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石破首相退陣表明の社説集(9月8日付)

朝日新聞 (社説)国民不在の党内抗争 首相辞任で終わりではない

2025年9月8日 5時00分


 昨秋の衆院選に続き、7月の参院選でも与党過半数割れの敗北を喫しながら、政権継続に執念を示していた石破首相がついに退陣を表明した。

 首相への事実上のリコールといわれる自民党総裁選前倒しの是非を決める前日だった。賛成派の勢いが増すなか、追い込まれての判断だ。

 参院選が終わってから50日。首相の進退をめぐる党内抗争で、物価高対策などが進まない「政治空白」が続く。

 国民の厳しい視線は党全体に注がれており、結党70年にして、自民は政権政党として土俵際にある。党の顔を変えれば信頼が戻るほど甘くはない。新総裁選びでは「解党的出直し」の内実が問われる。

 ■党の分断回避を優先

 首相はゆうべの記者会見で、党のトップとしての参院選敗北の責任を認め、トランプ氏が米大統領令に署名するなど、日米関税交渉に「一つの区切り」がついた今が、職を辞するタイミングだとし、総裁選前倒しへの賛否で、党内に「決定的な分断」を生むことを避けたかったと述べた。政治とカネの問題で「国民の不信を払拭できなかったことが心残り」とも語った。

 そもそも国政選挙で2度続けて、国民の信任を得られなかった以上、政権維持に無理があることは目に見えていた。衆参両院で少数与党となり、首相がいかに諸課題への取り組みに意欲を見せたところで、野党が協議に応じる展望はなく、政策遂行の基盤は失われていた。

 首相の態度表明が遅れたことで、政治の停滞が長期化したことは否めない。

 一方で、この間、「石破おろし」を主導したのは、裏金問題で党への信頼を失墜させた旧安倍派をはじめとする非主流派の面々だった。党再生への具体的な構想はなく、復権をめざす権力闘争にしか見えなかった。

 選挙で負けた首相の続投を支持する世論が広がった背景には、国民そっちのけで「コップの中の争い」にうつつを抜かす自民への愛想づかしがあったに違いない。

 ■石破氏期待に沿えず

 昨年10月1日に発足した石破政権は、約1年で幕を下ろすことになった。

 裏金問題への対応などで、国民の信を失った岸田前首相が、総裁選への出馬を断念。党内で長く非主流派だった石破氏が新総裁に選ばれた。

 自公政権は第2次安倍政権以降、「数の力」を前面に、強引な政権運営や国会軽視が目立った。石破氏にはそうした政治姿勢の転換や裏金問題のウミを出し切ることが期待されていたはずだ。

 ところが、首相は就任するや、国会での論戦もそこそこに急いで衆院を解散。政治資金をめぐる不信を拭い去ることができず、与党の過半数割れを招いた。

 この時も進退が問われたが、首相は続投を表明。少数与党の下、「熟議の国会」を掲げ、政策課題ごとに野党の協力をとりつける「部分連合」の道を選んだ。

 本予算の成立など、一定の成果はあげたが、企業・団体献金の見直しや選択的夫婦別姓制度の導入など、長年の「宿題」に答えを出すことはできず、戦後80年の節目の首相談話も見送られた。自民が「変わる」ことへの期待は、いずれも尻すぼみ、あるいは手つかずに終わった。

 確かに、首相の国会答弁は丁寧で、広島・長崎の原爆の日終戦記念日の式典などでも、自分の言葉で語る姿勢が見られた。ただ、首相自身、認めたように「何をやりたいのかわからない」という評価の下で、求心力の回復は望めなかったというほかない。

 ■国民政党名乗るなら

 自民は先にまとめた参院選総括の報告書で、敗因を一言で言えば「国民に寄り添い、暮らしの安心を確実に届けることができなかった」ことだとし、解党的出直しに取り組むと誓った。

 石破氏の後任を選ぶ総裁選で、その具体的な方策や道筋が示され、国民の納得と共感が得られるかが問われる。

 物価高やトランプ関税への対策など、直面する課題だけでなく、少子高齢化や人口減が進むなか、この国の社会保障や財政を将来にわたってどうやって維持していくのか、中長期的な観点に立った議論も欠かせない。

 裏金問題や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係で批判を浴びた議員が、反省やけじめのないまま復権するようなことになれば、政治不信を強めるだけだろう。

 与党は衆参両院で過半数を持っておらず、自民の次の総裁がそのまま首相になる保証はない。新しいリーダーには、多党化が進む国会で、国民のために必要な政策の実現に向け、幅広い合意形成を取りつける資質が求められる。

 参院選では、排外主義的な主張を繰り返したり、十分な財源を示さずに減税論を展開したりする政党が、一定の票を集めた。党から離れた「岩盤保守層」を取り戻そうと、一部の層に訴えるのではなく、寛容と包摂を掲げる「国民政党」の名にもとることのない論戦を望みたい。



日経新聞 [社説]野党との連携策を深める自民総裁選に

社説
2025年9月8日 19:05

自民党総裁の椅子に座るのは誰か
自民党は退陣を表明した石破茂首相(自民党総裁)の後任を選ぶ総裁選の準備に着手した。衆参両院で過半数割れした少数与党であり、少しでも安定した政権へ道筋を示せるかが問われる。「ポスト石破」候補は連立政権の枠組みを含めて野党との連携をどう深め、どんな政策を進めるのか、骨太の政権構想を示してほしい。

総裁選には8日、茂木敏充前幹事長が出馬する意向を表明した。ほかに小泉進次郎農相や高市早苗前経済安全保障相、小林鷹之元経済安保相、林芳正官房長官らの名前が挙がる。国政選挙の連敗で国会議員が減ったため、立候補に必要な推薦人20人の確保は一段と激しさを増すことになろう。

自民党は総裁選の日程とやり方を9日にも決める。国会議員と全国の党員・党友が投票するか、国会議員と都道府県連代表に限るのかが焦点になる。

党員投票を実施する場合、選挙期間は12日間以上と規定されている。昨年の総裁選は論戦を充実させるため、15日間と異例の長さにした。新総裁の選出は党員投票なら10月初旬、簡易方式だと早ければ9月下旬になる。

民政党として幅広い意見を聞くため、開かれた選挙であることが重要だ。一方で、これ以上、政治空白を長引かせることも避けなければならない。双方を勘案した総裁選にしてほしい。

今回の総裁選は政治とカネの問題に代表される党の再建が課題になるのはもちろんだが、衆参両院で少数与党となったいま、政策を実現するためには、野党との連携のあり方が大きな争点になる。

通常国会では野党と政策ごとに連携する部分連合を選び、予算などをなんとか成立させたが、より政権運営を安定させるなら連立の拡大が必要になる。それには主要政策の政党間合意が不可欠だ。

野党を取り込もうと個別の政策で妥協すると、安定した財源確保は後回しにされがちだ。日経平均株価は8日、次期政権が財政拡張的な政策を進めるとの見方から上昇した。財政規律を守り市場の信認を得る視点が求められる。

野党の責任も重い。政策実現のために与党と部分連合を組むのか、連立政権に入るのか、それとも野党でまとまって政権交代を迫るのか。首相指名選挙で協力すれば政権を取れるがその機運は乏しい。野党も立ち位置を明確にして政権構想を示すべきだろう。



読売新聞   首相退陣表明 自民再建へ正念場の総裁選に

2025/09/08 05:00

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◆連立拡大で政治の安定を図れ◆


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 石破首相がようやく退陣する考えを表明した。自ら退く決断をすることで自民党内の決定的な対立を回避した、という評価もできるだろう。

 だが、自民、公明両党は衆参両院の選挙で敗れ、過半数割れとなった。野党は石破政権に協力しない姿勢を示しており、政権運営が行き詰まることは明らかだった。首相の進退判断は遅きに失したと言わざるを得ない。

 首相の退陣表明により党の分裂状態は回避され、首相の後継を決める総裁選が実施される。新総裁は、連立拡大を含めて、野党と建設的な協力関係を築く責任を負うことになる。

◆保守層の支持回復も鍵

 石破首相は記者会見で、退陣を決断した理由について、「米国関税措置に一つの区切りがついた今こそが、しかるべきタイミングだと考えた」と述べた。

 自民党は、立て続けに選挙に敗れた首相の責任を問うため、党則6条4項に基づき、総裁選前倒しの是非を問う手続きを進めていた。党所属国会議員と都道府県連代表の総数の過半数が要求した場合、前倒しされる。

 その決着がつく8日を前に、首相周辺は、総裁選になれば衆院を解散する、と党内に揺さぶりをかけた。しかし、かえって反発が広がり、総裁選の前倒しは確実な情勢となったとみられる。



 首相の大権である解散権を自らの保身のために行使しようとするなど、もってのほかだ。

 自民党の足腰は弱っている。

 2022年の参院選比例票は約1830万票あったが、昨年の衆院選では1460万票に、今年の参院選では1280万票へと大きく減少した。長年自民を支持してきた保守層を野党の新興勢力に奪われたためとみられている。

 党の再建は、そうした支持を取り戻すことができるかどうかにかかっている。総裁選は、結党から70年となる自民の生き残りを懸けた戦いになるのではないか。

◆政治空白が長期化した

 首相が居座りを続けたため、参院選から既に1か月半が経過したにもかかわらず、物価高対策などの与野党協議は停滞している。



 石破政権は24年度補正予算の成立に協力を得るため、国民民主党が主張した「年収103万円の壁」の引き上げを受け入れた。25年度当初予算の成立のためには、日本維新の会の看板政策である高校授業料の無償化を丸のみした。

 政府・与党が野党の手柄争いに 翻弄 ほんろう された結果、財政の肥大化を招き、政治は混乱した。

 秋の臨時国会以降、そうした混乱を繰り返さないためには、連立の枠組みを拡大し、衆参で過半数を得ることが欠かせない。

 総裁選では、政権の枠組みをどのように広げていくか議論するべきだろう。野党側も責任ある政策を示す必要に迫られる。

 次期首相は、内外の様々な政策を前進させる重い役割を担わなければならない。

◆政策論議を深めたい



 社会保障制度改革では、増え続ける医療費の見直しが待ったなしの課題だ。24年度の概算の医療費は48兆円に上り、10年前に比べると7兆円増となった。

 その削減策として、政府は通常国会で、医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える高額療養費制度を見直そうとしたが、患者団体や野党の反発を受け、今秋に結論を先送りした。

 また、現在は公的医療保険が適用されている、湿布や胃腸薬などの「OTC類似薬」については、与党と維新の協議で保険適用から外す方針が固まっている。ただ、これにも反発があり、政府内の議論は停滞している。

 強固な支持基盤を持った政権をつくらなければ、負担増となる改革は実現できまい。

 野党は参院選で、物価高対策として消費税の減税や廃止を掲げた。だが、年金や医療など社会保障を支える重要な財源である消費税を減税すれば、社会保障サービスの低下は避けられなくなる。



 野党は、これまでのような要求を突きつけるだけの立場にとどまっているわけにはいかない。

 一方、米国との関税交渉はひとまず決着したが、80兆円の対米投資については「投資先は米国が選定する」という合意になっており、具体的な案件などは不透明だ。今後、日米でつくる協議委員会で詳細を詰める必要がある。

 安全保障環境が悪化する中、防衛力の強化も急務だ。新政権はまず、その財源確保のために予定している所得税の引き上げ時期を決めることが重要となる。



毎日新聞 社説 石破首相が退陣表明 けじめ遅れ混乱を深めた

朝刊政治面
毎日新聞
2025/9/8 東京朝刊
English version
1660文字
石破茂首相が辞任を表明した記者会見を映す街頭モニターを見る人たち=大阪市北区で2025年9月7日午後6時3分、三村政司撮影
 選挙で民意の厳しい審判を受けながら、政権トップとしてけじめをつける決断が遅れ、政治の混乱を深めた。その責任は重い。

 石破茂首相が辞任を表明した。当面続投することに意欲を示していた。しかし、自民党総裁選の前倒し実施に関する党内の意向確認が8日に予定され、賛成多数で事実上の「総裁リコール」が成立する可能性が高まっていた。

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退陣を表明した記者会見を終え、会場を出る石破茂首相=首相官邸で2025年9月7日午後6時49分、後藤由耶撮影
 首相は辞任を決断した理由として、前倒しが決まる過程で「党内に決定的な分断を生みかねない」ことを挙げた。

 それならば、大敗した7月の参院選直後に退陣すべきだった。前代未聞となるリコールを避けようとしたのが実態ではないか。


 自民の参院選総括がまとまった段階で、進退について「しかるべき時に決断する」と述べていた。日米関税交渉を巡り、米大統領令が発出されたことで「区切りがついた」と説明した。

国民不在の抗争に終始
 しかし、退陣は当初から不可避の情勢だった。昨年の衆院選に続き、参院選でも自民、公明両党が過半数を割り込み、衆参両院で少数与党状況に陥った。東京都議選も含めれば、石破政権は大型選挙で3連敗となり、有権者の信任を失っていたのは明らかだ。


 にもかかわらず、首相は比較第1党としての責任を強調し、関税交渉や賃上げ、農政などの課題を挙げて続投する意向を示していた。結果として、政権の座にしがみついているように映った。

 選挙大敗にけじめをつけようとしない首相に対し、党内の反発は高まる一方だった。

 閣内からも造反が相次ぎ、多くの政務三役が総裁選前倒しに賛成する考えを示した。旧石破派に所属したベテランらも同調した。首相は高い党員人気に支えられてきたが、地方組織の離反も目立った。


 首相支持派からは、「総裁選前倒しが決まった場合、国民に信を問うべきだ」と衆院解散を求める声も上がっていた。

 だが、先の衆参両院選挙で民意が示されたばかりである。権力争い優先の解散に大義はなく、暴論と言うほかない。保身のために解散風を吹かせたとみなされ、かえって退陣論が勢いを増した。

 首相の進退を巡る分断は深刻化し、事実上の政治空白が1カ月以上も続いた。

 ガソリンの暫定税率廃止に向けた与野党協議は進んでいない。物価高対策を巡っても、現金給付を公約した与党と、消費税減税を掲げる野党の溝は埋まらないままとなっている。

 首相は、現金給付などを盛り込んだ経済対策を秋に策定すると表明した。しかし、自民の混乱で与党協議さえ滞っている。

 政治改革や地方創生などについて「心残りがある」とも語り、課題解決が道半ばだと認めた。

総裁選で再生の議論を
 首相の辞任表明を受け、党の再生をかけた次期総裁選びが始動する。最大政党として、混乱を早期に収拾し、国政の停滞を打開しなければならない。

 首相は当初、自民1強下の強引な政権運営からの脱却や、「政治とカネ」の問題解決を期待されていた。ところが、党内融和を優先し、政治改革に決着をつけられなかった。少数与党に陥って以降は予算などを成立させるための数合わせに奔走し、「石破カラー」も出せなかった。

 一連の党内抗争においては、旧派閥単位で行動する議員の姿も目につく。派閥裏金問題の実態解明や、企業・団体献金の禁止に向けた議論も進んでいない。

 なし崩しで旧派閥が復権するようでは、国民の不信は深まるばかりである。旧態依然の体質をどう改めるのかが問われる総裁選だ。

 参院選では、人々の幅広い声をすくい上げられなくなった既成政党が退潮し、不満を吸収する形で新興政党が躍進した。財源の裏付けが乏しい減税論や排外主義の風潮もはびこる。

 自民が国民政党として生まれ変わるには、安易なポピュリズムに陥ることなく、人々の不安に応える政策を打ち出す必要がある。

 誰が総裁となっても、少数与党の状況は変わらない。政治を前に進めるための安定的な枠組みを模索しなければならない。

 自民は参院選総括で「解党的出直し」を誓った。かけ声倒れに終わらせず、抜本改革に踏み出さなければ、党への信頼を回復することはできない。



東京新聞  <社説>石破首相が退陣表明 党改革を果たせぬ末に

2025年9月8日 07時24分
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 石破茂首相が辞任を表明した。総裁として率いた自民党が昨年の衆院選に続き、「事実上の政権選択」とされた7月の参院選でも大敗。衆参での与党過半数割れ後も続投したが、参院過半数維持という「必達目標」に届かなかった以上、有権者の審判を受け入れ、政治空白を避けるべきだった。
 総裁選前倒しを求める声の高まりで追い込まれ、党分断を避けるために辞意を固めた。自民党不信の根本にある政治資金を巡る党の体質は依然、改善されていない。派閥裏金事件を不問に付さず、党改革に引き続き取り組むべきだ。
 石破氏は近年の歴代首相とは異質の政治家とも言える。自民党内に自身の勢力を増やす多数派工作は不得手。世論や一般党員から支持される党内野党的な立場で存在感を示してきた。
 安倍晋三麻生太郎両首相の政権末期に公然と退陣を迫ったり、1強時代の2期目の安倍政権にも苦言を辞さなかった政治姿勢が注目されてきた。
◆言行不一致の繰り返し
 裏金事件で党の信頼が失墜する中、石破氏が昨年9月の総裁選で高市早苗前経済安全保障担当相らを破って勝利した背景には、歯に衣(きぬ)着せぬ発言を繰り返してきた政治姿勢が国民の支持を得られるとの判断が党内にあったのだろう。
 しかし、首相就任後は前言を翻したり、持論を撤回したりすることが多かった。
 総裁選では当初、衆院解散・総選挙は国会で十分に論戦し、国民に選択肢を示した後に行う考えを示していたが、首相就任の直前に翻し、予算委員会の審議を経ずに早期解散に踏み切った。この変節は衆院選少数与党に転落する一因にもなった。
 裏金事件を巡り党改革の必要性を訴えてきたが、総裁としての処断は中途半端だった。衆院選期間中、非公認とした「裏金候補」に政党助成金2千万円を支給したことが発覚し、自民大敗の決定打になった。衆院選後には初当選した15人に商品券10万円分を配り、党の金権体質を自ら露呈した。
 政策面でも持論を軒並み棚上げした。賛同を表明していた選択的夫婦別姓導入では党内の慎重派を説得できず、党の対応を決められなかった。在日米軍の特権を定めた日米地位協定の改定、アジア版NATO北大西洋条約機構)の創設は就任早々に封印した。
 物価高に有効な対策を講じられず、実質賃金は長期のマイナス基調を脱していない。参院選前に一時は消費税減税に傾きながら、党内の反対で否定に転じた。「令和の米騒動」の対応も後手に回り、肝いりの地方創生はいまだ実像を結ばない。戦後80年談話も党内の反対で表明に至っていない。
 前言撤回と言行不一致の繰り返しを余儀なくされたのは、自身の考えを力強く実行に移す政権基盤を自民党でも国会でも築けなかったからだ。党内の有力議員や野党の主張を幅広く聞き入れることで「何をやりたいのか分からない」と批判される状況に陥った。
 1年近くの政権運営は実績に乏しく、与党大敗は必定だった。
◆「安倍政治」清算に決意
 「安倍政治」の清算に決意を示したことは評価したい。
 第2次安倍政権下の森友学園を巡る財務省の公文書改ざん問題では、文書不開示決定を取り消した大阪高裁判決の上告を断念。
 石破官邸の求心力の弱さも反映し、安倍政権時代に横行していた議員や官庁が政権中枢の意向を忖度(そんたく)する空気は一掃された。
 少数与党の国会で与野党が議論を尽くして結論を探る「熟議」にも粘り強く取り組んだ。案件ごとに野党と個別に協議する綱渡りの国会運営だったが、2024年度補正、25年度の予算成立にこぎ着けた。野党の追及に耐えながら、答弁は理路整然としていた。
 石破氏の辞任表明を受け、後任を選ぶ自民党総裁選を経て首相指名選挙が行われる。野党側に非自民連立政権を目指す動きはなく、衆参第1党の自民党の新総裁が後継首相に選ばれる公算が大きい。
 誰が首相に就いても、法律と予算は超党派の賛成なくして成立せず、野党側との対立が深まれば内閣不信任決議案が衆院で可決され得る状況に変わりはない。
◆多党制を動かす力こそ
 多数の中小政党が影響力を持つ多党化時代には、主張の違いを前提に大胆に譲歩してでも合意点を見いだす力が必要とされる。
 自民党総裁選で問われるのも、そうした「聞く力」や、多党制を機能させる、政治家としての能力や熱意である。
 新総裁の選出に一定の期間を要することは理解するが、政治空白をいたずらに長期化させてはならない。短期間かつ濃密な論戦で候補者の資質を見極めてほしい。





産経新聞  <主張>石破首相 遅きに失した辞任表明だ 自民は党員投票含む総裁選を

社説
2025/9/8 05:00
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記者会見を行う石破茂首相=首相官邸(梶山裕生撮影)
記者会見を行う石破茂首相=首相官邸(梶山裕生撮影)

昨年の衆院選に続き、7月参院選でも与党過半数割れの大敗を招いた石破茂首相(自民党総裁)が7日、ようやく退陣を表明した。

参院選が終わってからも首相の座にこだわり、政治の混乱を招いた。9月に入ってからの退陣表明は潔さとは正反対で遅きに失したというほかない。本来、石破首相は参院選直後に辞任していなければならなかった。猛省を促したい。

自民は、総裁選前倒しに賛成する党所属国会議員と都道府県連が8日に書面で要求し、過半数に達すれば臨時総裁選を実施する段取りだった。

前倒し賛成を評価する
石破首相は会見で、日米関税交渉で日米の覚書がまとまったことなどに触れ、「一つの区切りがついた今こそが、しかるべきタイミングであると考え、後進に道を譲る決断をした」と語った。だが、前倒し要求への賛成が閣僚を含む政務三役や、多くの国会議員、都道府県連に急速に広がり、辞任表明に追い込まれただけだろう。

衆院選でも参院選でも大敗したのに、石破首相は責任を取ろうとせずに居座った。7日の会見でも、参院選の民意に従って辞任するという考えを示すことはなかった。

これは国政選挙で示された民意には謙虚に従うという、憲政、議会制民主主義の基本原則を蔑(ないがし)ろにするものだ。

さらに石破首相は総裁選前倒しが決まるなら、大混乱が必至の衆院解散・総選挙に踏み切る考えをほのめかしていた。自党の議員への脅しは常軌を逸するものだった。

政党政治家として最もとってはならない態度であろう。これらを覆し、日本の憲政再建に道を開いたのは、総裁選前倒しへの賛意を表明した自民の議員や都道府県連である。高く評価したい。


立憲民主党をはじめとする野党は衆院過半数を得ているにもかかわらず、8月の臨時国会内閣不信任決議案を提出しなかった。野党からは、ここまでの政治空白をなじる声が出ているが、憲政を守ろうとしなかった野党に、このような発言をする資格があるのだろうか。

自民は立て直しが急務だ。野党は多党化し、基本政策で一致できる状況にない。比較第一党の自民は、党員投票を含めた総裁選を速やかに実施して新総裁を選び、安定政権の構築に努める責務がある。

石破首相は会見で、防災庁設立への取り組みや、能動的サイバー防御法の成立、日米関税交渉での区切りなどを政権の成果として挙げた。

だが、問題点も多々あった。たとえば、6月にオランダで開かれた北大西洋条約機構NATO)首脳会議に招かれていたが欠席した。北東アジアを含むインド太平洋と欧州の安全保障は直結しており、中国、北朝鮮、ロシアの脅威への対応を訴えるべきだったのに、その貴重な機会を放棄した。


保守の立場で政策示せ
中国軍機による危険な飛行など中国の多くの問題行動にも直接抗議の声を上げなかった。

厳しさを増す安全保障環境の中、日本の安全と国益を確保し望ましい国際秩序の形成をリードする姿勢が欠けていた。

日米関税協議を巡っても、赤沢亮正経済再生担当相に丸投げのように見えた。自ら訪米し、トランプ米大統領と積極的に交渉することをせず、7月23日の日米関税交渉の一応の決着後も接触しなかった。

党是である憲法改正をめぐっては、衆院でも参院でも憲法審査会会長のポストを、憲法改正に後ろ向きの立民に明け渡してしまった。

国会運営では昨年の衆院選少数与党になって以降、立民や日本維新の会、国民民主党など野党の協力を得るため、場当たり的な対応に終始したのは否めない。

子供が片方の親との強制的別姓となり、家族の一体感を損なう選択的夫婦別姓制度の導入でも、煮え切らない態度を取り続けた。自民を長く支え続けた保守層が愛想を尽かしたのもやむを得まい。


政治の混乱は首相のみならず自民執行部にも責任がある。自民は危機的な状況にある。総裁選に名乗りを上げる自民議員は保守の立場を踏まえ、外交安全保障や経済政策、憲法改正などで具体的政策を語るべきだ。政府報告書に沿った皇位継承策の実現は極めて重要な課題だ。





おまけ AIに関する社説があった(朝日新聞)ので収録

朝日新聞  (社説)生成AIと著作権 人間との共存続く仕組みを

2025年9月7日 5時00分

写真・図版
生成AIアプリが並んだスマホ画面

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 話しかけるように文章を入力すれば、人が書いたかのような文章が返ってくる、対話型の生成AIが普及してきた。画像や動画、音声を元に、絵画やアニメーション、音楽を作ることもできる。

 生成AIが便利な道具であることは疑いようがない。問われているのは、人間による知的創造活動との共存だ。表現物や創作物は、知的財産として経済的にも価値を持ってきた。AIは、デジタル空間でそれらにいとも簡単にアクセスし、模倣、再現し、疲れ知らずで大量に出力する。人間による表現や創作の存立基盤が揺らいでいる。

 ■ネット検索と連動

 生成AIにどう向き合うか。報道機関にとっても課題で、AI企業を提訴する事例が国内外で相次ぐ。日本では、生成AIを使ったサービスに記事を無断使用されたとして、読売新聞、朝日新聞日本経済新聞が米新興企業パープレキシティ社を著作権侵害などで提訴した。

 同社のサービスは、クローラーと呼ばれるプログラムがネット上から情報を集め、生成AIが回答をつくる。過去の学習を通じて得た情報に加え、リアルタイムで最新のニュースを取り込む。生成AIとネット検索を連動させたサービスである。

 参照した情報源を個別に示し、根拠となったサイトを利用者が確認しやすいのが特徴だ。誤回答をすることもあるが、回答が巧みだと、利用者は元の情報まで確かめない可能性がある。ニュースを発信する側にとっては、広告などの収入源である自社サイトへのアクセスが減りかねない。

 新聞3社は、いずれも自社のサイトに「robots.txt」というファイルを設置し、クローラーによる情報収集を拒否する意思を表示している。にもかかわらず情報が利用されている、と3社は共通して主張する。ファイルによる意思表示は紳士協定のようなもので、守らなくてもペナルティーはない。

 報道機関は、市民の判断材料となる情報の発信や権力監視という、民主主義に必須の機能を使命として負う。独自の視点で事実を掘り起こし、ニュースを発信する過程には、記者や編集者をはじめ多くの人がかかわる。時間や労力、費用をかけた著作物を許諾なく利用し、対価を支払わない「ただ乗り」が許されれば、活動継続は危ぶまれる。

 内容や文法の正確性が担保された記事は、AIの学習にもうってつけの存在だ。欧米での訴訟の多くは、著作物をAIの学習に無断で利用することの是非を問うものだ。例えば米紙ニューヨーク・タイムズは2年前、オープンAIとマイクロソフト著作権侵害で訴えた。米国では6月、公正に購入した書籍を生成AIの学習に無断で利用したことは著作権侵害に当たらないという判決も出た。

 ■日本の著作権法

 一方、日本の著作権法は、2018年の改正で、著作物をAIの学習データとして利用する限り原則として許諾は不要とされ、ネット情報を検索して結果を提供する場合でも、「軽微」な利用なら認められるようになった。

 法改正は新たな価値創出につながるとの期待があった。ただ、こんなにも早く、生成AIが身近になり、文章や画像、動画が大量につくりだされる事態は想定していなかったはずだ。文化的所産の公正な利用と著作者らの権利保護を図り、文化の発展に寄与するという同法の目的に照らせば、時代に合わせた不断の見直しが必要ではないか。

 今春には、スタジオジブリの作品によく似た画像がSNS上にあふれた。制度上は、作風やアイデアをまねただけなら著作権侵害には当たらない。本人の許諾なく声や容姿を利用して生成されたとみられる画像もネット上に氾濫(はんらん)するが、声や容姿は著作物とはみなされない。動画に性的な加工を施すといった人権侵害も起きている。こうした問題への対処も喫緊の課題だ。

 ■ふさわしい対価を

 ユネスコの事務局長は5月3日に発表した声明のなかで、「AIは、作者に報酬を支払うことなく(創作物を用いて)コンテンツを訓練することで、独立したジャーナリズムを危うくし、オンラインコンテンツの多様性を損なう可能性もある」と述べる。

 広告収入の減少が一因となり報道機関が閉鎖する中、巨大IT企業に対し、報道機関に正当な対価を払うよう義務づける法律を制定したカナダのような国もある。

 長い目でみれば、日本でも無断利用をさせないだけでなく、収集や利用に関してふさわしい対価が払われ、共存できる仕組みを整える必要がある。同じ課題を抱える他国とも協調していきたい。

 AIによる大量の生成物は、人間に気づきや発見をもたらし、創作や言論の活動を触発することもあるかもしれない。一方、オリジナルの創作者が持つ独自性が埋もれ、価値が薄まる懸念もある。人間による創作をAIが枯らすことのない仕組みを、人間の手で選び取る必要がある。




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