以下の内容はhttps://kusodekaihug2.hatenablog.com/entry/2025/01/22/200012より取得しました。


年間ベスト2024

今年も書きました。


 

 

Idaho - Lapse(2024)

2024年にIdahoの新譜が聞けるというだけでとてつもなく嬉しい。90年代から活動しているUSインディーシーンにおけるレジェンド的なアーティストで、93年作の1stはノイジーオルタナとしてのスロウコア名盤。その後も多彩なアルバムをリリースしてますが、00年代以降はエレクトロニクスの要素が増し、元来持っていた音数の少なさを生かした音響構築でポストロック禍の雰囲気も存分にある作品でした。今回10数年ぶりに発表された新作は、今までで最も無添加で、飾り気のないシンプルなアンサンブルのみのアルバム。素っ気ない音響と、少ない動きで泣きメロを作るジェフ・マーティンの枯れたボーカルは本当に唯一無二であることを思い知らせてくれる。IdahoはIdahoでしかないという円熟があって、隙間のある枯れた演奏と素朴な歌、自分の音楽趣味って結局そこに帰結していくんだなというのを改めて痛感しました。

 

 

Tara Jane O'Neil - The Cool Cloud of Okayness(2024)

Rodanの元ベーシストであり、解散後Sonora PineやRetsinを経て00s以降はソロのSSWとして名を広めたTara Jane O’Neilの新作。来日回数も多く、2011年には交流が深い二階堂和美とのコラボ作品も出しています。前作にあたる2017年のTara Jane O'Neil(セルフタイトル)は反復の演奏と歌を聞かせる作風はIdaも思い出す純然たるSSW作品でしたが(一応2021年にDispatches from the Driftというアンビエントとして極上なキーボードの即興作品も出している)、今作、前作と比べるとかなり「バンドっぽい」感じがする。うっすらと全体を覆う電子音やノイズの中で浮遊感を作るドラムのプレイも、地を這うようにうねるベースラインも、どれもこれも大きな動きがあって、前作と比べてアンサンブルに比重を置いてるように聞こえてくる。動きのあるリズム隊の反復はトリップ感があるほど心地良い。ほんのりジャジーでアコースティックな質感+密室感のある生々しい録音はどことなくDirty Threeを思い出す。あと相変わらずですが、彼女の歌声はまるで異界に迷い込んでしまったかのような魔力があると思うし、今作も知らない世界に吸い込まれていくような趣があります。

 

 

Horse Jumper of Love - Disaster Trick(2024)

エモ名門Run For Cover発、Horse Jumper of Loveの新作。彼らが2017年にリリースしたセルフタイトルの1stは10年代後半のスロウコアもエモもインディーロックも境界が曖昧になった後のシーンを代表する一枚だったと思う。2017年以降結構ハイペースに作品をリリースしていて、前作にあたる2023年のHeartbreak Rulesはアコースティック色の強い素朴な一枚に。所謂グランジ全盛期に数多くいた、オルタナの中でアメリカーナをやるようなバンドにシフトして行くのかなと勝手に思ってました。

 

しかし5月にリリースされた先行シングルのWinkから正直かなり衝撃を受ける。どうやら今回は様子が大分違うらしい・・・と狼狽えながら後にリリースされる先行シングルを続々追っていたけど、本当に出てくる曲どれもこれもが素晴らしくてたまげました。とくにアルバムでは1曲目に収録されたSnow Angelは泣けすぎる(ちょっとBluetile Loungeの2ndも思い出す)。静謐寄りだった前作から一変、憂を帯びたまま重厚なギターを全面に開放したヘヴィな作風で、轟音も頻出し、遅くて枯れたエモが好きな人や、ちょっとシューゲイズが入ったヘヴィなインディーロックが好きな人にもリーチできる作風に。轟音とは言いつつも、昨今のエモシューゲイズ的な金属的な重さ、ソリッドさは全然ない。意外と淡白なギターサウンドをいくつも重ねていった感じが、この無骨さが気怠いボーカルとマッチする。荒廃としていて、孤独に寄り添ってくれるけど、それでいて熱さもある。枯れているというより、情念を感じるんですよね。そして単純にソングライティング一本でグイグイ引っ張っていけるくらいメロディが強く、スロウコアと一言で纏めるのも違うと思うし、どんな層にも聞きやすいアルバムだと思います。Wendnesdayのカーリー・ハーツマンとMJレンダーマンがコーラスで参加しているのも象徴的(MJレンダーマンの新譜もとても良かった)。

 

 

Joyer - Night Songs(2024)

ニューヨーク出身の兄弟バンドJoyerの2024年作。これまで3枚のアルバムをリリースしていて、音数の少ない隙間を見せたアンサンブルと枯れたボーカルはどことなくスロウコアを想起させたけど、今回はレンジを広げて荒々しいバンドアンサンブルと轟音要素を押し出しエモに接近。今作を聞いていると、彼らの今までのスタイルはジャンルや文脈はあんまり関係なく、宅禄由来のローファイな密室感とソングライティングがたまたまそこにマッチしていただけなのではと思えてくる。OvlovやTruth Clubと並べて聞きたくなるし、Blue Smiley以降のインディーロックとエモの境界をなぞった作風で、壮大でスペーシーな轟音と、枯れのある静寂の対比はDusterがエモバンドに転向したら・・・なんてイフも妄想してしまう。わかりやすい静→動の展開はほぼないんですが、やっぱり前作までの流れを汲んだ素朴な歌と、Night Songsというタイトル通り夜をテーマにした作風がとてもマッチしてます。この素朴さを保ったまま重厚なギターサウンドがうねりをあげ、幾何も重なっていくM8のSofter Skinは名曲すぎる。Run For CoverやExploding In Soundといったレーベルが好きな人は絶対刺さると思うのでHorse Jumper of Loveとセットで是非。

 

 

Duster - In Dreams(2024)

Duster新譜。2022年にリリースしたTogetherは新機軸を打ち出しながら、強烈にDusterらしさも残した傑作でした。あれから2年、前作と比べてIn Dreamsはあまりにもいつも通りの"Dusterの幻影"そのままな作品。ノイジーオルタナ路線が逆に新鮮だった復活作Duster(セルフタイトル)と、ポストパンクを思い出すくらいゴシックだった前作Togetherを経過した上で、ここにきて、今はもう古典としてバンドを代表するであろう、90sの1st~2ndの作風に回帰したように思えてしまう。ただ当時とは録音環境も体制も違うので、あの頃の、まるでテープノイズがそのまま掛かったみたいなローファイさが作り出していたスペーシーな雰囲気は奥行きのあるスケールの大きいものへと深化。それは結構、ちゃんと別物で、Dusterってこんなにドリーミーだったのかという発見と今作特有の没入感がある。だとしても、M1のQuiet Eyesのイントロにおけるバンドのイメージをそのまま具現化したようなイントロはついつい笑みを浮かべてしまうし、全然初めてに聞こえないこの音を聞いて、それでもいたく感動してしまう自分に悔しくなってくる。

 

 

小雨ちゃん - Wraiths(2024)

小雨ちゃん。昨年3月にリリースされていたCUREという最初のEPはART-SCHOOL的なソングライティング、ザラついたバンドサウンド、反復のギターリフ、バンドではなくソロの宅録であることを生かしたエレクトロニカなシーケンス、どれもこれも絶妙なラインが共存していて、密室に好きなもの散りばめてDAWという小さな箱に詰め込んだような作品でした(知った直後にART-SCHOOLの1stがサブスク解禁されたのもとても象徴的だった)。そこから一年足らずでリリースされた作品がこちらのWraiths、7曲30分とコンパクトですが1曲1曲に詰め込まれた重みがすごくてズドンと腹に来る強烈な作品。まずM1の軽蔑のどデカい低音からやられるし、M2のインセンスは宅録による打ち込みバンド感と仄かなエレクトロニカが高密度で溶け合った名曲。前作CUREの延長ではあるけど、ズブズブと深いとこに引きずり込んでくるノイズと低音を響かせるノイジーなベース、浮遊感のあるギターワークと電子音、甘美なメロディ、そして言葉が重い。全体的にエレクトロニクスの比重がグンと上がっているけど、DTM的な反復の美学を入念に突き詰めていった結果の、フレーズが重なり合っていく面白さが詰まっていて、何より暗く塞ぎ込んだような作風と宅録というスタイルの必然性が美しいとすら思う。先行シングルだったM5のひとりから名曲すぎてビビりました。WraithsはリリースがThe Cure新譜とかなり近くて、The Cureの新譜もマシンビートな曲があったりしてまたしても重ねて聞いてしまった。アーティスト名通り雨の日にピッタリな、どうしようもなく指先が冷たくなってしまう冬に一人で聞きたくなる作品。

 

 

Primmal Scream - Come Ahead(2024)

Primal Screamの新譜。M1のReady To Go HomeとM2のLove Insurrectionから爆踊りできて最高。ここにきてフィリーソウルをガッツリやる開幕から結構驚きですが、蓋を開けてみればどの曲もバチバチにグルーヴに寄せたファンク純度の高い作品。めちゃくちゃ踊れる。メロウな多重コーラスの流れからソリッドなカッティングとボビーのボーカルが乗るとこいつだってぶち上がってしまう。M6に関してはA Certain RatioやGang Of Fourといった往年のポストパンクへの愛に溢れていて真っすぐなリスペクトにグッとくる。ボビー・ギレスピーは元々ルーツ嗜好だったと思うし、スクリーマデリカでハウスに接近した時点で今回のソウル路線はあの頃の直系、別にリバイバルってわけでもなく、これまでジャンルを横断し実験していく中で積み上げてきたもの、やってきたもの、膨大な手札の中から練り上げて出力されたものであることがちゃんとわかる。相変わらずのサイケデリックなルーツロックっぽさもディスコ風アレンジの中で自然に入り混じってくるし、すごくフレッシュに聞こえるのに、地盤が固いからこそ余裕の佇まいに見えてくる。本当に心からかっこいいと思います。2月にTalking HeadsのStop Making Sense再上映を見て、そこに起因してPrince~David BowieAORを聞く上半期があって。直後にOGRE YOU ASSHOLEの新作があり、ニューソウルやディスコ、80sポップを思い出し、その後リリースされたPrimal Screamの新譜にハマる・・・という流れがあって、2023年に引き続きやっぱりファンクをずっと聞いてた一年だったと思います。

 

 

トリプルファイヤー - EXTRA(2024)

トリプルファイヤー7年ぶりの新譜。前作FIREはパーカッションが入り新体制、かなりリズムに寄せた作風になり、実際最近のライブで見かける彼らはソウル/ファンクやアフロビートのモードに入っていて、気の抜けたボーカルと相反するカッチリとした演奏に新譜が待ち遠しくなるほど楽しみでした。そして新作。アルバム通してどこを切り抜いてもBrothers JohnsonやThe Metersみたいな極上のグルーヴがあって、リードトラックの相席屋に行きたいはもろFela Kuti(リファレンスになった曲がメンバーのプレイリストで公開されています)。M5のサクセスは初期Funkaderic風味だし、電化マイルスのOn The CornerとかCANの中期とか、ファンクにリアタイで影響受け歪に取り入れてったバンド達と似たような雰囲気も感じる。M6のここではないどこかはhomelyの頃のオウガかと思った。そして歌詞がヤバい。加齢を理由とした"あがきと諦め"をテーマにしたとのことで、それはとても切実で、実際20代最後だった自分には全く笑えない。ファンキーなカッティングと気の抜けた歌唱から、自覚しなくてはいけない鋭利な事実を淡々と突きつけてくる。M8の「諦めてる人」はパンチ力がありすぎて本当に衝撃を受けた。本当に他人事ではない。あと「ユニバーサルカルマ」怖すぎる。日常の、すぐそばに潜んでいるんじゃないかという嫌な部分が生々しく語られていく。

 

 

柴田聡子 - Your Favorite Things(2024)

2月にリリースされた柴田聡子2年ぶりの新譜。10月に今作のアコースティックアレンジのMy Favorite Thingsを、ジャケが好みだったというシンプルな理由で試しに聞いてみたところ、自分が今まで持っていた彼女のイメージとは異なる歌い方、素朴な音にもインディーロック的なものを感じて元アルバムへ。自分が好んで聞くスロウコアもポストロックも、ここ最近のソウル/ファンク趣向も、ジャンルというより広義の意味での密室音楽、隙間のあるサウンドが好きなんだなと思ってるんですが、今作Your Favorite Thingsはそんな自分に完全にフィットしてくる作品でした。M5の白い椅子はネオソウルだし、M2のSynergyは前作でヒップホップを取り入れたのが昇華されていて、歌詞もメロディもフレーズも全てが一本のビートにカッチリとハマっていて、しっかり踊れる。M7のSide StepとM8のReebokもファンキーで、何より全体通しての密室っぽい録音が素晴らしい。別バージョンとも言えるMy Favorite Thingsと同じく、今作の時点ですでにウィスパーボイス風味な歌唱法に変化していて、この浮遊感もファンキーで跳ねたリズムの演奏と良い対比になっていて、その入り口の時点でぐっと掴まれた気がする。

 

 

ZAZEN BOYS - らんど(2024)

ZAZEN BOYSの12年ぶり6枚目のアルバム。期待と不安が入り混じった気持ちで聴いた永遠少女の先行MVはシリアスで殺伐としていて、安易にエモやノスタルジーという言葉で括ることができない、ずっと声を張り上げてきた向井秀徳の情念がメラメラと燃えている曲だと思う。今のZAZEN BOYSからこれが出てくるという喜びと畏怖の念を同時に抱いた。初期のShellac ミーツ Princeの作風の延長でありながら、ソリッドでメリハリの利いたバンドアンサンブルはかなりファンクのカラーが強くて(JBのライブ盤も思い出す)、ここにしっかりメロウな歌が乗ってくる。歌もの要素が強く、これまでで最もポップでありながら、最も重いアルバムだと思うし、ここにきて代表作をしっかりアップデートしてくるのに鬼気迫るものがある。

 

 

PSP Social - Second Communication(2024)

撃滅サンダーボルトIIは今年本当にたくさん聞きました。強烈にインパクトのあるタイトルとは対照的な風通しのいいゆったりとしたギターリフの反復は、2023年リリースされた前作「宇宙からきた人」のスタイルを引き継いでいる。しかしスロウコアと呼べるほど静謐なものではなく、どこか桃源郷のような夢見心地な世界を積み上げて、その果てにバンドのぶつかり合いがあって、咆哮が飛び交い炸裂していく。明らかにギターが大音量に聞こえるよう録音されたギターソロは映像的で、とても巨大で、視界を大きく切り裂いていく。全体的にちょっと民謡っぽい、この異界っぽさはやっぱり前作宇宙からきた人の地続きであると思うし、田舎のポストロックという言葉を使いたくなる。ちょっとBOaTのROROを思い出したりもします。

 

 

1/8計画 - 開発日記(2024)

10月にリリースされた1/8計画の1stアルバム。朱莉TeenageRiotでは幾度なく取り上げてきたRodan~June of 44やSlintやCodeineといった所謂ポストロック前夜のスロウコア~ポストハードコアの遺伝子を色濃く受け継ぎつつ、日本語詩によるゆったりとした親しみやすさが同居したバンド。(untitled)はポストハードコアの矜持がこれでもかというくらい詰め込まれた1曲。しかし、それも自分がとくに好きな一要素でしかなく、とにかくバラエティに富んだ作品。エレクトロニクスのインストや、普通にエモとして聞ける曲もあるし、スロウコアまではいかない牧歌的な歌ものとか、とにかく音楽オタクとしてあらゆるアーティストにリスペクトをこめてやりたいこと全部詰め込んでるような気がして、そのリファレンスに一致する部分があれば、きっと色んな景色を見せてくれるでしょう。昨今のエモリバイバルやサウスロンドン、マスロック、アルビニ系が好きな人にもきっと刺さるはず。

 

 

littlegiirlhiace - MISS THE GIRL(2024)

12月にリリースされたlittlegiirlhiace5枚目のフルアルバム。前作INTO KIVOTOSではデジタル版のアートワークで参加させてもらいましたが、今回なんと、ジャケットの背景を自分が描かせていただきました。3枚組EPを1つにまとめたという90分超の大作で(7曲ずつで区切れる)、それぞれ違うカラーがあり、バラエティに富んでますが構成もしっかりしててスラッと聞ける、オルタナのイメージが強かった前作INTO KIVOTOSと比べると割と風通しのいいカラッとしたロックンロールアルバム。M15~M21のDISC3にあたるEPはオルタナ色が強くて、とくにM20のインダストリアルに接近した歪みまくった(you hate)my songはベスト曲。M17のリムってよもlittlegirlhiaceを象徴するまくしたてるような破壊的ドラムサウンドが効いててかっこいい。今作、ふにゃっち氏のおそらくとても個人的なこと、好きなVtuber、アニメ、もう会えなくなってしまった誰かについて、歌を聞いて、共感してくれたり笑ってくれたら嬉しいって気持ちが伝わるような暖かい作品だと思います。これが快活なロックンロールに乗っかって歌われているので、ほろりと来てしまう。先日公開した個別記事でガッツリ書いてます。

 

 

2lcd - 64kbps(2024)

 

Pot-pourriのメンバーである液晶氏による2lcd名義の作品。今作は以前bandcampで公開されていたseamless / のべつまくなしと、サンクラで公開されていた楽曲や他未発表曲を集めたコンピ。今回とにかくフィジカルに拘った装丁が凄まじい。一度破ると二度と戻らない包装と、中にはbandcampのDLコードが刻印されたアクリルキーホルダーが付属するという同じものが二つ存在しえない唯一無二の仕様。音楽だけでなく、「触って破る」「ひと手間かけてから聞く」という丸ごと一つの体験として衝撃を受けました。セルフライナーもかなり内容が濃くて、64kbpsというタイトルと音楽性と鬱屈とした歌詞、そしてこの形態自体が一つのコンセプトのもと一本線で繋がる非常に読み応えのある作品。音楽性もART-SCHOOLNine Inch Nails、Durutti Column、Boads of Canadaといったオルタナティヴ・ロックからエレクトロニカまで、縦横無尽の自由なパッチワーク(Disc1のみサブスクで公開されています :seamless / のべつまくなし ‑「Álbum」by 2lcd | Spotify)。

 

2lcd - holes CD Edition(2024)

 

2lcdが12月30日にコミケで頒布したEPのフィジカルエディション。こちらの特典として付属するアナザージャケットを自分が描かせていただきました。音楽性も64kbpsの延長でありながら更にノイジーで破壊的なインダストリアル+シューゲイザーで、CD版の追加トラックはOvalのSystemischを想起する美しいアンビエント。ブックレットの方には坂口達也 (Empty Classroom)、sawawo (Pot-pourri)、たびけん (空白依存症、Happy Valley Rice Shower, 都市と郊外ズ)、ラブリーサマーちゃん、ゴキロウチ (Lily Fury)と多数のゲストが参加した非常に読み応えのあるZINEになっていて、自分もイラストのセルフライナーノーツを寄稿しています。10年代以降のインターネットをきっかけにした巨大音楽シーンのアーカイブとしてもすごすぎるので、一つの音楽に関する文章としてもとてもおすすめ。

 

 

MyGO!!!!! - 跡暖空(2024)

昨年に引き続きMyGO!!!!!の2nd。前作と比べてかなりカラフルで、メロコアやエモを汲みつつenvyを想起する作風に接近した前作1stの迷跡波はすごく真っすぐで純度の高い作品だったことが改めてわかってくる。アルバム構成が本当に素晴らしくて、個人的にB面の流れがとても好き。外に開けたポップソングが次々と繰り広げられるA面はアニメ出自のバンドっぽさが出てると思うし、B面ではどことなくGRAPEVINEを思い出すM8の夜隠染を皮切りに、アコースティックなM9の過惰幻(初期Radioheadのアコースティックナンバーのフィーリングがあると思う)、ポストハードコア~メロコア色が強い回層浮と砂寸奏へとなだれ込む。この2曲、前作には無かった荒々しさがここに集中していてとても好きです。ラストの焚音打は真っすぐなパンク。焚音打は前作の時点であった曲だけど、あえてアルバムには収録されずに次作に持ち越し、その結果終盤のパンキッシュな流れから完璧なラストを飾ることに。何よりライブのアンコールで演奏されることが多い曲で、それが反映されてるのも良いなと思う。envy繋がりでパンクに寄せたTouché Amoréとか、ルーツを咀嚼しながら歌メロがしっかりあった10年代後半のcinema staffとも並べて聞ける作品。

 

 

Shellac - To All Trains(2024)

最後に、幾度となくこのブログでも触れてきたスティーヴ・アルビニ率いるShellacのラストアルバムについて。訃報以降、このブログで直接触れるのは初めてですが、アルビニは自分が最も大きな影響を受けたミュージシャンと言っても過言ではないでしょう。とてもショックだった。こんなに衝撃を受けると悲しみよりも無力感や悔しさが勝つんだなと。今でももしアルビニ録音だったらという妄想は必ずしてしまうし、その余地がもう絶対にないことがとてつもなく寂しい。そして彼が残した数々のレコードを家で聞いたら、純粋にこんなにかっこいい、自分の中で大切に残り続ける作品をたくさん残してくれたことへの感謝が溢れ出て仕方なくなった。高揚した。元気づけてくれたのも彼の作品だった。その直後にリリースされた新譜が今作で、お馴染みTouch and Goからの、あまりにもストレートでパンキッシュなロックンロールアルバム。ジャンクでポストハードコアでマスロックへの道筋も切り開いた生々しいバンドの権現のような初期の作風では、もうないけども、それでも3人で演奏すればこうなると言わんばかりの圧倒的喜びが詰まっている。いつになくラフだけど、手癖のように突如挿入されるキメや静謐な間は相変わらず痺れるし、乾いていてジャリジャリとした金属的なギター音(そもそもこの概念を作った人だと思う)、地をえぐるようなベース音、空間を叩いていると言わんばかりの唯一無二のドラム、とにかく円熟といった言葉とはかけ離れたところにいたバンドだなと思うくらい、いつまでもフレッシュで、いつまでもかっこいい。ラスト曲のI Don't Fear Hellの偶然リンクしてしまった歌詞に涙が出る。本当に、スティーヴ・アルビニからは受け取りきれないくらいのたくさんのものを受け取ったし、溢れ出たものを残したくて自分は文章を書いています。ありがとうございました。

 

 


以上でした。2024年、飛躍の年でした。いっぱい絵を描いたし、憧れのアーティスト達とアートワークを通して共作するという経験が何度かあったこと、とても光栄です。あと会社を辞めたことで毎日車で聞く一時間の音楽視聴がなくなってしまった。故に、ぶっちゃけあんまり音楽を聞かなかった年だけど、じっくり腰を据えて聞く時間が減ったからこそ、直感的に引っかかったものがそのまま反映された純度の高さもあるリストかなと思います。あとpärkというZINEを出したその年に、その本で触れたKarateやDirty Threeといった大御所たちが新譜を出したこともかなり衝撃でした。別記事でいずれ触れたいです。

今年もよろしくお願いします。

 

2ある

kusodekaihug2.hatenablog.com




以上の内容はhttps://kusodekaihug2.hatenablog.com/entry/2025/01/22/200012より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14