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2lcd - 64kbps(2024)

2lcd - 64kbps(2024)

2lcdは現在Pot-pourriのメンバーの液晶氏がシューゲイズ~エレクトロニクスをメインとしたオルタナティヴ・ロックを演奏するソロ及びバンド作品で、64kbpsは今年の7月にリリースされた未発表曲と既発曲をまとめたコンピレーション。4月時点でholes + themeというタイトルのEPをリリースしてますが、それは今後リリース予定の新アルバムの先行トラックとしての側面が強く、今回の作品はbandcampやSoundcloudで今までリリースされた過去音源と再録がメイン。

なにより特異なのはそのリリース形態で、CDやLPではなくアクリルキーホールダー、刻印されたコードを打ち込むことでDLできるフィジカルでしか成しえない仕様、一度破ると二度と戻らない銀の包装も音楽だけでなく三次元の思い出として保存される唯一無二のフォーマット。付属のライナーノーツも濃い内容で64kbpsというタイトルが今作の世界観とも思い出とも重なる、コンピにしては一貫性のあるコンセプチュアルな内容で、楽曲ありきの文章ではなく、純粋に音楽に対して新しい角度で切り込んでいったエッセイとしてもとても面白い。昨年SPOILMANのZINEとLP2枚が専用包装紙で届いたときと同じくらいビジュアル面でも体験としても、大きく衝撃を受けました。両者とも大サブスク時代に直接自分で破いて触って高揚するっていうのがセットになってたのがやっぱり大きい。


この装丁で販売するのは現在庫限りかもしれないとのことなのでもしかしたら注文時に違うフォーマットになってるかもしれません。リリース形態に拘った作品なのでサブスク配信はないですが、一応bandcampの方で音源のみのものもリリースされてます。

 

液晶氏は現在参加しているPot-pourriや前バンドの(仮)ズでもART-SCHOOLからの影響を公言していて、今回もその要素をベースとしつつ、そこからルーツを辿って枝を伸ばし続けた液晶氏ならではの解釈、歴史の結晶とも言える2枚になってると思う。全25曲でDisc1はM1~M12の12曲で、かつてリリースされたseamless / の​べ​つ​ま​く​な​しというタイトルのアルバムを丸ごと収録。seamless / の​べ​つ​ま​く​な​し(Disc1)はボーカルありのうたものは4曲、半数以上はインストで、A面は完全にボーカル作品主体のギターロック名盤。B面からは隙間が多めの静謐さを常に身にまとったアンビエントエレクトロニカ、そしてヒップホップにも通じる反復をメインとしたインストゥルメンタル作品。

2lcd · possibility / おそれ

冒頭close / 終着というインストを挟んでからのM2possibility / おそれが本当に名曲で、流れるように続くbipedal walking / 大地に立つへのこの3曲の流れが個人的にアルバム内でも最も好きな部分。音数を減らしたDTM的アレンジと淡々としたドラムのループ、さりげないノイズとチャーミングなシンセのフレーズ、わびさびのギター、エレクトロニクスによる音の歪み、とにかく作り込まれた曲展開、そして何よりくたびれた質感のボーカルが内省的な歌詞と相まって泣ける。メロディの音数を絞りつつ、かと言って決して素朴ってわけでもないバランスは、ソングライティングの部分でART-SCHOOLASIAN KUNG-FU GENERATIONをルーツとしたギターロック的なイメージと重なるし、サウンドスケープは別物でも同じく00年代のその辺に出自がある自分にはものすごくしっくりきてしまう。構成がドラマティックなのでメロディだけでもカタルシスがあります。M4のGradation / 段階は後にリメイクされ単発で再リリースされたのもあって今作のシングル枠でしょう。グリッチでザラザラに肥大しまくったギターの音は、幾何のレイヤーが重なってノイズを形成するシューゲイザーとは完全に別ベクトルの、とにかく物量に飲み込まれるオリジナルの質感があって(個人的にこれはDisc2以降も見れる2lcdの肝だと思う)、直接塊にぶつかってくようなノイズは64kbpsっていうタイトルとも合致。ドラムもDisc1の中では圧倒的にラウドだし、冒頭からローが効きまくったサブベースもヤバい。今作で最も破壊的でありながら、エクスペリメンタルぎりぎりなところをギターロックで掬い取った、個人的には初期のXiu Xiuと重なる曲。

後半は路地 3を除けば全てがインストで構成されていて、どこかノスタルジックな、架空のサントラとしても聴けそうな情景的な曲が並ぶ。個人的にはrainが好き。rainやindust / 塵の裏の方でふわふわと漂っている何かの断片がランダムに伸縮して変化していくようなノイズは今のPot-pourriでのプレイにも通じてる気がする。インスト路線でもART-SCHOOLからのフィードバックを感じさせる瞬間が結構あって、初期BibioやThe Drutti Columnも思い出すローファイなギタートロニカのようなイメージと、粒の粗い電子音のフレーズとふわふわと浮かぶシンセの静謐さとの対比は坂本龍一のthatness and therenessみたいな、B-2Unitでの日常なのか非日常なのかわからないインスト群とも近い雰囲気を感じる。

 

(Disc1のseamless / のべつまくなしが後日サブスクでも聞けるようになったので貼っておきます。)

 

Disc 2はM13のa burning city / 街~最後までの13曲で構成されていてこちらはほとんどがボーカル曲。やっぱり先行トラックでもあり唯一サブスク配信されているClose / Farがかっこよすぎる。原曲は2014年のデモらしいけど現在になって再構成、最近リリースされたEP内のholesや春に死ねといった楽曲はバンドってよりはエレクトロニクスなイメージが先行してたけど、Close / FarはGradation / 段階とかとも雰囲気が近い破壊的なギターロック。新アルバムのコンセプトに沿って作られたであろうholesの2曲とは分け、あえてこちらのコンピに収録されたのも頷ける。Close / Farも固形みたいな音の塊に飲み込まれてボロボロになってくような、肥大化したギターサウンド自傷的な心地よさがあって、Medicineとかのカラッカラに乾いたノイズの海に飲み込まれる感じを思い出す。セルフライナーだとシューゲイズとニューメタルの間としてDeftones辺りもリファレンスとして挙がっていた。

個人的にもう一つ今作のフェイバリットがPlauraokで、これがアジカンがインスピレーションになったとは想像もつかないインダストリアル色の強い過激なドラムンベース(上記のリンクは2021年にリリースされたシングル)。浮遊感のあるダビーで不穏な電子音が常に飛び交い、暗いハードSFの世界観を連想するし、存在しない単語を冠したタイトルってのも含めて異形の一曲。シングルがリリースされた時期がちょうどPot-pourriの2ndであるDiary発表時と近かったのもあるんだけど、Pot-pourriとの相互補完としても重要な曲だと思う。Disc2は人によって好きな曲が違いそうなのも良くて、個人的にはギターロック路線としてのSPILLEDも大好き。Disc1のボーカル曲とも近い雰囲気があり、もうちょっと構成をシンプルにしたART-SCHOOL路線。2lcd特有である打ち込みによる包み込むように入り組んだノイズの演出、そこと対比になるように流れ込む最後のギターフレーズがドラマティックですごく泣ける。旭川へ行った経験が元になっていて、雪景色って見た目より意外とあったかいことなどを思い出す。ドラムンベース路線だとKaputtも好き。この中では割と直球でシューゲイザー色が強い。M23のまぼろしのうみはWintermute風で、Wintermuteは有名なシューゲイザー路線よりもソリッドなギターロックをやってるときが一番好きなんだけど、まさにその路線を継承している。ちなみにこちらは初音ミクではなくAIきりたん。

終盤morning 22.07.22というタイトルも直球なインストを挟み、アウトロでの静謐さを残しながら、その空間を丸ごと引き裂く強烈なギターリフをメインとした大名曲Thornへ。このインスト~Thornへの流れはアルバムの中でもとくにハイライトとなる部分で、リリースに合わせてSoundcloudで公開されたのもありClose / Farと並び今作を代表する曲だと思う。ここにきて最もバンド演奏してる姿が想像できるナンバーになってるのも泣ける。あまり轟音を使わず、隙間を見せながら、それぞれの音は適度に歪んでいるっていうのが、イントロのインパクトも相まってここまでの作風とコントラストになっていて、改めてメロディの良さを再確認させられる。風通しの良い曲なので青空が似合うと思う。

2lcd · Thorn (64kbps version) from 64kbps

 


 

2lcd、セルフライナーやSNSにおける本人の言及を見ずに完全にまっさらな状態でアルバムを聞いたら、きっとこの音楽に対して背景が想像できないのではないかなぁと思ってしまいます。ルーツとなる音楽のフォーマットを独自の制作環境とアイデアで破壊して、それを自分の色で縫い上げてったような作品というか、本来パッと並べただけでは違う位置にあるアーティストを、歴史だったり個人が見出した文脈で独自のミッシングリンクを作ることで、そのミッシングリンクそのものをオリジナルの音楽として発展させていくっていうのはどういうことなのか、改めて思い知らされてしまいます。ART-SCHOOLWARP RECORDSは彼の中で強固に繋がってるってことが伝わってくるし、その間にはMuteだったりFactoryだったりCreationもあるのでしょう。Swervedriverがいて、Medicineがいて、SeefeelやAphex TwinやBoads of Canadaがいて、Nine Inch Nailsがいて、ポストパンクがありダブがありヒップホップがある。記号でしかないジャンルの共通点を自分で勝手に見出してコレクションして継ぎ接ぎで世界観を作っていく、そういう面白さが詰まった作品だと思います。例えば自分がNUMBER GIRLから連想するアーティストを聞かれたらVelvet CrushやPixiesではなくShellacやJune of 44と答えてしまいますし、そこから伸びていった樹形図は同じアーティストのファンでも全く違う形をしてるのではないかと思います。自分にしかできない連想ゲームを繰り返していって、枝を伸ばしていった先に実ったものがどういうものなのか、その過程でどんな繋ぎ目があるのか、その追憶を辿るような気持ちになってしまうアルバム。

 


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ちなみに隠しトラックとしてlittlegirlhiaceのengage ringという曲のカバーがDisc2に収録されています。元々soundcloudに公開されてたバージョンとも違うみたいでめちゃくちゃ驚きました。littlegirlhiaceはPot-pourriの方で対バンしたこともあるバンドで、engage ringは元々液晶さんっぽさのある曲だなと思ってたので選曲としては納得でしかないし個人的にとても熱かった。

2lcd · engage ring (littlegirlhiace cover)

 

 




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