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「セクシー田中さん」芦原妃名子氏の逝去について小学館が声明公開。問題提起と悔恨の念、寂しさを綴る

2月8日 掲載

 小学館の第一コミック局編集者一同は2月8日、漫画家・芦原妃名子氏の逝去と同氏のマンガを原作とするドラマ化の一連の出来事について、声明を発表した。

 声明では、「本メッセージは、我々現場の編集者が書いているものです」と前置きしたうえで、「芦原先生は、皆様が作品を読んでご想像されるとおり、とても誠実で優しい方でした。そして、常にフェアな方でもありました」として人柄にも触れている。

 また、「著作権」についても触れており、「『著作財産権』が利益を守る権利に対し、『著作者人格権』というのは著者の心を守るための権利です。著者の許可なく改変が行われないよう作品を守るための『同一性保持権』をはじめ、『名誉声望保持権』『氏名表示権』『公表権』『出版権廃絶請求権』『修正増減請求権』があります。これらの全ては契約を結ぶまでもなく、著者の皆様全員が持っている大切な権利、これが『著作者人格権』です」と分かりやすく解説。「今回、その当然守られてしかるべき原作者の権利を主張された芦原先生が非業の死を遂げられました」と悲しみを綴っている。

 さらに、芦原妃名子氏のコメントについても紹介しており、そのうえで「原作者として、ごく当然かつ真っ当なことを綴られる中で、先生は〈恐らくめちゃくちゃうざかったと思います…。〉とも書いていらっしゃいました。著者の意向が尊重されることは当たり前のことであり、断じて我が儘や鬱陶しい行為などではありません。守られるべき権利を守りたいと声を上げることに、勇気が必要な状況であってはならない。私たち編集者がついていながら、このようなことを感じさせたことが悔やまれてなりません。二度と原作者がこのような思いをしないためにも、『著作者人格権』という著者が持つ絶対的な権利について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが、再発防止において核となる部分だと考えています」と今の構造の歪さへの問題提起と、悔恨の念を感じるメッセージを掲載している。

 一方、「小学館側がドラマ制作サイドに芦原妃名子氏の意向を伝えられていなかったのでは」とする疑念については、「その件について簡潔にご説明申し上げるならば、先の2023年8月31日付の芦原先生のコメントが、ドラマ放送開始日2023年10月22日よりも2か月近く前に書かれ、そしてドラマ放送開始前に7巻が発売されているという時系列からも、ドラマ制作にあたってくださっていたスタッフの皆様にはご意向が伝わっていた状況は事実かと思います」と回答している。

 なお、ドラマ自体については「そこには、ドラマのために先生が描き下ろしてくださった言葉が確かに存在しています。ドラマを面白いと思って観て下さった視聴者や読者の皆様には、ぜひ安心してドラマ版『セクシー田中さん』も愛し続けていただきたいです」としている。

 また、最後には「本メッセージを書くにあたり、『これは誰かを傷つける結果にならないか』『今の私たちの立場で発信してはいけない言葉なのではないか』『私たちの気持ち表明にならぬよう』『感情的にならぬよう』『冷静な文章を......』と皆で熟慮を重ねて参りました。それでもどうしてもどうしても、私たちにも寂しいと言わせてください。寂しいです、先生。」と声明を出した際の一同の想いも綴られている。

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