元TBSアナウンサーでテレビ朝日「ニュースステーション」などに出演したフリーアナウンサーの久米宏(くめ・ひろし)さんが1日に肺がんのため死去していたことが分かった。81歳。埼玉県出身。13日、所属事務所の「オフィス・トゥー・ワン」が公式サイトで発表した。久米さんはTBS「ぴったし カン・カン」や「ザ・ベストテン」など、数々の番組で司会を務めた。
わがブクマ
久米宏の語りは「論」でなく「芸」として観られるべきで、それは馬生や円楽などとも互角に比することができた一代の名人だった。また、文化的には実は「ユーチューバー」のそれとも繋がっていると思う。安らかに。
これを読んだ落語好きからLINEが来てね。
比較対象が馬生、円楽というところが興味深い
志ん朝、円生、黒門町や志ん生ではなく
(俺) そこまで言うと褒めすぎかと(笑)
久米宏が作った芸を古舘が大きく育て、流派は別れるが、いまの安住紳一郎その他に受け継がれている、というイメージか。そういう意味では談志のような存在だったかもしれん。
(俺) 革命児ということ、スタイルを変えたということなら談志でピタリ賞
きのう13日の昼のワイドショー、夜のニュースでは当然、久米氏の足跡を振り返る映像などが流れたが、当然「ぴったしカンカン」「ザ・ベストテン」「ニュースステーション」が流れたが、残念ながらほぼ言及も映像も流れなかったのが、日本テレビの「久米宏のTVスクランブル」だった(同局のニュースやワイドショーならやってたんだろうか??)。
この番組だって、相当長く放送されたし、相当に高視聴率を取っていた(まだお茶の間の帝王だった「大河ドラマ」を日曜夜8時で向こうに回し!)と思う。
そしてTVスクランブルは時事問題、天下国家を語る番組だから「ニュースステーション」への大いなる助走だった。
これ無しで「ザ・ベストテン」からニュース番組のキャスターにはなれなかったはずだ。自分も個人的に、社会とか政治とかの知識、興味はこの番組を通じて養われたものも多い。大いに恩がある番組なののだよ。
ちょうど田中角栄のロッキード裁判の進行と結果的に一審有罪、それを受けて鈴木善幸内閣から中曽根内閣、そして中曽根がタカ派の軍国主義者と叩かれながら、田中角栄の影響力の強い「角影内閣」から、ロンヤス関係、300議席の大勝利を収めていく……、そんな時代の番組でした。
……んだが、ぶっちゃけ久米宏の「芸」はさすが名人なので「ゆく先々の 水に合わねば」。そして、同番組のスタンスって、確かに天下国家を語り、エライ人=政治家に物申すスタイルだけど……なんというかね、実はぴったりな言い方があるんだが、上の「立川談志的」、或いはその盟友の1人でもある「山藤章二的」というかね。
たしかに天下国家の偉い人に物おじせず異議申し立てをする「叛骨、硬骨」の議論なのかもしれないけど、よくよく聞くと、その論それ自体はかなりの飛躍や乱暴さが有る、というね(笑)
しかも、どんなチョイスか、事後諸葛亮的には「なんでその人選んだんですか」な人選だが、コンビを組んだのが横山やすし。
これもさ、まだやっさんの暴言、偏見に「やめなさい」というような「爆笑問題の太田光と田中裕二」みたいなスタイルならまだ言い訳が聞くんだけど、ジャンルは違えど、しゃべくり芸人のプライド、デュエルの意識もあったんだろう。暴言のやっさん、正論と良識の久米…ではなく、横山やすしの暴言ボケをブラッシュアップして、かぶせていく…つまり久米氏もエスカレートさせる、そんなタイプの掛け合いが多かったのだ。
※この記事を書いたあと読んだ記事を、挿入して紹介する
この時期の横山やすしにとって、ある意味、西川きよし以上のパートナーだった木村政雄氏の回想がある。
《次第に横山さんは外連(けれん:歌舞伎などで、見た目本位の奇抜な演出・演技)に走るようになっていきました。(中略)それはそれで生放送らしく、面白かったのですが、私には「テレビという場で、漫才の天才が、司会の名手に後れを取った焦燥感の発露」のように思えました。(中略)この頃から次第に、横山さんは酒の匂いを残したまま番組に出演するようになりました》(ポータルサイト「木村政雄の私的ヒストリー」第77話)
また、小林信彦は前記の著書で《横山やすしは「久米宏のTVスクランブル」で新しい分野に挑戦していた。とはいえ、ベテラン久米宏の掌の上で踊っている印象は否めない》と書いている。
つまり、これまでは得意の弁舌で相手を打ち負かしてきた横山やすしも、久米宏というトークの達人に対してはそうもいかなかったということだ。
friday.kodansha.co.jp
その一つの典型が、タイトルにあったような話。
番組のコーナー・コーナーで作った映像が挟まれるんだけど、たしか中曽根政権の時に、結果的にぽしゃった「売上税」騒動があり、その時にジョークで「かわりにこんな税金はどうですか?世の中の贅沢、無駄に税金を掛けよう!」ってな奴だったと思う。
そこでタイトルのような話で、久米氏はあの独特の口調…「もー女子大生って言ったら、これほど無駄なものはないんですから。ここに税金をかけましょう!」と、いかにも対象を蔑んだような、それがはっきりわかるような口調で言い捨てたのでした。
何十年経っても覚えているのは、僕が頭のいいこどもで(笑)しかもポリコレ度が久米氏より高かったから「えっ、さすがにそんなこと言っていいの?」とかなり内心で狼狽したからですね。
あと、「こち亀みたいなこと言うんだな」とも思った、それもはっきり覚えている(笑)
こち亀読んでたら、女子アナネタにした「能天気パア子」なんての出てきてふいてしまった。
— PERORI (@NEKORONDAPERORI) July 3, 2023
こち亀は男も女も平等にネタにしているけど、いまだとここだけクローズアップされてめんどくさいクレーム入れられてできなそう。 pic.twitter.com/80O5UVXDbf
思い出してほしい、
当時、まだお笑い芸人の地位は今よりずっと低く、伝統のある「落語家」じゃないと、いや彼らでも、時事に絡めて暴言を語るコメンテーターになるかならないか、そんな端境期だった。
そして、その当時は「ラジオのパーソナリティ」的なことをやってる人のほうが、そういう暴言すれすれの時事トークをやる「役どころ」を務めていた。
いわば久米宏氏は「松ちゃん」的な役どころも期待されてたわけです。
そしてたぶんホンネの部分も含めて、久米氏と「TVスクランブル」はその時だけじゃない、女子大生叩きにノリノリだったわけです(笑)。
その後「ニュースステーション」で、そのニュースステーションの「水に合わせて」そういうスタンスを見事に演じ分け、それが18年続いたからオフィシャルなイメージになったけど、どうも私見ではTVスクランブルのほうが、彼の本質には寄り添っていたような…これは客観性のない、ただの私的な感想。
ただ、ニュースステーションが大人気番組だった時、超大物として、登場自体がニュースだぞ!な勢いで「ビートたけしのTVタックル」に登場(同じオフィス・トゥーワン制作だよね?)した時「僕が本当に思っていることを語ったら、多分すぐ番組打ち切りですよ」みたいなこと喋っとったし……
TVスクランブルは時事バラエティだから、その後再放送もDVD化もされないが、
もし仮に、あの番組内で、横山やっさんとの相乗効果でエスカレートした久米宏氏の「全発言」が今再検証できれば、まあキャンセルカルチャー発動は免れそうもないんだよね……
亡くなると善行ばかりが取り上げられるけど、TBSを退社したのは女問題だったし、ベストテンで山口百恵のお尻をさわったり、エイズが問題になった頃、カミングアウトした人のニュースで、「しかし、ホモがエイズになったからって、我々には関係ありませんよね」と笑顔でコメント。日本のテレビ文化を悪… https://t.co/F30Y2gWxx2
— 梅田香子Yoko Umeda 🇺🇸+over30years sports journalist (@yokoumeda) January 13, 2026
でもそんな立川談志的、あるいは松本人志的な「やんちゃで偏見っぽいトーク」は封印され、「ニュースステーション」になっていった。
それは久米宏氏本人にとっては、栄光のステップアップであろう。
久米宏と筑紫哲也のニュースショー、良くも悪くも今の世にいわゆる「リベラル」の象徴だったという感じはする。まだ、ネットがアングラだった時代、テレビにとっては良い時代。
— 河野有理 (@konoy541) January 13, 2026
非自民非共産、自民党と巨人が負けるとちょっと嬉しい都市部のホワイトカラーの感性に刺さる番組作り。
— 河野有理 (@konoy541) 2026年1月13日
それを皆悼むだろうから、自分は裏街道の「TVスクランブル」を思い出しつつ献杯する。
この番組についてのあれこれはほんの断片だが、横山やすしを語る本の中に記述されたりもしている。