
前回に引き続きSlint以降というテーマで選んでいきます。かなりポストロック寄りで個人的に共通項を見出せるアルバムを7枚+1枚。
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90年代に活動したマスロック~ポストハードコアバンドの1st。RodanやBedheadで聴ける抒情的でメロディアスなギターフレーズをもうちょと小刻みなリフにして反復させてくって感じで、マスロックバンドにしてはキメがあったり長尺の曲があるわけではないんですがリフの捻じれ具合はかなり通じるところがある。でこのリフの反復の中でパターンを入れ替えて緩やかに展開していく・・・という曲が多く、雰囲気も風通しがよくてマスロック寄りのインディーロックって方がしっくりくるし、それこそアメフト以降のマスロック~インディー全部取り込んだ感じのリバイバル方面にも影響を与えている気がする。あとドラムの録音がすごく心地よくてこの浮き上がり具合はダブとか、それに影響を受けたポストパンクとかの雰囲気もある。ちょっとだけスロウコアを連想する音の隙間の作り方は他アルバムやEPの方で繋がってきます。
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そして2nd、前作を踏襲しつつもリードトラックの「Scissors」が音をそぎ落としミニマルに淡々とフレーズを繰り返していくんですがかなり不穏な空気を漂わせてSlintの「Rhoda」や初期インスト曲に近い感覚があります。Ativinは他アルバムでSlintのTweezっぽい曲もあったりするので、Spiderland以前の彼らを独自解釈してる感じがいいですね。リフの雰囲気も前作と比べるとじめっとした陰鬱なものに変わっていて、緊張感もあるしよりポストロック的になったというかSADな雰囲気も出てきている。あくまでバンドサウンドなんですけど醸し出す雰囲気がダークな方向に行っていてSlint直系というか、曲調はもう少し早くラフにしたような質感ですが関連作として是非。「Underwater」という曲ではストリングスも入ってダウナーで色鮮やかなアンサンブルはそれこそSlint、そしてShipping Newsを思い出すかなりルイビルっぽい曲でニヤリとする。メンバーのダニエル・バートンはEarly Day Minersというバンドでもうちょっとフォークとかの風情感じるスロウコアをやってるのですが、Ativinにもそこと通じるスロウコア的側面が強く出た曲はありつつも、その奥にある部分、それこそフォーキーな質感はAtivinには全く無いのが良い。ポストハードコアサイド、という感じでしょうか。
所謂スロウコア、ポストロック的と言っても、「When the Sky Turns Clear」という7分の曲を除けばあくまで2~4分くらいのサイズで次々曲が進んでいくのがAtivinらしいなと思います。おかげで曲の雰囲気は重くても普通にリフはかっこいいのでどんどん聞けますね。
Ativin - Summing The Approach(1999)
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そして同時期のEPでこれが素晴らしい。ジャケも完璧(に好み)で、表題曲「Summing The Approach」に関しては序盤アンビエントかと勘違いするくらい空間的なインストで一度完全に闇の中に潜ってしまい、そのまま違和感なく最小限のドラムのフレーズが飛び込んでいき、ここから今までの作品を思い出すタイトで硬質なスロウコアが始まるという曲で、この静寂パートと最小限の音のみで構成されたアンサンブルは完全にポストロック以降、及びその黎明期の音響の美学というか極小から静へと流れていく感じが本当に良い。染みます。最後の「My Eyes Of Yours」もかなりスロウコア純度高め、かつ今までのマスロックっぽいリフは極限までそぎ落とされながらも少しだけ輪郭をなぞり、リズム隊の最小限な音の反復感と合わさって極上。もうこれはSlintというよりThe For Carnationとかのが近いかもしれない。曲数少ないですがかなり濃いEPで数曲スティーヴ・アルビニ録音なのも完璧にマッチしている。
Rumah Sakit - Rumah Sakit(2000)
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MONOやExplosion In The Skyを擁するポストロック名家Temporary Residenceよりリリース。ここまでくるとSlint~Rodanの系列というよりDon Caballeroに近く尚且つ実際に同系列として語られることが多いバンドですが、Don Caballeroの緻密に組まれたプログレッシブな曲群と比べると、ジャズとかプログレの方に向かいすぎずセッションの中でどんどんエモーショナルにギアを上げていくというシンプルにロックの熱さやダイナミズムを強く、で割とそういうところがRodanとかと重ねて聞けけてしまう。それこそDon CaballeroもRodanも通過した上での次の世代のポストロックという感じ。不協和音から抒情的な音へと流れていくのはエモを複雑に長尺にしていった延長線上にあるような感じですがPeleとかと比べるともう少しポストハードコアサイドですね。
Rumah Sakit - Obscured By Clowns(2002)

大傑作2nd。ストレートに盛り上がってく1stも好きでしたがこちらはよりインプロ色が増しギターの線も細くなり、より複雑な変拍子ギターリフとメロディアスに絡みあうリズム隊が骨組みとなって展開していきます。何より録音がかなりダイナミックで、ライブの生演奏っぽい荒々しさとジャンキーなギターサウンドは前作以上に強めながらも各パート分離もよくてめちゃくちゃかっこいいです。まさしくタイトルにもなってますが「Sausage Full Of Secrets "Live"」という曲名もあり、会場の熱量をそのまんま保存したような長尺な曲が多く、最終曲も開幕のインストと関連付けていてバンドとしてのセッションそのものを音源にしてしまったような、それこそジャズとも通じてくるインプロゼーションパートが丸ごと後半入っていて彼らの真価が聞ける作品。1stの延長線として是非。
Sweep The Leg Johnny - Tomorrow We Will Run Faster(1999)
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先述したRumah Sakitと合同ライブ盤を出すなどしていたバンドで、実際Don Caballero~Rumah Sakitの流れで聞けるバンドですが、今あげた二つと比べるとかなりハードコア色が強く一番激しいです。で尚且つメンバーにサックスがいるためまず大分音色が違い、サックスがハードコア要素に追加されるともはやカオスとも言える音の飛散具合でフリージャズ聞いてるときの各アンサンブルが一体となった不協和音ノイズに近いですね。静寂パートも多く「Rest Stop」「Skin」辺りはもろSlintを感じる展開があり、まさにSlintとKIng Crimsonを繋げつつ好き放題やるという予測不能のアルバムで、長尺の曲も多いんですが40分でまとめ上げてさくっと聞ける名盤。
Sweep The Leg Johnny - Going Down Swingin'(2002)
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4th。こちらでRumah sakitのギタリストも参加してより推し進めた作品で相変わらずハードコア+サックス+プログレッシブな展開という詰め込み具合によるカオス。1曲目のイントロからホーンなのでもうよりジャズの色が強まってきて長い曲が更に増えてきてますがアンサンブルは相変わらず硬質、かなりタイトなポストハードコアの延長線にあるもので、むしろこの対比は前作以上かもしれない。静寂パートも極端なものはなくなってエモのクリーンパートを練り上げて無理やりジャズに組み込んでいったような、相反する2つのパートを同時に鳴らして無理やり枠にねじ込みながらも成立させてしまったような、曲全体の世界観の解像度もかなりくっきりしててめちゃくちゃかっこいいです。ここまでくるとSlint以降というテーマから脱線してきますが、解散後にメンバーのクリス・デイリーはJune of 44やHooverで知られるフレッド・アースキンとJust a Fireを結成することでうっすらと再び繋がってきます。
Just A Fire - Light Up(2004)
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というわけでJust a Fire、今までHooverやその派生バンド諸々にJune of 44、HiMと言った数々のバンドで強い影響力を及ぼし当時のポストロック~ハードコアシーンの土台となったフレッド・アースキンが今度は自らボーカルをとります。
June of 44がポストハードコアからスタートしアルバム減るごとに徐々にダブ~ジャズ化しHiMに繋がったことや、Hoover解散後に同メンバーでAbileanを結成しまたしてもダブに接近したことなど、上記のバンドには全てフレッド・アースキンがベーシストやトランペットで参加していてどんどんダブ・レゲエを意識した作風へと変化していくんですよね。で今作は最初からその状態で結成、てことでガッツリとポストロックなのかと思いきや、意外なことにディスコーダントで硬質なポストハードコアを鳴らしていてこれがかなりかっこいいです。とは言いつつもろレゲエを思い出すミニマルなベースラインが挿入されたり複雑なリズム展開を見せたり、今まで"ポストロック的な"アプローチで行われていたことがストレートにハードコア直系で鳴ってきます。元々こっちの趣向で初期Hooverとかが一番彼の色強かったのかなぁとか考えてしまいますがかなりオススメ。Spotifyに無いのが残念。
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前回と発端になったシーンについてです。