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親会社監査役の子会社取締役会出席権

親会社の監査役が「情報収集のために取締役会に出させろ」といってきたら、受け入れなければならないでしょうか。

親会社監査役による子会社調査権は制限付き

会社法はどういっているかというと、こういっています。

381条2項:

 

監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

381条3項:

 

監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

381条4項:
 
前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。
自社に対しては、取締役会への出席や意見申述義務に加えて、いつでも、取締役や従業員に報告を求めたり、調査を行ったりすることができることに比べると、子会社へのアクセス権は結構制限されています*1
したがって、親会社の監査役の子会社取締役会への出席権は、会社法上保障されているとはいえず、子会社としては断ってよさそうです。

制限がある理由は、親子とはいえ別人格だから?

その理由について、ものの本は「いくら子会社とはいえ別人格だから」と説明しているのですが、わかったようなわからないような…
もう少しブレイクダウンすると、次のようなところでしょうか。
  • 親会社の監査役は、子会社株主から信任を得ているわけではない
  • 親会社の監査役は、子会社に直接の守秘義務を負っていない
  • 子会社に監査役がいる場合、親会社監査役の出しゃばりを許せば子会社監査役の存在意義がなくなる

子会社株主とは親会社(の業務執行取締役)のことで、親会社の監査役は親会社の株主から「取締役をちゃんと見ておいて」と頼まれていることを考えると、ひとつめの理由は形式的に思えるし、子会社に直接の守秘義務を負っていないのは、オブザーバーとして参加している親会社の他のメンバーも同じはず*2

なので、「親会社監査役が来たら子会社監査役の意味がないじゃない…」というみっつめの理由が最も納得感があります。

実際、会社法施行規則105条4項では、

 

監査役は、その職務の遂行に当たり、必要に応じ、当該株式会社の他の監査役、当該株式会社の親会社及び子会社の監査役その他これらに相当する者との意思疎通及び情報の交換を図るよう努めなければならない。

とあるので、子会社の情報は、監査役間で連携を図ることが求めているように思います。もちろん、子会社監査役との連携に限らず、自社の取締役会・取締役への監査や内部監査部門・会計監査人との三様監査連携も。

必要性や正当な理由とは

親会社監査役が子会社調査権を行使できるのは職務遂行上必要があるときに限られるので、「何かないか見つけるため」に子会社に情報をとりにいくことは認められるべきではないと思います。一方で、何かそれらしい理由をつけられると子会社としては断りにくそう。子会社には、理由のベースとなる事実の存否(内部告発があったとか)を確かめる手段もなさそうだし…

また、「正当な理由」があれば報告や調査を拒否できることになっていますが、これまたものの本によれば、機密性の高さを理由とする拒否は不可と述べるものもあり、ならばほかにどんな「正当な理由」があるのか…

本当に監査役の出席を断れるか

会社法上は、必要性がなければ子会社調査権を行使できませんが、とはいえ実際に「取締役会に出たい」と言ってきた親会社監査役が現れたらどう丁重にお断りすればよいか。
「うちには、うちの監査役がいるのでご遠慮願いたい」で納得してくれますかね…*3

ちなみに、監査役協会のサイトを見たところ、子会社の取締役会の参加を促すようなものは見当たらなかったので、やはり普通はそこまで出しゃばらないのだろうと思います。監査役の素晴らしいところは、弁えがあるところですからね。

*1:会計監査に限定された監査役でも、会計に関するものに関しては子会社調査権があります(389条5項)。

*2:自社の場合、親会社の子会社管理部門が参加しており、その中には取締役もいます。

*3:取締役会への参加同様、取締役会資料や議事録についても当然の提供義務はなく、親会社監査役への報告は原則として代表取締役がすることとされているようです。ただし、報告と調査の先後関係についても、どちらが先でも構わないと述べる書籍もあり、理由をつけて「あれを出せ」と言われたら結局従わざるを得ないような気がしています。




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