですか?妹としてなのか、妹の友達としてなのか、それともまったく違うのか……。
公:そういうのは考えて書いてなくて、計算はしてないんですよ。ただ、もともとから、ゲームってリアルじゃないキャラクターが多い気がして(笑)。リアリティのない、女の子から見て気持ちの悪い女の子のキャラクターって多いんですよ。そういうのがいやだなっていうのは、ずっとずっとあって。だからって、ゲームなのにすごく手ごわーい女の子を作ろうっていうのは全然なくて、”リアリティがあって、なおかつかわいい”のを目指して書いているので。”女の人が書いているならでは”のリアリティはあるんだと思います。あと、自分のなかにないものはどうしても。これはノベルを書いてても思ったんですけど、自分のなかにないものは出てこない、どこを叩いても。男の人が書いたものとは違うところがあると思います。自分の思い出話とかも入ってます。ちっちゃいころの経験談は、いっぱい入ってます。私も実際、兄が2人いるので。末っ子で妹の気持ち、よくわかりますし、世の中にいろんなお兄ちゃんがいるのも、2人いたことでーものすごくタイプが違ったんですよねーいろんなお兄ちゃんがいるのもわかってるのは生きているとは思います。私が”ブラコン”とは思わないでいただきたいですけれど(笑)。


 まだまだ全然読みにくいですね。なので次に、②文中や文間で同内容が繰り返されているところを、適宜要約していきます。この文章の場合、公野先生の2~6文目は全部「ゲームの女の子にはリアリティがないので、自分はリアリティがあるキャラクターを作りたい」みたいな話をしているっぽく、7~13文目は「自分の体験をベースにして物語を描いている」みたいな話をしてるっぽいです。14文目がオチなので活かしたいですね。9文目の「男の人が書いたものとは違う」話は、この流れだとやや浮いている感じがあるので、消すことも念頭に置いておきます。その他の部分も整えつつざっと手を動かすと、こんな感じになりました。

編:公野先生は「シスター・プリンセス」をどのような視点で書いていますか?妹としてなのか、妹の友達としてなのか、それともまったく違うのか。
公:そういうのは考えたり計算したりしてないんです。ただ元々、ゲームってリアリティのない、女の子から見て気持ちの悪い女の子のキャラクターが多い気がして、それがいやだなっていうのは、ずっとありました。なので、リアリティがあって、なおかつ可愛いのを目指してます。それで男の人が書いたものとは違う、女性作家ならではのリアリティはあるんだと思います。あと、自分の思い出とか経験は、いっぱい入ってます。自分の中にないものは、叩いても出てこないので。私も実際、兄が2人いるので、妹の気持ちはよくわかりますし、2人ともタイプが違ったので、世の中にいろんなお兄ちゃんがいるのもわかります。そういうのは生きているとは思いますね。だからといって、私がブラコンとは思わないでいただきたいですけれど(笑)。


 どうでしょうか。ぱっと見、まだ長いですね。なので最後に、③「女性作家の生むリアリティ」の話と、「自分の体験の反映」の話の間に、編集者のいい感じの相槌と質問を挿入してみます。

編:公野先生は「シスター・プリンセス」をどのような視点で書いていますか?妹としてなのか、妹の友達としてなのか、それともまったく違うのか。
公:そういうのは考えたり計算したりしてないんです。ただ元々、ゲームってリアリティのない、女の子から見て気持ちの悪い女の子のキャラクターが多い気がして、それがいやだなっていうのがありました。なので、リアリティがあって、なおかつ可愛いのを目指してます。それで男の人が書いたものとは違う、女性作家ならではのリアリティはあるんだと思います。
編:なるほど。
公:あと、自分の思い出とか経験談は、いっぱい入ってます。自分の中にないものは、叩いても出てこないので。
編:ということは、公野先生にも「お兄ちゃん」が?
公:そうなんです。私も兄が2人いるので、妹の気持ちはよくわかりますし、2人ともタイプが違ったので、世の中にいろんなお兄ちゃんがいるのもわかります。そういう体験は生きていると思いますね。私がブラコンとは思わないでいただきたいですけれど(笑)。


 だいたいこんな感じでしょうか。少しはマシになりましたかね。これで一応、この部分の「文字起こし原稿→編集1回目→校正第1稿」あるいは「文字起こし→ゼロ次校正→文字起こし原稿」が完了したことになります。ここから、2回目、3回目と編集・校正を繰り返し、一つ一つの発話を洗練させていきます。

4-B:マクロレベルの編集

 まとまった発話群や、一つの大きな話題、そしてインタビュー記事全体の流れを整えていきます。本当はAの編集と同時並行でやれたら一番いいのですが、たいてい文字起こし初稿の初回〜2回目の編集くらいまでは、赤が入れられまくって血の海みたいになっているはずなので、実際にはAの編集がある程度進んでからやることになります。
 

 一人の人間と数十分〜数時間にわたって会話し、その人の人生について聴くという経験は、プロの編集者や質的研究者でもない限り、おそらく殆どの人間が体験しないことでしょう。また2で述べたように、そもそも(半構造化)インタビューという営為自体、ある種の「水物」性を伴っています。なので、最初からインタビューの内容が筋の通った語りになっていることはまずありません。話が行ったり来たりあちこち飛んだり、明らかな雑談・脱線・オフレコがあったり、既に話していた内容に数十分後に戻ってきたりしているはずです。4-Aで個々の発話を読みやすくしても、話の流れや順番がばらばらなままでは、全体として結局どういう話がなされていたのかが分かりづらいという点において、可読性を著しく下げるものです。


 したがって、構造化されていない数十分〜数時間単位の会話を、その全体があたかも最初から筋の一本通った語りであったかのように、組み立て直すことが必要になります。「インタビューの文字起こし」を「インタビュー記事」に編集する上での、最も大事なポイントは、僕はここだと思っています。こういうこと、総合座談会でも個人座談会でもしないですからね。


 ざっくり自分が意識していることは、以下のようなことでしょうか。

①個々の発話を、内容のまとまりごとにくっつけたり、順番を入れ替えたりする。
②こうしてまとめた発話群を、話の大きな流れごとに、適切に章に分けてみる。
③全体をざっくり読んでみて、同一・類似の内容の章があれば、章ごとくっつけたり、入れ替えたりする。
④全体的な話の流れから明らかに浮いている章は、割愛する。


 もちろん、このようにインタビューの発言を「編集」という形で加工・成形することには、抽象的な表現をすれば暴力性が伴うものであり、 細心の注意が必要であることは言うまでもありません。。実際の会話のやりとりを、こちらの一方的な都合と判断で改変してしまうのですから。質的研究に用いるための社会調査としてのインタビューであれば、文字起こし段階で発話を最小限整えることはすれど、4で述べてきたように大きく改変すればもしかしたら「捏造」にあたるかもしれません。しかし我々が行っているのは、質的調査ではなくインタビュー記事の作成です。その目的は、インタビューをしたという調査報告を行うことでも、インタビュー記事の議事録を作成することでもなく、インタビューの内容をわかりやすく第三者の読み手に伝えることです。だからこそ、大胆に、しかし細心の注意を払いながら、文字起こしを「編集」することが必要だと考えています。特にインタビュー相手の発言を編集する際には、発言の意図を適切に汲み取った編集ができているか、発言の意図と異なる解釈のもとで編集をしていないか、常に気を配るようにしています。


 そして、この「編集」を行うにあたってしなければならないことが、1であげた「編集を行うこと」を相手方に伝えた上でインタビューに臨むことと、次にあげる編集した原稿を相手方に確認してもらうことです。

5、相手方の確認をとる


 4の編集を2回、3回と繰り返していけば、記事原稿が、もともとの会話とは大きく異なる文章として完成するはずです。そのため、記事原稿が最終稿ないし完成稿に近づいてきた段階で、インタビュー相手に原稿を送付し、内容の確認をしていただくようにしていました。4の編集段階における発話の加工・成形が誤った解釈でなされていないか、記事として公開してほしくない・すべきでない内容が残っていないか、などの判断は、けっきょくインタビューを受けた相手にしかわからないからです。

 
 この段階でも、インタビュー相手への敬意と配慮と感謝を忘れてはいけません。相手からすれば、突然話を聞かせてくれと言ってきた学生に、貴重な時間を割いて話をした上で、数万文字にもなる原稿を確認しろと言われるわけですから。特に、修正があれば遠慮なく言ってほしいという旨は、強調してよいと思います。

6、完成!


 やったね!



 
 以上、駆け足ではありましたが、僕がインタビュー記事を作るときにどうしていたかという話でした。京大漫トロピーの皆様におかれましては、こんど表紙をハトポポコ先生や位置原光Z先生に依頼するようなことがあれば、ぜひ先生方へのインタビューも敢行していただくよう、よろしくお願い申し上げます。それではまた来年、「私が博士論文を書けるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリだった!?)」でお会いしましょう。ばいちゃ〜〜。




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