
昨年、仕事で出会ったソフィー・リチャードさんから、日本に来るのでワークショップに参加しませんか?と4月頃にメールが届いた。ソフィーさんは、『フランス人がときめいた日本の美術館』の著者だ。もうすぐ、改訂版が出版されるらしい。それは、原美術館やDIC川村美術館などが閉館してしまったため、書き直す必要があるからだ。
彼女からのメールには、「アーティゾン美術館で2時間ほどワークショップをします。好きな作品を選んで5分のプレゼンテーションをしてください。」と書いてあった。私は、アーティゾンらしい作品にしようと思い、青木繁の《海の幸》にします。と、返信した。祖母のお葬式などで返信が遅くなったので、他の参加者が既に選んでいるかもしれないと思ったが、青木繁の《海の幸》でOKとのこと。
5月の下旬、当日アーティゾンに向かうと、コロナ禍中に森美術館関連が主催したアートガイドのワークショップに参加したという女性が6名ほどいらっしゃった。
アーティゾンは近・現代のアートをたくさん所蔵しているので、他の参加者は草間彌生、 白髪一雄、田中敦子、藤田嗣治などを選んでプレゼンテーションをされた。
他の参加者の内容を聞くと、やはり、作家の人生について語る人は多かった。それは、調べやすいからだと思う。どんなことを語ることができるか?まとめてみた。
一枚の絵画や彫刻の前に立った時に、何を語ることができるか?
・時代背景(決定的なできごと、当時の評価)
・作家のプロフィール
・作家の多数あるシリーズの中で、このシリーズ・作品の位置付け
・技法(道具、描き方)
・場所(どこで描かれたか、どこが描かれているか)
・内容(全体的に何が描かれているか、細かく見たときに描き込まれているもの)
初めて見る人にとって、一枚の絵を見たとしても、大事なポイントを見落としてしまうことがあるので、その補助的な役割としてアートガイドがいると役に立つ。
私が作ったメモは以下の通り。
青木繁《海の幸》(1882-1911)
・謎が多い未完成の作品。
・彼が22歳の時に千葉の布良での体験を元に描いた。
・10人の男性が右から左に向かって釣った魚(サメと言われている)をかついで行進をしている。前方には老人の姿が数人おり、村の男性が協力して漁をしている村の様子だと分かる。
・荒々しい筆致は作家の迸る情熱や生命そのものが吹き込まれているように思える。作家が好んだ神話の世界を、漁村で目撃した男性に重ね合わせることで感激したのではないだろうか。
・布良は現在私たちがいる日本橋から100kmほど南の半島の先にある漁村である。海藻やタイやアジ、イカなどの季節の魚などの海の資源が豊富にとれる小さな町で、安房神社と呼ばれる2500年以上(※HPより)歴史がある神社がある。商売繁盛・学業向上などを願う人々が訪れる。
・桜の並木道が近くにある。
・前年に美術学校に通っていた時に、神話にまつわる絵をかいて入選している。
・25歳の時に、郷里の久留米に戻り、その4年後に病気でなくなった。彼の生活環境や芸術家としての環境が整っていればもっとたくさんの作品を世に送り出していただろうと思うと悔やまれる。
・彼の故郷とこのアーティゾンのコレクションを支えている石橋財団の石橋が同郷だったことから、彼の作品を収蔵することを決めたと言われている。
千葉の布良に行ってみたいな〜と《海の幸》を見て思った。