映画『俺ではない炎上』を試写にて観させていただきました。
今回は映画を観た率直な感想を書きたいと思います。 ネタバレしていますので、まずは映画を観に行ってから読んでいただければと思います。

2025年9月26日公開
125分/日本/ミステリー、サスペンス
監督:山田篤宏
脚本:林民夫
主要キャスト:阿部寛、芦田愛菜、藤原大祐、長尾謙杜、夏川結衣
原作:朝倉秋成『俺ではない炎上』
感想
林民夫脚本はいつも無難
率直な感想。つまらなくはない。でも面白くもない。
ミステリー映画として破綻しているとかではないので、観ていて飽きたりはしない。
でも、テーマに対して、何万回も聞いたことがあるようなことしか言っていないので、まあそうだよねという感想しか出てこない。
この映画が問題視しているような人物が今作を観たとして、たぶんメッセージは届かないと思う。
今作を観ている間、前にも同じような映画みたことあるなぁと思っていた。後で作品情報を調べていて思い出した。今作と同じく林民夫脚本で阿部寛主演の映画『護られなかった者たち』だ。
映画『護られなかった者たち』も、ミステリーに社会問題をかけ合わせた作品である。
連続殺人事件の犯人を追っていく中で、事件の裏に隠された真実が明らかになるという内容である。
この映画を観たとき、打ち出したメッセージはとても良いとは思うけど、
”ミステリー”の部分に比重を置きすぎていて全体的にすごく軽いなと思った。
今作にも同じことを感じた。
言いたいことはわかる。その通りだとも思う。けど、なんというか浅い。
炎上にびびっていませんか?
今作のテーマはタイトルの通り【炎上】である。 言いたいこととしては、不確定の情報を拡散したり、自分が信じたいものを正義として暴走するSNSの使い方に対しての警鐘かな。 一方で、炎上が起きる原因として、人間関係における自己認識と他者認識のギャップについても描いていた。
阿部寛演じる泰介は、自分では面倒みが良くて周りから好かれていると思っているけど、実際にはうっとおしがられていて全然好かれていない。長尾謙杜演じる青江は、求められていないのに正義だからと暴走して勘違いをしてしまう。事件の火種となった投稿をした住吉初羽馬も自分を優秀な若者と思っているけど全然そんなことない人物として描かれていた。
そこが面白いなと思った。泰介が家族や同僚から全然好かれていなかったと判明するシーンはコメディとしても面白かったし、テーマとしても「そっちにいくのね!」と感心した。
だけど、結局犯人は誰だとかトリックの部分だとか方に行っちゃって、深堀りされぬままそれっきり。
クライマックス手前で、サクラが住吉に「お前が諸悪の根源だろうが!!」と叫ぶ場面も、単にスカッとジャパン演出にしかなっていないのが勿体ない。
というか、ここって本当にスカッとさせたい場面だったのかな?
というのも、お前が承認欲求で拡散したのが事の発端だろっていうのは分かるのだけど、諸悪の根源ではなくない?
初羽馬は引用リポストしたっきりで、そのあとに薪をくべるような行為はしていないわけだし、フェイク画像とかでもなかったし。そもそもの根源は泰介の虐待的な行動なわけで、それを知っているはずのサクラに言わせるのは違うのではないかと思った。
サクラも自己認識がズレている人物なんだよって示すための描写なのだったら理解はできる。ようするにサクラを観客に見立てることで、あなたも完璧に正しい人間ではないかもよということを示すために少しズレたことを言わせたのだったら意味がある場面かなとは思う。
でも、話の流れ的にそうとは取れないし、そうだとしてもわかりにくい。
この描き方だと、結局は“他人事”で終わってしまうのではないか。
ミステリー的な面白さに比重を置いて、テーマからは逃げているように見えてしまった。
意見をはっきり言いすぎると賛否両論になるとは思う。
それこそ炎上するかもね。でもそのくらいやったほうが良かったのでは。
結論
ということで、自分が正しいと思っている人の暴走っていう表面的なところに留まっているのがすごく勿体ない気がする。 それこそ”真の諸悪の根源”はなんなのかというところまで踏み込んでほしかった。
炎上を恐れず、もっと観客に対して「お前も自分のこと善き人間だって思ってるかもしれないけど全く違うからね?」くらい刺せばいいのに。
