
寒い日が続く
こんな冬の日に
山里にある蕎麦屋を訪ねた

寒いのは苦手だが
冬の風景は嫌いではない
晩夏とは違う寂寞感に
包まれてしまう

その寂しさや静けさが
心の中の雑念を消し去ってくれる気がして
身も心も引き締まるのだ
二組目の客が暖簾をくぐるまでは
そんなことを考えながら
店の中に飾られた
ご主人の手製であろう陶器を
眺めていた

ひとときの静寂が破られ
二組目のおしゃべり雀達が
賑やかに注文の品を決めている
一人の御婦人は蕎麦を
大盛りにするかどうか迷われている様子
聞くでもなく耳に飛び込んできたのは
朝ごはんを食べていないから
というなんとも切実な理由

私に言い訳は無用ですよ
そう口から出そうになるくらい
それは私に向けて発せられた言葉なんだろう
私も朝ごはんは食べていないけど
とはさすがに口に出せずに
店を後にした