『K2P2白書2024 変わりゆく労働組合の女性と男性-未来を創るヒントはどこに?』
クミジョ・クミダンパートナーシッププロジェクト(本田一成、浅野淳、藤栄麻理子) 2025年3月

書名『K2P2』は、クミジョ・クミダン パートナーシップ プロジェクトの略称である。
クミジョとは、労働組合活動に関わっている女性のことで、クミダンは労働組合活動に関わっている男性のことで、この造語は武庫川女子大の本田一成教授による。この本田氏のクミジョ研究と労働界のコンサルタント企業のJ.UNION株式会社(浅野淳・専務取締役)とが提携した、産学協働プロジェクトが、「K2P2」である。その目的は、労働界におけるジェンダー平等の実現と組合組織の変革をめざすとされている。
2024年から始動し、クミジョの実態把握のための調査「K2P2アンケート調査2024」を実施し、その結果集計と評価を「クミジョのリアル」として編成したのが、この白書である。
<アンケートの方法と概容=225名のWeb 回答>
調査期間は2024年2/20~7/11で、J.UNION株式会社のメールマガジンにWebアンケートのURLを記載して回答を求めた。このプロジェクトに関わった労組にも協力を呼びかけているが、特定の労組のルートを通じてではない。指名アンケートではないが、225名もの自主回答を得ている(有効回答=221)。
設問の柱は、――①労組におけるクミジョをとりまく課題、②クミジョ自身にとっての組合活動における重要な課題、③クミジョ自身の労組に対する関わり――で31問、④回答者の属性についての質問が20項目である。選択肢から選ぶ方式だが、Q31「クミジョとして労働組合活動に改善・改革を望むことはありますか」については、記述方式である。
<クミジョの「リアル」と労働組合活動の改善・改革方策の見える化>
クミジョが所属する労組の満足度は、「大いに満足している」「やや満足している」「どちらでもない」「あまり満足していない」「まったく満足していない」の5段階の選択肢で順に5~1点をつけると3.31となり、満足でも不満足でもないゾーンに収まっている。
クミジョ自身の労組への関わり方への設問では、「熱心に取り組んでいる」(=3.96)/ 「誇りとやりがいを感じる」(=3.76)/「愛着を感じている」(=3.68)/「自主性を発揮している」(=3.58)/「忠誠心をもっている」(=3.56)/活力を得ていきいきとしている」(=3.43)となっていて、満足度を上回る良好な結果である。クミジョの労組への関わり方と満足度レベルの差に注目して分析しているのが、本書の特長である。
満足度に加えて、「総合円滑度」=労組での仕事でどのような立場に置かれているかについては、以下の結果が得られた。
「立場や役割が否定、無視される」(=2.18)/「意見が無視、軽視される」(=2.26)/「成長やキャリアアップにつながらない」(=2.30)/「情報やネットワークが得られない」(=2.37)/「「やりがいが低下、失う」(=2.42)/「教育・研修、援助・アドバイス等がない」(=2.47)「応援する先輩や上司等がいない」(=2.53)/「クミダンとの格差がある」(=2.64)/「さらに責任と権限のある仕事に就けない」(=2.64)/「次の女性役員候補の推奨を躊躇する」(=2.71)/「自己表現の抑制、無力感、自己嫌悪」(=2.82)/「孤独感や孤立感がある」(=2.85)/「セクハラ、パワハラの被害経験がある」(=2.86)/「クミダンのクミジョに対する理解不足」(=2.95)
さらに、クミジョの苦悩についての自由記述のトップは、「夜・土日の動員、宿泊を伴う出張は子育て世代の女性に負担が大きい」が、86件もあった。続いて、「クミジョを排除したネットワーク」(13件)/「これ以上の上級職は望めない」(12件)/「仕事と家庭と組合の負担の三重苦を思うと推薦躊躇」(11件)/「会社からの評価が得られない」(11件)/「仕事と両立できない(難しい)」(10件)/「クミダンの偏見」(10件)/「職場の理解がない」(10件)/「露骨なセクハラ」(10件)/女性の役割限定」(10件)という記述が多かった。
以上は本調査の一部しか紹介できていないが、結論としての主張は、クミジョの満足度、総合円滑度を分解してクミジョの要求項目と見なし、何を求めているのかを理解すべきである。クミジョの苦悩に示されていることは、組合変革の重要な問題・課題である。男性正社員型ヒエラルキー組織がもたらす家父長制的なジェンダー関係が大きな障壁となっている。クミジョとクミダンが築く本当のパートナーシップのために、発想転換、実践方法、研修内容、共有方法などを問い続けるマネジメントを考えるスタートラインに立つてほしいと呼びかけている。
クミジョの苦悩を分析していくと、クミダン主導の労働組合に未来はないのかという疑問が出そうだが、K2P2の共同代表の本田一成氏によれば、「労働組合は『人類の大発明』のひとつと言えるくらい可能性を秘めた組織だ」と規定して、労働組合が本来の力を取り戻す重要課題が、「クミジョ・クミダン問題」だと主張されている。
未来を創るヒントを、この『K2P2白書2024』から共有しようと呼びかけたい。
(伍賀 偕子 ごか ともこ)
<追記 「K2P2提言」>
尚、このプロジェクトは、『K2P2白書2024』をもとに、2025年6月に「K2P2提言」を発信している。「提言」の内容は以下の通り。
1)ジェンダー平等の現状を正しく理解し、行動につなげること
2)パートナーシップの実現に向けた組織づくりを推進すること
3)活動のあり方を見直し、持続可能な取り組みへとつなげること