「チェリー」(作詞・作曲:草野正宗)は、
スピッツの7枚目のアルバム
『インディゴ地平線』(1996年)の
12曲目に収録されています。
(まだ7枚のアルバムの解釈しか進んでない・・汗)
☆君よ知るや春の歌

君は君の夢に向かって歩き出す。
僕のあんな戯言、忘れてくれって言ったのに
「ごめんね」なんて言うなよ。
君との未来図なんて
本当にただの戯言だったんだから。
※あくまで私なりの解釈で、
これを強要するとか、他の解釈を否定する意図はありません。
【勝手に解釈】は、私の妄想のページと思ってください。
青文字は、
「チェリー」(作詞・作曲:草野正宗)より抜粋
歌詞を少しずつみていきます。
君を忘れない
曲がりくねった道を行く
産まれたての太陽と
夢を渡る黄色い砂
ポップでキュートなイントロからの
いきなりの
「君を忘れない」・・・
冒頭からの宣言で、
きっと僕が一番言いたいこと。
君は、
もう会えない
もうそばにいない
でも決して忘れることはない
大切な人なんだろう。
僕はこれまで
君と生きるために
平坦ではなく
普通じゃ通らないような困難な道を歩いてきた。
そしてたぶんこれからも。
「産まれたての太陽」は、
「くすぐり合って転げた」日々を送っていた
これまでの君と僕を照らす太陽ではなく、
二人が別々の人生を歩き始めるスタート、
「新しい日々を照らす太陽」でしょう。
「それぞれの日々の始まり」みたいな。
「夢を渡る黄色い砂」とは?
この歌が出た当時は謎でした。
でもデビューアルバムから聴きこんでいくうち、
「黄色い砂」は、
「君」あるいは「君の気持ち」じゃないかと。
「黄色」はこれまで
「君」をイメージする色として使われてきました。
♪黄色い月が呼ぶ 君が生まれたところさ
(「月に帰る」)
♪どこへ流されていく 黄色い花
など。
「砂」は、
いくらすくっても
さらさらと指の間からこぼれ落ちて
手元に残らない、
決まった型におさまらない、
というイメージがあって、
それがこれまでの歌に出てくる
「君」のイメージなのです。
いくら追いかけても
手が届かない・・・
君に触れられるのに
捕まえることができない・・・
そんな君が「夢を渡る」
それは「僕」という「夢」から
「他の夢」へと渡っていくのでは?
他の夢とは・・・
君には君なりの夢があった。
それとも
僕以外の誰かの存在なのか。
いずれにしても
君は僕のもとから去っていくようです。
僕はもう抗うことはせず
君の旅立ちを
新しい日々のはじまりとして祝福する。
今までの歌で
君の旅立ちに際しては、
♪いつでもここにいるからね
と未練が強かった「魔女旅に出る」
♪最低の君を忘れない
と意地を張ってた「不死身のビーナス」
♪君が思い出になる前に
もう一度笑ってみせて
と懇願した「君が思い出になる前に」
など。
二度と戻れない くすぐり合って転げた日
きっと 想像した以上に騒がしい未来が僕を待ってる
掴みどころがなくても
僕はそんな君が好きだった。
君も僕のことを好きだったと信じている。
刺激し合ったり
時には反発したり、
かけがえのない存在だったのでしょう。
君と同じ未来を見てると思っていた。
ずっと二人で歩いていけると思っていた。
でももう今までのような二人では
いられなくなったと僕は感じています。
君のいない未来は
思った以上に寂しくて
辛いものになるのはわかってる。
だからきっと、日々の慌ただしさを
あえて僕は選んでいくのだろう。
そして僕自身も
また君に会うための道を歩く。
♪夢見るとか そんな暇もないこの頃
の歌詞にもつながるような気がします。
「愛してる」の響きだけで 強くなれる気がしたよ
ささやかな喜びを つぶれるほど抱きしめて
そして、
あまりにも有名なこのサビ!
「くすぐり合って転げた」日々は
無邪気に心通わせられる
楽しい日々だったのでしょう。
掴みどころがなく本心もみえなかったけど
それでも君は「愛してる」と言ってくれた。
君との未来はずっと続くと信じていた。
実際は、「愛してる」の言葉だけで、
それ以上でもそれ以下でもなかったのでしょう。
このサビは
自信のなさを感じさせるワードだらけです。
「響き」「だけで」「強くなれる」「気がした」
「強くなった」や「強くなるよ」ではなく
「なれる気がした」
そして得られた喜びを
「ささやか」と表現・・・
君は僕ではない「夢」に向かい、
「くすぐり合って転げた」日々も
描いていた君との未来も
消え去ってしまったのだ。
君が去ってしまう不安は
いつもどこかにあったのかもしれません。
でも、
君が言ってくれた「愛してる」、
それだけでもう僕は
十分嬉しいのです。
たとえ微力で不確実だとしても。
それは二人だけの秘密であり、
二人だけの思い出だから。
そして、そんな気弱なワードの羅列の後に
強力なワードが出てきます。
「つぶれるほど」!!
この対比の大きさよ!
どこにそんな力を秘めてたんだ?
それが僕にとって
どんなに大きな喜びだったか。
このサビでの表現の対比、
「ささやかな」喜び ×
「つぶれるほど」抱きしめて
草野さんはさり気なく歌っていますが、
切ない歌詞だと思います。
君の夢を後押しする僕の
なんとも複雑な気持ちが
2番からの歌詞に込められていると思っています。
こぼれそうな思い 汚れた手で書き上げた
あの手紙はすぐにでも捨ててほしいと言ったのに
「汚れた手」という表現は
自分をガードしたり飾ったりせず
ありのままの素の気持ち。
そして一途で向こう見ずな感じです。
そんな僕の胸のうちを
ありのまま君にすべて打ち明けた。
描いていた君との未来図も。
実際は「手紙」ではなく
僕が意を決してぶつけた
「言葉」だったのかもしれません。
でも結局君は僕から去ってしまう。
そして砂のように自由な君は
無邪気で優しいのでしょう。
僕の心を気遣ってくれるのです。
「君が謝ることはないよ」
辛い気持ちを悟られないように、
僕は思いっきり強がって
思ってもないことを言ってしまったりします。
「君の大切な夢じゃないか」
「僕のことなんてもう忘れて」
平気なフリをして君を遠ざけます。
「幸せになってな」
少しだけ眠い 冷たい水でこじあけて
今 せかされるように 飛ばされるように
通り過ぎてく
強がっていても
僕はまだ辛くてメソメソしている。
でも無理やりでも現実を受け止めなきゃ。
「せかされるように」「飛ばされるように」は
自発的な表現ではありません。
そんな気力もまだないんだけど
仕方なく無理やり前を向かざるを得ず、
この辛さから早く逃げ出さざるを得ず、
ということでしょうか。
これでいいんだよねと
無理やり自分を納得させて。
「愛してる」の響きだけで 強くなれる気がしたよ
いつかまたこの場所で君とめぐり会いたい
そしていつかまたここで
何もなかったように
君と出会いたい。
きっと会える。
出会うのは君しかいないと思っている。
どんなに歩いてもたどりつけない
心の雪でぬれた頬
悪魔のふりして切り裂いた歌を
春の風に舞う花びらに変えて
そして、ここにきて
なんとも切ないCメロ!
イントロから変わらず
ポップで明るい曲調だけど
Cメロ前で一瞬不穏なメロディになります。
これは
君を遠ざけた
僕の心の裏側だと思うのです。
どんなに手を伸ばしても
君の心を掴むことはできなかった。
ふさわしい「答え」も見つけられなかった。
もう春が来てるというのに
心にはまだ雪が降っている。
君が去ってしまうからだ。
心の雪が涙となって頬を凍らせている。
無理やりな笑顔で頬が引きつってる。
君を繋ぎとめる術がない以上
僕に他に何ができるというのだろう。
最初から君とはただの友人
「未来図なんてどうでもよかったんだ」
君の前では平然と
心にもない態度をとってしまった。
君の夢を明るく後押しするために。
今まで僕がずっと思い描いてきた
君との幸せな未来図、
君に熱く語った未来図を
心を鬼にして切り裂いた、
つまり、なかったことにしたのです。
そんな思いで切り裂いた君との夢は
燃やしてしまうでなく、
水に流すでなく、
闇に葬るでなく、
「春の風に舞う花びらに変え」た。
桜の花びらに。
春になると
多くの人が「きれい」と仰ぎ見るような
「美しい」ものへと昇華させた。
大事な大事な君との夢だから。
本当は「どうでもいい」なんて思ってない。
そしてそれは、
僕の精いっぱいの「抗いの気持ち」。
君を忘れない
曲がりくねった道を行く
きっと 想像した以上に騒がしい未来が僕を待ってる
「愛してる」の響きだけで 強くなれる気がしたよ
ささやかな喜びを つぶれるほど抱きしめて
ズルしても真面目にも生きてゆける気がしたよ
いつかまたこの場所で君とめぐり会いたい
「ズルしても真面目にも」
これは結局のところ
「どんな状況にあっても」ということじゃないですか。
君のいない現実に慣れていくのは怖い。
この先きっと僕は
後悔したり絶望したりもするだろう。
でも
君の「愛してる」の響きを
ずっと胸に抱きしめて
きっとまた会えると信じて生きていく。
♪その後のストーリー 分け合える日まで
【歌の感想】
明るく歌ってるけど
切ない「別れの歌」だと思う。
そしてたぶん、僕の「片思い」。
強がって、
君には平気なフリをするけど
気遣われると余計に辛い。
スピッツの歌詞には
「失恋」や「別れ」という言葉は
たぶんだけど出てきません。
君の「旅立ち」なのであって
僕らはいつかまた、必ず会える。
「別れ」じゃない、と思ってる。
運命的な相手である君とは
困難はあっても
いつかはきっと結ばれる、と
信じているのでしょう。
君も同じ気持ちじゃないかと。
(考えようによっては、ちょっと「重い」ぞ)
君がくれた言葉をかたくなに
胸に抱きながら。
歌い出しから
「君を忘れない」って言ってるんだから
忘れるわけない。
いつも君を思って生きている。
♪君と語り合ったくだらないあれこれ
抱きしめてどうにか生きてるけど
という感じかも。
そして封印した本当の気持ちは
桜の花びらに変え、
美しいものとしてずっと残しておきたかった。
また会える日まで。
僕の無念さと
君への変わらぬ愛情が感じられて切ないです。
過去の歌には、封印した思いについて
♪あの日のたわごと 銀の箱に詰めて
(「田舎の生活」)
という表現もありました。
春の風が秘かに届けてくれるだろうか?
僕の本当の思いを。
♪聞こえるか? 遠い空に映る君にも
(「春の歌」)にも通じるものがある気がします。
そして、
♪いつか正夢 君と会えたら
打ち明けてみたい 裏側まで
(「正夢」)にも。
題名の「チェリー」について。
「チェリー」という歌詞は出てきませんが
「春の風に舞う花びら」というところから
スラング的な「チェリー」という解釈もあるようで。
この「チェリー」が発表された頃の
何かのインタビュー映像で、
題名「チェリー」の意味を聞かれた草野さんが
「僕たちチェリーボーイなんで」と答えると
「『僕たち』?」と
三輪さんが驚いた顔をして
一緒にしないでくれる?的な感じで笑ってる
場面がありました。
そういう台本だったのかもしれないけど
スラング的な「チェリー」なのかどうかは
結局煙に巻いた感じになっていたように
記憶しています。
成就させることはできなかった思いや
気弱で無力な自分を自嘲する意味でも
スラング的な「チェリー」っぽい意味も
ひょっとしたらあるのかもしれません。
それに、チェリーって、こんな感じ。🍒
二つくっついたサクランボ。
「君と僕」
どんなことがあってもずっと一緒、
なのかも。
(やっぱりちょっと「重い」)