
グループ内で組織や事業を再編をするとき、会社分割をよく使うと思います。
所属先でもこの数年で複数行ってきたのですが、想定どおりにいかず、時々おかしなことが起きて、大変困ることがあります。
会社分割って、実は悪手ではないか…
会社分割が好まれる理由
グループ内再編でA社からB社に契約の束や資産負債の一部を移したいとき、次の手段を検討するのが王道だと思います。
- 事業譲渡
- 会社分割(吸収分割)
- 既存の契約終了と新規締結
このうち、事業譲渡は、原則として対価(現金)と時価評価がいるし、消費税がかかるし、適格再編のような仕組みもないし…と、財務面でハードルが高いようです。法務面でも、会社法上の手続は簡便というメリットがあるとはいえ、契約を移すには相手方の同意を要し、数が多いときちんと実行できない可能性が高く、お勧めしかねる場面が多いです。既存の契約を終わらせて移管先で新規締結する場合も同じ。*1
したがって、反対株主、債権者、労働者の保護のための一定の手続が必要とはいえ、次の理由で会社分割が選ばれるケースが多いように思います。
- 対価不要
- 税務面の整備がある
- 包括承継が可能で現場の負担を抑えられる
そう、会社分割は、最前線の従業員に大きな負担をかけずに行うことができるというメリットがあるのです。少なくとも私は、「これこそがメリットで、そのために自分たちが多少たくさん書類を作ったり手続をしたりするのは当然」と、数年前までは思っていました。
会社分割が悪手かもしれない理由
「会社分割こそ正義」と信じていた私が、最近になって悪手かもしれないと感じている理由は、会社分割後も従前の形態で取引を続けていたり、新規取引を従前の形態で開始したりすることが頻発し、旧態と新体制が混在するカオスが生じているからです。何のための吸収分割だったんだ!
そもそも、再編目的が事業のスキーム変更で、「見かけ」はほとんど変わらないという事情*2もあり、次の2点のせいでこんなことになっていると思っています。
- 会社分割をするご案内が行き届かず、会社分割したことを、お取引先がそもそも知らない
- 会社分割をしたことをお取引先も自分たちも、すっかり忘れてしまう
「そんなやつ、おらんやろ」と思われるかもしれませんが、恥ずかしながら本当なんです…本社から飛んでくる色々なお知らせを確実に実行させるのは、非常に難しい*3。きちんと指示に従った従業員から案内を受け取ったお取引先のご担当者がしかるべく対応をしてくれることも、期待しすぎてはいけません。
会社分割を悪手にしないためにできること
では、どうしたらよいのか。いくつか考えてみました。
1.法務が契約書を全件チェックする
少なくとも新規締結分については、法務で事前確認できれば、このようなカオスは防げるはずです。
しかし、年間締結件数が万を超えるので、到底全てには対応できませんし、個々の契約がもたらすリスクを考えても全件チェックは非効率すぎます。加えて、「お取引先より立場が弱い自分たちは、相手の言うとおりにしないといけない」(と担当者たちが思い込んでいる)という問題もあります。
2.会社分割を使わない
現場やお取引先の負担を極力少なく…と思って行ったことが、その後長く続く混沌を引き起こしました。
これが事業譲渡であれば、全取引先に説明して契約書を取り直すか地位承継の同意を取り付ける必要があり、お取引先のしかるべくところに情報が届くはずですし、本社としても後追いの必要性が増すので、ただ案内を送って終わる会社分割よりは確実そうです。
ただ、この場合、「これをきっかけにして条件交渉を頼まれる」という、都合の悪い問題を生む可能性があるのと、数が多いと人海戦術でも100%は望めません。あと、おそらく、財務チームがGOを出さない。
3.混沌を受け入れる
面倒は見切れない、かといって他の選択肢もないとなると、もうこの状況を受け入れざるを得ません。
あのとき、私たちにできることはなかったと諦め、吸収分割前の商流で相談してくる依頼者に「●年にこういうことがあって、今はこうなっているので、この契約の当事者は●社でないとダメです」と伝え、お取引先からの「そんなことは当時聞いていなかったので、これまで従前の取引を続けていたが、今回初めて聞いて、このように取引を変える」という契約変更に至る事情が記載された覚書の内容を、「おたく、ご覧になっていると思いますけど…!」という思いをぐっと堪えて受け入れております。
ちなみに、所属先では、この混沌を抜け出すブレイクスルーがひとつ見つかりました。それは、合併。商号変更もいいかもしれません。
社名が変わるとてんやわんやで、手当不要な契約まで変更・再締結を求めてくださいます。。