日本からマレーシアに引っ越して1年経った。と書くとなんだか主語デカ(目的語デカ?)すぎる気がするのだが、まぁこれが一番わかりやすい表現だ。1年で、マレーシアと一言でいっても地域によって大きく文化も環境も違うようだ、ということくらいはさすがにわかった。しかしそれはどの国に引っ越しても同じだろう。東京都の中でさえ、名古屋市の中でさえ、ところによってさまざま違う。バチカン市国くらいじゃないか、この国のどのエリアもだいたい同じです、だなんて。バチカン市国のことは何も知らないけど。

1年の間に、住んでいる部屋のキッチンのシンクの周りの真っ白なエリアにシミができてしまって、洗剤を垂らしてみてもメラミンスポンジでこすってみても落ちなくて、困った。コーヒーをこぼしたわけでもなく、洗う前の食器をちょっと置いてたとか、なんとなく水とか、洗剤とか、ちょっとした色素が染み込んだようなシミ。そんなに気にしなくてもいいかもしれないけど、出ていくときに「ここの板をすべて張り替えるので敷金返せません」とか言われたらつらすぎる。賃貸契約の更新の際に部屋をチェックしに来た不動産屋さんにありのまま困りを伝えたら「クリーニングを頼んでみようか」と言われたので、お願いしますと素直に頷いた。どんなプロフェッショナルがどんな薬剤をもって洗ってくれるんだろう、楽しみ、と思った。
「3月1日の16時にアレンジしましたよ〜」と不動産屋さんから連絡が来て、当日。前の予定からビタビタの時間に帰宅して、部屋のエアコンをつけてじっとしていたが、来ない。
16時15分、来ない。
16時半、来ない。
これは……!
これは、マレーシアあるあるだ……!
(再度の主語デカ)*1
「17時に行くって」と不動産屋さんから連絡があり、結局クリーニングのみなさんがいらしたのは17時20分だった。特に後ろに予定もないので焦ることもなく待っていられた。
クリーニングに来たのは作業着を纏った一人のテクニシャン、ではなく身軽そうな女性3人組だった。あらゆる洗剤と布巾と脚立と掃除機を持って登場して、まずシンクのシミにマジックリンの漂白スプレーをシュッシュとかけたあと、しばらく置く間に壁のホコリを払ったりしてくれた。さらにクリームクレンザーと金タワシでゴシゴシとシミを擦ると、あたりは全くもってキレイになっていた。すごい、完璧、ありがとう。
そうこうしているうちに彼女たちは部屋中の床を掃き、天井のファンの汚れを拭い、風呂場の鏡まで磨いてくれた。私はベッドの上やら部屋の隅やら、邪魔にならなさそうなところに移動しながら彼女たちの様子を見て、ありがとうありがとう、とぺこぺこした。みんなが働いているのに何もしていないのはどうも居心地悪かったが、「ゴミ袋ある?」と訊かれてハイッと手を上げて出す、それくらいしかできなかった。「独身か?」とも訊かれたのでハイッと返事をしたら「そのほうがいいよ」といったようなことを言われた。なんでかはマレー語がわからない*2ゆえにわからなかった。
台所のシミだけを掃除してくれるものだと思っていたから、まさかのトータルクリーニングに感激した。3人で1時間、気付けば部屋の外に置かれた洗濯機まで水洗いされていた。
この感じ、なんだか既視感があるなあとよくよく振り返ると、彼女たちは私がこの部屋に入居したときもクリーニングに入ってくださっていたのだった。なんか互いにずっと喋っていて、時折テレビ電話しながらどんどこどんどこ掃除してくれて、なんか楽しそうで、とても大ざっぱなようでしかしポイントを逃さないような動きをするみなさん。またお願いするだろうな、と思った。それは1年後なのかな。わからない。