※ネタバレを含みます
| 作品名 | ほどなく、お別れです |
| 公開日 | 2026年2月6日 |
| 上映時間 | 124分 |
| 監督 | 三木孝浩 |
| 脚本 | 本田隆朗(脚本監修:岡田惠和) |
| 原作 | 長月天音『ほどなく、お別れです』(小学館文庫) |
| キャスト | 浜辺美波、目黒蓮、北村匠海、志田未来、古川琴音、渡邊圭祐、光石研、森田望智 ほか |
| 配給 | 東宝 |
綺麗な映画だった。だから泣けなかった。
三木孝浩監督らしい映画だった。重たいテーマを綺麗にパッケージして、過不足なく語る。嫌いではない。 でもまあ絶賛するほどではなかったし、ちょっと綺麗すぎて泣けはしなかった。
この映画はいわゆる「泣かせてやろう映画」ではないと思う。ほら、これで泣けるんだろう?泣きなよ!みたいな露悪的なタイプの作品ではない。
ただ、泣けなかった理由を考えていたらこの映画の構造が見えてきたので、その話をしたいと思う。
この映画が葬式をどう捉えていたか
まず、この映画で一番良かったこと。
「葬式とは残された側が折り合いをつけるためのもの」という前提が、物語全体を通じて徹底されていたことだ。
すごく個人的な考えなのだが、私はお葬式を死んだ人のために行うものみたいな認識は変だなと思っている。宗教的な話は別として、極端な言い方をするとお葬式やお墓参りなどは生きている側が納得するための自己満足だと思っている。
だから必要ないとかの話ではなく、そこを無視した主張をしている人がいると「はあ?」と思ってしまう。
死というのは予定できない。唐突にやってくる。大切な人が死んだとき、残された側はどうにもできない悲しみをなんとか処理しようとする。あの時こうすればよかった、もっと会いに行けばよかった。死に意味を持たせようとする。葬式もその一つで、儀式を通じてどうにかこうにかしながら、時間とともに少しずつ折り合いをつけていく。
この映画はそこをちゃんと捉えている。だから説教臭さが全くない。「死を乗り越えろ」とも「前を向け」とも言わない。ただ、それぞれの折り合いのつけ方を丁寧に並べていく。この姿勢は誠実だと思う。
オムニバス形式について
この映画はオムニバス形式で、さまざまな家族の葬儀エピソードが次々と展開されていく。そのせいか「全部のエピソードに感情移入できなかった」という感想を見かけることがある。
私は別に感情移入できなくても良いんじゃないかと思う。
各エピソードは、主人公・美空の成長と対応している。葬儀の仕事を始める「きっかけ」、壁にぶつかる「挫折」、視点が変わる「変化」、一人で立つ「自立」——エピソードはその段階を一つずつ踏む構造になっている。全部に感情移入する必要はない。むしろ観客それぞれが自分の境遇に近いエピソードで刺さればいい設計になっている。もちろん全部に刺さらなくても良い。
綺麗すぎるがゆえの問題
一方で、綺麗に構成していることがそのまま弱点にもなっている。
私が泣けなかった理由は「綺麗に整理されすぎていてリアリティが薄い」が一番近い。予定調和というか、エピソードがきれいに完結しすぎていて、現実の死が持つ「どうにも折り合いのつかなさ」が削ぎ落とされてしまっている。
もちろん、劇中のエピソードに近い境遇の人なら泣けると思う。ただ、より多くの人の胸を打つためには、もう少し「整理しきれない感情」を残してほしかった気もする。
そういう意味では、「泣かせようとしている映画」と言われてしまうのも、仕方がないのかな。
また、浜辺美波演じる主人公は「亡くなった人の声を聴くことができる」という設定を持っているが、これがこの作品のテーマとあまり合っていない気もする。
なぜかというと、「葬式は残された側が折り合いをつけるためのもの」という前提に立ったとき、「故人と直接やり取りできる」という設定は、その前提を揺るがしてしまうからだ。残された側がどうにか折り合いをつけようとしている物語に、「でも故人とまだ話せます」という要素が入ると、折り合いをつける必要性そのものが薄れる。
死が唐突で取り返しのつかないものだからこそ、葬式に意味がある。その不可逆性を設定レベルで部分的に解除してしまっているのは、ある種テーマとのミスマッチだとも思う。
とはいえ、特段悪いところがあるわけじゃないし、丁度よいバランスの映画だったと思う。スカイツリーの異物感とかも良かった。
余談
目黒蓮の演技が素晴らしかったですね。葬祭プランナーとしての佇まいも、納棺師としての所作も説得力があって、キャラクターが成立していた。
こんなこと言うと絶対に怒られるから言わないんですけど、
目黒蓮って、普通の人の最上級の顔してるよなと思った。
イケメンですよ?めちゃめちゃカッコいい。 でも、山田涼介や中島健人みたいな「本当に同じ世界に生きてる?」と思うほどの絶世のイケメンとは違うというか。
銀座の高級焼肉屋じゃなくて、食べログ4.8の大衆焼肉屋みたいな。
だからこそ、キャスティングにもリアリティがあったんじゃないかなと思う。 めちゃめちゃ褒めてる文脈なので怒らないでください.......