https://x.com/m_hiyama/status/1966421418729763136 にて:
(-1)乗の記法はオーバーロードが激しいので「これ以上に用法を増やしたくない」という気持ちはあるのだが:
ファイブレーション α のファミリー(あるいはインデキシング)は α^{-1} と書くのが一番ラクチンだな。
バンドル〈ファイブレーション〉から定義されるファミリー〈インデキシング〉に対して、(-1)乗の記法を使うと、オーバーロードはひどくなります。$`a: A \to B`$ を写像だとして $`a^{-1}`$ は次の意味でオーバーロードされます。$`\newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1}}
\newcommand{\mbf}[1]{\mathbf{#1}}
\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1}}
%\newcommand{\msc}[1]{\mathscr{#1}}
%\newcommand{\msf}[1]{\mathsf{#1}}
\newcommand{\mbb}[1]{\mathbb{#1}}
\newcommand{\o}[1]{\overline{#1} }
\newcommand{\op}{\mathrm{op} }
\newcommand{\In}{\text{ in } }
\newcommand{\hyp}{\text{-} }
\newcommand{\FProd}{\mathop{\underline{\times}}}
`$
- 逆数関数: $`a^{-1}: A \to B`$ ($`B`$ において逆数〈逆元〉が定義されている場合)
- 逆関数: $`a^{-1}: B \to A`$ ($`a`$ が可逆な場合)
- 点〈要素〉の逆像: $`a^{-1}: B \to \mrm{Pow}(A)`$ ($`\mrm{Pow}(\hyp)`$ はベキ集合)
- 部分集合の逆像: $`a^{-1}: \mrm{Pow}(B) \to \mrm{Pow}(A)`$
- ファミリー: $`a^{-1}: B \to |\mbf{Set}|`$
これはひどい。ですが、バンドル-ファミリー対応はムチャクチャによく使うので、簡潔に書きたいのですよ。
内容:
バンドルとファミリー
- 集合のバンドルとは、単なる写像(特に条件なし)
- 集合のファミリーとは、集合達のインデックス付きファミリー〈indexed family of sets〉
- 圏のバンドルとは、ファイバー付き圏〈fibered category〉、同じことだがグロタンディーク・ファイブレーション〈Grothendieck fibration〉
- 圏のファミリーとは、インデックス付き圏〈indexed category〉
バンドルとファミリーは互いに対応します(「バンドル-ファミリー対応 再考」参照)。
バンドルに対するファミリー
$`a: A \to B`$ が集合のバンドルのとき、$`a`$ に対するファミリーは $`a^{-1}`$ と書くことにします。
$`\quad a^{-1} : B \to |\mbf{Set}| \In \mbf{SET}`$
上記のことを次のようにも書きます。
$`\quad a^{-1} : B \leadsto`$
グニグニの矢印の先には何も書きません。グニグニであることに、行き先が $`|\mbf{Set}|`$ であることも(情報として)含まれるとします。
バンドル(写像) $`a`$ の域〈ドメイン〉を $`\o{a}`$ とも書き、バンドル $`a`$ 自体を $`\pi_a`$ と書くことがあります。$`\pi_a`$ は単なる写像で、直積の成分射影とは何の関係もありません。
$`\quad \pi_a : \o{a} \to B \In \mbf{Set}`$
$`A: \cat{A} \to \cat{B}`$ が圏のバンドル〈ファイバー付き圏〉のとき、$`A`$ に対するファミリー〈インデックス付き圏〉は $`A^{-1}`$ と書くことにします。
$`\quad A^{-1} : \cat{B}^\op \to \mbf{CAT} \In 2\mbb{CAT}`$
上記のことを次のようにも書きます。
$`\quad A^{-1} : \cat{B} \leadsto`$
グニグニの矢印の先には何も書きません。反変関手であることは、グニグニ矢印に含まれているとして、$`\cat{B}`$ に $`\hyp^\op`$ は付けません。
バンドル〈ファイバー付き圏〉 $`A`$ の域〈ドメイン〉を $`\o{A}`$ とも書き、バンドル $`A`$ 自体を $`\pi_A`$ と書くことがあります。
$`\quad \pi_A : \o{A} \to \cat{B} \In \mbf{CAT}`$
$`\pi_A = A`$ です。変な記法ですが、そういう習慣があります。変だけど避けがたいです。
ファミリーに対するバンドル
$`f: B \leadsto`$ が集合のファミリーのとき、$`f`$ に対するバンドルは $`{^\pi f}`$ と書くことにします。
$`\quad {^\pi f} : \o{^\pi f} \to B \In \mbf{Set}`$
バンドル $`{^\pi f}`$ の域 $`\o{^\pi f}`$ は $`\int f`$ とも書きます。
$`\quad {^\pi f} : \int f \to B \In \mbf{Set}`$
$`F: \cat{B} \leadsto`$ が圏のファミリー〈インデックス付き圏〉のとき、$`F`$ に対するバンドル〈ファイバー付き圏〉は $`{^\pi F}`$ と書くことにします。
$`\quad {^\pi F} : \o{^\pi F} \to \cat{B} \In \mbf{CAT}`$
バンドル $`{^\pi F}`$ の域 $`\o{^\pi F}`$ は $`\int F`$ とも書きます。
$`\quad {^\pi F} : \int F \to \cat{B} \In \mbf{CAT}`$
$`{^\pi F}`$ を $`\pi_F`$ と書くのが普通ですが、そうすると $`F = \pi_F`$ (変な記法)とコンフリクトしてしまうので、$`{^\pi F}`$ とします。$`\pi_F`$ をオーバーロードするテもありますが、ここは書き分けたほうがいいと思います。
互いに逆
$`\mbf{Bun}[B]`$ は、集合 $`B`$ 余域〈ベース集合〉とするバンドル達の圏とします。$`\mbf{Fam}[B]`$ は、集合 $`B`$ を域〈インデキシング集合〉とするファミリー達の圏とします。次が成立します。
$`\text{For }a \in |\mbf{Bun}[B]|\\
\quad {^\pi (a^{-1})} \cong a \In \mbf{Bun}[B]
`$
$`\text{For }f \in |\mbf{Fam}[B]|\\
\quad ({^\pi f})^{-1} \cong f \In \mbf{Fam}[B]
`$
$`\mbf{FibCAT}[\cat{B}]`$ は、圏 $`\cat{B}`$ を余域〈ベース圏〉とするファイバー付き圏達の圏とします。$`\mbf{IndCAT}[B]`$ は、圏 $`\cat{B}`$ を域の反対圏〈インデキシング圏〉とするインデックス付き圏達の圏とします。次が成立します。
$`\text{For }A \in |\mbf{FibCAT}[\cat{B}]|\\
\quad {^\pi (A^{-1})} \cong A \In \mbf{FibCAT}[\cat{B}]
`$
$`\text{For }F \in |\mbf{IndCAT}[\cat{B}]|\\
\quad ({^\pi F})^{-1} \cong F \In \mbf{IndCAT}[\cat{B}]
`$
より詳しくは以下の過去記事を参照してください。
ファイバー引き戻しとプレ結合引き戻し
集合のバンドル $`a : A \to B`$ に対して、写像 $`\varphi:X \to B`$ によるファイバー引き戻しは次のように書きます。
$`\quad \varphi^\#(a) : \o{\varphi^\#(a)} \to X \In \mbf{Set}`$
図式では:
$`\quad \xymatrix{
{\o{\varphi^\#(a)}} \ar[r] \ar[d]_{\varphi^\#(a)}
\ar@{}[dr]|{\text{p.b.}}
&{A} \ar[d]^a
\\
X \ar[r]_{\varphi}
&B
}\\
\quad \In \mbf{Set}
`$
ここで、$`\text{p.b.}`$ はプルバック四角形のことです。
$`\varphi`$ と $`a`$ のファイバー積(コスパンの極限対象)を $`\varphi\FProd_B a`$ と書くことにすると:
$`\quad \o{\varphi^\#(a)} = \varphi \FProd_B a`$
集合のファミリー $`f : B\leadsto`$ に対して、写像 $`\varphi:X \to B`$ によるプレ結合引き戻しは次のように書きます。
$`\quad \varphi^*(f) : X \leadsto`$
図式では:
$`\quad \xymatrix{
{}
&{}
\\
X \ar[r]_{\varphi} \ar@{~>}[ur]^{\varphi^*(f)}
&B \ar@{~>}[u]_{f}
}
`$
圏のバンドル〈ファイバー付き圏〉 $`A : \cat{A} \to \cat{B}`$ に対して、関手 $`\Phi:\cat{X} \to \cat{B}`$ によるファイバー引き戻しは次のように書きます。
$`\quad \Phi^\#(A) : \o{\Phi^\#(A)} \to \cat{X}\In \mbf{CAT}`$
図式では:
$`\quad \xymatrix{
{\o{\Phi^\#(A)}} \ar[r] \ar[d]_{\Phi^\#(A)}
\ar@{}[dr]|{\text{s.p.b.}}
&{\cat{A} } \ar[d]^A
\\
\cat{X} \ar[r]_{\Phi}
&\cat{B}
}\\
\quad \In \mbf{CAT}
`$
ここで、$`\text{s.p.b.}`$ は厳密プルバック四角形のことです。「厳密〈strict〉」が条件として厳し過ぎるなら、適当にゆるめます。
$`\Phi`$ と $`A`$ の厳密ファイバー積を $`\Phi\FProd_B A`$ と書くことにすると:
$`\quad \o{\Phi^\#(A)} = \Phi \FProd_{\cat{B}} A`$
圏のファミリー〈インデックス付き圏〉 $`F : \cat{B} \leadsto`$ に対して、関手 $`\Phi:\cat{X} \to \cat{B}`$ によるプレ結合引き戻しは次のように書きます。
$`\quad \Phi^*(F) : \cat{X} \leadsto`$
実際には、反変関手に共変関手を結合しているので細工が必要です(「イイカゲンとインチキを悔い改めるためのコスト」参照)。
図式では:
$`\quad \xymatrix{
{}
&{}
\\
\cat{X} \ar[r]_{\Phi} \ar@{~>}[ur]^{\Phi^*(F)}
&\cat{B} \ar@{~>}[u]_{F}
}
`$
便利な公式
次が成立します。
- $`\varphi \FProd_B a \cong \int(\varphi^*(a^{-1}))`$
- $`\varphi\FProd_B {^\pi f} \cong \int (\varphi^* f)`$
- $`\varphi^\# a \cong {^\pi (\varphi^*(a^{-1}))}`$
- $`\varphi^\#({^\pi f}) \cong {^\pi (\varphi^* f)}`$
同様な公式は、圏のバンドル/ファミリーにおいても成立します。
まとめ
- バンドルからファミリーへの対応は $`a \mapsto a^{-1}`$ と書く。
- ファミリーからバンドルへの対応は $`f \mapsto {^\pi f}`$ と書く。
- 圏のバンドル/ファミリーの場合も同じ。