前記事に引き続き日記からの転載です。
プリンスを聞きながら散歩をするのが楽しい。プリンスのドラムの音って今聞くと80sっぽいちょっとチープな質感が70s~90sの生音重視の音楽と比べてもそんなに音の良さがダイレクトに伝わる感じではなく、分離がハッキリわかる気持ちよさはではないので、それ故にローファイなスピーカー、具体的には歩きながら流すスマホのシャカシャカした劣悪なスピーカーで聞いても逆に問題なく楽しめる。音源の元がスカスカなのもありリズムが強調されて普通にそのグルーヴで踊れて、むしろその方がしっくりくるまである。地元、田んぼ道がえんえんと続くみたいな地域なので時間帯によってはほとんど人がおらず、基本的に住宅もないような両脇田んぼみたいな小路を歩いているので結構普通に流している。

プリンスはアルバムが多くあんまりちゃんと全て辿って聞いたわけではないですが、昨年80sのファンクとしてプリンスを聞き始めたので初期をすっ飛ばして名盤と呼ばれている中期、具体的に言うと1999からパープルレイン、そのまま現代へ遡って聞き進めてました。故に初期数枚は今年入った時点で未だ聴いてなかったんですが、個人的にベストと1999を挙げたくなる自分は前作のControversyはマストで聞いとけよって感じですよね。最近ようやく聴いて衝撃を受けるほど良かった。最も求めていたものがあったと言っても過言ではなく、とにかく1999へと通じていく作風がハッキリと出たどころか源泉が詰まっているこのアルバムは最高。これ以前は良質なソウルミュージックという感じでたまにプリンス節とも言えるスカスカでミニマルなビートが登場する・・・という印象だったけど、今作から、所謂80sポップとも通じそうな煌びやかで弾力のある彼特有のサウンドが全面に押し出され始めて、歌の方も今のイメージの線の細いファルセットメインなスタイルへ。M1(表題曲)やM7のLet's Workはスカスカでリズムを強調したダンスナンバーとも言えるプリンス節全開のファンキーな2曲で、1999のファンク色強い曲(Lady Cab DriverやD.M.S.R.)ともかなり近い。自分が一番好きな部分でもあるし、思いっきりそのまま延長線。Controversyは長尺の曲でギターやシンセのフレーズが80sポップとしても聞けそうなくらいキャッチーで派手、このリフレインを残しながら1999でのポップネスと実験精神が融合したような雰囲気が既にちょっと見てとれる。結構ハードなギターが登場する曲もあってパープルレインまでの布石というか、今作-1999-パープルレインまでは繋がってるように思います。

先ほど挙げた1999。個人的にプリンスの中ではベスト、一番好きなアルバムです。10年前、60sのブリティッシュ・インヴェイジョンから時代を追って洋楽名盤を聞いたときに触れ、当時はさっぱりわからずスルーした作品だったけど、ここ1年ようやくフェイバリットとして挙げられるように。A面は80sポップの色が強くてこのごちゃ混ぜ感に当初ずっと混乱していたというか、自分がそもそも80年台、ニューロマとかニューウェーブとかソフィスティポップとかあの辺の境界が曖昧でAORやディスコもあるし、この辺の音楽シーンにあまり明るくないのもあって、プリンスは雑に当時っぽい時代のサウンドを反映しながらもかなり個性的で、一口で括れるものはなくあらゆるものを内包してる感じがして、有名どころの一つくらいの感覚で聞いたときは中々わかりづらかった。自分はある程度出来上がったジャンルの型の認識がまずいくつかあって、新しい音楽と出会うとその音楽を聴いてイメージした型を自分の中でハメて、しっくりくる部分、はみ出した部分でその音楽の輪郭をハッキリさせていくみたいな聞き方をしてるのだと思う。プリンスは、そこがめちゃくちゃ曖昧というか、ハメるべき型がなにかわからない・・・もしくは自分の中にまだ存在していなかった。「ファンク」として有名だった先入観からJBやSlyみたいな音楽の延長として聞くには毛色がまた違うように思えたし、最近はファンクとかソウルとかブラックミュージックとしては一旦離れてみてScritti PorittiやXTCあたりと並べて聞けるものとして認識することでグッと近づけた気がする(ここら辺の理解はTalking HeadsのSpeaking In Tunguesあたりからもらえた視点かと)。そして昨年ずっとファンク大御所を聞いていたおかげか、後のアルバムであるSign "O" the Timesを聞いたときにSlyやSlyのソロ作とかと並べて聞ける要素を見出せるようになり、そのままParadeだったり、1999が割と普通に聴けるようになった・・・という感じです。まぁ、単純に自分の琴線にぶっ刺さってきた大名曲「Lady Cab Driver」というのがあってそのおかげというのもあるかも。
とびぬけて好きな曲が1曲でも見つかるとグッとアルバムを聞きやすくなりますよね。中心地が見えるというか。Lady Cab DriverはSlyよりJBラインでも聞けそうな、反復を何重にも重ねた自分の好きなファンクを、さらに骨だけにしちゃったみたいな、こんなに鋭利にしちゃっていいんだというくらいスカスカで線の細い1曲。針の穴に糸を通すような、一番気持ちのいい瞬間を切り抜いてずっと繰り返してるみたいなドラムとギターの配置が巧妙で、乾いたドラムの音は普通にプリンスの、というか全ての音楽を含めて最も好きなドラムの音かも。この曲にハマってから最初はイントロが80sポップすぎてその先入観でたぶん何かを諦めてしまっていた1999(曲の方)やD.M.S.R.が急激にわかるようになり、D.M.S.R.は今では次点のベストとも言いたくなるくらい好きな曲に。昔聞いたときはこんなにエレクトロ全開な遅いテクノみたいな、単調すぎるマシン・ビートを退屈に感じていたけど、でもここまで均等に配置したからこそ見えてくる要素もたくさんあると思っていて、この弾力のあるドラムの寸止めっぽいもどかしい心地よさが、この音色を何度も繰り返す反復の美学があると思うし、何より最高のギタープレイが浮き彫りになる。The Metersとかとも繋がる部分だと思うしZappのスタイルとも近く、Zappと並べることでちゃんとP-FUNKとかとのリンクも感じれますね。
続くAutomaticも割と延長線で延々と続くマシンビート的な曲だけどD.M.S.R.と比べるとポップスとしての色が強く、それでいて9分間ひたすら遊び心が詰まったアレンジが続々と出てきて、その後のSomething In The Waterも同じく機械的なビートがこの中でもとくに強い曲で(しかもとびぬけて速い)、パープルレインとかのムードとも近い低体温で湿度の高いメロウさが全面に出ててかなりかっこいい。このD.M.S.R.→Automatic→Something In The Winterという3曲の流れが一番好きですが、どうやら元のLPだとD.M.S.R.がB面の最後らしいので、これは完全にCD及びデジタル世代の感想ですね。
前回
Talking HeadsやThe Policeをきっかけに80sポストパンク/ニューウェーブとエレポップ、シンセポップ、ファンク、そして今回のプリンスでリバイバルと、確実に地続きのものになってますね。昨年70sファンクに傾倒したという話はこちらの記事で触れていて
間違いなくこの下地から。Princeは他にも好きな作品が多いためどっかで好きなファンクでまとめた記事もやってみたいです。個人的に「ファンク」という括りでSlyのラインで聞くのなら「Sign "O" the Times」や更に洗練されていく「Lovesexy」あたりも好きで、今回はTalking Headsの流れから80sポップな側面で聞いた流れの記録となります。
今年も新譜のチェックは相変わらずインディーロックやポストロック/ポストハードコアが多いため、新譜は習慣的に身に沁みついたもの、そして旧譜は完全に別ルートで日常や感性のままに同時進行で掘り進めていた感じがします。