アメリカ、もしくは世界中の左派勢力にも急進左派と言われる勢力も大きく分けると2つのグループに分けられます。勘違いされる点もありますが、かつての極左組織と違い急進左派は議会制を否定せずあくまで院内活動による政策実現を目指すと言う勢力であり、暴力革命と現在の急進左派を重ねるような右翼、右派の主張は的外れであると言っておきますが。
さて急進左派のグループで世界的に有名なのは国際的な連携活動も行なっているバーニー・サンダースの「民主社会主義」のグループでしょう。日本でも「プログレッシブ議員連盟」が存在し、バーニー・サンダース派が多く所属するアメリカ民主党内グループ「進歩派コーカス」との一定の連携(主に外交面での政策共有ばかりで国内政策は熱心ではないです)が存在します。日本プログレッシブ議員連盟は明らかに保守派も混じっているので、前会長の中川正春などは「プログレッシブ議員連盟はリベラル保守の議員連盟」と言ってしまうぐらい日本の議員団はおそらくサンダース派の理論を利用しつつと言う思惑もあると思いますが、これを日本の状況に合致した「民主社会主義」を推し進めるなら、何も言いません。さて近藤昭一プログレッシブ議員連盟会長は私も何度かお会いした事もある人です。ですがバーニーと言うほど、強い指導力があるかどうかは今後次第でしょう。バーニー・サンダースと言う人は強固とも言える社会主義者で彼の地元で本拠地と言えるバーモント州バーリントンはカナダやメキシコの輸出依存度が高い街であり、TPPアングロアメリカ版のアメリカ・メキシコ・カナダ協定を労働組合AFLーCIOは条件付き賛成に転じた一方で、バーニーは自由貿易について懐疑的な政治的立場から加盟反対に投票しました。サンダース派の若手下院議員ですら地元の意向を鑑みて、賛成票を投じる一方でこの頑固に反対はバーニーの政治的立場をむしろ強力にしている部分でもあります。また前述したように民主党左派グループの中でサンダース派と言われる人は多く、グループ、派閥活動を重視する人でもあります。元々ビル・クリントンが大統領の時代に下院議員に当選したバーニー・サンダースは、当時の民主党執行部が大体クリントン派中間左派グループ「ニューデモクラッツ」が掌握しており、議員数人から始めたグループが「進歩派コーカス」です。当時を知る人は隔世の感でしょう。
急進左派の代表であるエリザベス・ウォーレンは日本ではあまり名前が通っていない人ですが、それは基本的にグループ活動から距離を取り、あくまでイデオロギー的な連帯ではなく個人的な連帯で国際的な議員外交を行うため、と言う理由があります。彼女は反自由貿易でありその立場は社会主義ではなく「修正資本主義」の立場であり、またバーニーよりも圧倒的に造反する事が少ないためあくまで人間関係で考えればウォーレンなら左派色が強くても民主党は団結できると言ってしまうほどその活動自体は穏健派です。ただバーニーの民主社会主義路線とウォーレンの修正資本主義路線は非常に似ています。この2人は2020年民主党予備選で少しトラブルに発展しました。よく巷で言われるのは「2016年にはバーニーが、2020年にはウォーレンが党内左派を代表して候補を一本化する」と言う密約があったと言われ、そうした予想を裏切りバーニーが出馬を決めたのでウォーレン陣営から非難を浴びた事がありました。よく一本化が日本でも叫ばれますが、こうしたものはそう簡単ではないのです。ましてや大統領を狙う選挙においてです。元々彼女も硬骨な反グローバル資本主義ですが、バーニーの出馬によって若干穏健に修正せざるを得ず急進左派内の政局においては民主社会主義派が勝利したとも言えます。ですがバーニーもウォーレンも主張の方向性はほぼ同一です。
まず富裕税の導入です。バーニーの発案は資産総額3200万ドルを超えた人に1%の課税をし、その累進課税を進めていき、100億ドルを超えれば8%の課税を課すものです。ウォーレンの場合は5000万ドルから2%、10億ドルから3%の課税を課すのみで若干穏健になっています。バーニー案では10年で4兆3500億ドル、ウォーレン案でも2兆7500億ドルと言う財源を確保できます。
外交方針もいわゆる「進歩派外交」と呼ばれるもので、民主主義、人権としての価値との外交を、アメリカ軍の世界展開の反対、外交問題よりも国内政策に力を入れるべきと言う理論であり2人の外交観はほぼ同じです。ただイスラエル関連はバーニーは批判的、ウォーレンはアメリカ・イスラエル関係をそれなりに重視したものです。ただエリザベス・ウォーレンの政策は数々の経済対策をあくまで財政赤字というより、公債にはほとんど頼らず政策の詳細を明らかにする事で財源が担保された経済政策が打ち出されており、やや大盤振る舞いで財源論が若干甘いバーニー・サンダースに比べるとウォーレンの方が実現しやすいと言われているのも正しいです。特に私はバーニーにしろウォーレンにしろ他の欧米諸国左派にせよ、住宅政策をかなり重視している姿勢は日本も取り入れられるべきポイントだと思います。さらに大企業でも従業員代表を一定数取締役会に選出すべきと言う主張や富裕税だけでなく、大企業ロビイング課税、金融機関の規制強化、法人税強化に独占禁止法の厳格化は日本の状況においても参考にしてもいいはずです。日本の状況に合った歳入増加の大きな政府を目指す社会像に設定し、まずは給付付き税額控除と言う、高市早苗(彼女は右翼であっても、右派革命主義ではないですから)ですら著書で一定の賛成論をぶっているものぐらいは一刻も早く成立させて、次の論戦が必要です。極右ポピュリズムは新自由主義の批判から生まれました。左派がネオリベラルに親和的ではいけないのですよ。ウォーク左派がリベラル派をダメにしたと批判論がありますが、ウォーク以前に左派が左派の経済政策を語らなくなり新自由主義に降伏してきたからだと私は考えています。挙げ句の果てには反トランプのためにネオリベ、ネオコンの中心人物と共闘すると言うコペルニクス的転向を行った事でした。左派は新自由主義、市場原理主義的な政策から行き過ぎた資本主義を修正、変革していく立場を堅持せねば今後権力構造が変わる日本の自民党や極右革命家に遅れをとる事になります。