その後は、再びロンドンバスで本日夜のオペラハウス、コヴェントガーデンに向かいました。
ロイヤル・オペラ
ロイヤル・オペラです。今シーズンから、「ロイヤル・バレエ・アンド・オペラ’Royal Ballet & Opera’」に改称されました。(Tripadvisorロンドンの観光3,371件中91位)
来日公演は大体オペラだけだと思うのですが(興味ないから認識していないだけか)、敢えてこのネーミングということは、ハウスとしてはバレエの方に力点を置いているということかと。
ファサードは1856年のものだそうなので、ウィーンとほぼ同時期。英国らしい新古典ですね。

ステージが些か狭いのですが、そこが却ってクラシカルな雰囲気を醸し出しています。
桟敷席方面。コヴェントガーデンの桟敷席は4階層。桟敷1階(日本でいう2階)が階高も高いので間違いなく最上等ですが、中央に貴賓席はありません。というかボックス席があるのは両ウィングだけで、正面は普通の座席です。

2000年にリニューアルされた新しい劇場ですが、ファサードと観客席は当時もの、普通に古風な雰囲気です。
キノコのような照明が可愛らしいですね。
オーケストラピット。結構深いですね。パンフレットには100人の名前が載っていますが、今日の演目は80人くらいの3管なので、100人は(交代で出演する)楽団員総数でしょう。
桟敷席地階・1階の殆どがPrice1という、日本のように最上等でも当たり外れの差の大きなロイヤル・オペラ・ハウス。今日の我らは桟敷席地階(日本でいう1階)を選びました。英国っぽい庶民的な雰囲気です。因みにここから見える1階・舞台から右に2つめの広いボックスが、ロイヤルボックスです。

当然最前列に着席。自分の目線より少し低い手摺りの高さからの舞台。ほぼ正面です。真正面は後方に調整室、上にカメラ台があって頭上が蹴られるので、こちらの方がポジションはいいです。でも1つ上に上がらないと、単にステージが遠い席だったな。日本のコンサートホールに比べれば近いですが。

£255@1人。
隣の他人と近いので、快適性はボックス席に劣るし、ミラノやウィーンのようなセレヴ感はないです。
さて、演目は22−23シーズンからのプロダクションが3期めに入ったヴェルディの歌劇「アイーダ'Aida'」、みんな大好きアイーダです。
https://www.rbo.org.uk/tickets-and-events/aida-details
スカラ座から2劇場続けてヴェルディ、ロイヤル・オペラの19年来日はオテロ、24年来日はリゴレットだったのですが、この週のROHは、イェヌーファ'Jenůfa'とのこの日がシーズン初日のアイーダとの選択でした。ライトなファンである嫁が迷わずアイーダを希望しました。
スケジュールがうまく嵌まるならアントニオ・パッパーノ指揮のワルキューレ'Die Walküren'が今シーズンの新プロダクトでした。前回ロンドンに来た時も丁度ワルキューレをやっていて、当日券待ちに並んで確か£180くらいのS席(超出物❗️)が回ってきたのですが、今ほど豊かではなかった我が家の財政を考慮して嫁が断ったのでした(これを言うと「いつまでも細かいことを言うな」と怒られます)。翌週からはミラノでティーレマンさん指揮のワルキューレ新プロダクトがあったので、ワーグナーのファンとしては惜しいスケジュールでした。
と言うことで、ワーグナーを意識してワーグナーに負けているワタシ的に失敗作評価をしている後期ヴェルディ作品、アイーダです。
CONDUCTOR Daniel Oren
AIDA Anna Pirozzi
RADAMES Jorge De León(replaces Riccardo Massi)
AMNERIS Raehann Bryce-Davis(replaces Ekaterina Semenchuk)
AMONASRO Amartuvshin Enkhbat
RAMFIS Alexander Köpeczi
KING OF EGYPT George Andguladze
HIGH PRIESTESS Khayakazi Madlala
MESSENGER Andrés Presno
DIRECTOR Robert Carsen
2年前に物議を醸したというロバート・カールセンさんの演出は、エジプト色皆無、ウクライナ戦争を意識しているのだと思いますが、アメリカとロシアと中国をミックスして創造した全体主義国家を舞台に平和を訴えるメッセージらしいです。
ところでこのテキストを校正している今日3月1日は、米ウ首脳会談決裂のニュースが流れています。トランプ・アメリカは酷いですね。軍事支援の正当な対価ということなんでしょうがウクライナ本土の資源はアメリカが収奪、ロシアの侵略を容認して侵略地の資源は米露共同での収奪を目論む。それに屈しないゼレンスキー氏の態度に怒っていましたが、
弱い立場にいる交渉相手に過大な要求を突きつけて実利を得る自身の交渉術
(日本経済新聞3月1日朝刊総合2面)
トランプ流「ディール」のここまで端的な表現は、私は第一次政権当時から言ってましたが、メディアでは初めて見た記憶。「分かっているのは俺だけか」と厨二病的な思いをこれまで抱いていましたが、うん、やっぱり普通に分かっていましたか。
国際政治を暴力が支配する第二次世界大戦前の世界に戻しました、というか戻しているのはプーチンとネタニヤフだと思いますが、それを追認し、寧ろ支援してそこから分け前を得ようとしています。ヨーロッパと日本との違いは、アメリカにとっては核戦争のリスクさえコントロールすればいい(弱い)ロシアに対峙しているか、ライヴァルになることを防ぎたい(強い)中国に対峙しているか。習近平氏はトランプ氏が悪目立ちするのを利用して静かな侵略と影響拡大を進めていますが、金勘定第一のトランプ氏が1971年を再現する第二期米中融和に転じれば、台湾と日本は梯子を外され、愈々中国からの侵略の危機に晒されます。彼の言葉と逆に、Make America Weakに走っています。アメリカを没落させ、中華帝国を勃興させた大統領として歴史に名を残すかどうかは、金の力で押し切れるかどうか次第。それもディールですね。金貸しと株屋と不動産屋はビジネスマンじゃないと昔から言われていたと思いますが、そんな不動産屋の彼の視線が届かないロングタームの。
脱線から戻ります。全体を通してコンクリート・グレーのモノトーンのステージは変化に乏しく、グレーの現代迷彩服は将軍ラダメスが中佐くらいに見えたし、時折り挿す赤色も生気・希望でなくダイレクトに「流血」をイメージしているそうでそんなにインスピレーションに冴えがあるようにも感じないなあ。
ヴェルディの意図から外れた演出なら、アレーナ・ディ・ヴェローナみたいな一大スペクタクルを拡大する方向に外れるのがいいです。初めてローマ行った時だったかな、まさにカラカラ浴場でローマ・オペラの「アイーダ」観ていますが、ああいうのが最高。
が、この殺風景さが聴く方を妨げることなく、却って音楽に集中できました。
ラダメスとアムネリスが交代という些か心配なキャスティングでしたが、ラダメスのホルヘ・デ・レオンさん、よかったです。リッカルド・マッシ'Riccardo Massi'さんの体調不良というか不評降板による代役らしいですが、非常に力強く輝かしい歌唱でした。各地のオペラハウスで主役を張る当代随一のドラマティック・ソプラノであるアンナ・ピロッツィさんとこの作品でROHデビューしたレイハン・ブライス・デイヴィスさんの女声ツートップもよかったです。実際2人とも称賛を浴びてました。若きスター・バリトン、アモナスロのアマルトゥブシン・エンフバートさんは、多分私は初めて聴きましたが、ピロッツィさんとの二重唱がこの舞台のハイライトだったと思わせる素晴らしさでした。イスラエル人指揮者ダニエル・オレンさんはイタリア・オペラを得意とする方だそうですが、手堅い印象。木管と合唱は今回も素晴らしかったです。ロイヤル・オペラのクオリティの高さを示した公演でした。

£8.5、82ページの公演パンフレット。

徒歩でホテルに帰り、2つ目の都市、ロンドンでの日程を終了しました。