賞味期限の切れた粉の袋が3つ、ずっと冷蔵庫に入れっぱなしになっていて、ああどうしようああどうしようと思っていた。あとついでに賞味期限の切れたお米の袋もあって、炊かないと炊かないとと思っていた。
すべて、およそ1年前に退職した人が日本に帰るにあたって「これ余っちゃって。使わない?」と、くださったオーガニック粉とオーガニック米だ。
具体的にはオーガニック全粒粉1㎏と、オーガニック黒米粉500gと、オーガニック生小麦胚芽250gだ。
全粒粉はわかる、語彙にある。米粉もわかる、食べたことがあるが、ろくに使ったことがない。更に「黒」だし、どうしたらいいんだろう。さらに胚芽。胚芽って…なんだろう…たまにパンとかクッキーとかに入ってるかな…?胚芽って、こんな袋に入って売ってるんだね…?扱いが全く分からない。
一方で米はVolcano Riceというラベルが付いていて、長粒の赤米・黒米・玄米のミックスらしい。おそらく良いものなのだ、高級だ。
いずれにせよ自分じゃ買わないセレクション。あまりの馴染みのなさと自炊しなさが相まって、とにかく全部冷蔵庫に入れて、そのまま時間が経つのに任せてしまった。下手に捨てるのはもったいないし、虫が湧いても困るし*1。そして冷蔵庫のドアを開けるたびに見て見ぬふりをして、スライスチーズを1枚だけ出してぺらぺらと食べたりしていたわけだ。畏れていたと言ってもいい。だって袋を開けたら最後、急ぎ使い切らないといけないし。どんなにOrganicだなんだと言っても彼らは炭水化物なわけだし*2。
とはいえ袋麺を買ってきて食べている*3よりはこの人たちを食べたほうがきっと体にいいんだよなあ、そうだよなあ、、、という逡巡を経て、先日のハリラヤ休暇(勤め先は3月28日から4月2日まで、ラマダン明けの6連休だった)で意を決し、ついに封を開けた。食べたいものが思いついたからというのもあるし、なんだかこう手を動かして食べ物を作ることを久しぶりにやりたいと思ったのもある。いまとなってはその影もないが、しょっちゅうお菓子を焼いては学校に持って行くような学生時代もあったのだ。
で、まずは水餃子を作った。
全粒粉に豆腐を混ぜて皮を作ろうというレシピだった。はかりがないので勘で重さを見極め作業する。比率がおかしいのか皮がべたべたしてしまい、粉を足し足しなんとかひとまとめにした。しばらく寝かせて、等分にして広げてタネを包む。タネは豚ミンチとえのきというレシピだが、豚肉が高い*4ので鶏にして、えのきはどこでも売っているのでどっさり入れた。
めん棒がないので手で皮をのばすのだが、どうも分厚い。どうも、うまく包めない。うーん、と思いながら包んだものを茹でて酢醤油をつけて食べる。うーん、不味くはないが美味しくもない。せめてもう少し皮が薄ければ、と、残った生地は円柱形の割り箸でのばした。ベターではあったが、どうもやっぱりモソモソしてしまい、美味しい水餃子にはたどり着かなかった。
そして米を炊いた。
先述の水餃子で使った豆腐とえのきが微妙に余ったので、素直にお味噌汁で食べたいなと思ってまずお味噌汁を作った。すると半自動的に「ごはんとセットにしたいな」と思い、VolcanoRiceを炊くに至った。10年近く土鍋でご飯を炊く生活をしていた(炊飯器をやめた)から、コメの種類は違えどやり方はだいたいイメージがついており、雰囲気で炊くことができた。フカフカしながらプチプチもしていて、美味しいごはんだった。
全粒粉があと800gくらいあるのでどうしたものかとうめいていたら「クレープはどうですか」とアイデアをいただいたので、それは名案と、スーパーで普段買わない牛乳と小瓶のジャムを買ってきた。ジャムは嬉しくなって2種類も買った。ヨーグルトと一緒にミルクレープ状にできたら最高じゃないか?と思ったりなんかして、スーパーで一人浮足立っていた。
クレープは水分と粉の割合が2:1になればいいと読んだので、はかりがないが堂々とコップに牛乳と全粒粉をそれぞれ注いで2:1とした。ボウルは調理用というよりデコレーション用のようなものが備え付けられてあるのでそれを使う。泡立て器がないのでフォークでチャカチャカとかき回す。フライパンはあるがおたまがないので、なにか掬えるもの…と探して見つけたレンゲでタネをおとしてみる。すると、レンゲでは入れられる生地が少なすぎてすぐに焼けてしまうので、もっと大量に一気に流し込むことが必要だとわかる。戸棚をごちゃごちゃとやり、結局、小型のマグカップをボウルの中にえいやとつっこみ、がぼっと出したタネをフライパンに流しいれるということで事なきを得た。事なきを得たがこんどはフライ返しがない。フライ返しがなくても竹串で焼けた皮をつつーっとやって、ぺらっと返しているのを見たことがある気がする、と思うが竹串もない。一番細い箸で焼けたように見えるクレープをめくるべく、ツンツンつついてみるのだが、どんどん破れてしまいまったく一枚の円として成立しない。こんなに難しいものだったとは、クレープ。焼く温度を変えてみたら、焼けたように見えるけどあと30秒待ってみたら、などやってみるのだが、クッキーの焼けそこないか、すごく小さくて薄いパンケーキ(四角形)みたいなものがばらばらと量産され、心がくじけた。もう知らん。
お腹が空いたので、クレープのカスたちを机にほっぽいてブルダックポックンミョンカルボを食べた。袋麺の中でも抜きん出たカロリーの鬼だ。残った汁にVolcanoRiceも入れた。ジャンク味をまとった良い米に、なんとなく申し訳ない気持ちになりながら食べ終わる。そこでやる気が取り戻されるわけもなく、クレープのタネは冷蔵庫にしまった。
翌朝、気を取り直してもう一度クレープを焼いてみたら、奇跡的に1枚だけ円形に焼くことができた。タネの落ち着きに私の技術(見極め力)の向上が一瞬だけ交わったということだろうか。ちょっと真ん中が焼けすぎてパリパリしているが、いいだろう。うれしい気持ちでツナサラダを巻いて食べた。残りのカスにはヨーグルトとジャムをつけるような混ぜるようなして、ごちゃっとしたまま食べた。クレープとヨーグルトを重ねて層にするなんて夢のまた夢だった。でも、美味しかった。
それにしても料理に必要な器具があまりになさすぎる。荷物を増やしたくなくて買わずにいるのだ。しかしまだ粉が500g以上ある。米粉も、胚芽も、封を開けていない。そろそろ、おたまとフライ返しくらいは買ってもいいんじゃないかなと思う。粉のためにも。